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ヤマハ NS-500

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このシステムは、NS−1000M系のシリーズに属する製品である。エンクロージュアは、ブラック仕上げであるが、完全密閉型ではなく、円筒形のダクトをもったバスレフ型が採用してある。
 ユニット構成は、25cmウーファーをベースとした2ウェイシステムだが、トゥイーターに、ベリリュウムを使った2・3cm口径のドーム型が使ってある。
 ウーファーは、円形のアルミダイキャストフレーム付で、ノーメックスボビンと、専用に開発した軽く硬いコーン紙を使用し磁気回路は銅キャップ付のアルニコマグネットを使っていることに特長がある。
 トゥイーターは、20kHz以上までピストン領域をもつ、タンジェンシャルエッジ付ベリリュウム振動板に、エッジワイズ巻ボイスコイルを熱処理してダイレクトに接着したタイプで、17500ガウスの高磁束密度の磁気回路が組み合わせてある。
 ネットワークは、空芯コイルとMMタイプコンデンサーを使用し、ネットワークは樹脂モールドされ、振動の影響を防ぎ、磁気的な影響のない位置に取付けてある。

ヤマハ NS-690II

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このシステムは、6万円台のスピーカーシステムとして代表的な存在であった、NS−690をベースとして改良が加えられた第2世代のスピーカーシステムである。
 外見上では、レベルコントロールの下にヤマハのバッジが付いた以外には、あまり変化はないが、各ユニットは、全面的に変更してあり、結果としては、モデルナンバーこそ、NS−690を受継いではいるがまったくの新製品といってもよいシステムである。
 ウーファーは、NS−1000系のマルチコルゲーション付コーンが採用してあるのが変った点である。サスペンションではエッジがウレタンロールエッジとなり、ダンパーの材質と含浸材が新タイプになった。また、ボイスコイルボビンは、220度の耐熱性をもつ米デュポン社製ノーメックスとなり、磁気回路では、低歪対策として、センターポールに銅キャップが付いた。
 スコーカーは、トゥイーターともども、新しい振動板塗布剤が採用され、ボイスコイル接着剤の耐熱性が改善されている。トゥイーターでは、ボイスコイルに熱処理が施され、スコーカー同様に耐熱性が高くなっている。
 エンクロージュアも、全面に高密度針葉樹系パーティクルボードを採用し、ウーファー背面にNS−10000同様の補強板を付けてあり、重量が単体で、NS−690にくらべ、36%重い、18・5kgになっている。
 NS−690IIの音は、基本的には、NS−690を受継いでいるが、低域が充実して、安定感を増したために、全体に、音の密度が濃くなり、ユニットの改善で、音伸びがよくなったために、トータルのグレイドは、かなり向上している。

オーレックス C-550M

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このカートリッジは、発電方式は、MM型であるが、振動系のカンチレバーにカーボンファイバーを採用している。カンチレバーは、グラスファイバーの0・37mm径のソリッド材を使用し、針先には、オーレックスで開発したエクステンド針を使っている。このタイプは、音溝との接触が、カッティングレースのカッター針に近い、ラインコンタクトタイプで、高域の分解能が優れ、接触面積が大きいために、針先、音溝両方の摩耗が少ない特長がある。この針は、ダイヤモンドと同等の硬度をもつコランダム結晶を研磨している。

サンスイ SR-323

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイからの新しいプレーヤーシステムは、シンプルなデザインをもつ、ベルト・ドライブ方式の製品である。
 直径30.3cmのアルミ合金ダイキャスト製のターンテーブルは、重量が1.1kgあり、4極シンクロナスモーターで、ベルト・ドライブで駆動される。
 トーンアームは、実効長220mmのS字型ユニバーサル型であり、針圧は、メインウェイトを回転して印加する。トーンアームの付属機構は、ラテラルバランサーと、SMEタイプのインサイドフォースキャンセラーがある。回転軸受部分にSMEと逆方向に出たバーがバイアスカーソルで、0.5gステップで2gまで針圧対応でバイアスをかけることが可能である。付属カートリッジは、MM型で0.5ミル針付である。

デンオン SL-71D

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンのフレーヤーシステムでは、DP−3700Fのように、モデルナンバーの頭文字がDPではじまる一連のシリーズが、よく知られているが、今回、発売された、新しいシステムは、モデルナンバーがSL−71Dと付けられていることからもわかるように、異なったシリーズであり、以前のベルトドライブ型プレーヤーMTP−701などの後継機種と考えられる。
 直径33・8cmのアルミダイキャスト製ターンテーブルは、その外周部分が一段落ちになっていて、この部分に、ストロボのパターンが刻まれ、プレーヤーベースの左手前にある大型のネオンランプで照明されるが回転数の確認は、容易なタイプである。
 トーンアームの下側のパネルには、操作部分が集中し、それぞれが単機能でコントロールされる方式である。実効長235mmのS字型のパイプをもつトーンアームは、スタティック・バランス型で、メインウェイトを回転して、0.1gステップで3gまで針圧を印加できる。アームに付属するアクセサリーは、インサイドフォース・キャンセラーとアームリフターがある。アームは、全体が黒で統一してあるために、カーボンファイバー製とも思いやすいが、充分な剛性を得るために、硬質アルマイト加工された結果である。付属カートリッジはJM−16は、MM型で、0.5ミル針付のものだ。
 DD方式のモーターには、アウターローター型、ACサーボモーターを使用しており、回転数の制御は、周波数検出型である。
 本機は、このクラスのプレーヤーとしては、これといって目立つ点が少なく、平均的な印象の製品だ。しかし、いわゆる音のよいプレーヤーという言葉があるが、結果として得られる音質は、かなり高級プレーヤーに匹敵するものがある。全体に、音が引締まり、力強く、とくに、中域の下から低域にかけてこのことが著しい。
 プレーヤーシステムの音の差は、よく問題にされるが、現実に機種間の差は、かなりあり、その程度は、少なくともアンプ以上である。選択にあたって、ヒアリングテストが不可欠である。

