井上卓也
ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より
デッカのカートリッジは独得な垂直と水平系の発電方式を採用し、マトリックスを使ってステレオ再生をするために、現在のカートリッジのなかでも個性派の筆頭であろう。
MARKVは、ソリッドで硬質な独得の魅力がある音だ。聴感上のバランスはオーソドックスで安定感があり、音の芯がしっかりとしているため聴きごたえがある。ヴォーカルは少し硬いが、ピアノは際立った音で素晴らしいのだが、さしてスケール感はない。スクラッチをやや強調しがちで、ときには独自の変調性ノイズが気になることもある。
MARKVeeはVよりも粒立ちが細かく、音色も軽く明るい。低域はやや甘くなったが、全体の表情はやわらかくなった。Vにくらべてデッカらしさは薄らいだが、グレイドアップされたことは事実である。
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