Category Archives: 筆者 - Page 144

デンオン POA-1001

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 これより前に管球式のPOA1000Bが市販されているが、現代のパワーアンプとしてはこの1001の方が私には好ましい。モノアンプ2台を一つにまとめた作り方は、マランツの名作♯15、16の手法がヒントだろうが、イミテーションの域を脱して独自の完成度をみせ、安心して奨められる佳作。ペアとなるプリアンプPRA1001と組み合わせると、PMA700Zの良さを現代流にグレイドアップしたクリアーな音になる。

マランツ P3600

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 モデル3600にラックマウントパネルのついたスペシャル・バージョンがこれだ。プリアンプとしては、最高級品にランクされるが、現時点からすれば、MC用ヘッドアンプがほしいところ。マランツ伝統の回路設計は、この製品にも生きていることは勿論、基本性能の優れたもので、音質は暖かく、しかもさわやかな印書を受ける品位の高いもの。軽やかに音像が立ち上る様子は、7T以来のマランツの特長だ。

オーレックス SY-77

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 最近のオーレックスの一連のアンプは、デザイン面でも非常にユニークで意欲的だが、SY77は、内容も含めてかなり本格的に練り上げられた秀作といえる。ただしこの新しいセパレートシリーズでは、プリアンプの方が出来がいい。適当な時間を鳴らしこまないと本領を発揮しにくいタイプだが、それにしてももう少し踏み込みの深い、艶のある音になれば一層完成度が高められると思う。

ラックス MB3045

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 SQ38FD/IIのような耳当りのよい音ではなく、球としてはやや硬目の、ワイドレンジ型の音質といえる。したがって、管球ゆえの解像力の甘さという弱点はあまり感じさせずに、しかし弦やヴォーカルに球ならではの滑らかな暖かみを加えて鳴らす。CL30や32で鳴らすのが常識的かもしれないが、トランジスターのワイドレンジのプリアンプを組み合わせてみると、意外にフレッシュで充実した音が楽しめる。

スキャンダイナ A25MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 デンマークのスキャンダイナA25MKIIのオリジナルは、ダイナコA25としてヒットした、2ウェイ・ブックシェルフ・システムである。ソフトドーム・トゥイーターを使って成功したシステムの元祖のような製品だが、MKIIになって、未だ、その陰は薄れることがない。自然で、よく楽器の特長を生かす再生音、音の溶け合いがよく、ハーモニーが美しく生きるシステムとして高く評価できるものだ。

オーレックス SY-77

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 フラットなコントロールアンプの類型といってよく、オリジナリティはあまりない。コントロール機能は必要なものは装備されているから、別にグラフィックイクォライザーやコントローラーは必ずしも必要としない。よく練られた製品で、音質は大変美しいバランスと肌ざわりのいい感触を持っている。音像の主体感や、プレゼンスのデリケートな再現が、かなり満足できる水準にある。優れた国産プリアンプの一つにあげたい。

トリオ L-07C

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 はじめて見たとき、この外観は試作品かと思ったほどで、デザインに関しては評価以前の論外といいたいが、その内容と音質は本格的な高級プリアンプで、ことに鳴らし込むにつれて音のデリカシーにいっそうの艶を加えながらダイナミックにステレオのプレゼンスを展開する音質の良さは特筆ものだ。それだけに、このデザインは一日も早く何とかしてもらいたい。いくら音が抜群でも、この形では目の前に置くだけで不愉快だ。

ビクター M-3030

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 P3030とペアに企画にされた製品だが、デザイン面では共通性がないから、単体パワーアンプとして評価した方がよさそうで、出来栄えとしては、プリアンプよりも音の品位という点でやや上まわるように思う。というよりJM−S7のローコスト型改良版と考えた方がいいかと思える買徳品。音の輪郭をくっきりと鮮明にくまどるタイプで、やや華やかな音質であることを頭に置いて組合せをくふうしたい。

サンスイ SP-L100

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 サンスイのスピーカー・シリーズ中、最も新しいもので、ブックシェルフ型としてまとめられてはいるが、本格的な、品位の高い再生音が得られる。少々、武骨に感じられ、デザイン的美しさに欠けるのが残念で、これだけの再生音なら、もっと、一つの作品として、仕上げにもセンスと努力がほしかった。

QUAD 33

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーディオの本質をふまえた確かな製品となると、英国のQUADは絶対にかかせない存在だろう。きわめて寡作なこの会社の唯一のプリアンプである33は、ソリッドステート化以来ずっとロングセラーを続けているモデルで、その卓抜なデザインと完成度の高い音色でかけがえがない。最先端をゆくような音では決してないのだが、同社のパワーアンプと組み合わせて最良の結果を得るのは、結局のところ、この33に行きついてしまう。

トリオ L-07C

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 この製品は、ローインピーダンスの出力を長く延長し、スピーカーに直結に近い状態でパワーアンプを使うというコンセプションにより開発されたもので、大変練りに練って設計された力作として高く評価したい。音質は、他のパワーアンプと接続して使っても、レコードをありのまま再生するといったフィデリティの高さを感じる。その反面、少々趣に乏しくニュアンス不足でもある。しかし、明らかに水準を上廻る優秀製品だ。

ヤマハ NS-451

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 低価格スピーカーとして、実に巧みな音のまとめられ方をしたシステムである。本当は、こういうスピーカーをつくるのは、高級スピーカーに匹敵する難しさがある。ヤマハらしい、音のノウハウの蓄積がよく出た製品といえる。よくコントロールされた、それらしさの再生では実に優秀なスピーカーシステムだ。音色的に、アメリカ製のスピーカーのような力強さがあって、ジャズの積極的な表現がよく生きる。

