既製スピーカーシステムをマルチアンプでドライブする(ヴァイタヴォックス CN191 Corner Horn)

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-1 マルチスピーカー・マルチアンプのすすめ(ステレオサウンド別冊・1977年秋発行)
「内外代表パーツ200機種によるマルチウェイ・システムプラン」より

 ヴァイタヴォックスCN191コーナーホーンシステムは、英国をふくめたヨーロッパ製品のなかで、コンシュマーユースのスピーカーシステムとしてはもっとも大型なフロアーシステムである。
 エンクロージュアにはクリプッシュKタイプといわれるフロントロードホーン型の一種が採用されている。フロントロードホーンでは、その名称のように、ウーファーコーンの前面の音だけをホーンを使って放射しているが、バックローディングホーン型では、ウーファーコーンの前面の音は直接放射され、後面の音がホーンを使って、低音の一部だけをホーン効果により補うタイプである点が異なる。このクリプッシュKタイプでは、ウーファー前面からの音が、特殊な形状に折り曲げられたホーンから一度エンクロージュア背面に導かれ、さらに部屋のコーナーを低音ホーンの延長として利用し、エンクロージュア両側の開口部から前面に放射される。
 クリプッシュKタイプホーンは、ホーン型エンクロージュアらしい、厚みがあり緻密な堂々とした低音が得られる大きなメリットがある。しかし、折曲げ型ホーンのためにウーファーコーンからの中音は減衰しやすく組み合わせる中音用や中音から高音用のスピーカーユニットには、十分に低い周波数から使用できるタイプが必要である。
 ウーファーは、CN191システム用に指定されているAK157、中音から高音用には、直径76・2mmという大型軽金属製ダイアフラムと16、000ガウスの磁束密度をもつドライバーユニットS2と、アルミ合金製のセクトラルホーンCN157を組み合わせ使用する。なお最近のCN157ホーンは、ホーンのカーブが設計変更されて改良されているようで、一段と音質面でのグレイドアップが期待できる。指定LC型ネットワークは、クロスオーバー周波数500Hzの典型的な12dB型NW500である。
 しーぁぬ191は、部屋の壁面を低音ホーンの一部として利用することが前提として設計されているために、強度が十分にある、レンガやコンクリートなどの壁が相応しい。そうでない場合には、少なくとも、30mm以上の厚さの良質な板で、エンクロージュア後側の壁と接する面に使う衝立をつくり使用することが望ましい。
 マルチアンプ化のプランは、CN191がトラディショナルな英国の音をもつことを考えれば、少なくとも、スピーカーとダイレクトに結合するパワーアンプには,英国系の製品を使用したい。ここでは、QUADの2機種のパワーアンプを選んでいるが、低音用の303Jは、モノーラル構成で、出力部分にインピーダンスマッチング用のトランスをもつ特長があり、適度に最低域がカットされるため、ホーン型ウーファーには好適である。コントロールアンプその他は、管球タイプで音色的なバランスを重視して選んである。

●スピーカーシステム
 ヴァイタヴォックス CN191 Corner Horn
●コントロールアンプ
 ウエスギ U-BROS-1
●エレクトロニック・クロスオーバー・ネットワーク
 ウエスギ U-BROS-2
●パワーアンプ
 低音域:QUAD 303J(×2)
 高音域:QUAD 303

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