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パイオニア SA-100

岩崎千明

スイングジャーナル 3月号(1971年2月発行)
「SJ選定《新製品》試聴記」より

 パイオニアがついに、新シリーズのアンプを出した。待ちこがれた買手の要望と、メーカー側の満々たる自信とを重ね担っての新製品である。
 この新シリーズ・アンプは、パイオニア以外のメーカーにとっても、この上なく気になり存在を意識させられるに違いない。そういう点から言ってもこのアンプは最近になく話題の焦点であろう。というのも外でもない。最近アンプは、新製品といえば「全段直結方式」という画期的な新回路技術が全面的に採用されて、今までのアンプに比べてはっきりと性能向上がデータの上にも表われ、また、音の上でも素直な素質の良い音に、歪の少なさが確然と感じられるからである。これからのトランジスターアンプは、今や「全段直結方式」というのがこの道の通の常識にさえなりつつある。それを裏づけるかのように、このところ続いて発表される各メーカーの、この種の新型アンプは非常な好評で迎えられ新しいアンプの時代を築きつつあるといっても過言ではない。名門ソニーに続きティアック、ナショナル、オンキョーという意欲的なメーカーに一歩遅れをとって、トランジスターアンプの専門メーカー、トリオ、さらにサンスイとこの流れに乗っている中で、ひとりパイオニアは沈黙を守り続けた。
 しかし、時代は熟したり満を持して放ったのが、この新シリーズ・アンプなのである。その製品に接してさすがにパイオニアと改めて息をつかせたのがこのSA100であり、新シリーズ、ニューUAシリーズのアンプであった。
 まず音だ。パイオニアのアンプに私が常々感じているのは、いかにも大人向きの品のよいサウンドだ。これはステレオというよりも、ハイファイ界において、まさにその名通りの先駆者としてのキャリアと貫録とが、生み出し到達したサウンドであろう。歪の少なさにプラスして、誰にも受け入れられるに違いない音であるが、しかし、なにか音の魅力という点で、もう少し欲しい何者かがある。その点では今から10年以前のパイオニアのスピーカーの方により以上の魅力を感じるのであった。そのサウンドが今度のアンプにはある魅力ある生々しい迫力を今度のアンプに感じることが出来るのである。
 それは、おそらく新回路方式によってより広い帯域に対して、完全に設計意図通りのデータが保たれたことがやはりこの新アンプのニューサウンドの底流にあるに違いない。
 さらに注目すべきは、直結アンプ特有のスピーカー保護回路にある。直結アンプはその回路の性質上、わずかのクリックもスピーカーに直接加わるため、スピーカーという高価なパーツを破損してしまうチャンスが今までよりずっと多いのである。
 パイオニアでは、発売を延してまてこの点こそ充分に時間をかけて万全を期すべく技術を傾けたという。スイッチ・オンの後、回路が完全に動作状態になるまでスピーカーは接続されず、、8秒後にスピーカーが動作するように特別のバランスが太検出回路がプロテクターを形成する主役となっているという。
 スピーカー側の最大入力などの異常動作の場合も、瞬間的に保護回路が動作し、動作が正常になれば、つまり正常使用状態なら瞬間的に動作復帰する自動瞬間復帰方式だ。まさにスピーカー専門メーカーとしてのキャリアがアンプに生きているといえる。ブラックシルバーのいぶし仕上げのヘアーラインという新鮮で、豪華なパネルデザイン。つまみの配置もマニアライクな優れたものだ。
 新シリーズのチューナーTX100、アイディアに満ちたステレオ・ディスプレイSD100とともに、当分の間ファンの話題となる新シリーズだろう。

Lo-D HS-1400W

岩崎千明

スイングジャーナル 3月号(1971年2月発行)
「SJ推選ベスト・バイ・ステレオ」より

 HS1400Wをベストバイとしてここで述べる前に私は少々触れたいことがある。少なくともベスト・バイというなら多くのファンが良いということを認めて来た実績がなければならないからだ。
 冒頭からなぜこのようなことに触れたのか、ベスト・バイという言葉と日立のスピーカーを考えると、あまりにも強烈な印象でHS500が浮び上がってくるからであろう。これは当然のことだと思われる。日立のスピーカーを語る時には、このHS500の存在を忘れるわけにはいかないからである。
 HS500の音は、初めて接した2年半前の暑い夏の昼さがりの蝉の声と共にはっきりと思い出す。AR3と並んだ箱からAR3よりも、もっとすなおな、品位の高い低温がずっしりと深く息づくように出たとき、国産スピーカーということを忘れ、スタート台に立ったばかりの、日立という音響メーカーの底力をまざまざと見せつけられた思いであった。
 このスピーカー・システムは、たった20cmのウーファーが低音を受け持っているが、それはギャザード・エッジという世界初めての新しい技術と途方もないくらい大きなマグネットからなり立っている点で特筆でき、今日でも、その正攻法的なスピーカー設計意図は製品の高品質とともに高く評価できる。
 日立のハイファイに対する姿勢であるローディー、つまり低歪率再生と掲げられた文句はこの時に確立し、その圧倒的な低音の質の良さはこのHS500で確立したといってよい。
 その日立が、今度は高能率の重低音再生に向ったのがHS1400Wである。このHS1400Wはハイファイ界の永久の夢でもある重低音再生という点に技術が新しい方向を創造し、道を切り拓かれたといえる。それはまさに技術であり、独創的に溢れた企画商品だ。
 非常に簡単な計算をしよう。
 40Hzの低音を、1000Hzと同じエネルギーだけ取り出すためには、振動が25分の1ならスピーカー・コーン紙の振動振幅は25倍必要となる。1000Hzで1mm動くとすれば10Hzでは2・5cmも可動振幅範囲を要求される。むろ、こんなに動くスピーカーはない。だから低い音ほど出し難い。
 この出し難いエネルギーを取り出すにはどうすべきか、という点を、今までの音響システムから一切はなれた点からスタートして、HS1400Wは生れ出たのであった。この低音メカニズムを一言でいえば重低音共鳴箱である。
 共鳴箱である以上、どんなパルスが入っても共鳴箱は共鳴しやすい。また共鳴が始まると、共鳴して止まるまでがおそい。その点が、ハイファイ再生という立場からは根本的にずれている、ということを指摘することは難しくない。
 だが実際に重低音を出す楽器は、やはり低音共鳴体に伴っているものだ。ベース、ドラムにしてもそうだし、オルガンやティンパニーならなおさらである。そこで共鳴箱を再生用として使うことはなんら差し支えないということもいい得るのである。
 非常にユニークな共鳴箱型スピーカー・システムは、そのプロフィールも今でになく新鮮だ。そして何よりも嬉しいのは、たった3~4万のスピーカー・システムでありながら、20万、30万のスピーカーシステムに少しもひけをとらならい重低音を楽々と再生する点だ。
 ユニークな独創的システムにふさわしいユニークなデザインをあしらうことにより、ユニークなオーディオ・ファンのリスニング・ルームにおけるユニークな存在となるだろう。

