Monthly Archives: 12月 1979 - Page 5

Lo-D HS-90F

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 昨今、急激に平面振動板採用のスピーカーシステムがクローズアップされ各社とも競って製品化を行なっているが、使用ユニットを全て平面振動板で統一したスピーカーシステムを最初に開発したのは、昨年の無限大バッフルを提としたLo−Dの巨大システムHS1000である。今年になって同一構想のHS5000が開発され、これと同時に一般的なエンクロージュア採用のシステムとして発表されたのが、このHS90Fである。
 HS90Fは、メタルコーンユニットの開発で蓄積したノウハウに、理論的追求を加味して完成した平面振動板ユニットが結びつき製品化されたモデルだ。
 30cmウーファーはギャザードエッジ、ギャザードダンパー採用。5cmスコーカーはギャザードエッジ付で、ピストン振動帯域が広く指向性に優れる。2cmトゥイーターはスコーカーと同構造で各ユニットは全て発泡樹脂充てん型である。
 エンクロージュアは70ℓの容積をもつバスレフ型で、5層構造のバッフル板を採用し箱鳴りを抑えた構造である。とかく問題が生じやすいネットワークは、基板に70μ厚の銅箔を使ったガラスエポキシ板、音質を吟味したコンデンサー、コイルを使用した音質重視設計である。
 HS90Fはフラットに伸びたワイドレンジ型の音で、粒子が細かく細部を鮮明に引き出して端正に聴かせる。

パイオニア C-Z1, M-Z1

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 NFBという素晴らしい回路技術のおかげで、オーディオアンプは大きく発展してきた。まるで、マジックともいえるこの回路のもたらした恩恵は計り知れないものがある。特にトランジスターアンプにおいては、このNFB回路なしでは、今日のような発展の姿は見られなかったであろう。出力信号の一部を入力段にもどし、入力信号と比較して、入出力信号波形を相似にするという、このループ回路の特効を否定する人はいないだろう。位相ずれによる不安定性も発振の危険の可能性は常に指摘されていることだが、巧みな回路の使い方をすれば、事実、現在のような優れたNFBアンプが存在するわけだし、その音質も充分満足出来るものになっている。オーディオに限らず、ものごとすべて、表裏一体、メリットもあれば、デメリットもある。要は、そのバランスにあるといえるだろう。目的に沿ってメリットが大きければ結構。メリットと思えても、その陰に、より大きなデメリットがひそんでいたら要注意というものだ。オーディオ機器が、ここまで進歩して、微妙な音質の追求がなされてくると、ありとあらゆる問題点を解析して、細部に改善のメスが入れられて、よりパーフェクトなものへのアプローチがおこなわれるようになる。そして、その姿勢もまた大変重要なことなのだ。これで充分という慢心こそは、最も危険であり悪である。
 パイオニアが発売したC−Z1、M−Z1というセパレートアンプは、まさに、この姿勢の具現化といってよいだろう。思想としては、NFBを否定したわけではないだろうが、たしかに、その問題点ゆえに、ノンNFBアンプを開発したからである。入力信号とNFBループ進行との時間差によって発生する諸々の動的歪が現在大きな問題として議論されている中で、このループを取り払って、裸のアンプを商品化してくれた事は、かなりショッキングなことにちがいない。今までになかった試みでは勿論ない。しかし、ここまでの特性のノンNFBアンプは商品として初めてである。その鍵は、きわめて独創的な発想によるスーパー・リニア・サーキットと同社が称する新回路の開発にある。簡単にいってしまえば、もともと、半導体素子のもっている固有の非直線性を、逆特性の非直線性により完全に吸収して優れた直線性を得る回路である。トランジスターの非直線性が見事にそろっていることを逆手に利用した興味深い回路に、これが大いに活かされている。このノンNFBアンプのメリットは、いうまでもなくNFBループに起因する問題は全くないし、安定したNFBをかけるために必要とされる複雑な回路も必要がないことだが、それだけに、基本的に良質のアンプを作らないと、パーツや構造の問題が率直に音に現われてくるものだろう。ガラスケース電解コンデンサー、非磁性体構造、ガラスエポキシ140μ厚銅箔基板などの採用は、こうした観点から充分納得できるものだ。
C−Z1の特徴
 C−Z1は、ユニークな縦長の、M−Z1と同形のコントロールアンプで、フロントパネルにスモークドガラスが使われ、内部の素子が透視出来るというマニアライクなもので操作スイッチ類はフェザータッチの電子式によるもの。スイッチ切替えの雑音発生は全くない。機能は簡略化され、コントロールアンプとしてユニバーサルなファンクションは持たないが、トーンコントロール、サブソニックフィルターなどの必要最少限のものは備えている。MCヘッドアンプも内蔵していない。当初から高級マニアを意識した開発ポリシーである。先にも述べたように、負荷抵抗値の変化で利得が変るノンNFBアンプの特性を利用した独特なCRタイプのカレント・イコライザーも興味深い。このアンプの形状は、パワーアンプと違って、コントロールアンプとしては必ずしも好ましいとは思えない。無理にパワーと同形にすることもなかったような気がする。
M−Z1の特徴
 M−Z1パワーアンプは、前述したノンNFBループの60WのオーソドックスなモノーラルA級アンプで、入力から出力まで全段直結回路で構成されているという純粋派の代表のような製品である。コントロールアンプ同様、中点電圧の変動はダブルロックド・サーボ・レギュレーターで二重に安定化が計られている。電源部はインピーダンスを低くとるため2個をパラレル接続して使われている。アルミ・ブラックパネルのヘアーライン仕上げという、最近のパイオニアの高級機器が好んで使い始めたフィニッシュが、フロントパネルのみならず全体に使われているというこりようだが、個人的にはあまり好ましいフィニッシュとは感じない。こったほどには品位の高さが出ないように思う。コントロールアンプ同様、フロントパネルにはスモークドガラスが使われているが゛何が見えるのかと思ってのぞくと、なんのことはないトランスケースにプリントされた結線図だった。20ポイントのLEDによるパワーインディケーターは、数秒間ピークホールドして見やすいものだ。
C−Z1+M−Z1の音質について
 ところで、このC−Z1、M−Z1の音だが、まず感じることは、音の密度の高いことだ。まるで粒子の細かい写真をみるように緻密なのである。楽器の質感が、出過ぎるほどリアルに出る。そのために、プログラムソースの長所も弱点も、余すことなく出てくるという感じで、荒れたソースが適度にやわらかく丸く再現されるというような効果は期待できない。60Wとは思えないパワー感で、音が前面に貼り出してくる。曖昧さの全くない、骨格と肉付きのしっかりした充実したサウンドだ。

