瀬川冬樹
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
まず大掴みに言って、国産スピーカーの中では音のバランスはかなり良い方に属する。概して中〜高域を張りぎみに作る傾向のある国産の中で、たとえばオーケストラのトゥッティでも弦が金属的になるようなことがなく声部のバランスも悪くないし、キングズ・シンガーズのコーラスの、Fa、ra、ra……の声も、ハスキイになったり耳ざわりにやかましく張ったりするようなことがない。そういう意味で、かなり慎重に時間をかけて練り上げられた、真面目な作り方のスピーカーであることはわかる。ただ、音域全体に、ことに中域以下の低域にかけて、かなり重さが感じられ、たとえばベースの音も、ブンとかドンとかいうよなにことばで形容できるような鳴り方をする。この鈍さを除きたいと思って、置き方をいろいろくふうしてみた。興味あることに、ふつうはブロックなどの台に乗せる方が音の軽さが出てくる筈だが、このスピーカーはそうするとかえって、低域のこもりが耳につくようになる。床に直接のまま、背面を壁からかなり離し、トリオLS707のときのように壁面にウレタンフォームをいっぱいに置いて部屋をデッドに調整する方がいいことがわかった。また、カートリッジは455Eよりは4000DIII、アンプもCA2000の傾向の方が、音の重さが救われて、反応のよさや明るさがいくぶん増すと感じられた。
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