デュアル 1219

岩崎千明

スイングジャーナル 2月号(1971年1月発行)
「supreme equipment 世界の名器を探る」より

 コンポーネント・ステレオが、セパレートに代って高級ステレオの代名詞となってきつつあるこの頃、レコード・プレイヤーの地位がますます高まっている。「音の入口には、できるだけ高級品を選ぶ」というのが、コンポーネント・ステレオのひとつの条件とさえなっているのはご存知の通り。
 音の品位を入口において損こなってはいくらよいアンプでも、スピーカーでも音を良くすることはできないし、レコードの寿命という点についてもレコード・プレイヤーの良否が決定してしまう。そこで高級レコード・プレイヤーとしてはオートチェンジャーは永い間敬遠されてきた。
 しかし、このデュアルの高品質チェンジャーが、この迷信をくつがえした。
 ステレオの台頭とともに軽針圧カートリッジが出現して以来、その2グラム前後という軽い針圧では、英国製のチェンジャーはどうも満足な動作を必らずしも完了してはくれず、チェンジャーに対する信頼が極端に低くなってしまったのである。そのため米国オーディオ界ではステレオの興隆とともにAR社のプレイヤーがそれまで普及していたオートチェンジャーにとって代って普及しつつあった。
 この米国内のプレイヤーの異変ともいえるチェンジャーの没落を一気に盛り返し、再びオートチェンジャーの主導権をヨーロッパにもたらしたのがこの西独デュアルの前製品1019であり、1012であった。このデュアルの傑作、1219は、70年代になってさらにメカ部を一歩前進させて、アンチスケーティング機構(インサイド・フォース・キャンセラー)と、連続演奏時にも針先とレコード面の角度ヴァーチカル・アングルが正しくセットされるようモード・セレクターがついて一枚演奏と連続演奏を切換えるように工夫された。また外観上も、アームはさらに細くいかにも軽針圧用としてデサインされ、アーム支持部もジャイロが大型になってより精度を高めたことも特筆できる。
 このデュアルのチェンジャーの最大のメリットは、針圧がスプリングによるいわゆるダイナミック・バランス型といわれている機構である点である。量産上バラツキの点で軽針圧ではむづかしいといわれるダイナミック・バランス式はオルトフォンの大型アームなどプロ用に僅か使われているにすぎないメカニカルであり、これはそったり偏心したレコードの軽針圧トレースが完全にできる利点がある。また一見なんの変哲もないこのアームは、あらゆる点でプロ用アーム並みの高性能機構と性能をそなえている点が注目すべきだ。
 ターンテーブルも3・1kgというヘヴィーウエイトのもので、完全ダイナミック・バランス調整されている高級品だ。
 このデュアルのプレイヤーに代表される小型ながらメカニカルで充実した内容のズッシリと重い機構は、大型でぎょうぎょうしいプレイヤーにみなれた眼からはなにか物足りないくらいだがいかにもドイツ製品にふさわしい。このデザインの原型はプロ用ノイマンのプレイヤーにオリジナルがみられることを付言しておこう。

パイオニア CS-E900

菅野沖彦

スイングジャーナル 2月号(1971年1月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 今月の選定新製品として選んだ、CS−E900は、同社がクリアー・サウンドというキャッチ・フレーズで売り出し中の一連の音のキャンペーンに連る。
 スピーカーというものは難しいものだ。これほど、再生装置を構成するパーツの中で、全体の音を左右するものはない。つまり、すべてのスピーカーは、ある技術的な理想に向ってつくられているはずなのに、その音は千差万別、それぞれ極めて個性的なのである。カートリッジについても、アンプについてすらも言えることだが、スピーカーほど独自の性格をもつものはないのである。スピーカーは電気音響の粋といってよくその動作の電気的特性から類推するという管理ではとても追いつかない。着実なデータの集積と長い経験鋭い感覚から生れるスピーカーづくりのノーハウは、それぞれのメーカー独特の手法として存在し、そのメーカーの体質となり血となってほしいものだ。
 褐色に着色したコーン(FBコーンと同社は称している)を使用したウーハー、スコーカー、そしてマルチ・セルラー・ホーンのトゥイーターを使い、バッフルは仕上げの高い木肌の魅力をもった完成度の高いシステムである。これほどCS700、500など一連のシリーズの経験を生かしたシステムとして高く評価できるものだ。マルチ・セルラー・ホーン・トゥイーターのデュフィーザーは廻転式で、システムを縦位置においても横位置においても、これを90°回転をさせて水平方向への指向性を改善できる。もっとも、これはデュフィーザーの設計で、そのままで水平垂直方向へ拡散させるものをつくればよりよいわけだ。中音は12cmコーン、ウーハーは30cmコーンである。最近のほとんどの製品がそうであるように、インプット端子はネットワークを介したフル・レンジ用と、3つのユニットにダイレクトに接続されるもの、そして、トゥイーター、スコーカーはネットワークを用いる2ウェイ式の切換スイッチ及びターミナルをもつ。アッテネーターは前面バッフルに±3dbの範囲で調整できるものが装備され高域、中域のレベルを独立してコントロール出来る。エンクロージュアは完全密閉型で、かつての優秀製品CS10やCS8の流れをくむものだ。クロスオーバーは400Hzと4kHzの2点。
 試聴感は、全体にさわやかな透明感が感じられ、音の傾向としては華麗である。重厚味やマッシヴな力感という面はあまり感じられない。したがって、どちらかというと黒っぽいジャズの再現には少々線が細く、よりソフィステイケイトされた音楽のほうがしっくりいく。高域の輝やかしい音色は魅力的だが、中域にやや腰くだけのようなあいまいさが残るのが玉に傷だ。もっとも傷のないスピーカー・システムなど、今だにお目にかかったことはなく、その他に良い面が強くあって、アバタもエクボとなるようならよしとしなければならないのが実状である。このシステムのまとまったバランスド・サウンドは、緻密な仕上げのエンクロージュアや外装デザインと共に整然とした完成度の高いものだ。あまりにも端整なのが、よきにつけ、あしきにつけ、このシステムの特長であろう。前面サランネットをつけた本機のたたずまいは、きわめて洗練されたもので、最近のパイオニア製品共通のセンスを感じる。それは、テープレコーダーにもステレオレシーバーにも散見できるセンスのひらめきであり、オーディオ機器が嗜好品としての性格を持つという本質をよく理解した製品づくりの誠意が感じられて好ましい。
 スピーカーの音は、一朝一夕に出来るものでもないし、作ろうとして作ったものは根底から人の心を動かすことは出来ない。エネルギー変換器としてのスピーカーの物理特性とまともに取り組むことから滲みでてくるのが本当の個性である。人が技術を通して滲み出る。これが本物だ。したがって、スピーカー技術者が、そしてメーカーが、まず人として魅力あるパーソナリティをもち、普楽の心を抱いていなければならない。技術は技術、人は人で音作りをしたような製品ではこれからのオーディオ界には通用しないのだと思う。

