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マイクロ RX-5000 + RY-5500

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 超重量級ターンテーブルの強烈なイナーシャを利用して、糸ドライブで駆動しようとする原理をオーソドックスに製品化したシステムである。角型の超重量級ターンテーブルベースはコーナーにサブフレームでアームを固定可能。予想より場所をとらない。

リン LP12

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 DD全盛の現在ではユニークな存在のベルトドライブ型のアームレスプレーヤーだ。モーターは24極シンクロナス型でスピードは33 1/3回転のみの1スピード型。ターンテーブルとアームボードは、3点支持でフローティングされる。機械精度の優れた佳作だ。

ラックス PD555

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/アームレスタイプなので、組合せるアームによって音質もとうぜん変る。ここではAC40000MCとFR64Sの二者を試みた。結論から言えばこの製品はFR系で音の仕上げを下らしく、ACの組合せはあまりよくない。総体に抑制を利かせすぎた印象で、おとなしいが音がめり込んでしまう。その点でPX1と一脈通じるが、PX1が重低音をややゆる目に聴かせるのに対して、こちらは行儀はよいが物足りない。その点、FRに替えると、中〜高域がずっと張り出してきて、ACよりは聴きどころのポイントがはっきりしてくる。しかし重低音は同じく不足ぎみ。そこに中〜高域が張り出すので、どこか国産のスピーカーの音のバランスのように、オーケストラのトゥッティなどではやや派手に流れる傾向がある。いずれのアームの場合でも、音がふわりと浮き上がる感じが出にくく、ステレオの音場空間の広がりが狭くなる傾向になる。音の自発性、湧き上るような楽しさ、がもっと出てきてもよいのではないだろうか。
 ところで、この製品はレコードを真空で吸いつける点が特徴だが、手加減で吸着の強さを増減すると、同じレコードの音がずいぶん変わる。この辺にコツがありそうだが、手加減は相当難しい。最良点はレコード一枚一枚わずかずつ違う。そして最良点を探し出してみても、音の豊潤さ、たっぷりした響き、がやはり物足りない。
●デザイン・操作性/PD444の外観とよく似ているが、こういう重心の高いデザインは、インシュレーターの効果の点で好ましくない。また、前方からみたとき、駆動モーターがまる見えで、しかも仕上げの雑な印象は不可解。ボタン類の配置と感触はわるくない。また、アーム取付ベースのところに、オーバーハング修整用の目盛りのついているのはとても親切だし便利でもある。

マランツ Tt1000L

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/アーム交換型だが、アーム取付ベースが、発表されている三種類(一種類はSME専用なので実質的には二種類)では、市販のアームに対して不足で、現時点では選択の範囲がかなり限られる。たとえばオーディオクラフトもSAECもテクニクスも、ベースの取付孔が小さすぎて組合せ不可能。孔を拡げればよいというのは理屈で、実際に工具のないアマチュアには不可能だ。というわけで、不本意ながらFR64S一本でのみ、試聴した。
 明るい音。多少カリカリした硬質の傾向。そしてプログラムソースによっては、いくぶんカン高い、ないしはハシャギ過ぎのような音になる。これは、ターンテーブル金属の材質や、テーブルマットやベースのガラスという材質の音であるかもしれないが、FRのアームにもこの傾向があるので相乗効果がウラ目に出たのだろう。しかしアームの交換が事実上不可能なので、アーム引出しコードをマイクロの新しい二重構造の銀線コード(MLC12S)に変えてみた。これでかなり改善され、音の明るさが、躍動感、生きの良さ、といったプラス面で、生きてきた。ただ、どちらかというと、やや、大掴みで屈託がなく、こまやかなニュアンスという点ではもう一息の感じ。また、どことなくワウ的な音のゆれ、および音量を上げるとモーターのゴロが、それぞれ、他の同クラスの機種よりもわずかずつ耳につくように思った。
●デザイン・操作性/ガラスを主体にして、ユニークで、しかも明るい楽しい雰囲気にまとめた点はとてもいい。デザインで欲しくさせる。スタート・ストップのスイッチが、ワンタッチの電子式で、ターンテーブルの回転の切れ味も悪くない。アームベースのロックの方法も確実でユニーク。音質本位というより、見た目の楽しさも含めて買うべき製品、といった作り方のように思える。