「柳沢氏の再生装置について」

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 柳沢氏のスピーカーシステムは、マルチアンプでドライブされている。使用ユニットは、アルテックが中心で、ウーファーが38cm型の416A、スコーカーが804Aドライバーユニットと511Bセクトラルホーンのコンビ、トゥイーターはパイオニアのリボン型ユニットPT−R7である。
 ウーファーの416Aは、現在の416−8Aの前身で、ボイスコイルのインピーダンスが16Ωであることをのぞいて性能は変わらない。エンクロージュアは大型のバスレフ型620Aで、もともとアルテックの最新の同軸型全域ユニット604−8G用であるため、416Aの取付けはかなり苦労されたようだ。というのは、フレーム構造が、416Aはバッフル板の後から取付けるタイプであるが、604−8Gは前面から取付けるタイプと、異なっている。そこで、416A用ガスケットを利用して前面からの取付けを可能としたとのことだ。
 ドライバーユニットの804Aは耳慣れないモデルであるが、806Aの前身であり同等の性能をつものと考えられる。柳沢氏は、このユニットのダイアフラムを一度シンビオテック・タイプの16Ω特註品に交換し、さらに現用しているものは、高域レスポンスが改善された最新型の604−8Gに採用されているタイプに置き換えてある。
 セクトラルホーンの511Bは、現在ではマットブラック塗装に変わっているが、古くから愛用されているために、鮮やかなメタリック調のアルテックグリーンに塗られ、ホーン内部の仕上げも入念に工作がされていて、とても同じモデルとは思われないほどに印象がちがっている。このホーンは、視覚的な面とホーンの共鳴音を避けるために、木製のケースに入れてダンプしてある。
 アンプ系は、コントロールアンプがマランツの管球タイプ♯7である。チャンネルデバイダーはソニーTA−4300Fで、クロスオーバー周波数は8kHzと600Hz、スロープは18dB/oct.である。パワーアンプ群は、高音用がパイオニアEXCLUSIVE M4、中音用にマッキントッシュMC2105、低音用はモノ構成の管球タイプである♯9×2である。
 プレーヤーシステムは全部で3系統あるが、メインシステムにつながれるのはトーレンスTD124に柳沢氏自作のトーンアームとオルトフォンSPU−Aの組合せと、ガラード301にFR FR−54とオルトフォンSPU−Aのコンビの2台である。もう1系統はラックスPD121にFR FR−54とシュアーV15/IIIを取付けたシステムである。
 テープデッキはルボックスHS77、チューナーはマランツ♯10Bがメインだ。
 その他のアンプにはマッキントッシュC26、マランツ♯15、チューナーではマッキントッシュMR77と、パイオニアEXCLUSIVE F3がある。
 いずれ中音用アンプをマランツ♯15に置き換えて、マッキントッシュのラインナップを独立させ、ラックスのプレーヤーと組み合わせて、試聴用などのスピーカーをドライブするために使いたいとのことである。
 柳沢氏の音は、アルテックを使いながら、いわゆるアルテックサウンドは異なった音にまで発展させている点に特徴がある。

「山中氏の再生装置について」

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 山中氏は、スピーカーシステムについてはつねに大型フロアーシステムを愛用される。現在は、エレクトロボイスのパトリシアン600だが、知られている限りにおいても、アルテックのA−5、ヴァイタヴォックス191コーナーエンクロージュア、JBLハーツフィールドがあり、アルテックとJBLは現在でも所有されている。
 パトリシアンは、エレクトロボイスのトップモデルとして、1940年代に発表されて以来、数次にわたる改良を加えられ、1963年発表の800を最後に生産は中止されたが、600は、パトリシアンシリーズがそのもっとも高い完成度を示した記念すべきモデルと思われる。エンクロージュアは、フロント・ホールデッドホーン方式としてクリプッシュのパテントによる、いわゆるクリプッシュKホーンで、その外径寸法は、96・5×148・6×76・2cm(W・H・D)、重量は、推定であるが140kgを軽くこすだろう。外径寸法を最終モデルとなった800と比較すると、幅12・7cm、高さ19・1cm、奥行5・7cm大きい。
 ユニット構成は、オールホーン型4ウェイ・5スピーカーシステムである。ウーファーはホーンロード用の46cm口径18WK、ミドル・バスが折返し型ホーンとドライバーユニットを組み合わせた828HFが2個、ミドル・ハイがT25Aドライバーユニットと6HDホーンのコンビ、トゥイーターはT350である。クロスオーバー周波数は200Hz、600Hz、3500Hzと発表されている。エレクトロボイスのドライバーユニットは、ダイアフラム材質が硬質のフェノールであることが特徴で、音色は、ウエスターン系の軽金属ダイアフラムとはかなり異なった、マイルドで弾やかである。
 アンプ系は、取材時には3種類のシステムが使われた。第一はマランツ♯7と♯2×2、第二はハドレー♯621とマランツ♯2×2、第三が米国の新進メーカーGASのテァドラとアンプジラである。
 山中氏のリスニングルームには、米国系を中心としたセパレートアンプ群が整然と置かれているが、そのいずれもが最新の製品のように美しくレイアウトされ、しかもスイッチ操作ですべてが動作する。つまり、これらのアンプ群はすべて現用機であり、生きていることに深い感銘を受けた。まさに驚異的とも思われる保守の見事さであり、想像を絶する努力の結果であることにほかならない。
 これはプレーヤーシステムでも同様で、完全に復元され動作するフィッシャーの両面を演奏可能なオートチェンジャーに代表されるように、かつての名声をほしいままにしたレクォカットやトーレンスのプレーヤーシステムが現用機として使われている。テープデッキはこれまた機種が多い。アンペックス300は、現在のAG440を電気機関車にたとえれば、まさしくSLといった存在で、そのダイナミックな音はすさまじいエネルギーを秘めている。棚に乗っているルボックスG36、サムソナイトのケースに入って目立たなく置かれたアンペックス600など、それぞれが一時期を画した名器だ。
 この部屋で聴く音楽は、スケールが大変に大きく、細やかであり、力強い。そのうえ、ステレオフォニックな音場は幅広く拡がり、奥行きは、部屋の壁をこえて彼方の空間につながっているように感じられた。

スペックス SD-909, SDT-77

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 スペックスからは、MC型のSD−909である。このカートリッジは、共振を防ぐために、カートリッジのボディに、航空機用の軽合金を使い、共振点の異なる2つの材質が共振を打ち消す構造である。
 振動系は、78・5%PCパーマロイを使った巻枠に巻いたコイル、つまり発電系と、カンチレバーの振動支点が一致するワンポイント支持方式を採用し、温度変化にたいして一定のダンピング係数を保つために、異なった性質の材料を2枚合わせてプッシュプル方式を採用している。
 SD−909は、MC型で、精密な作業をおこなうために、少数生産でつくられ、一日に21個しかつくれないとのことだ。
 SD−909などの低出力MC型カートリッジの昇圧用トランスとして、スペックスでは、SDT−77が用意されている。このトランスは、SDT−180newのトランス本体をベースとし、より使いやすくよりスペースをとらない小型にするために、かずかずの改良が加えられている。
 この種の昇圧トランスは、入力インピーダンスのマッチングを、切替によっておこなうのが一般的であるが、ここでは、切替不要の独得のトランス設計により、2〜50Ωのインピーダンス範囲では、切替なしで使用できるとのことである。
 SD−909を、SDT−77をペアにして使ってみる。従来からも、スペックスのMC型カートリッジは、音色が明るく、力強い音を特長としていたが、SD−909は、この系統を受継ぎながら、さらに、音の密度が高くなり太い線も表現できるMC型としてユニークであると思う。