スタックス CA-Y

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 筐体の下側2/3を強力な電源部で占め、音質追求型の極致ともいえるユニークなコントロールアンプCA−Xの構想を受け継いだスタックスの第2弾コントロールアンプである。
 コンストラクションは通常タイプの電源組込型となっているが、専用のオプションで内蔵型MCヘッドアンプが単独に用意されているのが特長である。
 薄型のパネルは、ファンクションスイッチと連動して緑色に文字が浮き出し、周囲の明るさに対応して明るさが自動調光されるインジケーターを採用した華やかなタイプで、CA−Xとは対照的だ。
 回路面での特長は、イコライザー段、フラット段ともにFET差動2段にA級SEPPバッファーアンプを組合せ、2段目から初段に同相帰還をかけて直流安定度を向上させ、独自の多重帰還方式でDC利得を1とすることなどにより、サーボ回路を使わずに入出力のカップリングコンデンサーを除いたDC型という点にある。
 電源部は、CA−X同様のバッテリー電源以上の性能をもつスーパーシャントレギュレーター型である。使用部品は、300μ厚無酸素銅箔ガラスエポキシ基板、低歪PCボリュウム、バリコン型空気コンデンサー、金メッキ無酸酸銅のジャンパー線、非磁性体アルミ筐体など吟味され、優れた音質を得ている。

オーレックス SY-Λ88

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来のSY88をベースに一段とグレイドアップを図ったリフレッシュ製品だ。
 基本的な構想は、トーンコントロールなどの機能を排したシンプルな構成を採用し、音質を向上しようとするもので、信号経路に使用されるトランジスターなどの能動素子、コンデンサーや抵抗などの受動素子、さらにスイッチ顆の接点数を減らす目的で、アンプ段数をMCヘッドアンプ、イコライザーアンプ、フラットアンプの3ブロック構成とし、さらにデュアルFET、デュアルトランジスター採用で、初段及び二段目の自己発熱を抑えたカスコード接続としてDCドリフトを抑える。余分な信号経路となるサーボ回路付のDCアンプではなく、サーボレスDCアンプとしている。
 レコード再生時の信号経路で接点数は、イコライザー入力部とフラットアンプ入力部の2ヵ所だけという、SY99同様の構成である。
 使用部品は、オーレックスが従来からも重視している部分で、振動モードの単純化と低インピーダンス化した音質重視型電解コンデンサー、抵抗体と端子と接触面の摺動子を改良したボリュウムとバランス可変抵抗、高速型整流ダイオード、高域周波数特性が優れたトランジスターの採用をはじめ、型番にも表示されているとおりΛコンデンサーが多量に使用されている。

ケンウッド L-01A

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この製品はアンプとしての形態こそプリメインアンプではあるが、シャーシーやケースに非磁性化した筐体を採用し、電源部を分離して独立させ、マグネチックディストーションの低減を極限にまで追求した、セパレート型プリメインアンプであることが最大の特長である。
 現在のアンプは、新しい設計によるイコライザー段とかパワーアンプ部などのアンプブロックの基本的な性能が、新デバイスや部品の採用により極限まで高まっているため、その優れた性能をアンプというコンストラクションに組込んだ状態で十分に発揮できるようにするためには、内部の配置をはじめ、信号系、給電系、アースラインなどの配線を十分に検討する必要があるが、より一段と性能、音質を向上しようとすると、今度は筐体自体、内部のシールド板、ボリュウムやスイッチ類などの金属部分を含めた各種金属の信号系に及ぼす影響を避ける必要に迫られることになる。
 とくに、金属類では鉄などの磁性体金属が信号系にもっとも大きな影響を及ぼすことは、古く管球アンプ全盛時代から一部では常識とされていたことである。昨今、アンプの非磁性体化というテーマがあちこちで聞かれるようになったのは、この問題がクローズアップされてきたことを表しているわけだ。
 非磁性体は部品関係のボリュウムやスイッチ類で早くから採用されていたが、アンプの場合には外部からの電磁的、静電的な影響を受けやすいため、この両者をもっとも避けやすい鉄の使用は必要な条件でもあったのである。すでに一部にはかなり多くのアルミ系金属筐体を採用した製品が存在するが、開発当初から磁気的な歪みを低減する目的で非磁性体化を追求したのは、このL01Aが最初の製品である。
 L01Aでは、パネルやケースには合成樹脂系の材料や木を採用するとともに、巨大な鉄の固まりであり強力な磁力線を放出する電源トランスを別個に独立型とし分離させ、さらに、スイッチ類のケースの磁性体を取除くなど、ほぼ完全に非磁性体の目的を達成している。
 回路面では、従来からのハイスピード化やストレートDCの構想を受け継いでいるが、パワーアンプ部には、最近の動向を活かしたスイッチング歪やクロスオーバー歪を低減するために独自のダイナミックバイアス方式を新しく採用している。ヒートシンクには、大電力部の集中配置が可能で、電磁波の他信号系への影響が少ないなど多くの特長をもつ無酸素銅製ヒートパイプの採用されているのも目新しい。
 L01Aは、従来の明快なトリオの音に比べ、一段と鮮明で粒立ちが良く、整然とした音が特長で、オーディオ的な完成度は高い。

ステート・オブ・ジ・アート選定にあたって

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「Hi-Fiコンポーネントにおける第2回《STATE OF THE ART賞》選定」より

