テストを終えて

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 前号に引き続き、セパレートアンプを試聴した。セパレートアンプ全体にいえることであるが、パワーアンプに優れた製品が多いのに比較して、コントロルアンプが劣るという傾向は相変らずであった。今回はコントロルとパワーがペアで開発されたものを7種類、単独のものを、コントロールアンプ1機種とパワーアンプ10機種の試聴であった。このように、数の上でも、パワーアンプに対して、コントロールアンプは少ない。ペアのものは、その組合せで試聴し、単独のものは、リファレンスにコントロールアンプはマッキントッシュのC29、パワーアンプにSUMOの〝ザ・パワー〟を私は使った。ステレオサウンド誌の試聴室において前回と同様のプログラムソースを使って試聴したが、実際には、他の機会に、これらの製品を試聴した時の体験も折りまぜてリポートする形となったと思う。特にペアのものについては、コントロールとパワーの組合せを変えることによって、評価が変ることもあり得るので、本当は、ありとあらゆる組合せをやってみて評価を決めることが、セパレートアンプについては必要かもしれない。しかし、限られた時間ではとても無理な作業なので、一応、こういう形をとったことをご了承願いたい。ここで、そうした別の機会に試聴した体験を少々書き加えることによって、私の短い試聴メモの補足とさせていただこうと思う。
 面白いことに、ペアで開発された製品のほとんどが、その組合せをもって最高としないことである。これが、セパレートアンプの面白さと意味合いの一つであるともいえるだろう。デンオンのPRA2000とPOA3000、パイオニアのC−Z1とM−Z1はよく組み合わされた例といえるが、それでも、私の体験だと、POA3000はマッキントッシュのC29で鳴らしたほうがずっといいし、C−Z1はSUMOの〝ザ・パワー〟で鳴らすと、また格別な音を聴かせてくれる。もちろん、PRA2000はいいコントロールアンプだし、M−Z1は抜群のパワーアンプで、これらには、きっと、別のベストな組合せをさがすことが出来るだろ。オンキョーのP306というコントロールアンプも、〝ザ・パワー〟とつないで鳴らした時に大変素晴らしく、本来、M506とのペアでのサーボ動作まで考えて開発されたものでありながら、別の使い方で、さらに生きるということがおこり得るのである。
 今回の試聴でびっくりするほどよかったのがマッキントッシュC29とオースチンのTVA1の組合せであった。パワーこそ70W+70Wと大きいほうではないが、その音の充実感と豊かなニュアンスの再現は、近来稀な体験であったことをつけ加えておきたい。スレッショルドの〝ステイシス1〟というアンプの美しい音に惚れ込んだけれど、このアンプを鳴らすには、どうやら、C29以外に、より適したコントロールアンプがありそうな気がしたのである。まだ試みていないから、なんともいえないが、〝ステイシス1〟のもつ、どちらかというと贅肉がなく、きりっと締って繊細に切れ込む音像の見事な再現はC29とは異質なところがあると感じるからだ。しかし、こればかりは、実際に音を出してみなければ解らないことなのだからオーディオは面白く厄介だ。
 アンプの特性は、まさに、桁違いといってよいほど向上しながら、このように、音の量感や色合いに差があって、音楽を異なった表情で聴かせるということは、今さらながら興味深いことだと、今回の試聴でも感じた次第である。

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