「長島氏の再生装置について」

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 長島氏のスピーカーシステムは、大型のジェンセン・インペリアルシステムと呼ばれていたものだ。いまではジェンセンというブランドネームはポピュラーではないが、古くSP時代からLP全盛期にわたり、スピーカーユニットとしては国内でかなり愛好されていた。とくにSPの頃には、明快で歯切れのよいスピーカーとして定評があり、ローラ・セレッションの前身のローラのスピーカーユニットが柔らかく滑らかな音をもっていたのとよく比較されたものだ。
 インペリアルシステムは、83×140×70cm(W・H・D)の外径寸法と約95kgの重量をもつ大型システムだが、コーナー型エンクロージュアの後をカットしたようなセミコーナー型ともいえる形態をもち、そのうえ、シンプルなバックロードホーン型であるのが特徴である。このバックロードホーンは、一般的なエンクロージュアの天板部分に開口部があり、部屋のコーナーに置いて両側の壁面と天井をホーンの延長として使う場合と、全体を倒立させて両壁と床面をホーンの延長として使う方法の二種の使用が可能であるが、長島氏の場合は床側にホーン開口部を置く使い方である。
 使用ユニットは、ジェンセンのトライアクシァル型フルレンジユニットG610Bで、3ウェイ同軸型としては歴史が古く他に例のない存在である。このユニットの前身は、LP全盛期に最高のスピーカーユニットとして、高価のあまり買うという実感とはほど遠かったG610であり、変わったのは、コーン紙前面のブリッジ上にセットされたトゥイーターのホーンが、円型から矩型になったことくらいである。
 ウーファーは、ホーン型中音と高音ユニットの能率に合わせる目的で、おそろしく強力な磁気回路をもっていて、特性的には低域に向かってレスポンスが下がる典型的なオーバーダンプ型である。中音は、布目の細かいフェノール系のダイアフラムが特徴で、形状はウェスターンの555と同様な特殊なタイプである。ホーンはウーファーの磁気回路を貫通してウーファーコーン紙をホーンとして使っているのはタンノイと同じだが、磁気回路は独立しており単独に取外し可能な構造になっている。トゥイーターは、中音と同じくフェノール系のダイアフラムをもつホーン型で、かつての円型ホーンをもっていたユニットは、単体として、たしかPR302という型番で発売されていた。
 アンプ系は、マランツの管球タイプのシャープ7コントロールアンプと♯2×2の構成。プレーヤーシステムは、エンパイア598ニュートラバドールとオルトフォンSPU−A/Eのコンビ、テープデッキがルボックスのHS77、FMチューナーは珍しいルボックスFM−A76。
 長島氏のインペリアルシステムから出る音は、中音と高音のレベルセットが異例ともいえるMAXであるが、長島氏の長期間にわかるエージングの結果、ナチュラルなバランスであり、とくに低域が、バックローディングホーンにありがちな固有音がまったく感じられず、引締り重厚であるのが見事である。G610Bが同軸型であり、システムがコーナー型であることもあって、部屋のなかでの最良の聴取位置はピンポイントであり、そこでのみ音像が立ち並ぶ独得なステレオフォニックな音場空間が拡がる。

「岩崎氏の再生装置について」

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 岩崎氏はふたつのリスニングルームを使いわけている。そのひとつは、JBLのパラゴンが置かれた部屋である。パラゴンの両翼には、アルテックの620Aエンクロージュアに入った604−8Gが乗せてあり、その両側にはJBLのハークネス、その対称面には、同じくJBLのベロナが置いてある。スピーカーユニットは、JBLのプロフェッショナル用をはじめ、アルテック、ボザークなどが転がっており、大型のセパレート型アンプや、プレーヤーシステムまでが山積みになっている。それらはエキゾチックな家具とともに、部屋の空間のなかを自由奔放に遊び回っている子供のように存在しているが、何とも絶妙なバランスを見せているのは不思議にさえ思われた。
 メインシステムであるJBLパラゴンは、低域までがフロントローディングホーンとなっている。いわゆるオールホーン型システムで、ステレオ用がひとつの素晴らしいデザインに収まっており、ユニークな円弧状の反射板をもっているために、独得なステレオのプレゼンスが得られる個性的なシステムだ。
 プレーヤーシステムは、いわゆるプレーヤーシステムの枠をこえた構造をもつマイクロのDDX−1000ターンテーブルと、MA−505の組合せであるが、その置かれている場所は、予想外にパラゴンの中央部の上である。ハイレベル再生では最右翼と思われる岩崎氏のリスニングルームであるだけに、いささか意外とも思われたが、この場所がこの部屋でもっともハウリングが少ない場所とのことである。
 アンプ系は、数あるアンプ群のなかからコントロールアンプには、本来はミキサーとして業務用に使われるクヮドエイトLM6200Rのフォノイコライザーを、パワーアンプには、パイオニアEXCLUSIVE M4のペアである。
 この部屋で聴くパラゴンは、聴き慣れたパラゴンとはまったく異なった音である。エネルギーが強烈であるだけに、使いこなしには苦労する375や075が、まろやかで艶めいて鳴り、洞窟のなかで轟くようにも思われる低音が、質感を明瞭に表現することに驚かされる。2、3種のカートリッジのなかでは、キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」のレコードのときの、ノイマンDST62は、感銘の深い緻密な響きであった。パラゴン独得なステレオのエフェクトが、聴取位置が近いために効果的であったことも考えられるが、アンプの選択もかなり重要なファクターと思われる。やはり、このパラゴンの本質的な資質をいち早く感じとり、かつて本誌上でパラゴンを買う、と公表された岩崎氏ならではの見事な使いっぷりである。また、大音量の再生は「美しいローレベルの音を、よく聴きたいためにほかならない」との氏の回答も、オーディオの真髄をつくもである。
 いまひとつのリスニングルームは、アンティークなムードの漂う部屋で照明も仄かであり、マントルピースのサイドに置かれたエレクトロボイスのエアリーズは、煙に燻されて判別しがたいくらいである。マランツ♯1と♯2、♯7と♯16のあるこの空間は、古きジャズを愛する岩崎氏にとって、メインのリスニングよりもむしろ憩いの場であるのだろう。

