アクースティックラボ Bolero Grande, Bolero Piccolo

井上卓也

ステレオサウンド 100号(1991年9月発行)
「注目の新製品を聴く」より

 スイスのアクースティックラボのスピーカーシステムは、昨年に輸入されたボレロがわが国における第一弾製品であったが、発売されるとともに、その精緻な仕上げと美しく機能的なデザインをはじめ、透明感のある美しく、音楽的に優れた音により、一躍注目を集めたことは記憶に新しい。今回、そのボレロのジュニアモデルとして開発された、小型2ウェイシステム、ボレロピッコロと、ボレロの高級モデルに当たり、従来からヨーロッパでは発売されていたスリムなトールボーイ型フロアーシステム、ボレログランデに改良を加えた新ボレログランデの2モデルが新たに輸入販売されることになった。
 ボレロピッコロは、開発の初期構想では、エンクロージュアの仕上げを簡略化した、ごくふつうの小型ブックシェルフ型システムであったが、輸入元のアブサートロンの要請により、エンクロージュア竹上げはボレロと同じくピアノブラックと、非常にユニークで、インテリアとしても大変に興味深いエラブルブルーの2種類の塗装仕上げ、そしてウォールナットとオークのツキ板仕上げの計4種類のヴァリエーションモデルが用意されることになった。これらすべてのモデルは、視覚的にも楽しいばかりでなく、音響的にも優れた音質をもつシステムとして完成されている。
 ユニット構成は、12・5cmウーファーと1・9cmポリアミドドーム型の2ウェイ方式であり、エンクロージュアは、ボレロ同様に、バスレフ型を採用しているが、ポート形状は、ボレロがエンクロージュア底板を使った横幅の広いスリット型であったが、本機では一般的な紙パイプを使うコンベンショナルな設計に変っている。
 低域ユニットは、ボレロと同じく、フランスのフォーカル社製で、特徴のあるコーン表面のドープ材の処理方法で、一見してフォーカル製と識別できるユニットである。ただし、ボレロではダブルボイスコイルを使い、小型システムながら豊かな低域再生を可能とする、インフィニティのワトキンスボイスコイルに相当する設計であったが、本機は一般的なボイスコイルを採用したタイプとなっている。
 高域ユニットは、デンマークのユニットメーカーとして定評の高いヴィーファ社製ポリアミドドーム型で、磁気回路のギャップは、磁性流体で満たされ、ダンピングと冷却を兼ねた欧州系ユニットで常用される設計である。なお、磁気回路は非防磁型であり、スピーカー端子は2端子型の標準タイプである。
 ボレログランデは、既発売のボレロに、サブウーファーを加えた設計のスリムなトールボーイ型のフロアー型システムである。エンクロージュアは、ボレロとは異なった円形開口部をもつバスレフ型であるが、内部構造は、中間に隔壁を設け2分割されており、ミッドバスユニットと思われる中域ユニットとサブウーファーは、それぞれに専用の独立したキャビティをもっている。
 エンクロージュア材料は、欧州系スピーカーシステムで常用のMDF(ミディアム・デンシティ・ファイバー)が採用されているが、この材料は、微粒子状に砕いた木粉を固めて作ったもので、剛性はチップボードに比べて高いが、振動率としては共振のQが高く、エンクロージュアに採用する場合には、この材料独自の使いこなしが必要と思われ、各社各様の手法を見ることができ大変に興味深いものである。なお、エンクロージュア仕上げは、ボレロ、ボレロピッコロと同様に、4種類が選択可能であるが、ちなみにヨーロッパ仕様にはより豊富なヴァリエーションモデルがある。
 使用ユニットは、ボレロと同じく、すべてフランスのフォーカル社製で、低域と中域は同じネオフレックスコーンと米デュポン社で開発され、耐熱性材料として定評の高いノーメックスをボイスコイルボビンとし、これに、2組のボイスコイルを巻いたボレロ用ユニットと同様なコーン型ユニットである。旧ボレログランデは低域ユニットと中域ユニットには異なった仕様のユニットが採用されていた。
 高域ユニットは、表面をコーティング材で処理をしたチタン製逆ドーム型で、このユニットもフォーカル社を代表する個性的な音質の優れたユニットである。
 グランデは、高級モデルであるだけに使用部品は厳選されており、ユニットもペア選別で管理され、ステレオペアとして左右が揃うようにコントロールされている。
 ボレロピッコロは、繊細で分解能が高く爽やかで反応の速い音だ。低音感も十分にあり、程よく可愛く吹き抜けるような伸びやかな音は質的にも高く、この音は聴いていて実に楽しい。
 グランデは、さすがに大人の音で、ゆったりと豊かに響き溶け合う、プレゼンスの良さが見事だ。聴き手を引き込むような一種ソフィスティケートされた音は実に魅力的といえる。

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