井上卓也
ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
昨今、急激に平面振動板採用のスピーカーシステムがクローズアップされ各社とも競って製品化を行なっているが、使用ユニットを全て平面振動板で統一したスピーカーシステムを最初に開発したのは、昨年の無限大バッフルを提としたLo−Dの巨大システムHS1000である。今年になって同一構想のHS5000が開発され、これと同時に一般的なエンクロージュア採用のシステムとして発表されたのが、このHS90Fである。
HS90Fは、メタルコーンユニットの開発で蓄積したノウハウに、理論的追求を加味して完成した平面振動板ユニットが結びつき製品化されたモデルだ。
30cmウーファーはギャザードエッジ、ギャザードダンパー採用。5cmスコーカーはギャザードエッジ付で、ピストン振動帯域が広く指向性に優れる。2cmトゥイーターはスコーカーと同構造で各ユニットは全て発泡樹脂充てん型である。
エンクロージュアは70ℓの容積をもつバスレフ型で、5層構造のバッフル板を採用し箱鳴りを抑えた構造である。とかく問題が生じやすいネットワークは、基板に70μ厚の銅箔を使ったガラスエポキシ板、音質を吟味したコンデンサー、コイルを使用した音質重視設計である。
HS90Fはフラットに伸びたワイドレンジ型の音で、粒子が細かく細部を鮮明に引き出して端正に聴かせる。
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