ラックス L-30, T-33

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスのプリメインアンプとしては、突然、昨年秋のオーディオフェアで発表されたジュニア機である。外観上は、80シリーズ以前の木枠を使ったフロントパネルをもつために、ラックスファンにと手は80シリーズよりも親しみやすいかもしれない。パワーは、35W×2とコンシュマーユースとしては充分の値で、回路面や機能面でも、従来のプリメインアンプを再検討して実質的な立場から省略すべき点を省略し、価格対音質の比率をラックス的に追求して決定した、いわば気軽にクォリティの高い音で音楽を楽しめるアンプである。
 L30のペアチューナーとしてつくられたのがT33である。価格は、抑えられたが、回路的には最新技術が導入されているとのことで、実用電界強度を表示する信号強度表示ランプがあり、FMミューティング、ハイブレンドを備えている。

ラックス L-85V

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスのプリメインアンプのなかでは、中核をなす位置にあたる80シリーズの製品である。従来、このシリーズには、L80VとL80の2モデルがあったが、これに今回、L85Vが加わり、3モデルで80シリーズが構成されることになった。
 L85Vは、80シリーズトップモデルであるだけに、パワーも、80W×2とパワフルである。外観上は、ラックスの一連のM−6000に代表される新しいアンプに採用されたものと共通なデザインポリシーをもっているが、80シリーズの特長は、フラットなフロントパネルを採用している点にある。しかし、パネルフェイスを立体的に見せるために、コントロールツマミやレバースイッチがアンプ内部のボディにセットされ、ちょっと見るとフロントパネルがフローティングされているように感じられるのが、このシリーズのユニークなところだろう。
 L80と80Vは、共通のフロントパネルをもつがL85Vは、イメージ的には共通だがリニアイコライザーが加わり、スピーカースイッチがロータリータイプになったために、フロントパネルはこの価格帯のプリアンプとして立派なものになっている。
 主な回路構成は、イコライザーにC−1000と同じ回路構成をIC化し、出力段のみがディスクリートのA級インバーテッド・ダーリントン・プッシュプルである構成が採用されている。トーンコントロールは、LUX方式NF型で、ボリュウムには、21接点のディテント型が使ってある。パワーアンプはM−6000などの開発の経験をいかした差動2段の全段直結コンプリメンタリーOCL方式で、プリドライバー段を定電流駆動とし、さらにこれにつづいて定電流駆動のエミッターフォロワーを使い、A級動作のプリドライバー段とB級動作のパワー段とを電気的に分離してスピーカー負荷によるインピーダンス変動が、プリドライバー段におよぶのを防いで、広い周波数にわたる低歪化を図っている。

オーレックス ST-720

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 シンセサイザー方式のFMチューナーとしてはオーレックスの第2弾製品である。価格的には、複雑な構成のために10万円をわずかにこしてはいるが、デジタル表示の未来志向型のチューナーとしては、充分に魅力的な価格であるの楽しい。
 選局は、カード式の変形ともいえる4組のFMユニット(周波数メモライザー)の内部にFMピンボードを規定に従ってあらかじめ希望局の周波数に合わせてセットすれば機械的に周波数はメモリーで気、このユニットにラベルを貼り局名を表示できる。
 マニュアルは、10MHzの桁で70か80を選択し、1MHzと0.1MHzは8、4、2、1を加算して0〜9を選択する方式で、最初は難解に思われるが慣れれば明解であるため、問題はない。プリセットチャンネルスイッチは4個のFMユニット用と、マニュアル用の5組あり、マニュアルはあらかじめセットしておけば、第5のFMユニットとしても使用できる。ファンクションとしては、国内の放送バンド以外の周波数をマニュアルでセットした場合になどに、点滅して警告するチューニング・エラー表示ランプやエアチェックのレベルセッティングの目安となる50%変調と100%変調に相当するレベルの信号が出力端子に出せるエアーチェック・レベルスイッチなどを備え、この種のチューナーに、ふさわしいものとしている。

オーレックス SB-820

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 オーレックスの新製品は、プリメインアンプとしては高級機に属する10万円以上、15万円までの価格帯に投入されたモデルで、パワーは82W×2と、このクラスとしては平均的であるが、とくにテープ関係の機能を重視しているのが特長である。
 外観は、フラットフェイスのフロントパネルに大型のボリュウムコントロールをもつ、かなり現代的な傾向を捕えたデザインである。トーンコントロール関係やフィルター類は、各2周波数を選択でき、このクラスの標準型といえるものだが、フィルターの高域に20kHz、低域に10Hzがあるのは、例が少ない。テープ関係は、リアパネルに2系統の入出力端子をもつ他に、ボリュウムの下側にジャックタイプのテープ3を備え、レバータイプとロータリータイプがペアとなったテープモニタースイッチとロータリータイプのデュープリケイトスイッチがあり、3系統のテープデッキを多角的に活用できる点は注目したい。
 回路構成は、差動2段の3段直結A級イコライザー、FET差動1段の2段直結NF型トーンコントロール、NF型フィルターアンプが、プリアンプ部分であり、パワーアンプは初段の差動アンプがカスコード接続になっている差動2段の全段直結コンプリメンタリーOCLで、パワートランジスターは並列接続でない、いわゆるシングル・プッシュプルである。このモデルも、オーレックス独自のCADISによる一台ごとの実測データがついている。

ラックス M-2000

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この新製品はM−6000、M−4000と続いて発表されてた一連のハイパワーアンプに続く、第3のパワーアンプであり、基本とする設計思想もまったく同様なものである。発表された規格も、M−4000と比較してパワーが120W×2であることを除いてほぼ同等であり、外観上も棚などに置かれてあると区別はつきがたい。ただ、外形寸法上で奥行きが、11・5cm短いのが両者の大きな違いといえよう。
 回路構成は、差動2段の全段直結コンプリメンタリーOCLで、出力段のパワートランジスターは、並列接続のパラレル・プッシュプル構成である。入力回路には単独のエミッターフォロワーがある。電源部は左右チャンネルの出力段用に別系統の電源が用意され、2個の2電源用電解コンデンサーを使用している。ドライバー段を含む他の増幅段用には、定電圧電源からの電圧が供給されている。
 フロントパネルにある2個のレベルセット用ボリュウムは、1dBステップのディテント型で、とくにチャンネルアンプなどに使う場合には好ましいものだ。付属回路には、LED表示のピークインジケーター、平均レベル表示のVUメーターと0dB〜10dBのメーター感度切替スイッチがある。
 M−2000は、M−4000にくらべると全体にひかえめな印象の音である。しかし音の粒子は細やかなタイプで、ローレベルの音が美しい。これをC−1010と組合わせると、音に活気が加わりスッキリとした爽やかな音になるのが印象的である。直接、C−1000とは比較しないが、C−1010のほうが明るくフレッシュな音をもつように思われる。