 昨年にひきつづき、第二回の〝ステート・オブ・ジ・アート〟の選定に参加した。第二回は、第一回選定以後発売されたものから選ぶことになるので、その数は少なかろうと予想したのだが、実際には、かなりの数の製品が選ばれることになった。とはいうもの、第一回が、それまでのすべての製品からの選定で、今回は一年間の製品が対象だから、比較すれば1/3以下の数量である。海外と国産とが半分ずつという結果になった。結果は、それぞれの選考の個人推薦と総意とバランスが、まずまず妥当なところにまとまったように思われる。私の場合、ノミネートした製品で、選定にもれたものを再考してみると、それなりに理由が納得できて、〝ステート・オブ・ジ・アート〟とするからには、このぐらい厳選されてしかるべきだと思えてくるものが多かった。強いていえば、ケンウッドのL07Dプレーヤー、Lo−DのD3300Mカセットデッキの2機種が選外になったことが惜しまれる。かといって選に入ったものについては、とりたてて文句のないものばかりであるからいたしかたない。
 第一回(49号)でも述べたことなのだが、〝ステート・オブ・ジ・アート〟という言葉通りに厳選するとなると、ごく少数の製品しか入らない。そして、この言葉の定義そのものが人によっても違うだろうから、選定の基準というものを明確にして、これ以上は入選、以下は落選というボーダーラインはひきにくい。私個人としては、この言葉をかなり厳しいニュアンスで受け取っているのだが、実際アメリカ雑誌などで使われているニュアンスは、お買徳優秀品程度のことでがっかりさせられるような製品にまで、この栄冠が与えられているようだ。本誌の〝ステート・オブ・ジ・アート〟は、それからすると、はるかに高い次元で厳選されていると思う。そして、そのレベルを上げることがあっても、下げることはないものと確信している。技術の先進性と同時に信頼性、ある種の普遍性にまで高められた個性的主張、つまりオリジナリティ、最高の品位をもった作りと仕上げ、こうした条件は、そのメーカーの技術力と精神性を厳しく問われることになる。そして、商品としてユーザーの信頼に応え得るものでもなければならないだろう。今は消え去った往年の名器を選ぶのとは意味が違う。商品としてユーザーの信頼に応え得るものとは、製品のクォリティのみならず、それを販売する流通経路のクォリティも問題だ。そしてもちろん、アフターケアーがこれに伴う。このような総合的見地からの〝ステート・オブ・ジ・アート〟の選出となると慎重にしすぎて、しすぎることはない。しかし、そこまで責任はもてないまでも、選者としては、まず自分がほれ込める製品化どうかということは純粋に一つの尺度にしているつもりだ。いうまでもなく、オーディオ・コンポーネントのあり方というのは多極性をもっている。スペシフィケイション、データで示される数字は、その足がかりになっても、ほとんどそ既製品の何ものをも語ってくれない。ましてや、質や性格といったものは、きれいに刷られたカタログ写真に及ばない。「ステレオサウンド」誌式のテストリポートで(今号でもセパレートアンプについて、私も担当しているが)、できるだけそれを読者に伝えようという努力をしているが、この〝ステート・オブ・ジ・アート〟の選考は、いわば、そうした姿勢を通して、真に推薦に足りると思える製品を厳選し、これだ!! と決めつけるわけだから、かなり荷の重いことにちがいない。第一回で選ばれた49機種に、この第二回の選考を通過した17機種を加えた中で、さらに個々の読者によって好き嫌いのはっきりした製品が選り分けられるほど、いろいろな傾向のものが入っているのは曖昧だともいえるし、オーディオ機器のあり方の複雑さと難しさを物語っていそうで興味深い。

新SFGユニットを聴いてみたら

瀬川冬樹

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「ついにJBLがフェライトマグネットになる 新SFGユニットを聴いてみたら」より

 JBLにかぎらず、欧米の著名な高級スピーカーには、商品名を「アルニコ(ALNICO)」という磁石が使われている例が多かった。これは、アルミニウム、ニッケルおよびコバルトの合金で、それぞれの頭文字を組合わせてアルニコと呼ぶ。磁力がきわめて強く経時変化に強いため、スピーカーの磁気回路用としては理想的なマグネットのひとつといわれる。
 ところが、近年になって、このアルニコの重要な材料であるコバルトの採取量が大幅に減ってきて、このまま供給し続けることが困難な状況になっている、という噂が伝わってきた。コバルトの産出国である「ザイール」に、もはや埋蔵量がそこをつきはじめたというのである。また一説によれば、それが原因でコバルトが非常に高価になり、その価格で売れるならと、近隣の諸国が色気を示しはじめた……と、まあこの手の話には尾ヒレがついてくるが、ともかく現実にいま、コバルトが不足しはじめたことだけはたしかで、アルニコ磁石もまたその結果として供給が難しくなってきたという。
 アルニコに代るマグネットとして、すでに世界の大半のスピーカーユニットは、フェライト磁石を採用している。フェライトは、簡単にいえば磁性粉の焼結材で、大量に供給され価格も安い。ただしその特性はアルニコより概して劣り、アルニコ同様の磁力を得るには、よほど大量に使う必要がある。そのためにふつうは大きなドーナツ状の外磁型となり、またフェライトの特性上、厚みを減らして外径を増す方向でないと、磁力をかせぎにくい。
 すでにタンノイがフェライトに代っていることはご承知のとおりだが、ウーファーの磁気回路中央をトゥイーターのホーンが貫通する独特の構造が、フェライトの性質のために奥行きが浅くなり、ホーンの形状も変えざるをえなくなった。
 しかしそういうこととはまた別に、ちょっとオーディオ道楽をしたマニアや、またスピーカー設計者の中にも、フェライト磁石は音がよくないという説がかなり以前からあった。音がカン高くなったり、低域でのダンピングが悪くなったりする、という。
     *
 そうした背景の中で、JBLのスピーカーユニットもまた、ついにフェライトに代るという話が伝わってきて、フェライト恐怖症のマニアたちをおびやかした。いったいどうなるのだろう。
 その答えは意外に早く届いた。JBLプロフェッショナル・ディヴィジョンの商品企画の責任者の一人であるゲイリー・マルゴリス氏(本誌51号325ページ参照)が、九月の半ば、この新しいフェライトのユニットのサンプルを携えて来日して、各地でセミナーを開いた。このセミナーは、対称が販売および報道関係者であったため一般ユーザーにはほとんど知らされなかったが、かなり詳細な資料と共に、彼は熱心に、フェライトがアルニコの〝代用〟として採用されたのではなく、むしろユニットの性能をより一層改良する過程で、フェライトの特性の欠点を修正し特徴を生かす使いこなしを発見したのだと強調した。
 JBL側の発表の資料については、別項で、要点を簡単に編集部によって解説してもらうことになっているので、ここでは、私個人の体験をもとに、その感想を記す。
     *
 来日したマルゴリス氏が、実際に♯4343のユニットを交換して音を聴きたいというので、たまたま私の家が選ばれた。一夜、サンスイのJBL担当諸氏と共に、我家の♯4343を使っての試聴の機会が得られた。マルゴリス氏の説明によれば、フェライト化されるのは当分のあいだコーン型のユニットのみで、ホーン型はその構造上、当分アルニコのままで作られる(ただしコーン型のフェライト化と歩調を合わせて、ダイアフラムのエッジが改良され、特性が改善──ことに高域でのレンジの拡張──される。型番は、たとえば♯4343のHFユニット♯2420は♯2421と変更される)とのこと。
 そして、コーン型でフェライト化されたも
のをSFG(Symmetrical field geometry)ユニットと総称する。現在のアルニコを使い切ったユニットから逐次SFGに交換され、スピーカーシステムは型番の末尾にBがつく。たとえば♯4343B、♯4343WXB……。
 さて、わが家で、アルニコのままの♯4343をしばらく各種のレコードで聴いたのち、ウーファーとミッドバスのユニットがSFGに交換された。音質はかなり違う。一聴して聴き分けられるのは、音がいくぶん硬調ぎみになって輪郭が鮮明になること。および、重低音域ではアルニコよりもダンピングが利いている感じに引締って聴こえる。むしろアルニコのほうが甘い感じの低音になる。マルゴリス氏立会いの試聴(夕刻から深夜まで、約七時間近くにおよんだと思う)では、改良された点、あるいはそれほどでもない点、またアルニコの方が好ましい部分、いろいろディスカッションされたが、総合的にはフェライトに軍配が上った。マルゴリス氏も非常に満足した様子で帰路についた。
 このあと、日を置いてさらに二回、一回は再び私の家で、そしてもう一回はサンスイのオーディオセンターでの私の担当する「チャレンジオーディオ」の公開の場で、同じ実験をくりかえしてみた。私の家では、第一回のときとユニットが違っていたため、また「チャレンジオーディオ」の会では私の家とは条件が大きく異なるため、計三回の試聴結果は必ずしも同じ結論になっていない。これはフェライト云々ということより、磁石の何であるかとは別に、スピーカーシステムを鳴らしはじめてからの、各ユニットのエージングが同じ環境で、同じ時間を経過している場合、その中のひとつを交換するとどうもうまく音が合わないという現象をよく体験するが、それも原因のひとつではないかと思う。となると、結局、♯4343B(WXB)になった新製品を聴かなくては、本当の判断は下せないということになる。いま書いている54年11月下旬現在、まだ♯4343のBタイプは入荷していない。ただ♯4311については、AとBを比較する機会があったが、前述のように最低音領域ではA(アルニコ)のほうに独特の甘さがあって私には好ましかったが、ポップス系を好む人にはBがよいと言い、少なくともその部分を除いては私にもB(フェライト)のほうが全体として音がフレッシュになっていると聴きとれた。♯4343Bがどうなるのか、愛好者のひとりとして非常に気になる。早く聴いてみたいものだが、とりあえずこれは中間報告である。