サンスイ AU-888

岩崎千明

スイングジャーナル 2月号(1971年1月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

「アンプ戦線異常あり! 各メーカー全段直結に注目し、総力を挙げて、製品強化を図り、全体制を至急整えるべし」というのが、71年を迎えんとするハイファイ・ステレオ業界の現状である。
 その全段直結戦線の端を切ったのがナショナル・テクニタス50Aであり、この大好評が大旋風の緒である。続いてティアックAS200、オンキョー・インテグラ701と大御所が名乗りを上げ、この流行が早くもピッチを上げてきつつあった時、ソニーTA1120を頂点とする全アンプESシリーズが、マイナー・チェンジという形でいっせいに全段直結化した。それを専門メーカーが黙って指をくわえたままのはずはない。
 サンスイが、AU666、AU999の2機種によって、ついに一般のオーディオファンの手に届き得るべく商品化したのが4ヶ月前。AU666はすでに前評判もよく、市場において成功を収めつつある状態だ。
 続いて、トリオが主力製品KA6000を上まわる全段直結アンプKA7002を発表。ようやくこのアンプ戦線に主役が揃って来たところである。後はパイオニアの新型アンプを待つばかりだ。
 すでにくり返しいわれているようにこの新回路方式のアンプは、理論上も従来の方式に比べてあらゆる点で格段の優秀さを具えている。何よりも注目すべき点は、あらゆる再生帯域内での「位相特性」が格段によくなる点であろう。負帰還技術を駆使した今日のハイファイ・アンプでは、負帰還以前の原回路の位相特性がもっとも問題となるが、従来の方式では、すでにリミットにあった位相特性が格段と向上し得る手段こそ新方式の全段直結回路なのである。
 これが再生品位に及ばす効果を伝えるのは容易ではない。というのはすでに従来のアンプが理想に近いレベルまで向上していたからで、それ以上のわずかのレベルアップに考えもつかない費用が要され、しかもそれと製品化するために多くの難関が道を阻ぎる。
 テクニクス50Aの同級アンプに比べて倍の価格がこのところをよく物語るし、それを知る者にとって、サンスイのAU666の価格は相当おさえられた価格であることを知らされる。
 しかも、それら全段直結アンプの音は、今までのアンプの音に比べて「音に豊かさと透明度が加わった」という点で共通している。日本製以外の製品としては、わずかJBLの高級アンプとマランツの豪華型にしかないというこの高水準の回路方式が今や国産アンプの「常識」になりつつある。ということはまったく驚異と共に喜びをもって迎えたい。
 AU666に続いて発表したのが、このAU888である。
 これはライバル・メーカーの主力製品に対する秘密兵器的な地位にある新製品だ。2年前のベストセラーであるAU777のグレード・アップという名実共に裏付けされている点でメーカー側の姿勢が感じられ、発売前から評判も高く、その売れ行きを約束されているといえよう。.
 ブラック・フェイスというサンスイのイメージ・デザインの延長ながら、AU888にはメカニックでフレッシュな新感覚がみごとなばかりにパネルに結実している。加えて、AU666におけると同じく透明度高く、しかも豊かなつややかな中音域が大きな特長だ。トランジスタ・アンプから除ききれなかったドライな切れ込みが、まろやかに鮮烈なアタックもそこなうことなくしっとりした音を聴かせてくれる。
 この理想境に達したのは、全段直結アンプ方式以外では考えられまい。アンプメーカーとして、AU111、AU777という2大金字塔を誇るサンスイが、AU666に続いて大荒れのアンプ戦線に加えた強力兵器、それがこのAU888であり、その期待をになうべく、デッキ?デッキの録音、再生も可能というフルアクセサリーのマニアライクな仕様、そして性能を満して市場に出る。
「シェリー・マンホールのレイ・ブラウンとミルト・ジャクソン」の冴えたキラ星のごときヴァイヴとベースの力強い開放弦の低音がSJ試聴室のA7をろうろうと響かせた。

オンキョー Integra 725

菅野沖彦

スイングジャーナル 1月号(1970年12月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 もう今さらいうまでもなく、ソリッド・ステート・アンプの高級器のほとんどが段間を直結して、出力回路からもコンデンサーを取りのぞいたレス・プロセスのサーキットを使っているる。エレクトロニクス技術の発展は目覚ましいものがあって、それがオーディオ・アンプの電子回路にも生かされているわけだ。JBLのSA600やSE400に始ったTRアンプの全段直結回路は、今や国産の中級アンプから、普及アンプにまで採用されはじめ、アンプの伝送フィデリティの向上に大きく役立っている。回路や素子のちがいによる音質の差というものは、その設計の技術と相俟って大変大きい。オーディオ・システムのように入口と出口に複雑な変換器を抱えているアンプの綜合的な動作は、想像を絶するほど多様なものであるはずだ。諸君は入力の負荷抵抗値をかえると音質が変ることはよく御存知だろう。MCカートリッジの負荷の50kΩを100kΩにとることによって生じる微妙な音質の差を問題にするのがオーディオの世界でありマニア達だ。これはほんの一例に過ぎないけれど、イクォライザ一回路に使われるCR素子の僅かな誤差や位相管理がどんなに音質を大きく左右するものか。そして、一般には私たちの耳の能力外と考えられている50kHzや100kHzでのアンプの動特性が可聴周波数帯域内にどんなに大きな影響を与えるか。こんなことを上げつらねていたらきりがないほどである。アンプは理論的にはきわめて解析の進んでいるものだが、動的な特性をもったスピーカーをドライヴしてどんな音質を再生するかという場合にほ、まだまだわからないだらけといってもよさそうなのである。しかも、結果は、ぼくたちの感覚に対していかなる刺激を与えるかというデリカシーの極といってもよい次元での判定をさてれるものだから、そんじょそこらのコンピューターていどの大ざっばさでは間に合うまい。
 ところで、オンキョーが音響機器の綜合メーカーとしての陣容を整えたのは、そのインテグラ・シリーズのアンプを出した時だ。比較的に遅れをとったオンキョーのアンプ部門としては、その回路技術、技能アイディアなども、それなりによく練られた意欲的なもので、710シリーズは力作であった。しかし、その音質はぼくにはどうしてもぴたりとこないもので、冷たく鋭くかたかった。音に血が通っていない。艶がない。ひいき目に見ても、あまりにさっぱりと淡白で、小骨の多い自身の魚のようだった。ぼくは、それをはっきり試聴記に書いたし、オンキョーの技術者にも話した。それはぼくたちのように、一般読者より、多くの製品に接する機会を持ち、メーカーと読者の間に立っている立場の人間の義務だと思うからだ。勿論、ぼくの云うことは、ぼくの主観であって、ぼくと感覚のちがう人ならば、ちがった意見になるだろう。しかし、いつもいうようにぼくは音楽という人間表現、個性表現の尊ばれるべき世界においては、徹底した主観こそ客観に連ると思っている。音響界では大変有名な学者、厨川守氏(東芝中央研究所主幹)によれば、音質評価を定心理学で結論づけると二つの結が導出され、一つは万人共通の美しい美しくないという評価であり、他は個人個人の好みであるといわれる。つまり中古車より新車のほうが誰もが快よい感じをうけるというのが万人共通評価であり、赤い車より青い車が好きだというのが個人嗜好であるというわけ。この論によれば、オンキョーのアンプは明らかにばくの個人嗜好に合わなかった。ところが今度発売された725は凄い。まったく気持ちのよい音だ。アンプとしての物理特性、動作性はぼくの見た限りでも優秀で、ハードウェアーとしてもよく練られた優秀な製品だと思う。しかも、このアンプの安定した動作から得られるパワフルなキャラクターと艶やかで、どっしりとしたバランス、深い切れ込みによる解像力の見事さは立派だ。初めに書いた最近の優秀国産アンプのライン上にある製品であり、しかも、一頭際立った優秀製品だと思う。710シリーズとはがらりと変った成長ぶりと受けとった。価格的にも、大変価値高いアンプだが、デザインにはもう一つ愛着を感じることが出来ない固さと浅薄さがあるのが残念だ。細い事はカタログを見ればおわかりだろうから、ここでは省略する。音のいいアンプだ。