デンオン TU-355

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 基本的には、同社のPMA−255と組み合わせるFM専用チューナーである。フロントパネルは、チューナーとしては、横長型のスライドレールダイアルを廃して、2個の大型レベルメーターをもつ、個性型チューナーTU−500をベースにしている。TU−500と比較して変更されたのは、2個のレベルメーターが、フロントパネル左側に並んでセットされた点と、センターチューニングメーターが独立したことだ。
 TU−355のダイアルは、窓の部分こそ小型だが、直径12cmのドラムを採用しており、目盛りの全走行長では、28・3cmと長く、200kHzごとに等間隔目盛りであり見やすいタイプである。ダイアルの回転機構は、ステンレスシャフトと合金軸受の組合わせでフィーリングは、スムーズである。
 2個のレベルメーターは、それぞれ、チューナーの出力レベルを指示するが、左側は信号強度計として兼用している。メーター切替スイッチは、3段切替型で、リアパネルにあるエキスターナル端子からの信号を指示することも可能である。この場合には、フロントパネルにあるエキスターナル・アッテネーターを使い−30dBから+33dBまで、つまり、24・5mVから、34・6Vまでの指示が可能でエキスターナル端子の入力インピーダンスが200kΩ以上あるために、簡易な測定器としても利用できる。
 フロントエンドは、5連バリコン使用で、高周波一段増幅、段間トリプルチューンの同調回路とデュアルMOS・FETの組合わせ、信号系と制御系を二分割した2系統のIF段、PLL採用のMPX部のほか、オーディオアンプは2段直結NF型である。
 このチューナーは、音質的には、TU−500よりも、音の粒立ちがよく比較をすると、ややクリアーで抜けがよい。

サンスイ TU-7900, TU-5900

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 価格ランクこそ異なっているが、新しい2機種のチューナーは、好みにより、3機種のプリメインアンプのいずれともペアにできる。デザイン的には、TU−9900のイメージを受け継ぎ、性能面では実用上もっとも影響力が大きいSN比50dB時の感度向上にポイントが置かれている。
 TU−7900は、RF段にデュアルゲートMOS型FETと複同調回路をもつ4連バリコン使用のFMフロントエンド、低歪化と選択度を両立させるフェイズリニア・セラミックフィルターを採用したFM・IF段、それに、PLL方式のMPX部をもつ、オートノイズキャンセラー、FMアンテナ入力を抑えるアッテネーターをフロントパネルに備えている。

タンノイ Cornetta(ステレオサウンド版)

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「マイ・ハンディクラフト タンノイ10″ユニット用コーナー・エンクロージュアをつくる」より

 試聴は例により、ステレオサウンド試聴室でおこなうことにする。用意したスピーカーシステムは、今回の企画で製作した〝幻のコーネッタ〟、つまり、フロントホーン付コーナー・バスレフ型システムとコーナー・バスレフ型システム2機種で、それぞれ295HPDユニットが取り付けてある。また、これらのシステムとの比較用には、英タンノイのIIILZイン・キャビネットが2モデル用意された。一方はIIILZ MKII入りのシステムで、もう一方は英国では “CHEVENING” と呼ばれる295HPD入りのシステムである。
 試聴をはじめて最初に感じたことは、2種類の英タンノイのブックシェルフ型が、対照的な性質であることだ。
 まず、両者にはかなり出力音圧レベルの差がある。それぞれのユニットの実測データでも、295HPDが出力音圧レベル90dB、IIILZ MKII93dBと3dBの差があり、聴感上でかなりの差として出るのも当然であろう。それにしても、295HPDの出力音圧レベルは、平均的なブックシェルフ型システムと同じというのは、HPDになりユニットが大幅に改良されていることを物語るものだろう。
 第二には、IIILZが聴感上で低域が量的に不足し、バランスが高域側にスライドしているのと比較し、295HPDでは低域の上側あたりがやや盛り上がったような量感を感じさせ、高域にある種の輝きがあるため、いわゆるドンシャリ的な傾向を示す。しかし、質的にはIIILZ MKIIのほうが、いわゆるタンノイの魅力をもっているのはしかたがない。量的には少ないが、質的にはよく磨かれている。一方295HPDでは逆に、とくに低域が豊かになっているが、ややソフトフォーカス気味で、中域から中高域の滑らかさが、IIILZ MKIIにくらべ不足気味に聴こえる。
 次に、295HPDの入ったオリジナルシステムと、今回製作した2機種とでは、当然のことながらブックシェルフ型とフロアー型の間にある壁がいかに大きいかを物語るかのように、少なくとも比較の対象とはなりえない。同じユニットを使いながら、この差は車でいえば、ミニカーと2000c.c.クラス車との間にある、感覚的な差と比較できるものだ。まだく両者のスケール感は異なり、やはりフロアー型の魅力は、この、ゆったりとした、スケール感たっぷりの響きであろう。
 2種類のコーナー型システムは、フロアー型ならではの伸びやかな鳴り方をするが、予想以上に両者の間には差がある。
 フロントホーン付コーナー型は、低域がよく伸び、中低域あたりまでの量感が実に豊かであり、とても25cm型ユニットがこのシステムに入っているとは思われないほどである。また、高域はよく伸びて聴こえるが、中域の密度がやや不足し、中高域での爽やかさも少し物足りない。ただ、ステレオフォニックな音場感は、突然に部屋が広くなったように拡がり、特に前後方向のパースペクティブの再現では見事なものがある。音質はやや奥まって聴えるが、くつろいでスケール感のある音楽を楽しむには好適であろう。聴感上バランスではやや問題があるが、ステレオフォニックな拡がりの再現に優れている。
 一方、コーナー型では全体に線が細い音で、中域の厚みに欠けるために、ホーン付にくらべかなりエネルギーが不足して感じられる。いわゆるドンシャリ傾向が強い音であり、ステレオフォニックな拡がりも、とくに前後方向のパースペクティブな再現が不足し、音像は割合に、いわゆる横一列に並ぶタイプである。
 スピーカーシステムの構造としては、フロントホーンの有無だけの差であるが、フロントホーンの効果は、ステレオフォニックな空間の再現で両者の間に大幅な差をつけている。オーバーな表現をすれば、一度フロントホーン付のシステムを聴いてしまうと、ホーンのないシステムは聴く気にならなくなるといってよい。つまり、豊かさと貧しさの差なのだ。
 概略の試聴を終って、次には幻のコーネッタに的をしぼって聴き込むことにする。このシステムの低域側に片寄ったバランスを直すためには、高域のレベルを上げることがもっとも容易な方法であるが、実際にはもっともらしくバランスするが、必要な帯域では効果的ではなく、不要な部分が上がってしまうのだ。いろいろ手を加えてみても解決策は見出せない。次には仕方なく、ネットワークに手を加えることにする。
 狙いは、高域側の下を上昇させ、低域側の下を下降させことにある。合度&と来で決定した値にしたところ、トータルバランスは相当に変化し、鈍い表情が引き締まり、システムとしてのグレイドはかなり高くなる。しかし好みにもよろうが、ローエンドはやや締めたい感じである。方法は、バスレフポートをダンプするわけだが、これはかなり効果的で、ほぼ期待したような結果が得られた。補整をしたシステムは、ますますホーンなしのシステムとの格差が開き、ほぼ当初に目標とした音になったと思う。ここまでの試聴は、レベル、ロールオフとも0位置に合わせたままで、特別の調整はしていないことをつけくわえておきたい。
 このシステムに使用するアンプは、中域の密度が高く、中低域から低域にわたりソリッドで、クォリティが高いタイプが要求される。少なくとも、ソフトで耳ざわりのよいタイプは不適である。逆に、ストレートで元気のよいものも好ましくない。プリメインアンプでいえば、少なくとも80W+80Wクラスの高級機が必要であろう。