オンキョー Integra P-306, Integra M-506

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 大変きれいな音色で、解像力もいいし、プレゼンスも豊かに再現される。透明感もあるし、音像の立体感も立派だ。欲をいうと、ひとつ湿った感じがソースによって気になることだ。荒々しさが、美化されてしまう傾向といってもよい。いつも濡れた艶がつきまとう。

ステート・オブ・ジ・アート選定にあたって

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「Hi-Fiコンポーネントにおける第2回《STATE OF THE ART賞》選定」より

 昨年から始まった〝ステート・オブ・ジ・アート〟の選定は、早いもので、今回は第2回を迎えることになった。前回は第1回ということもあって、現在市販されているオーディオ製品を対象としたために、国内海外を含めて合計49モデルの多くの製品が選定されたが、今回は昨年の選定時期から今年の十一月五日までの一年間に登場した新製品が対象であり、当然のことながら選定機種数は少なく、ご畏敬17機種に留まった。
〝ステート・オブ・ジ・アート〟の選定については、始まって以来日時も浅いためか、聞くところによると国内メーカーの反応に比較すると、海外メーカーのほうがはるかに反応が鋭く、この選定に関心をもっているとのことだが、このあたりにも国内と海外メーカーの体質や気質の違いがあらわれているようで大変に興味深い。まず、メーカーの規模そのものが、国内のほとんどが大手メーカーであることに比べて、海外のメーカーは、大きいといっても国内では比較的に小さなメーカーといった程度であり、それだけに、製品についても個人的なデザイン・設計などにパーソナリティが強くあらわれ、いわゆる趣味的な傾向が色濃く出た製品が多いことにもなるのであろう。
 たしかに、現在の国内製品は製品の高品位さ、信頼性、安定度、均一性などの、どの点からみても世界最高の水準にあることは、誰しも疑いをさしはさむ余地のない事実であり、それだけに、海外においても特別な例を除いて、他に競合する相手を探すことはすでに不可能といえるほどの実力を備えている。これらの国内製品は、趣味の製品とはいえ、基本的に大量生産・大量販売に根をおろした工業製品である。また、工業製品としてつくられなければ、これ程の国際的競争力をもつ優れたオーディオ製品が、しかるべきリーズナブルな価格で入手できるわけはない。そのことはつねにづね納得しているわけではあるが、〝ステート・オブ・ジ・アート〟の意味どおりに選択するとなると、突然のように一種の味けなさが心なしか感じられるようである。
 選定された国内製品が、最新のエレクトロニクスの粋を集めた内容をもつものが多いのに対して、海外製品はむしろ伝統に根ざしたオーソドックスなものが大半である。それだけに、長期間にわたって培った、新鮮さはないが音楽を楽しむための道具ともいった味わいの深さが感じられる趣味的な製品が多い。いずれ80年代には、国内に輸入されて国内製品に比べて高価格でも競争力をもつ海外製品は、よりその数が激減することになろう。しかし、その空間を埋めるだけの、本来の意味での〝ステート・オブ・ジ・アート〟に相応しい国内製品の登場を願いたいと思う。昨今のように、巨大な資本力に物をいわせた激しい技術開発競争が繰り返されると、製品の世代交代は急テンポにおこなわれるようになる。例えば、春の新製品は年末には既に旧製品となりかねないようでは、ローコストな製品ならいざ知らず、かなり高価格な製品を入手しようとすると、おちおち使ってはいられなくなるのが、使い手側の心情であろう。
 何事にかかわらず、多くのなかから少数を選出するという作業は、つねに個人的な経験や判断に基づいた、エゴと独善がつきまとうことは避けられないが、少なくとも、今回選出された17機種の製品は、見事な製品であるに違いない。それぞれのジャンルで、選出されなかった数多くの製品よりも、〝ステート・オブ・ジ・アート〟として選出されただけの優れた性能・音質が得られ、それを購入された人々が、それなりに納得のいくものであることを信じたい。

デンオン POA-3000

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「第2回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント17機種の紹介」より