JBL Olympus S8R

岩崎千明

スイングジャーナル 1月号(1970年12月発行)
「supreme equipment 世界の名器を探る」より

 ギリシャの神殿「オリンポス」をその名にとったスピーカー・システム、それが米国JBLサウンドの家庭用最高級システム「オリンパス」だ。
 その名の由来を彷彿させる厳しゅくなたたずまいと、優雅な響きは、まさに世界スピーカー・システムの中に厳然たるJBLサウンドを代表するにふさわしいシステムであろう。
 JBL社の代表的システムとして、あるいはオールホーンのレンジャ・パラゴンをたたえる識者や、さらに古くモノーラル時代の絶品ハーツフィールドを推すマニアもいるに違いない。
 そのいずれもが低音ホーンロードのエンクロージュアで、折返しホーンの前者、クリプッシュ・ホーンの後者のいずれもが価格的にオリンパスの倍にも近い豪華システムである。
 しかし、今日のステレオ時代、さらに4チャンネル・ステレオ時代を迎えんとする40年代における代表格としてあえてこの「オリンパス」こそ、それにふさわしいものと断じるのはいささかもためらいを要しないと思う。
 大型エンクロージュアでしか得ることのできなかった重低音は、その数分の1の容積のシステムでも楽々と再生され、ここにこそ常にトップを行くJBLサウンドの技術をまざまざと見ることができるからである。
「オリンパス」のデビューしたときにはそれはバスフレックス・エンクロージュアであった。しかし、現在の低音はJBLのオリジナル製品ともいいうるパッシブ・ラジエーターによって再生される。
 この方式がRCAのオルソン博士によって発表されたのは遠く戦前1936年のことだが、その直後に出たRCAの電蓄を除いては、今まで製品として市場に出たことはなかった。この方式の唯一の成功例がオリンパスであり、さらにそれに続いたランサー・シリーズのいくつかで、すべてのJBLのシステムなのは興味深い事実だ。
 このオリンパスの成功こそJBL社が、以後まっしぐらに家庭用システムでの多大の成果を得るきっかけとなったことからも、また今日のJBLの偉大な存在の布石となった点からも、JBLの代表ともいい得よう。
 オリンパスには2通りある。LE15A+パッシブ・ラジエーターの低音に、LE85+HL91を加えたS7と呼ぶ2ウェイ。
 LE15A+パッシブ・ラジエーターの低音に575ドライヴァー+HL93の中音、075の高音という3ウェイのS8R。
 むろん代表格は3ウェイのS8Rシステムだろう。

フィリップス N2400

岩崎千明

スイングジャーナル 12月号(1970年11月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より

 フィリッブスの新型ステレオ・カセットN2400が出た,というニュースはEL3312Aを使っていた私を少なからずがっかりさせた。
 というのも、それまで自分のもっていたステレオ・カセットがなんとなく旧式化してしまった気を起させるからだ。これと同じ気持を、多くのフィリップス・ステレオ・カセットの愛用者が感じたに違いない。
 しかし、この新型はたしかに新製品であるが、それは若い新らしい層を、はっきり意識した新商品ということができ、その意味では救われるようだ。
 メカニックな、金属的なデザイン。カチッとひきしまったプロフィルからも感じられるように、この新製品は新らしい音楽ファンを対象として企画されたに違いない。
 重厚さというか品の良さからは一歩遠ざかってデザインは鮮かなイメージを見たものに植えつける。ヨーロッパ調から米国調への移行を感じさせるこの変り様は、そのまま商品の狙いを示しているようだ。
 例えば、REJECTのつまみは、テープマガジンのすぐそばに移されて、少さく、軽いタッチで、軽るやかにふたがあく。ガチャンボンからスーツパッというようにメカニカル動作のイメージも変った。
 今までのピアノ・キー式の操作ボタンも、はるかに柔かく、ストロークも深くなって操作に確実さが一段と増した。それより、なによりも、このキーが、クロームメッキの強烈ともいえる輝きをもったデザインに改められたことだ。丸くくぼんで指頭にぴったり吸いつくような凹型が、デザインのポイントとして、実用性との両頭から大きな特長となっている。
 このメッキされたことにより、表面のよごれだけでなく、損傷からも保護されることとなって、より多くの使用者に対する、より多くの表面的なトラブルのチャンスがなくなっていることを見逃すべきではないだろう。
 加えて、表面パネル、全体のヘアーライン仕上げとのコンビが、メカニカルなデザインと現代調の製品感覚をもたらしていることも新鮮だ。
 再生された音は旧製品にくらべて、一段と高音域のレンジののびを感じさせるが、低音から中音にかけての豊かな音作りが、少しも余分なものを思わせぬ華麗さを持っていて、それがフィリップスのデッキ共通のよくいわれる音作りのうまさのポイントとなっている。
 録音、再生の音の良さは、これはもういままでに事あるごとにいわれ、賛えられてきているが、やたらなレンジの広さを追うことなく、しかもカセットと思えぬ豊かな低音から中音部。スカッとした高音へのつながりのスムースさ。カセットを品位の高いアンプとスピーカーを通す時には、カセットということを忘れさせてしまうほどの音だ。これは、音のバランスというよりも絶対的な歪の少なさがもたらすものであろう。ジャズ独特の力強さとか迫力とかという点で、19センチのオープンリールと互に張り合うことは無理かもしれぬ、しかし歌とか、ハードでないジャズに対してなら、オープンリールに劣ることのない能力をまざまざと知らしてくれる。
 カセットが4chソース・ステレオ時代に、大きくアピールされることはもうすでに約束されているといえる。数年先のその時まで、このステレオ・デッキがあらゆる音楽ファン層の大幅なかなりぜいたくな希望を満たしてくれることは間違いない。このカセット・デッキは、それだけの性能を具えていることはこれを一度使ったものなら誰しも認めるであろう。