サンスイ AU-7900, AU-6900, AU-5900

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイから、新モデルとして3機種のプリメインアンプが発売された。これらの製品は、ハイパワーのプリメインアンプであるAU−20000でおこなわれたパワーアップの考え方を、中価格帯に導入したもので、サンスイのいうパワーアップとは、単なるパワーの増強ではなく、質的な高さをも含めた、質量ともどもの向上を意味しているとのことである。また、特性面では、音楽信号を入力するアンプの動特性の改善、低歪化などが追求され、とくに電源部についてはパワーイコール電源という考えで、電源部を重視しているのは現在のアンプの共通の特長と考えられる。
 AU−7900は、75W×2の出力をもつ今回の発売機種としてはもっとも高価格なモデルであるが、従来のAU−9500に匹敵するパワーである。機能面では、中音コントロールをもつTTCがサンスイのアンプの特長である。AU−7900では、高音が2kHz、4kHz、8kHzに湾曲点をもつ3段切替であり、低音は150Hz、300Hz、600Hzに湾曲点をもつ3段切替であるが、中音は1500Hzを中心にして±5dB変化させることができる。
 フィルターは、高音が7kHz、6dB/oct.と12kHz、12dB/oct.であり、低音が20Hzと60Hzと切替可能な12dB/oct.型である。ラウドネスコントロールは、ローブーストとハイローブースト切替型であり、ミューティングは15dBステップの2段切替である。
 回路構成上の特長は、初段に差動増幅を使った4石構成のNF型イコライザーを採用し、特性を改善するためにイコライザー基板は入力端子に直結する構造になっている。パワー部は、初段が物理的に安定度が高いデュアルトランジスターを使った差動増幅をもつ、全段直結コンプリメンタリーOCL方式で、電源部は大型のパワートランスと15000μF×2の電解コンデンサーを採用している。なお、トーンコントロール段は、ディフィート時には信号kからバイパスされるのもサンスイのアンプとしては特長になるであろう。
 AU−6900は、基本的にはAU−7900を基本にしてパワーを60W+60Wとしたモデルと考えてよい。機能面では、TTCの高音と低音がそれぞれ2つの周波数を選択できる2段切替になったのをはじめ、フィルター、ラウドネスコントロールともに一般的なタイプに変更されている。
 AU−5900は、3機種中ではもっともローコストなモデルであるが、機能面ではTTCの高音と低音の湾曲点切替が除かれた以外AU−6900と同等で、逆に考えれば、多機能な機種とも考えられる。
 3機種共通のポイントとしては、プリアンプ部分が発表された規格から見るかぎり、共通なアンプが採用してあることだ。例えば、フォノ1の感度が2.5mVであり、カートリッジ負荷抵抗の3段切替をはじめ、イコライザーの許容入力が250mVと、まったく同じである。電源部の電解コンデンサーの容量も、3機種とも15000μF×2と等しく、プリメインアンプとしてのコンストラクションも、ほぼ共通である。

ラックス C-1010

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスの新しいソリッドステート・コントロールアンプは、そのモデルナンバーと外観からも判るように、既発売のC−1000コントロールアンプに続く機種で、いわゆる性能を落したジュニアタイプではなく、発表された規格を見てもまったく同等で、いわば実戦型のニューモデルだ。
 フロントパネルで、C−1000と変った点は、ボリュウムコントロールのツマミについていたタッチミュートが除かれた点で、これに伴って、タッチミュートのインジケーターランプがなくなっている。
 回路構成は、高域のリニアリティの改善と安定性とSN比の向上を狙った設計で、イコライザーが、ディファレンシャル・ダイレクトカップル方式と呼ぶ差動1段で、出力段がA級インバーテッド・ダーリントン接続のプッシュプル構成でテープデッキを負荷しても性能が落ちない特長があり、歪率が0・006%と低い。中間アンプも、イコライザーと同様な考え方のカスコーデッド・ダイレクトカップル方式であり、トーンコントロールは、LUX方式NF型だ。フィルターアンプは2石構成の定電流駆動のエミッターフォロワーで、不要な場合は信号系からカットされる。

「上杉氏の再生装置について」

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

上杉氏のリスニングルームには2組の大型スピーカーシステムがある。そのひとつは、コーナー型システムとして典型的な存在であった、いまはなきタンノイのオートグラフであり、いまひとつは、それ自体が大型システムであるオートグラフが中型システムと見誤るほど巨大な、超弩級4ウェイシステムである。
このシステムは、ヨーロッパのシアター用システムとしてユニークな構造をもつシーメンスのオイロダインを中心として構成したもので、低域補強にエレクトロボイスの巨大な76cm口径のウーファー30Wを2本(1ch)、高域補強にテクニクスのホーン型トゥイーターを組み合わせている。
オイロダインは、この種のシステム共通の特徴として、いわゆる現代的なワイドレンジタイプでないことが、あの見事なまとまりをみせる。彫りが深く力強い音の裏付けと考えられるが、さらに発展させるとなれば、低域と高域のわずかなレスポンスを伸ばすために、オイロダインにみあうクォリティを備えた超高級ユニットを組み合わせることが必要となる。とくに、低域は重要なポイントであり、部屋に入るという制約上からは、超大口径ウーファーの使用がオーソドックスの方法と思われる。
エレクトロボイスの30Wは、米国でもハートレーの286MSと並ぶ巨大なユニットで、もともと同社のかつてのパトリシアン800用につくられたもである。
エンクロージュアは、外形寸法が180×170×60cm(W・H・D)あり、重量は、約390kg(ユニット含)もあるが、構造上は2分割されており、上側のエンクロージュアにテクニクスのトゥイーターとオイロダインが横一列に取付けられ、下側のエンクロージュアは密閉型で30Wが2本入っている。クロスオーバー周波数は、トゥイーターとオイロダインの高域との間が8kHz、オイロダインの低域と高域は5kHz、12dB/oct.のLC型、オイロダインの低域と30Wの間はエレクトロニック・クロスオーバーで、ハイパスが12dB/oct.、ローパスが18dB/oct.で、150Hzになっている。
アンプ系は、多数の内外のセパレート型があるが、現用機は当然のことながらプリアンプU・BROS−1と、CR型のチャンネルデバイダー、それに4台の845シングルのパワーアンプUTY−1である。レベルセッティングは無響室特性と実際のリスニングルーム内での実測特性とを基準にして決定されているようで、このあたりはデータを重視する上杉氏らしいところと思われた。
プログラムソースはディスクが中心で、4系統のプレーヤーシステムは1系統を除いて2本のアームがセットされており、テープデッキではスチューダーB62、FMチューナーではセクエラMODEL1をもっぱら愛用されている。
上杉氏のシステムは、感覚的に流れず、実測データを基準にしてセットアップしてあることが重要なポイントで、メインとなっている4ウェイシステムは使いはじめたばかりで、現在は写真のように置かれているが、今後は分割されたエンクロージュアの利点をいかして、レイアウトも大幅に変わっていくことだろう。いずれにせよ、このシステムのスケールの大きなこだわりのない響きは、いかにも上杉氏らしい豪快さにあふれたものである。