 昨年末、パワーアンプの大きな動向として目立つものに、一般的に多用されるBクラス増幅固有の歪みである、スイッチング歪とクロスオーバー歪の解消への、各社各様のアプローチがある。
 この種の歪みの解決方法としては、従来からも純粋なAクラス増幅の採用があったが、この方式は、直流的にアンプに与える電力とアンプから得られるオーディオ出力の比率、つまり、電力効率が非常に悪く、このロス分が発熱となるため、強力なパワーを得ようとすると、巨大な電力消費量と巨大な筐体を必要とするために、100W+100Wクラス以上のパワーを要求するとなれば、すくなくとも、コンシュマーユースとしては、非現実的なものとなり、その製品化は考えられないといってよい。
 そこで、一般的なBクラス増幅の効率の高さと、Aクラス増幅の性能・音質の高さを併せ備えたアンプの開発が考えられるようになるのは当然の結果である。この第一歩を示したのが、米スレッショルド社の開発した特殊なAクラス増幅方式である。それに続きテクニクスで開発した、Aクラス増幅とBクラス増幅を組み合わせて独自なAクラス増幅とするA級動作のパワーアンプが製品化され、性能の高さと音質に注目を集めた。
 昨年末、各社から続々と発表された新しいパワー段の動作方式は、基本的には、Bクラス増幅からの発展型であり、Bクラス増幅でプッシュプル構成のパワートランジスターが交互にON/OFFを繰り返すときに生じるスイッチング歪を解消するために、OFFにならないように各種の方法でバイアスを与え、つねに最低限のONの状態を保つタイプである。
 これに比較すると、デンオンで開発したデンオン・クラスA方式は、Aクラス増幅を出発点として発展させたタイプであることが、他とは異なる最大の特徴である。したがって、プッシュプル構成のパワー段は、対称的に接続されているパワートランジスターはそれぞれつねに入力信号のプラス方向とマイナス方向を増幅し、Bクラス増幅のようにON/OFFは基本的に繰り返さないために、スイッチング歪を発生する要因がないわけだ。しかし、このタイプはAクラス増幅ベースであるために、電力効率の面では、最大出力に近いパワー時に純粋Aクラス増幅と等しく、最大出力時の1/10付近でもっとも効率が高い特徴をもつ。このために結果としては、Bクラス増幅ベースのノンスイッチングタイプよりは効率は低くなる。
 回路構成上は、パワー段には高域特性が優れ、100kHzでも高出力時に低歪率で、リニアリティが優れた、高速型パワートランジスターを片チャンネル10個使い、リニアリティの向上と、広帯域にわたる低歪率を獲得している。これをAクラス増幅とするのが、新開発のリアルバイアスサーキットで、つねにA級動作を保つために信号波形に応じた最適バイアスを与えることと、信号電流よりもバイアス電流を速く立上がらせる役目をする。この回路が、デンオン・クラスAのもとも重要な部分である。
 ドライバー段は、FET差動増幅2段並列回路により、プリドライバー段のツインコンプリメンタリー差動回路をバランスドライブし、次いで、カスコード差動増幅回路がパワーステージをドライブする構成である。初段の2並列回路は、新開発のダイレクトDCサーボ方式のためで、サーボ帰還回路は受動素子で構成されているのが特徴である。これにより、入力部の結合コンデンサーを除き、帰還系にサーボアンプをもたないため、SN比および歪率は従来のサーボ方式よりも一段と改善できる特徴がある。
 電源部は、パワー段とその他を分離した別電源トランス方式で、180W+180Wのパワー段は左右独立巻線で、25000μF×4の大容量コンデンサー使用である。なお、電源トランスは1000VAのトロイダル型、初段からドライブ段用にはEI型を別に設けて、出力段の激しい負荷変動を避け、定電圧回路で低インピーダンス化している。

ラックス C-5000A, M-4000A

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 ある種の雰囲気をもったどちらかというと内政的な音で、中高域の冴えがなく中低域以下が豊かだ。風格のある充実した音だが、音楽の内容によっては、もっと明るく、張り出した響きが欲しい。ワイドレンジで力もある音なのだが、少々しぶ味がある感じ。

ヤマハ MC-7

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 独特の発電構造を採用した純粋MC型カートリッジMC1X、MC1Sに続く第2弾のMC型新製品である。発電方式は、バルクハウゼン効果が少ないセンダストの十字型巻枠を縦と横方向に配置した垂直・水平型発電タイプで、コイル巻線を使うマトリックス回路で、一般的な45/45方式に交換するMC型としては最初の製品である。このタイプは、十字型巻枠の幅による縦・横方向コンプライアンスの調整、現実の45/45方式でカッティング角度の変化範囲が数度に達している実状に任意にフォローでき、コイル巻数による任意のクロストーク特性や音場感のコントロールが自在である。
 MC7は、スクラッチノイズが量的に少なくパーカッシブな音を正確に再生する特長がある。音色は明るく、低域には安定感があり、鮮明な表現力が特長。

デンオン PRA-2000, POA-3000

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 デンオンが、その技術を結集して完成したセパレートアンプの最新作である。このところ、セパレートアンプの分野において、デンオンには特に注目されるモデルがなかっただけに、今度の製品にかけた情熱と執念は相当なもので、内容・外観共に入念の作品が出来上ったことは喜ばしい。どの角度から見ても、現時点での最高級アンプと呼ぶにふさわしいものだと思う。
PRA2000の特徴
 PRA2000は、コントロールアンプの心臓部ともいえるイコライザーアンプに、現在最も一般的なNF型を採用せず、CR型を基本とした無帰還式の回路を用いているのが技術的特徴である。リアルタイム・イコライザーと同社が称するようにNFループをもたないから、過渡歪の発生が少なく、高域の特性の安定性が確保され、イコライザー偏差は20Hz~100kHzが±9・2dBという好特性を得ている。従来からのNF型に対してCR型イコライザーのよさは認められてはいたが、SN比や許容入力、歪率などの点で難しさがあった。しかし、今度、PRA2000に採用された回路は、ディバイスの見直しと選択によって、CR型イコライザーの特性を飛躍的に発展させている。構成は新開発のローノイズFETによるDCリニアアンプ2段を採り、初段のFETはパラレル差動させSN比を大幅に改善、カスコード・ブートストラップ回路により高域における特性を確保し、電源の強化とハイパワー・ハイスピード・トランジスターと相まって広いダイナミックレンジを得ているのである。イコライザーアンプの出力はバッファーアンプを介さず直接、DCサーボ方式のフラットアンプに送られるが、このフラットアンプのローインピーダンス化によりSN比の改善、スルーレイトの悪化等による特性劣化も防いでいる。10kΩという低いインピーダンスのボリュウムが使われ、フラットアンプの出力インピーダンスは、100Ωという低い値である。独自のサーボ帰還回路により専用サーボアンプを持たせることなく、安定したDC回路と高いSN比を得ているのである。電源部は、五重シールドの大型トロイダルトランスで50VAの容量をもつものだ。シンメトリカルの内部コンストラクションは、細かいところにも入念な構成がとられ磁気歪や相互干渉の害を避けている。22石構成のローノイズ・トランジスターによるMCヘッドアンプも安定化電源をヘッドアンプ基板内に備え電源インピーダンスを小さくおさえるなど、専用の独立型ヘッドアンプ並みの手のかかったものである。
 フォノ入力3回路、チューナー、AUXなどの入力ファンクション切替えスイッチなどはソフトタッチの電子式リードリレーであるが、プリセット機構と連動し、パワー・オンの時には優先選択機能を果すし、スイッチ切替え時はワンショット・トリガー回路の働きで、一時的に出力が遮断されるので、きわめてスムーズで安定した操作が楽しめる。これらのスイッチ類は、すべて開閉式のサブパネルに装備され、常時パネル状に露出しているのは、パワースイッチとボリュウムコントローラーだけである。そのため、使い易さもさることながら、デザイン上も、きわめてシンプルな美しさをもち、木製キャビネットの仕上げの高さと共に、普遍的な美観をもっていると思う。
PRA2000の音質
 音質は明晰で、鮮度の高いもので、大変自然で屈託のない再生音の感触が快い。POA3000との組合せでの試聴感は後で記すが、このコントロールアンプ単体で聴いた感じではやや低域の力強さに欠ける嫌いもなくはない。しかし、これはパワーアンプやスピーカーとのバランスで容易に変化し、補える範囲のもので特に問題とするにはあたらない。
POA3000の特徴
 パワーアンプPOA3000は定格出力180W/チャンネルの高効率A級アンプである。スイッチング歪を発生しないA級アンプ動作であるが、その無信号時に最大となる電力ロスを独自の方式で改善を計り、高効率としたものだ。パワートランジスターのアイドリング電流を入力信号に応じてコントロールするもので、動作としては、きわめて合理的なA級アンプである。最大出力時には純A級アンプと同じ電力ロスだが、無信号時のロスはゼロとなるようになっているので、変動の大きい音楽の出力状態においては、大変合理的なパワーロスとなる。アイドリング時にも若干の固定バイアス電流を流し、バイアス電流を常に信号電流より先行させるようにコントロールして、トランジスターのカットオフを生じさせないというものだ。1000VA容量の大型トロイダル電源トランスと10000μFの大容量コンデンサーの電源とあるがこのトランスのLチャンネル/Rチャンネルは別巻で前段にはEI形のトランスを持っている。大型ピークメーターをフロントパネルの顔としたデザインは特に新味のあるものとはいえないが、その作り、材質の高さから、高級アンプにふさわしいイメージを生んでいる。
POA3000の音質
 POA3000は低域の豊かで力感溢れるパワーアンプで、PRA2000との組合せにより、きわめて優れたバランスのよい品位の高い音質が聴かれた。透明な空間のプレゼンス、リアルな音像の質感は自然で見事だ。ヴァイオリンの音色は精緻で、基音と倍音のバランスが美しく保たれる。ピアノの粒立ちも明快で、輝かしい質感の再現がよかった。演奏の個性がよく生かされ、私が理解している各レコードの個性的音色は違和感なく再現されたと思う。ハイパワー・ドライブも安定し、ジャズやフュージョンの再生は迫力充分だし、小レベルでの繊細感も不満がなかった。
 MCヘッドアンプは、やや細身になるが、SN比、質感は大変よい。