「ハイ・クォリティ・プレーヤーシステムのテストを終えて」

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

音質について
 良くできた製品とそうでない製品の聴かせる音質は、果物や魚の鮮度とうまさに似ているだろうか。例えばケンウッドL07Dは、限りなく新鮮という印象でズバ抜けているが、果物でいえばもうひと息熟成度が足りない。また魚でいえばもうひとつ脂の乗りが足りない、とでもいいたい音がした。
 その点、鮮度の良さではL07Dに及ばないが、よく熟した十分のうま味で堪能させてくれたのがエクスクルーシヴP3だ。だが、鮮度が生命の魚や果物と違って、適度に寝かせたほうが味わいの良くなる肉のように、そう、全くの上質の肉の味のするのがEMTだ。トーレンスをベストに調整したときの味もこれに一脈通じるが、肉の質は一〜二ランク落ちる。それにしてもトーレンスも十分においしい。リン・ソンデックは、熟成よりも鮮度で売る味、というところか。
 マイクロの二機種は、ドリップコーヒーの豆と器具を与えられた感じで、本当に注意深くいれたコーヒーは、まるで夢のような味わいの深さと香りの良さがあるものだが、そういう味を出すには、使い手のほうにそれにトライしてみようという積極的な意志が要求される。プレーヤーシステム自体のチューニングも大切だが、各社のトーンアームを試してみて、オーディオクラフトのMCタイプのアームでなくては、マイクロの糸ドライブの味わいは生かされにくいと思う。SAECやFRやスタックスやデンオンその他、アーム単体としては優れていても、マイクロとは必ずしも合わないと、私は思う。そして今回は、マイクロの新開発のアームコード(MLC128)に交換すると一層良いことがわかった。
 
デザインと操作性
 単に見た目の印象としての「デザイン」なら、好き嫌いの問題でしかないが、もっと本質的に、人間工学に立脚した真の操作性の向上、という点に目を向けると、これはほとんどの機種に及第点をつけかねる。ひとことでいえば、メカニズムおよび意匠の設計担当者のひとりよがりが多すぎる。どんなに複雑な、あるいはユニークな、操作機能でも、使い馴れれば使いやすく思われる、というのは詭弁で、たとえばEMTのレバーは、一見ひどく個性的だが、馴れれば目をつむっていても扱えるほど、人間の生理機能をよく考えて作られている。人間には、機械の扱いにひとりひとり手くせがあり、個人差が大きい。そういういろいろな手くせのすべてに、対応できるのが良い設計というもので、特性の約束ごとやきまった手くせを扱い手に強いる設計は、欠陥設計といえる。その意味で、及第点をつけられないと私は思う。適当にピカピカ光らせてみたり、ボタンをもっともらしく並べてみたりというのがデザインだと思っているのではないか。まさか当事者はそうは思っていないだろうが、本当によく消化された設計なら、こちらにそういうことを思わせたりしない。
 そういうわけで、音質も含めた完成度の高さではP3。今回のように特注ヘッドシェルをつけたり、内蔵ヘッドアンプを使わないために引出コードも特製したりという異例の使い方で参考にしたという点で同列の比較は無理としてもEMT。この二機種の音質が一頭地を抜いていた。しかし一方で、操作性やデザインの具合悪さを無理してもいいと思わせるほど、隔絶した音を聴かせたマイクロ5000の二重ドライブを調整し込んだときの音質の凄さは、いまのところ比較の対象がない。とはいってもやはり、この組合せ(マイクロ5000二重ドライブ+AC4000または3000MC)は、よほどのマニアにしかおすすめしない。
 これほどの価格でないグループの中では、リン・ソンデックの、もうひと息味わいは不足しているが骨組のしっかりした音。それと対照的にソフトムードだがトーレンス+AC3000MCの音もよかった。またケンウッドの恐ろしく鮮明な音も印象に深く残る。