アンペックス AG440

菅野沖彦

スイングジャーナル 12月号(1970年11月発行)
「世界の名器を探る Summit Sound」より

 AMPEXといえばテープレコーダーの王様として有名。泣く子もだまるほどの名声だ。ALEXANDER M.PONIATOFF氏の創設したEXPERIMENTATIONからくるネイミングだということを知っている人はそう多くなかろう。アメリカが第2次大戦の勝利で、ドイツから持ち込んだ磁気録音機をもとにこれを完成させたのが3Mだとも、また、このアンペックスだともいわれている。とにかく、世界的にテープレコーダーを普及させたのはアンペックスで、その信頼性の高いプロ機は、放送局やレコード会社のスタジオにはなくてはならぬ存在となっている。このAG440は同社のライン・アップの最新モデルであって、トランスポートはプロ機としてはきわめてコンパクトにまとめられ、メカニズムは、アンペックスが完成したオーソドックスな3モーター、キャプスタンはダイレクト・ドライブである。このメカの最大の特長は、ヘッド・アッセンブリーを交換することによって、1/4インチ巾のフル・トラック・モノーラルから、2トラック・2チャンネル・ステレオ、さらに1/2インチ巾4トラックまで容易に変化させられることだ。この時、ピンチローラーやガイドは交換の必要がない。また、ちょっとした改造で1インチ巾8チャンネルにも使えるという広いユティリティをもっている。エレクトロニクスはオール・トランジスタ化されプリント基盤による完全なユニット・コンストラクションである。オッシレーター、プレイバック、レコーディングの各アンプが独立パネルのプラグイン式となっている。この機械はもちろんプロ機ではあるが、最近は熱心なマニアで、これを買う人もいるというから驚ろきだ。アンペックスは、コロラドスプリングスでこうしたプロ機を生産し、シカゴのエルクグローヴでテープのプリント、民生機器の生産をおこないヘッドクォーターはカリフォルニアのレッドウッド・シティにある。ミュージック・テープやレコードまでも生産販売するという、今や音響の綜合メーカーに発展してしまった。それだけに同社がより専門色をもっていた時代、その頃の製品を懐しむのは私だけではなさそうだ。

オンキョー E-63A MKII

岩崎千明

スイングジャーナル 12月号(1970年11月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 私がオンキョーのE83Aをこのページで紹介してから、もう1年以上の月日がたってしまった。
 E83Aはその後、といっても半年ほど前に各ユニットのマイナー・チェンジが行なわれて、セプター・シリーズとなり、E83AMKIIと名も改めた。依然としてスピーカー・メーカーとしての、いゃ、ステレオ専門メーカーとしてのオンキョーの看板製品であることにはかわりない。価格が少々アップしたが、その製品の金のかかり方といい、出てくる音の再生品位のレベルの高さから考えると、今日においても市販スピーカー・システム中で大型システムの5指には入る。お買徳のスピーカー・システムであろう。
 その音は「例」の傑作HM500A中音ホーンを中声部の芯として、ガッツと迫力に富んだ、ヴィヴィッドなサウンドで、ジャズに最も大切な力とアタックのよさは特筆できるオンキョーの力作であった。
 このE83Aの弟分ともいえる製品が今度新たに発表された。E63AMKIIがこの新製品である。
 音は、一聴してE83AMKIIの流れをくむものであることが判るし、この製品ナンバーのE63AMKIIという名称からも判断される。
 このシステムに対するメーカーの姿勢は、看板製品ともいえるE83AMKIIと同じシリーズとして扱うことからも知らされる通り、かなりの自信と、力の入れようを意識させられる。
 このようなことをわざわざ書き記すのは理由のないことではない。音の傾向が同じで弟分的存在でありながら、このスピーカー・システムの中音はホーン型ではないのであ! このことは音を聞いたときには想像だにできなかったことだ。グリルを外して眼前にドーム・ラジエターの中音用をまじまじと見るまでは、まさかこの音がダイアフラム型スピーカーから出てくるものだとは夢にも思わなかったのである。つまり、このE63AMKIIの中音は実にホーン的なサウンドだ。パーカッシヴな音の力強さが、国産のドーム・ラジエターから出るものとはそれまで想像でき得なかったからだ。
 米国のAR3が出たとき、中音、高音にドーム型ラジエターをつけていたことで注目され、同じくエンパイアのグラナディアにも同型式の中高音がついた。その後、米国のブック・シェルフ型スピーカーの中音にドーム・ラジエターをそなえたものが多くなるにつれ、その効果と特性の優秀性が最近日本でも注目されてきた。
 AR社のシステムの優れた音響特性の多くは、この中高音の指向性と過渡特性のよさに支えられていることが判る。日本にもこれと同じ型式のスピーカーが使用されたシステムが最近急激に増えてきた。
 パイオニアのCS10の3年前のデビューをかわ切りに、この所いくつかを聞いたが、はっきりいって、このドーム・ラジエター型中音スピーカーには共通といってよいほどの物足りなさを感じた。それは「中音域の品のよさ」という、言葉で粉飾されているが、力のなさというかエネルギー不足である。
 ジャズのように楽器のエネルギーを直接ぶつけられるような状態を再現する場合には、この中音エネルギーの不足は、それが軸上正面上の特性ではフラットな音響特性であっても、かなりの物足りなさを私が強く感じたようにジャズ・ファンの多くに与えるに違いない。
 オンキョーのE63AMKIIによって、私はこのドーム・ラジエターに対する不満感を完全にくつがえされたのである。
 それは従来、ホーンからのみ得られるとされていたサウンドを、このE63AMKIIのドーム・ラジエターが楽々と再生し得るのを知ったときであった。
 5万円近い価格は、ブック・シェルフ型としては安いものではないかも知れない。しかし、このアタックの切れの鋭どさが、中音の分厚い音とが同じスピーカーから出るのを知ればE63AMKIIの存在が大へんな価値を持っていることを認めない者はいないだろう。
 E83Aに対しておくった賞賛に倍する柏手を、このE63AMKIIに対しておくることに、ピーターソンの「ハロー・ハービー」を聞きながら、私は少しのためらいもないことをつけ加えておこう。