テクニクス SU-8600, SU-8200

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のアンプに目立つ傾向として、電源部分の音質に影響する点に着目して電源部の強化や、セパレート型のパワーアンプに採用されることが多い左右チャンネルの電源独立の手法が、プリメインアンプのパワーアンプにも採用されるようになっている。しかし、ことパワーアンプに関しては、かつてから経験豊かなファンはモノ構成のパワーアンプを使うことが音質を良くすることを熟知していたし、製品ではマランツの最初のソリッドステート・パワーアンプ♯15が、独立したモノアンプ2台でステレオアンプとしていたことは忘れられない。
 テクニクスのアンプは、従来から物理的な特性を重要視して、特性の優れたアンプが結果として音質の良いアンプをつくり出すというポリシーで開発されているように思われるが、今回の新しい2機種の8000シリーズのプリメインアンプも、とくに動的なトランジェント歪を追求して開発されたとのことである。
 音楽信号のように変化が激しい信号を増幅する場合には、安定度の悪い電源を使うと、無信号でにはアンプが最適動作点であったとしても、信号により電源が変動すると最適動作点からはずれて歪を発生することになり、これをトランジェント歪といっている。この解決は電源部の強化がもっとも有効で、SU−8600では3組の±電源をもつために±6電源方式をキャッチフレーズとし、さらにテクニクス独自のセルフトランジェント歪測定法により、一層の低歪化が図られている。
 フロントパネルは、2機種ともに横幅にくらべて高さが高く、両サイドにある大型のナットがメカニックな感じを出している。大型のボリュウムコントロールは、−30dB〜−40dBの間が2dBステップとなっている26接点のディテント型で、ラウドネス端子が設けられているために、小音量時には自動的に低域が増強されるタイプである。トーンコントロールは高音、低音ともにターンオーバー2段切替型で、SU−8600だけはトーンディフィートスイッチが付いている。フィルターは、SU−8600が12dB/oct.、SU−8200は6dB/oct.である。
 回路構成は、SU−8600の方がイコライザーに差動回路、変形SRPPの2段直結型、トーンコントロール段がカレントミラー負荷をもつ差動増幅を初段とした3段直結型、パワーアンプが差動増幅、エミッターフォロアー電圧増幅、出力段の構成で電源部の電解コンデンサーは15000μF×2となっている。
 一方SU−8200は、イコライザーがカレントミラー負荷差動回路と定電流負荷のエミッターフォロアーの2段直結型であり、パワーアンプは差動増幅、電圧増幅、出力段のシンプルな構成である。電源部は、プリアンプとパワーアンプが独立しており、イコライザーとトーンコントロールは定電圧化されている。

「菅野氏の再生装置について」

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 大型スピーカーシステムは、それが大きく見えないようなスペースの充分にある部屋で使うことが理想的という声をよく耳にするが、現実のわが国の生活環境ではなかなか実現することは至難である。
 菅野氏のリスニングルームは、この面から考えると理想的なスペースがあり、メインスピーカーシステムのJBL3ウェイシステムが、その存在を意識させずに置かれている。スピーカーシステムは3系統あり、2チャンネル用にJBLの大型3ウェイと、プロフェッショナル・モニターシステム4320に2405トゥイーターを加えたシステムがあり、4チャンネル用にJBLのディケードシリーズのL26がある。
 メインとなるスピーカーシステムは、ウーファーがJBLプロフェッショナルシリーズの2220、スコーカーがJBL375ドライバーユニットと537−500音響レンズ付ホーンの組合せ、トゥイーターがJBL075である。
 ウーファー用のエンクロージュアは、横位置にしたパイオニア38cm用バスレフ型エンクロージュアLE−38だが、フロンドグリルが組子に変わっているために、JBLの特別仕様エンクロージュアのように思われた。また、中音用の音響レンズ付ホーン537−500は、ユニークな構造とデザインをもつ製品で、一時製造が中止されていたが、最近になってモデルナンバーがHL88と変わり、再発売されている。
 JBLの3ウェイシステムを駆動するチャンネルアンプシステムは、コントロールアンプJBL SG520、チャンネルデバイダー ソニー TA−4300F、パワーアンプの高音用オンキョーINTEGRA A−717のパワー部、中音用パイオニアEXCLUSIVE M4、低音用アキュフェーズM−60×2のラインナップである。
 コントロールアンプは、現在はJBLのSG520であるが、マランツ♯7Tも併用されるようだ。パワーアンプは、スピーカーユニットとの音質上のマッチングを重視して数多くのアンプのなかから選択され、その時点でもっとも好ましいアンプを使用されている。
 プレーヤーシステムは、フォノモーターとトーンアームが、テクニクスSP−10MK2とEPA−101Sの組合せ、カートリッジはエレクトロ・アクースティックSTS455Eである。なお、テープデッキはプロフェッショナルの名門スカリーの280B−2である。
 プログラムソースがdbxの場合には、システムのラインナップが一部変わり、コントロールアンプがマランツ♯7Tとなり、dbx122デコーダーが加わる。この場合のプレーヤーシステムは、デンオンDP−3700Fで、カートリッジは同じエレクトロ・アクースティックSTS555Eに変わる。
 氏のリスニングルームでのdbxシステムの音は素晴らしい。まったくの静寂のなかから突然に音楽始まるために、慣例的なノイズによるレベルセットはまったく不能である。オーディオラボ製作のdbxレコード「アローン・トゥゲザー」は、音楽として実に楽しく、この種の新方式は使う人により結果が大幅に変化する好例に思われた。