テストを終えて

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 前号に引き続き、セパレートアンプを試聴した。セパレートアンプ全体にいえることであるが、パワーアンプに優れた製品が多いのに比較して、コントロルアンプが劣るという傾向は相変らずであった。今回はコントロルとパワーがペアで開発されたものを7種類、単独のものを、コントロールアンプ1機種とパワーアンプ10機種の試聴であった。このように、数の上でも、パワーアンプに対して、コントロールアンプは少ない。ペアのものは、その組合せで試聴し、単独のものは、リファレンスにコントロールアンプはマッキントッシュのC29、パワーアンプにSUMOの〝ザ・パワー〟を私は使った。ステレオサウンド誌の試聴室において前回と同様のプログラムソースを使って試聴したが、実際には、他の機会に、これらの製品を試聴した時の体験も折りまぜてリポートする形となったと思う。特にペアのものについては、コントロールとパワーの組合せを変えることによって、評価が変ることもあり得るので、本当は、ありとあらゆる組合せをやってみて評価を決めることが、セパレートアンプについては必要かもしれない。しかし、限られた時間ではとても無理な作業なので、一応、こういう形をとったことをご了承願いたい。ここで、そうした別の機会に試聴した体験を少々書き加えることによって、私の短い試聴メモの補足とさせていただこうと思う。
 面白いことに、ペアで開発された製品のほとんどが、その組合せをもって最高としないことである。これが、セパレートアンプの面白さと意味合いの一つであるともいえるだろう。デンオンのPRA2000とPOA3000、パイオニアのC−Z1とM−Z1はよく組み合わされた例といえるが、それでも、私の体験だと、POA3000はマッキントッシュのC29で鳴らしたほうがずっといいし、C−Z1はSUMOの〝ザ・パワー〟で鳴らすと、また格別な音を聴かせてくれる。もちろん、PRA2000はいいコントロールアンプだし、M−Z1は抜群のパワーアンプで、これらには、きっと、別のベストな組合せをさがすことが出来るだろ。オンキョーのP306というコントロールアンプも、〝ザ・パワー〟とつないで鳴らした時に大変素晴らしく、本来、M506とのペアでのサーボ動作まで考えて開発されたものでありながら、別の使い方で、さらに生きるということがおこり得るのである。
 今回の試聴でびっくりするほどよかったのがマッキントッシュC29とオースチンのTVA1の組合せであった。パワーこそ70W+70Wと大きいほうではないが、その音の充実感と豊かなニュアンスの再現は、近来稀な体験であったことをつけ加えておきたい。スレッショルドの〝ステイシス1〟というアンプの美しい音に惚れ込んだけれど、このアンプを鳴らすには、どうやら、C29以外に、より適したコントロールアンプがありそうな気がしたのである。まだ試みていないから、なんともいえないが、〝ステイシス1〟のもつ、どちらかというと贅肉がなく、きりっと締って繊細に切れ込む音像の見事な再現はC29とは異質なところがあると感じるからだ。しかし、こればかりは、実際に音を出してみなければ解らないことなのだからオーディオは面白く厄介だ。
 アンプの特性は、まさに、桁違いといってよいほど向上しながら、このように、音の量感や色合いに差があって、音楽を異なった表情で聴かせるということは、今さらながら興味深いことだと、今回の試聴でも感じた次第である。