クライスラー CE-6a

菅野沖彦

スイングジャーナル 11月号(1970年10月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より

 クライスラーのCE6aというスピーカーは明らかに用途を限定したスピーカー・システムのようである。つまり、これから普及しそうな4チャンネル再生システムの2−2方式のリアー・チャンネル用として、あるいは、サヴ・スピーカー・システムとしてリヴィング・ルームか寝室にという目的を意図した設計ポリシーであろう。奥行の浅い正方形バッフルを持ったプロポーションから、それは一目瞭然である。使用ユニットや構成は同社の傑作といってよいCE5a系と全く同一で20cmウーハー、12cmスコーカー、ホーン・トゥイーターの3ウェイである。もちろん、すべてのCEシリーズに共通のアコースティック・サスペンション方式で、f0の低いQの小さなフリー・エッジのハイ・コンプライアンス・ウーハーをベースにした完全密閉型となっている。ネットワークのクロスオーバー周波数がCE5aと異なるかどうかは不明だが、その再生音はややちがう。しかし私の個人的好みからいくと、この6aの音のほうが中低域の明瞭度があって好ましいように感じられた。CE5aのほうが豊かだとする人もいるし、事実、低域の再生キャラクターは、あのほうが分厚く豊かだ。しかし、6aの低域のほうが中域へのかぶりが少ない感じですっきりと音階を分離する。それでいて、低音域の量感も決して不十分な感じはなく、むしろ、あの容積のフラットなエンクロージュアから、これほどの量感豊かな低域が再生されることに驚くほどである。能率もけっして高いほうではないが、市版のアンプがハイ・パワー化の傾向にある現状では全く問題なく、パワー・ハンドリングにもゆとりがあって、相当な入力にも耐えて、大音量でジャズを満喫することができる。冒頭に書いた、サブ・スピーカー、あるいは、リアー・チャンネル用ということにこだわらずに、メイン・システムとして十分通用する実力をもったものと思う。小型システムを大型の代用品とか間に合わせのように考える人がいるが、それに賛成できない。狭い部屋には小型システムというのは一応常識的ではあるが、かといって、オーディオに熱心ならば、それに趣味として打込んでいれば、たとえ寝るスペースがスピーカーに占領されても、本人さえよければ大型システムを入れるのがよい。しかし、それにも限度があって、入らなければ仕方がない。また、部屋の中でスピーカーが目立つのを好まなかったり、小型のほうが趣味に合うという人だっている。小型システムは決して大型の代用品ではなく、要望に応じて独立存在価値をもつものだ。しかも、大型とは異なった設計理論と、製造面の相違から、小型には小型特有のメリットが音の上にもある。小型システムでも残念ながら、大型の代用としての能力しか持たないものもあるが、そうしたものは私たちのオーディオの世界に無関係であって、それは趣味の音響機器としてではなく、実用品として存在すればよいのである。話しが少々脱線したけれど、このクライスラーのCE6aは5a型と共に、小型システムの最高級品といってよい内容と、製品としての完成度をもった好ましいものだ。今さらいうまでもないが、好き嫌いは別として、同社のシステムに共通のバッフルの美しい仕上げ、紗を使ったフロント・フィニッシュなどには商品作りの誠意が滲みでている。これを商魂といっては誤りで、趣味の対象である嗜好品には、このように製作者の作品に対する愛情が現れるべきだ。仕上げのよさとはそういうもので、売らんかなという発想からでた表面だけのつくろいはすぐばれる。このサイズを形状を好まれる人は是非聴いてみるべきシステムで、きっと満足されると思う。

トリオ KA-7002

菅野沖彦

スイングジャーナル 11月号(1970年10月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 ツマミをまわす。朗朗と鳴る。スムースでグラマラスな音。艶があって、重厚な力感がみなぎる。いいアンプだ。トリオの新製品KA7002がそれだ。トリオのプリ・メイン・アンプの主力製品はKA6000とKA4000の2機種であった。そのいずれもが開発当初から優れたアンプとして高く評価されていたし、その後改良を重ねて現在まで現役アンプとして活躍して来たが、回路的に最新アンプの多くが採用しているものから見るとやや古さを感じさせたことは否定できなかった。オーディオ・アンプの最新高級回路というと、2電源、全段直結、純コンプリメンタリー回路というもので、段間コンデンサーおよび出力コンデンサーのない回路が主流である。この回路の利点は数々あるが、とにかく、従来のものより特性的に数段優れたものがつくり得る回路技術であることは間違いない。しかし、それにはそれなりの難しさがあって、パーツや調整にメーカーは苦労をさせられる。アンプを使う身になってみれば回路はどうでもよいわけで、問題は音そのものにありというわけだが、とにかく、KA7002の電子回路が採用した最新技術の成果には見るべきものがある。最終段の出力コンデンサーを取りのぞくにはPNPタイプのトランジスタが必要で、これまで高級アンプとしての要求にこたえる大出力型の石の国産化が思うようにいかなかったのであるが、KA7002では、実効出力50+50W(8Ω)というパワー・ハンドリングを実現させた。従来より、トリオの高級アンプの抜群のパワー・キャラクターは信頼感溢れるものであるが、純コンプリ回路のアンプを出すに際しても、余裕あるパワーを確保するために今日までの時を要したと理解すべきだろう。イコライザーは3段直結のNF型、高圧電源によリダイナミック・レンジも充分広くとられている。トーン・コントロールは2dbステップ式で、150、3300Hz、2K、6KHz のターンオーバーとロールオフの立上りが切換えられる現時点では大変オーソドックスなもの。フォノ入力は2系統、負荷インピータンス30、50Kの切換え、MC用の感度切換がある。スピーカーは3系統使用可能。ナル・バランス・コントローラーがついた。テープ・プレイが2系統となり、いずれからもモニター・タビングが可能。4チャンネル時代にふさわしく、2Ch、4Chのモード切換スイッチがあリ4Chのコントロール・アンプとしての機能もそなえている。その他マイク入力端子は標準型マイク・ジャックで設けられているし、コントロール機構は万全である。デザインは従来のKA6000の延長で、全く同じイメージといってよい。決して悪いデザインではないが、卒直なところ、内容が勝ったように思う。トリオのアタック・シリーズというのはコンポーネント・システムをシリーズ商品としてデザインの統一を計っているから、このアンプもその中に加えるものとして統一デザインとなったのであろう。しかし、欲をいうとこれだけの内容をもったアンプなら、もっともっと高級感というものが欲しい。それは、ラグジュリーな華美さをいうのではなく、バランスド・フィーリングというか、雰囲気をもった深い味いである。世の中の超一流品のみがもつ風格あるたたずまい、これが日本のオーディオ機器に望れてよい時がきた。それは、内容が優秀な技術の裏づけによって高度なものになったからであり、それとバランスしたソフトウェアーが望まれるのである。こんなことをいいたくなるほど、このアンプの音は、ぼくを魅了した。優れたアンプに共通してある、あのプレゼンスのよさ、音がスピーカーの振動板から離れて、前面にふんだんに拡散されてくる気持よさ、ほんの1時間あまりの試聴ではあったが、すっかりほれ込んでしまった。これで10年使ってもこわれなければ、世界の第一級品といえる。
 ぽくが録音してヴァン・ゲルダーがカッティングしてくれた八城一夫トリオ+3のピアノやホーン、ドラムスのヴィヴィッドな響きは血の通ったヒューマニティ溢れるサウンドだったし、猪俣猛のインパッシブなスキンのフィンガリングも抜群。ソビエトの新人イエレシュの弾いたムソルグスキーも、レオンハルトのバッハのゴールドベルク・パリエイションも、チューリッヒ・チェンパーのしなやかな弦のアンサンブルも、みんなそろって美しく、バッチリ聴きごたえのある高密度な音だった。

