パイオニア PC-330/II, PC-550E/II, PC-1000/II

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 PC1000/IIは、現代カートリッジの性格が強い製品である。聴感上の周波数帯域は広く、よく伸びており、低域の質感が甘く、ベタつかないよさがある。
 低域のダンプは標準的で、この種のカートリッジとしてはよくコントロールされている。音の粒子は細かく、よく磨かれているために、強調感がなく、滑らかで汚れがないメリットがある。ステレオフォニックな音場感はよく拡がるタイプで、空間の拡がりが充分感じられ、パースペクティブな感じもよい。ヴォーカルなどの音像は前にクッキリと立つタイプではないが、定位はナチュラルで安定している。
 性質はおだやかでゆとりがあり安定感があるが、やや表情を抑える傾向があって、大人っぽい落着きがこのモデルの特長である。
 PC550Eは、音の粒子はPC1000/IIのような微粒子型とくらべると粗いが、聴感上のSN比で問題になるほどのことはない。低域のダンピングは適度で甘くなりすぎず、中低域の量感があって、ゆったりと拡がる空間を感じさせる間接音が感じられる。この感じは、PC1000/IIとよく似た点だ。
 ヴォーカルは明快な感じでリアルさがあるが、子音を強調する傾向はなく、ピアノのスケール感もかなり感じさせる。
 全体に、性質はおだやかで、安定して幅広いプログラムソースをこなすのは、このカートリッジのメリットであるが、やや表情がおっとりとした面があって、エネルギッシュに音を決めてくるロック系やソウル系の音楽の場合には、やや物足りない感じがないでもない。ウォームトーン系で耳あたりがよく、キレイに響く音が特長である。
 PC330は、低域もよく締まリ、他の2モデルとくらべると、やや寒色系の音としてまとめてあるのが目立つ点だ。聴感上の周波数帯域はPC550Eより狭く感じるが、明快でクリアーな音色はストレートな良さがある。全体にソリッドな音であるために、音場感はややスタジオ的となり、エネルギー感はかなりある。低域の腰が強く安定した感じが好ましい。

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