AKG P6R, P6E, P7E, P8E

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 従来のPU3E/4Eにくらべると、今回の一.連のシリーズ製品は、自社で充分に時間をかけて開発したオリジナルタイプであり、他社にない独得の渋い音をもっているのはAKG独得の個性と思われる。
 P8Eは、音の粒子が細かく芯がカッチリとしている。音色は、やや重いタイプで落着いた安定感があり、中高域に控え目な輝かしさがあるが、表面的にならないのがよい。音場感はこのクラスとしては平均的だが、音像はクッキリ型で前に立つタイプである。トータルのクォリティは高く、適度に硬質で冷たい輝きがある音が特長である。
 P7Eは、低域のダンプ、粒立ちともに標準型で安定感があり、トータルなバランスではP8Eを上廻るものがある。低域は重いタイプだが腰が強く、姿・形がよく、中低域も量・質ともに充分なものがある。中高域は、やや硬質だが浮き上がらず、適度な魅力となっている。性質は、ちょっと聴きにはマイルドに感じるが、かなりの自己主張を内側に持っているようだ。全体に、重さ・暗さがある音だが、暖かさ・力強さがあり、独得な個性的魅力をもっている。
 P6Eは、音の粒子がP7Eよりは粗くなり、ときおりSN比が気になることもある。低域は引締まり、全体の音はP8E/7Eよりも力感があり、腰が強くクールで押出しがよい。いわゆる明快でカッチリとした音であるが、安定感があり、表面的にならず、性質がおだやかであるために、渋い重厚さにつながった音と感じられる。
 ヴォーカルはP7Eよりも力強く、実体感があり中域が充実して、堂々と歌う感じがある。ピアノはスケール感が充分にあってクリアーに力強く響く。
 全体に、P8E、P7E、P6Eと音の粒子が段階的に粗くなってくるが、全体のまとまりと力強さは逆に増してくるようである。数少ないヨーロッパ系のカートリッジとしては、音の芯が強く、力感がある点では、最右翼に位置する製品だ。
 P6RはP6Eと似た面が多いが、全体にやや性質がおだやかであり、高域の伸びが少し押えられた感じがある、全体に少し線は太く、マクロ的に音をまとめる傾向があり、安定感があるのが、このカートリッジの特長である。

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