菅野沖彦
オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より
オンキョーはスピーカー専門メーカーとして誕生した会社である。今は総合的にオーディオ製品を手がけているが、第2次大戦後間もなくの頃、オンキョーのスピーカーユニットに憧れた記憶がある。そうした体質を今でもオンキョーはもっていて、スピーカーユニットの生産量は世界で一、二を争うはずである。そのオンキョーが、売れ筋のコンポーネントシステムだけを作ることに飽き足らず、研究所レベルの仕事として取り組み開発したのが、この〝GS1〟である。1984年発売だからすでに7年を経過しているが、先頃フランスのジョセフ・レオン賞を受賞した。この賞はフランスのハイファイ協会会長によって主催されるオーディオ賞の一つだそうで、GS1の優れた技術に与えられた。このスピーカーシステムは、2ウェイ3ユニット構成のオールホーン型で、スピーカー研究の歴史に記録されるべき銘器であると私も思う。特にコンプレッションドライバーに必要不可欠のホーンの設計製造技術は、従来のホーンの解析では果せなかった新しい視点と成果を満たらせたものである。製品としては使い勝手の点などでむずかしさを残しているが、オプティマム・コントロールを条件としたこのシステムの音の純度の高さは類例のないものといってよいだろう。ワイドレンジ化や高能率化が犠牲になっていることは認めざるを得ないものだが、それでさえ、これだけ純度の高い音が得られるなら、不満にはならないレベルは達成している。いかにも日本製品らしい細部の入念な解析技術が素晴らしいのである。そのために、音楽の情緒を重視するとあまりにストレートであるから、よほど録音がよくないと不満が生じるかもしれない。しかし作りの緻密さといい、強い信念に基づく存在感の大きさといい、今後も長く存在し続け、さらにリファインされて常に同社のフラグシップモデルであり続けて欲しい魅力ある作品だと思うのである。
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