トーレンス TD125

岩崎千明

スイングジャーナル 11月号(1970年10月発行)
「世界の名器を探る Summit Sound」より

 トーレンスTHORENSの名は人間社会が音楽再生という技術を持った初期からすでにメーカーとして名乗りをあげていた。150年以上という気の遠くなる昔から、THORENSのマークは当時の最新音楽自動演奏機械であるオルゴールについている。ナポレオン全盛時代の動乱のヨーロッパにおいて、また中世の名残り深いスイスの城の中で、今日のアップライトピアノぐらいはあろうという、今日の日本人の常識をはるか越える大型オルゴールは、王候達を前にキンコロロンドンガララリンと妙なる音でパーティーの今日でいうところのバック・ミュージックに備われていた。
 その主要メーカーとして、トーレンスはもっとも著名かつ高品質であった。サイクルの早いオーディオ業界の中にあって150年の歴史を誇るメーカーはスイスの山奥に息長く続くこのトーレンスを除いては皆無である。世界産業界でもっとも歴史を誇る時計メーカーですら100年を越すのは4社でしかないのである。回転メカニズムのメーカーとしてのトーレンスの栄光はまさに世界の名器を作りあげるにふきわしいといえよう。
 このトーレンスがターンテーブルTD124を発表したのはステレオれい明期60年である。以後ターンテーブルを鉄から非磁性金属に変えたIl型を出しただけで10年をへる間、モデルチェンジをしないで通してきた。この124をベースとしオリジナルアームと組合せた唯一のオートマチック・チェンジャー以外にアレンジもなしで長年ターンテーブル界の名器という名をほしいままにしてきた
 しかし70年代を迎えるに当り、TD124IlはTD125して面目も内部メカニズムもすっかり一新した。超精密シンクロナスモーターの駆動には水晶発振器による高精度交流電源を内蔵している点である。この定周波数発振電力回路はかつて米国スコット社のモーターが57年ごろ採用したが真空管のため発熱も多く誤差が多くでるというめんどうな製品であった。トーレンスのモーター用電源はトランジスタのため安定性もたかく、ロスも僅少で実用製品としてTD124のあとをつぐにふさわしい高級品である。
 そのスッキリしたしょうしゃなデザインは、現代感覚にあふれ、内部の新機構にふさわしい。
 なおこのデザインと同じ系統で普及型プレイヤーTD150Aも2重ターンテーブル・プラス・ベルト・ドライヴのメカニスムが同じユニークな製品である。

オンキョー F-600M

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 F500Mの音質を、そのままスケール・アップしたという作り方で、中低域の厚みのある、聴感上の能率の良い、ふくらみのある音色に共通点を持っている。キャビネットがひと廻り大型になったせいか、ウーファーが大口径になったためか、500Mよりは重低音がよく出るし、中低域の厚みも一層増しているが、半面、少々重い感じがしないでもない。両者に共通の特徴として、音量を上げても相当に絞りこんでも、割合に楽器のバランスが崩れずに音像がしっかりしている点が上げられるが、一方、音がナマの形でむき出しにされるような感じで、楽器の位置がぐっと近づくかわりに、何となく音に粗さがあって、なめらかなきれいさに欠けるところがわずかとはいえ、気になるところだ。もう少し抑制を利かして、抜けのよい、軽いふくらみがあれば申し分ないというところ。

採点表
大編成:★★★★
小編成:★★★
独奏:★★★
声楽:★★★
音の品位:★★★
音のバランス:★★★
音域の広さ:★★★★
能率:★★★★
デザイン:★★★★
コストパフォーマンス:★★★
(準推薦)

パイオニア CS-700

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 ブックシェルフ・タイプの中では、割合に柄の大きい方で、おそらくそのためだろう、低域のゆったりとした、スケール感の豊かな響きを持っている。中・高域のユニットはcS500と同じものと思われるが、低域が豊かに聴こえるせいか、cS500のように中高域だけ飛び出すような印象は割合におさえられてて、たっぷりした、のびのびとよく鳴る音質である。
 よく鳴る、という印象ではティアックのLS360と一脈通じるところがないでもない。つまり、少々野放しに響きすぎる感じもあるが、中~高域に軽い、くせの少ない音質のためか、押しつけがましい音質というほどではない。
 しかし総体に、そう品位の高いという音質ではなく、スピーカーと対座して音楽を聴こうという作りかたとは逆のように思われる。

採点表
大編成:★★★
小編成:★★★
独奏:★★★
声楽:★★★★
音の品位:★★★
音のバランス:★★★
音域の広さ:★★★
能率:★★★★
デザイン:★★★
コストパフォーマンス:★★★
(準推薦)

ヤマハ NS-15

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 従来のテストの結果やその構造上から、かなり独特な音色を想像していたら、どうも予想が裏切られてしまった。音域は決して広くないが、たいへんバランスの良い、聴きやすい音質なのである。このユニークな平板スピーカーを、よくぞここまでこなしたものだと感心させられる。
 聴感上は、フィリップスなどとちょうど正反対のバランスで、中低域に盛り上りがあってそれが音に厚みを持たせ、注意域から高域にかけてはダラ下りにきれいにまとめてしまった作りかたで、重低音とかハイのさわやかなのびといった印象はあまりないかわりに、充実した中域が、安っぽさのない美しい音質を聴かせる。コーラスなどのハーモニイがきれいに溶け合う。置き場所を研究したり使いこなしにくふうすれば、これなりに十分楽しめる音だと思う。

採点表
大編成:★★★
小編成:★★
独奏:★★★
声楽:★★★
音の品位:★★★
音のバランス:★★★
音域の広さ:★★★
能率:★★★
デザイン:★★★
コストパフォーマンス:★★★
(準推薦)

ビクター BLA-255

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 アラ探しをしようとしても、とりたてて見当らないし、かといって何か魅力があるかと聞かれても困るといった、いわば平均的な性格という点では、No.15のBLA205と共通したところがある。ただ、全体のまとまりという点からみると、約五千円アップしたこちらに何かそれだけのメリットがあるかと思って聴いてみるが、これといった特徴は見当らなかった。一応、こちらの方が音域はやや広くなること、重低音の量感でやや勝ることなど良いところもある一方、中高音域が張り出して低音が不足した感じになって、決して圧迫感のある音ではないが音に厚みが不足した印象になる。その点、BLA205の方は、バランスのとりかたがうまかった。しかしいずれにしても、うまくまとめたシステム、という感じ方は共通している。

採点表
大編成:★★★
小編成:★★★
独奏:★★★
声楽:★★★
音の品位:★★
音のバランス:★★
音域の広さ:★★★
能率:★★
デザイン:★★★
コストパフォーマンス:★★

シャープ CP-31

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 まず外観だが、山水の格子のデザインをへたにモディファイしたような、まるでそっくり頂きのようなデザインを、こういうい大メーカーが平気で売るという神経は断じて納得できない。なるほど、細かくみれば格子のパターンも違うしキャビネットのディテールも違うのだから、意匠登録には牴触しないかもしれないが、こういう商売のセンスは、わたくしは嫌いだ。
 そういうことで印象を悪くしたが、そういう先入観で音を判断するような態度は、できるだけ避けたつもりだ。けれど、少なくとも各音域間の音のつながりのよくないこと、音域によって音の性格が変るところは、やはり具合がよくない。抑制が利かず、音が野放しに鳴るのに、低音が不足していて、バランスのとりかたにも再検討の要がありそうだ。

採点表
大編成:★★
小編成:★★
独奏:★★
声楽:★★★
音の品位:★★
音のバランス:★★
音域の広さ:★★★
能率:★★★
デザイン:★★
コストパフォーマンス:★★

ワーフェデール Super Linton

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 相当にクセの強い独特の音色を持った製品だ。まず音域は決して広くない。ローコスト製品だからこれは当然の作り方だろう。しかしそのせまい音域の中味はたっぷりと音がつまっている感じで、ツヤのある明快な中音域は、かなり張り出すように聴こえながら、いやな圧迫感がほとんどない。
 中低域から低域にかけては、箱が小型のせいもあるにちがいないが、聴感上あきらかに不足している。もちろん重低音など再生されない。それでいて、中域がきれいでヴォーカルなど結構それらしく楽しめる。いってみれば、そうとうに楽天的な作りかたで、、深刻ぶったところなどこれっぽちも見当らない。中高域など、チリチリと独特のスクラッチ・ノイズを強調する。アラを探せば欠点だらけのくせに、変に惹きつける魅力を持った妙なスピーカーだ。