ラックス C-5000A, M-4000A

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 独自のデュオβ回路と、新しい方向性を示したパネルフェイスに特長があるラックスのニューラックスマンシリーズはプリメインアンプL58Aが最初の製品であるが、今回発売されたコントロールアンプC5000AとパワーアンプM4000Aは、このシリーズの最高に位置づけられるほか、ラックスのトップランクモデルでもある。
 C5000Aは、L58Aと同じデザインのパネルフェイスをもつコントロールアンプである。
 基本的な設計ポリシーは、高NFBアンプの問題点としてクローズアップされたTIM歪を軽減することにある。このため、オーディオアンプの基本に戻り、NFBをかける以前のアンプの裸特性を改善し、これに最適量のNFBを僅かにかけ、動特性および静特性を向上させようという構想に基づいて、デュオβサーキットを採用している。
 回路面の主な特長は、イコライザー段とフラットアンプ段を同じ回路構成とし、
入力段にはFET4石のカスコード入力ブートストラップ回路を使用、トランジスターによる動抵抗回路や定電流回路を組み合わせて裸特性の向上を図る。出力段にはトランジスター4石によるSEPP回路を採用し、出力インピーダンスを極力低く抑えていることにある。
 コンストラクション面では、最近の技術的傾向を反映して、アンプ基板に近接するシールド板、シャーシーなどの金属類を排除。静電的ノイズには抵抗体シートを木箱に貼って対処するなどのほかに、電源部を含めた左右チャンネルの分離、配線の単純化、最短距離化のためすべてのスイッチ類が直接基板に取付けられ、この基板を縦位置に取付けているため、独特のパネルフェイスとなって現れている。使用部品には音質の優れたチッ化タンタル抵抗やコンデンサーを使用し、ノンポーラコンデンサーのオーディオ的なポラリティまでも検討するなど、音質を重視した設計となっている。
 M4000Aは、従来のM4000系の筐体に高域特性が優れ、クロスオーバー歪やスイッチング歪の少ないパワーMOS−FETを使用し、多量のバイアス電流と高速ドライバー回路を組み合わせて〝ノッチレスAクラス〟動作方式とした出力180W十180Wのパワーアンプである。
 回路的には、裸特性の優れた回路に少量のNFBとDCサーボ回路を組み合わせた独自のデュオβサーキット使用で、左右独立電源、音質のよい15、000μF×4の電解コンデンサーとフィルムコンデンサーをパラレルに使用したことなどが特長である。入力端子は金メッキのRCAピンプラグ、出力端子はユニークな使用法のキャノンコネクターを採用している。

サンスイ SP-511

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 久しぶりのブックシェルフ型の新製品である。今回新発売されたシステムは、ともに32cmウーファーベースの製品だがSP301が2ウェイ構成、SP511が3ウェイ構成で、オールコーン型ユニット使用である点が特長である。
 SP511は直径120mmのフェライト磁石採用で、共振モードを抑えた新開発ダイキャストフレーム使用のウーファーと、直径85mmフェライト磁石採用の13・2mm口径のスコーカー、R付ダイキャストフレーム採用の小口径3・6cmトゥイーターを組み合わせたシステム。
 バッフル面のユニット配置は、音像定位が明確な左右対称型で、ウーファー取付部とスコーカー、トゥイーター取付部を分離構造とし音響的干渉を避けたセパレートバッフル採用。ネットワークは分散配置型で、背面取付のアッテネータ一に代表される配線の短縮化、合理化が追求されたJBL系のノウハウを導入した新タイプである。SP511は、力強く豊かで反応が速い低域が最大の特長。エネルギー感のある中域、ストレートな高域は、コーン型独得の魅力だ。

スレッショルド STASIS 1

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 キメの細かい、繊細なテクスチュアーを美しく再現して聴かせる品位の高いアンプだ。ヴァイオリンの響きの可憐な風情が、このアンプで聴いた時だけ印象に残った。透明感と解像力の高い音といってしまえばそれまでだが、加えて、本機には感覚の冴えがある。

オンキョー Monitor 100

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 瞬間的最大入力1500Wという驚異的なダイナミックレンジ、高域は40kHzまでフラットという広帯域特性を備え、〝音楽再生のベースになるもの〟という雄大なスケールの構想に基づいて開発された新製品でありモニターの名称はプロ用モニターの意味ではなく、音楽再生の指標、音楽を愉しむためのものという意味での名称とのことである。
 32cmウーファーは耐熱特性が優れ、連続最大入力150W、直径180mmの大型磁石採用。独自の回転抄造コーンは、補強リングと放熱効果を考慮したダイキャストキャップ付。スコーカーは直径6・5cmチタンドームと10cmカーボンコーンの複合型で、直径65mmのボイスコイル、140mmの大型磁石採用の広帯域型。トゥィーターは直径2・5cmのチタンドーム型で、ギャップ内には磁束集中と放熱効果をもつ磁性流体の注入が特長である。
 ネットワークは、リスニングエリア理論に基づく独自の解析により、ユニットと共に今回のテーマの一つであるリスニングエリア拡大を可能とした設計。雄大な低域がベースのくつろいだ音だ。

ビクター MC-101E

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 針先位置に近接して超小型のプリンテッドコイルを取付けた独自のダイレクトカップル方式MC型MC1、MC2に続く、同じ発電方式で高出力型とした新製品である。高出力化のため、従来のマイクロコイルと同質量で3層構造とした多層化コイルは、一層ごとの巻数がMC1の2倍以上あり、パターンはLSIより細かい。多層化の副次的なメリットで適度な内部損失が持たせられるため、一層型では必要な制動用シリコングリスが不要である。リードワイヤーもマイクロコイル同様にフィルム面にリード線を形成し、軽量化と信頼性を向上している。磁気回路も改良が加えられ、コイルパターンの変更とともに、1・3mVの高出力を実現している。
 サラリとした淡白なキャラクターで音色は明るく軽く、細部をクリアーに引出す。帯域はナチュラルに伸びダイレクトにMCの魅力が聴けるのが特長。

マッキントッシュ C29

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「第2回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント17機種の紹介」より

 マッキントッシュの代表的なコントロールアンプが、このC29である。現在同社は、この他にC32とC27という合計3機種のコントロールアンプをラインアップしているが、価格的に見ると、このC29は、その中間に位置するものだ。しかし、C32は、エキスパンダーなどの附属機能をもったり、帯域分割型のトーンコントロールなどにコストがかかっており、本質的なプリアンプ、つまり、イクォライザーアンプとフラットアンプ部に関しては格差のないものといってよい。同社によれば、C32はまったく新しい製品の出現であり、C29が従来のC28の発展したものという。
 C29は、現在のテクノロジーでリファインした、マッキントッシュの伝統的製品といってよく、使用パーツや回路技術は最新の技術水準をもったものである。機能はきわめてオーソドックスなもので、MCヘッドアンプも持っていない。例によって、中味の詳細は発表されていないから、特性のデータ競走をする姿勢は全くもってない。しかし、その音質の素晴らしさ、信頼性の高さ、作りの入念さ、品位の高い製品としての質感は、まさに高級機たる風格と魅力に溢れているといってよい。新シリーズになって、デザインに若干の変更を受け、両サイドパネルのエッジは、従来の峰型から、すっきりとした直線型に変った。そのため、以前のC28などからすると、やや小型に見えるようになり、さっぱりした印象になっている。人によっては、従来のデザインを好む人もいるようだが、実際使っていると、このほうが美しいと思えるようになる。赤、緑、ゴールドのイルミネーションパネルは、全く同じ精度と仕上げの高さをもつものだし、スイッチ類の感触と信頼性は明らかに向上している。入力切替えなどは全くノイズレスでわずかなタイムディレイのかけられたスムースなものになっている。欠点といえば、わずかに出る電源オン・オフのクリックノイズ(現在は改良された)と、このプッシュボタンの色合いの品位に欠けることぐらいだ。
 なによりも、その明晰で豊潤な音質は、あらゆるコントロールアンプの中で傑出したものであろう。旧C28と比較すると、明らかにワイドレンジとなり、解像力が上っている。それでいて、決して冷たい感触や、ギラギラとした機械的肌ざわりを感じさせず、あくまで、音楽の人肌への共感の情緒を失うことがない。マッキントッシュが常にもっている重厚な安定感は、ここまでワイドレンジ化したC29においても、いささかも失われていないのである。最近のアンプのもっている、冷徹さや、人工的な音の輝きなどとは、次元を異にするヒューマンなサウンドである。音像の立体的な再現、そのアタックの向う側まで見通せるような透明感、ホールのプレゼンスを生き生きと伝える空間感のデリカシーも見事で、オーソドックスなステレオフォニック・レコーディングならば、音はまさに空間に浮遊しながら、音源の楽器はぴたりとステージの上に定まっている。
 レコード音楽を楽しむものにとって、このアンプをコントロールして音楽を演奏する醍醐味を味わうことは至福であろう。決して、コントロールは繁雑ではない。マニアックな知識を必要とするものでもない。むしろ、誰にでも扱える簡易なコントローラーである。一例として、そのローカットフィルターとハイカットフィルターは、一つのスイッチにまとめられ同時におこなうように簡略化されている。人によっては、この簡略化を嫌うかもしれない。しかし、実際使ってみると、こんなに実用的で効果の上からも妥当なものはない。使いもしない複雑なフィルターがついているより、はるかに親切で効果は大きいのである。こうした実用的な一般性をもちながら、高い品位を失わせないところにマッキントッシュの大人の風格がある。2台のセパレート・モノ・プリアンプをコントロールすることに喜びを感じる人とは無縁の完成品なのである。いい意味でメーカー製らしいバランスのとれた製品といえるだろう。クォリティと生産性の調和という難問を見事に克服している専門メーカーらしい貴重な存在といえるだろう。