サテン M-18E

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サテンのカートリッジは、もっとも古いモノーラル用のモデルであるM−1以来、独自のポリシーのもとに、鉄芯を使用せず、ステップアップトランスも不要な、高出力MC型一途に、製品を送り出している。
 最近では、久しぶりに沈黙を破って、M−117を発表したが、今回の新製品、M−18は、M−117をベースとして発展させたモデルではなく、逆に、M−117のプロトタイプとして、M−117に先だって開発されたモデルである。
 サテンのムービングコイルは、三角形に巻かれているために、いわゆる、オムスビ型をしたスパイラル巻きであるが、M−18、M、117ともにダ円形のスパイラル巻に変更され、コイルが磁束を切る有効率が1/3から1/2に増し、M−117でも、質量は1/2と半減している。
 新シリーズは、カンチレバーの支持方法が、従来のテンションワイヤーによるものから、二枚の板バネとテンションワイヤーを組み合わせたタイプに変わり、カンチレバーは、二枚の板バネとテンションワイヤーの中心線の交点を支点として支持されるため支点は厳密に一点である。これにより、従来は不可避であったカンチレバーの軸方向まわりの回転運動がなくなったことが、新しい支持方式の大きなメリットである。また、コイルを保持し、カンチレバーの動きをコイルに伝えるアーマチュアも、大幅な改良が加えられ、50μの厚みのベリリュウム銅でつくったアーマチュアとコイルとの結合部がループ状になっており、電磁制動が有効に使えるタイプになっている。
 サテンのMC型は、針交換が可能なことも、忘れてはならない特長である。新シリーズは、交換針を本体に取付ける方法が、従来のバネによるものから、MC型が必要とする磁石の磁力によって交換針を保持する方式に変わった。
 M−18は、M−117の高級機であるために、精度が一段と高まり、ムービングコイルが、さらに軽量化されている。M−18シリーズは、4モデルあり、0.5ミル針付のM−18、ダ円針付のM−18E、0.1×2.5ミル・コニック針付のM−18Xと、コニック針付で、カンチレバーにベリリュウムを使ったM−18BXがある。
 試聴したのは、M−18シリーズのスタンダードとも考えられる、M−18Eである。MM型では、負荷抵抗による音の変化は、ほぼ、常識となっているが、MC型でも、変わり方が異なるとはいえ、負荷抵抗によって、音量が変化し、出力電圧も変化する。サテンでは、負荷抵抗として30Ω〜300Ωを推奨しているが、50kΩでも可とのこともあって試聴は、一般のカートリッジと同様に50kΩでおこなうことにした。
 M−18Eで、もっとも大きな特長は、聴感上のSN比がよく、スクラッチノイズが、他のカートリッジとくらべて、明らかに異なった性質のものであることだ。M−18の音は、文字で表現することは難しく、周波数帯域とか、バランスといった聴き方をするかぎり、ナチュラルであり、問題にすべき点は見出せない。ただ、いい方を変えれば、いわゆるレコードらしくない音であり、例えば、未処理のオリジナルテープの音と似ているといってもよい。他のカートリッジであれば、レコード以後のことだけを考えていればよいが、M−18Eでは、レコード以前の、いわば、オーディオファンにとっては見てはならぬ領域を見てしまったような錯覚をさえ感じる。この音は、誰しも、素晴らしい音として認めるが、使う人によって好むか好まざるかはわかれるだろう。

「瀬川氏の再生装置について」

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 瀬川氏のリスニングルームには、二組のスピーカーシステムがあり、それぞれヨーロッパとアメリカを代表する中型の業務用モニターシステムであるのが大変に興味深い。
 KEF LS5/1Aは、英国系の最近のモニタースピーカーの見せる傾向を知るうえでは典型的な存在である。エンクロージュアのプロポーションが、横幅にくらべて奥行きが深く、調整室で椅子に坐ったときに最適の聴取位置となるように、金属製のアンプ台を兼ねたスタンド上にセットしてある。このシステムをドライブする標準アンプは、ラドフォード製の管球タイプのパワーアンプで、アンプ側でスピーカーシステムの周波数特性を補整する方法が採用されている。
 ユニット構成は、38cmウーファーとセレッション系のトゥイーターを2本使用した変則2ウェイシステムで、一方のトゥイーターはネットワークで高域をカットし、中域だけ使用しているのが珍しい。38cmウーファーは、一般に中域だけを考えれば30cmウーファーに劣ると考えやすいが、KEFの場合には38cm型のほうが中域が優れているとの見解であるとのことだ。このシステムは比較的近い距離で聴くと、驚くほどのステレオフォニックな空間とシャープな定位感が得られる特徴があり、このシステムを選択したこと自体が、瀬川氏のオーディオのありかたを示すものと考えられる。
 JBLモデル4341は、簡単に考えればモデル4333に中低域ユニットを加えて、トールボーイ型エンクロージュアに収めたモニタースピーカーといえ、床に直接置いて最適のバランスと聴取位置が得られるシステムである。ユニット構成は、2405、2420ドライバーユニット+2307音響レンズ付ホーン、2121、2231Aの4ウェイで、中低域を受持つ2121は、ユニットとしては単売されてはいないが、コンシュマー用のウーファーLE10Aをベースとしてつくられた専用ユニットと思われる。
 かねてからJBLファンとして、JBLのユニットでシステムをつくる場合には、必然的に4ウェイ構成となるという見解をもつ瀬川氏にとっては、モデル4341の出現は当然の帰結であり、JBLとの考え方の一致を意味している。それかあらぬか、システムの使いこなしについては最先端をもって任ずる瀬川氏が、例外的にこのシステムの場合には、各ユニットのレベルコントロールは追込んでなく、メーカー指定のノーマル位置であるのには驚かされた。なお、取材時のスピーカーはこのモデル4341であった。
 アンプ系はスピーカーシステムにあわせて2系統が用意されている。1系統は、マークレビンソンLNP2コントロールアンプとパイオニアEXCLUSIVE M4、他の1系統は、LP初期からアンプを手がけておられる富田嘉和氏試作のソリッドステート・プリアンプとビクターJM−S7FETパワーアンプとのコンビである。プレーヤーシステムは、旧タイプのTSD15付EMT930stと、ラックスPD121にオーディオクラフトのオイルダンプがたトーンアームAC−300MCとEMT TSD15の組合せであり、テープデッキは、アンペックスのプロ用38cm・2トラックのエージー440コンソールタイプを愛用されている。