GAS Ampzilla II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 一聴して重量感と暖かみを感じさせる腰の坐りのいい、素晴らしく安定感のある音質が特長。総体に音の芯をしっかり鳴らすため、ことに高音域でも線が細くなったり弱々しくなったりせずに、悠々たる落ち着きをみせる。コンストラクションは飾り気を排したいかにも実質本位という感じで、機能に徹した作り方。

オンキョー Integra P-303

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トーンコントロールやフィルター類はもちろんのこと、切換スイッチ類も最少限にとどめて、信号回路を整理して音質の劣化を最小にとどめたというだけあって、透明で濁りのない、いわゆるニューマークII以来確立した、しなやかに音楽を生かすオンキョー独特の魅力ある音を聴かせる。しかし欲をいえば、トーンコントロールやスイッチ類を省略しないでもこの音が得られるように、いっそうの追求をして欲しいと言いたい。

アルテック A5

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アメリカのアルテックの代表的製品。ユニークな、フロントホーンをもったエンクロージュアには38cm口径ウーファーがおさめられ、上を500Hz以上をホーン・ドライバーが受持つ。ユニットは総てむき出しのまま。本来は、大劇場用の強力システムだが、家庭手も、優れた再生音が得られる。独特な風格あるもの。

マランツ Model 510M

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 250W+250Wのパフォーマンスを、かなりコンパクトな寸法にまとめたマランツの第二世代のハイパワーアンプである。コンストラクションは、外観から受ける印象を完全に覆す見事さであり、電源部は、ハイパワーアンプらしい底力が感じられる。標準アンプ的に使えるマランツの伝統をもつ音は信頼度が高い。

デンオン SC-107

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 デンマーク・ピアレス社製のユニットを採用した、SC−104につぐ第2弾のシステムである。エンクロージュアのデザインはリファインされて明るく家具調となり、3ウェイ構成の低音と高音が同種ユニットの並列使用であることが目立つ点である。このシステムは、ハイファイ志向といった音ではなく、音楽を楽しむためにつくられた印象が好ましい。スケールが豊かで、落着いた音だが、かなり激しい音もこなせる実力がある。

ラックス 5M21

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 まったくのイメージチェンジをした、シンプルで機能的なデザインに装いを変えた、ラックスのラボラトリー・リファレンスシリーズのパワーアンプである。歪み感がない滑らかでナチュラルな音は、従来とは一線を画したダイナミックな表現を可能としているが、そこにラックスらしさが残っているのが好ましい。

サンスイ CA-2000

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 セパレート型アンプは、本来はコントロールアンプ、パワーアンプともに、完全に独立した存在であり、汎用性があるべきではあるが、実際には、ペアとなるべきそれぞれの組合せで最高のパフォーマンスを示すことのほうが好ましい。このモデルも、BA−2000とのペアで現代アンプらしさが発揮できる。

ロジャース LS3/5A

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 超小型の、ポータブル用モニターシステムで、英BBC放送のモニター用に採用されていることは、型番からも明らかである。本来の特長を活かすためには、低域をコントロールしてあるQUADの405パワーアンプなどがドライブ用に必要であり、しかも、1m以内の近接位置で聴かなければならない。ヘッドフォン的な聴き方だけに、組み合わせコンポーネントは高品質が要求され、さもなければ、見えるような臨場感は得られない。

ラックス 5C50

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ラックス新しいラボラトリー・リファレンスシリーズのコントロールアンプであり、シリーズの名称が示すように、最新の技術動向を反映して、アンプ系のDCアンプが全面的に採用されている点に特長がある。ペアとなるパワーアンプもDCアンプであるために、入力に直流分が混入しているとスピーカーを破壊しかねないため、完全な保護回路と表示ランプを備えているのは、実用上での大きな利点である。

AGI Model 511

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 パネルフェイスは流行の薄型ではないが、機能は単純化され、トーンコントロール、フィルターはもたない。増幅系は整然としたプリントボード上に配置され、視覚的にも美しく、見るからに現代アンプらしい応答性の速い音がしそうな雰囲気が感じられる。ともかく、ダイレクトなサウンドは大変に快適である。

ダイヤトーン DS-40C

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トールボーイ型のバスレフ・エンクロージュアに、30cmウーファーをベースとし、コーン型トゥイーターを組み合わせた、モニターシステム的な印象の製品である。ウーファーには、独得な低歪化のための磁気回路が使われ、トゥイーターコーンの中央に軽金属キャップが付いているあたりは、新しい製品らしいところで、DS−50Cの重厚さにくらべれば反応が速く、鮮明で伸びやかな音が、このシステムのフレッシュな魅力である。

ヤマハ CA-X11

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 CA−X1をベースとし、より上級モデルのCA−R1的な蛍光を採り入れて改良されたプリメインアンプである。機能面でも、より一段と充実し、性能面でも、ほぼ1ランク上の製品となっている。レスポンスがフラットで伸びやかとなり、音の粒子が細かく、より緻密になったため、普及価格の高級機といえる機種だ。

スキャンダイナ A-403

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 スピーカーシステムの中級機の価格帯では、一時のように海外製品の存在が目立たなくなっている。スキャンダイナのシステムも同じことで、トータルバランスが優れていることは認められても、魅力とは感じられなくなっている。これの解答とも思われるのがA403であり、構成が3ウェイ化されたことにより、中域のエネルギーが大幅に改善され、システムとしては飛躍的に向上した音となっている。注目したいシステムである。