採点表
大編成:★★
小編成:★★★
独奏:★★
声楽:★★★★
音の品位:★★★
音のバランス:★★★
音域の広さ:★★
能率:★★★
デザイン:★★★★★
コストパフォーマンス:★★★
(準推薦)

ティアック LS-360

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 本誌10号のブラインド・テストにも登場したシステムだが、印象はそう変っていない。第一に、総体に良く鳴りひびくという音質で、特に中低域では箱の共鳴音のような感じの膨らみのある音質が、やや饒舌でさえある。中高域はかなりきらびやかで、曲によっては相当に派手な音になる。どちらかというと抑制のよく利いた音質を好きなわたくしにとっては、この社の製品は総体によく鳴る音で、これがティアックのキャラクターのようだが、音域をできるだけ広げ、音のバランスをとるという点では一応成功している。ただ、この製品では各音域の音色にやや統一感を欠くことと、音の品位の点で少々もの足りなさを感じる。限られた条件の中で、音域を広げるか、音域を狭くしても品位をあげるか、難しいところだろう。

採点表
大編成:★★★
小編成:★★★★
独奏:★★★
声楽:★★★
音の品位:★★★
音のバランス:★★★★
音域の広さ:★★★★
能率:★★★★
デザイン:★★★
コストパフォーマンス:★★★
(準推薦)

トリオ KL-4060

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 同じトリオの3060、5060と一脈通じる、中高域に独特のツヤを持たせた、張りのある音質を持っている。ただ今回のテストでは、同社製品の中では、この機種が最も中高域の強調された印象だった。こういうバランスのためか、明瞭度が良く、音源がぐっと近づくように感じられる。いわゆる「音が張り出す」というイメージである。ただ、中域以上でチリチリ、シリシリという感じのスクラッチ・ノイズの類が割合に耳ざわりで、音の素性は必ずしも悪い方ではないのに、バランスのとり方にやや難があるように思われた。重低音は、このクラスのものとしては割合にしっかり再生される。
 KL3060と同じまっ黒のネットは、狭い住宅では雰囲気を暗くして好ましくない。この点と音のバランスとに検討が加えられれば、さらに良くなる製品だと思う。

採点表
大編成:★★★
小編成:★★
独奏:★★★
声楽:★★★
音の品位:★★★
音のバランス:★★★
音域の広さ:★★★
能率:★★★
デザイン:★★
コストパフォーマンス:★★★
(準推薦)

オンキョー F-500M

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 F500にマルチアンプ端子を追加した、小改良モデルである。以前の型にくらべて、前面ネットの色調があかるくなった点は好感が持てる。
 音質そのものは、F500とそう違うようには思われず、バランスのよい、各音域間のつながりのよい聴きやすいまとめ方は従来どおりだが、改めて切換比較してみると、今回のテスト機種の中では、中~低域がやや盛り上った感じで、そのこともあってか聴感上の能率がかなり高い方で、よく響いて元気の良い鳴り方をする。新製品のR4000と切換えると、よけいこの特徴が強調されて聴こえる。聴感上の低域は豊かだが、重低音のファンダメンタルが充分に出るという特性ではない。ただ、R4000あたりとくらべると、豊かに響くがやや大まかな点もあって、4000の方が抑制が利いてキメが細かく感じられる。

採点表
大編成:★★★
小編成:★★★
独奏:★★★
声楽:★★★
音の品位:★★★
音のバランス:★★★
音域の広さ:★★★
能率:★★★★
デザイン:★★★★
コストパフォーマンス:★★★
(準推薦)

アカイ SW-155

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 ブックシェルフ・タイプとしては、キャビネットがわずかながら大きめのためか、中域から低域にかけてふくらみを持った、量感のある音を響かせる。中高域以上をおさえてあるので、うるさいという音はあまり出てこないが、半面、音源が遠くの方で鳴る感じで、ホール・トーン的というか、音が距離感を持って鳴る。低域の質と豊かさは、なかなか悪くないと思う。つまりボッテリ型で、打てば響くような敏感さではなく、丸い甘い、ムード的な音質である。
 低域のよく出る感じは、箱鳴りもいくぶんあるようで、アラ探し的な聴きかたをすれば、もっと音に締まりがほしいし、キャビネット自体が響きすぎるようにも思われる。そのためか、音がかぶった感じで総体に品位をやや損ねている。外観は少々凝りすぎといった印象。音もまた、外観同様に重々しく飾った感じである。

採点表
大編成:★★
小編成:★★
独奏:★★
声楽:★★★
音の品位:★★
音のバランス:★★
音域の広さ:★★★
能率:★★★
デザイン:★★
コストパフォーマンス:★★

コロムビア VS-450

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 ウーファーとトゥイーターのつながりが良いためか、中音以上のバランスはなかなか良く、きれいな音を聴かせてくれる。超小型のシステムを音質本位に作れば、とうぜん能率は悪くなるわけで、それを承知で聴いてみたが、それにしても聴感上の能率では、テスト機種中、最低といえるほど、ほかのシステムからこれに切換えると音量がガクンと下がる。そこでボリュームをグンと上げようと思うのだが、残念なことに、意外とハイパワーに弱く、あまり大音量では鳴らせなかった。とくにフラットな音をと意識したためか、音に冴えたところがなく、曲によって何となくボール紙くさい音にきこえるときがある。中低域以下の厚みに欠けるため、すべて小じんまりと、薄くスケールの小さい音になってしまう。いいところも少なくないが、使いこなしの難しいスピーカーのようだ。

採点表
大編成:★★★
小編成:★★★
独奏:★★
声楽:★★★
音の品位:★★
音のバランス:★★
音域の広さ:★★★
能率:★
デザイン:★★★
コストパフォーマンス:★★

Lo-D HS-250F

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 HS500という名作をものした日立の普及品だが、音のバランスのとりかたは、HS500とは相当に違っている。片や非常にフラットな、素直で自然な音質を目ざしているのに対し、HS250Fでは、中域から高域にかけて相当に強調されたバランスのとりかたで、全く違う。同じメーカーの製品とは思えないほどの違いかただ。
 低音域は音がしっかりしてなかなかよいが、中音域では、音の強調とともに軽いエコーがつくような、ホールトーン的な響きかたをする。クラシックの渋い曲などでは、やや品位に欠けるひびきかたをする。プライヴェートな試聴では、これより価格の安い2ウェイのHS201Fの方が、HS500的なバランスの良さを持っていたように思う。
 中音域の、それもかなり広い音域全体について検討を望みたい。

採点表
大編成:★★★
小編成:★★
独奏:★★
声楽:★★★
音の品位:★★
音のバランス:★★
音域の広さ:★★★
能率:★★★
デザイン:★★
コストパフォーマンス:★★