オーディオテクニカ AT-150E/G

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新しくモデルナンバーを3桁としたAT100シリーズは、カッターヘッドと相似的な発電方式を採用した独自のVM型で世界的に知られるオーディオテクニカの第2世代を意味する新シリーズだ。AT150E/Gは、4機種あるAT100シリーズのトップモデルである。
 新シリーズは、発電系に継ぎ目のない一体構造のラミネートコアに、横方向からボビンを挿入し、磁気ギャップをくぐらせてコイルを巻くパラトロイダル発電系を採用している。この方式は磁気損失が少なく、AT25のトロイダル発電系に近い発電効率が得られ、周波数特性上で数kHz付近の凹みがなく、インピーダンスも従来型より一段と低い。
 カンチレバーはベリリウムパイプ使用。アルミダイキャストボディとMS9マグネシウムヘッドシェル付である。
 従来より一段と低レベルが鮮明で音色は明るくトレース能力が向上した。

ダイヤトーン DS-32B

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来では、大口径ウーファー採用の2ウェイ構成システムで製品ラインアップを形成していた価格帯に、ダイヤトーンが初めて登場させた、3ウェイ構成かつ、エンクロージュアにバスレフ型を採用している点が特長の新製品である。
 25cmウーファーは、独自の NFリング採用の低歪磁気回路使用で、コーンはプレス圧を下げたノンプレス型に近く、ボイスコイルは特殊合成ゴムダンプリング付で、全体に内部損失を増加した設計。10cmコーン型スコーカーは、カテリーナカーブにコルゲーションを配した整合共振型とし、ドライブレス法で造ったコーンと横ゆれに強いV字型エッジ採用。4cmセミドーム型トゥイーターは、小口径コーン型に円錐型チタンセンタードーム採用である。エンクロージュアは、モーダル解析法により100Hz以下で振動発生が少ない木製ダクト付バスレフ型で、従来より奥行きを深くした新設計である
 ナチュラルな帯域バランスと明るく明快な、本来のダイヤトーンサウンドをもつ優れた製品だ。音の粒子は従来より滑らかで反応も速く、正統派の音。

グランツ GMC-55

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ユニークなピボット型支持方式を採用したMF型カートリッジで知られるグランツ最初のMC型である。発電方式は、巻枠に磁性体を使うタイプに比べ等価質量が小さい純粋MC型で、フラットな周波数特性、優れたクロストーク特性が得られる。磁気回路は、サマリウムコバルト磁石と磁気飽和値が高いパーメンジュールのヨーク採用で、独自の磁束集中用ヨークを採用しているため、インピーダンス3Ωの純粋MC型で0・1mVの高出力を得ている点に注目したい。
 振動系のサスペンションは、磁束集中用ヨークに特殊ボールを固定し、ボールの球心が振動支点となる独自の方式。
 音色は、明るく穏やかなタイプで、柔らかく豊かな低域をベースとした、安定感のある滑らかで大人っぼい音が特長。しっとりとした表現が印象強い。

デンオン SC-306

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 穏やかな表情と、これにマッチしたデザインが巧みなバランスを保った優れたスピーカーシステムSC106を基本に一段とパーサタイルな現代的サウンドにリフレッシュした新製品である。
 使用ユニットは、全てデンマークのピアレス社製で、ウーファー口径がSC106同様に、SCシリーズでは例外的な30cm型であるのが特長。スコーカーは、一見してピアレスユニットとわかる10cmコーン型。トゥイーターは、5cmコーン型のパラレル駆動である。バッフル板への取付方法は、高音と低音用が独自のアルミダイキャストプレートとリングでフレーム全体をバッフル板にサンドイッチ状に締付ける新マウント法を採用し、左右対称型のユニット配置採用で、音場感的、音像定位的なフィデリティが高い。
 音色は、 SC106に比べ、一段と明るく滑らかで、細やかな音である。各ユニットのつながりもスムーズで調和感があり、とくにボーカルの発声や発音のナチュラルさに、海外製ユニット採用のメリットが如実に感じられる。

ダイナベクター DV/KARAT DIAMOND

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のカートリッジ関係の最大の話題は、宝石カンチレバーの開発があげられる。カラットシリーズは、宝石カンチレバー採用の最初の製品として注目される。カラット・ダイアモンドは、ダイアモンドカンチレバー採用の空芯型MCカートリッジで、シリーズ製品カラットはルビーカンチレバー採用である。
 カンチレバーは全長2・5mmと従来の6〜7mmに比べ短かく、通常の構造の発電方式では考えられない寸法である。超高硬度のカンチレバーの採用により、針先の振動はカンチレバー中で周波数によって速度が変化する分散現象が格段に低減され、正確に電気信号に変換されるとのことで、高域共振は70kHzと高い。コイル巻粋は1mm角と小さく、通常のダンパーを使わずサスペンションワイヤーで支持され、ゴムの温度変化は皆無である。
 音色は明るく軽いタイプで反応も速く、鮮明に細部のニュアンスを引出す。