マイクロ RX-3000 + RY-3300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/上級機の5000シリーズと同じように、レーシングマシン(さしずめF1か?)的な性格を持っているので、5000同様、使いこなし次第で良くも悪くも出る。ところで3000の場合、5000とくらべると駆動ユニットも、ターンテーブルの重量も、そのベースも、それぞれ大幅にコストダウンされているので、比較する前は、たとえばエクスクルーシヴのP3とP10のような差が出るのではないかと考えた。けれど、うまく調整ができてみると、価格や見た目の差から想像していたほどの大きな音質の差は出てこなかった。言いかえれば、これはいわゆるコストパフォーマンスが良い(5000と比較しての話、だが)ということになるのかもしれない。
 とはいうものの、むろん違いはある。たとえば重低音の量感。5000よりもごくわずかとはいえ、しかし決して無視できない程度に、低音域での量感が減る。5000の二連ドライブとでは比較するのは割が合わない気がするが、あえてそれとの比較でいえば、重低音でかすかに聴こえるような性質の音が、3000では「消える」とオーバーに表現したくなるような違いはある。けれどそういう音は、5000の二連ドライブのベストの状態でしか、聴けない音、ともいえる。AC4000MCを組合わせての試聴感でいえば、調整がうまく行った際の音質では、リンやトーンレスよりはむろん上廻るし、L07Dをも凌ぐ。ただ調整には多少のコツが必要。たとえば糸の結び目のところでのゴトンゴトンというノイズが、音量をかなり上げて耳につかないようにするには、糸の張り方(テンション)を相当入念に調整する必要がある。ユニットを置く台、その他については5000の項をご参照いただきたい。
●デザイン・操作性/5000ほどの重厚さのない点が好き嫌いの分れみちか。駆動ユニットの操作性は5000よりもやや良い。

マイクロ RX-5000 + RY-5500

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/製品、というよりもキット的な性格の、いやそれよりもレーシングマシン(F1)のように、使い手自身がチューニング(調整)し込んでどこまで性能を抽き出すといった性格の、いわば実験機的なマシーンといえる。たとえば駆動(ドライヴ)、ターンテーブル各ユニットを置く台(ベース)の材質や厚みの問題。その台をどこにどう置くか。そしてユニットの水平度を正しく出す。糸をかけるときの糸の長さ、張り(テンション)の強さ。アームベースとアームの選定。アームによってはさらにアーム自体の調整。そしてターンテーブルにシートを乗せるか乗せないか。どこの、どのシートにするか……。思いつくまま列挙してもこれだけある。実際に使いはじめてみれば、さらに細かい問題が出てくる。ところで今回は、マイクロの長沢氏の助言で、ターンテーブルユニットをもう一台追加して、二連ドライブを試みる。その際にはさらに、二台の同一ユニットの水平度と距離の調整。糸を四重がけにしてみる。そのテンション……。
 音質のテーマのところに音質のことをひとつも書かないのは、右の各要素の調整(チューニング)のしかた如何で、音がコロコロ変わるからだ。しかし、二連駆動で、AC4000MCをAX7G型アームベースにとりつけて、調整を追い込んだときの音は、どう言ったらいいのか、ディスクレコードにこんなに情報量が刻み込まれていたのか! という驚きである。音の坐りがよく、しかも鮮度高く、おそろしくリアルでありながら聴き手を心底くつろがせる安定感。マニアならトライする価値がある。
●デザイン・操作性/意匠的には洗練されているとはとうてい言えない。操作性の悪さは論外。加えて高価ときている。チューニングし損なったら、何もいいことなし、というきわどいマシーンだ。けれど隔絶した世界の音を一旦聴いたら、もう……。

マイクロ RX-3000 + RY-3300

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 超重量級ターンテーブルユニットと駆動用のモーターユニットを組み合わせ使う糸/ベルトドライブ兼用アームレスプレーヤーシステム、RX5000/RY5500と同じ構想による新製品である。
 RX3000ターンテーブルユニットは、ユニークなデザインを採用したダイレクトドライブ方式のアームレスプレーヤーシステムDDX1000、DQX1000と同じく3本脚構造のデザインを受け継ぐ。ターンテーブルの回転による共振は、機械的強度、重量で吸収する設計である。設置時の安定性は高く、3本の脚部にそれぞれトーンアームが取付可能であり、場所的制約も予想以上に少ないという特徴がある。
 ターンテーブルは、銅85%、錫その他15%の合金である砲金製。比重や内部損失が大きく、直径31cm、重量10kgというヘビー級だ。フレームとターンテーブル裏側との間を凹凸型に加工し、このギャップ間の空気層でもターンテーブルの共鳴をダンプする構造を採用している点はこのモデルのみの特長である。直径16mmステンレス製シャフトは熱処理、研磨後、軸受と一対の組合せ鏡面仕上げされる。シャフトに接する軸受側は特殊ベアリング採用で、油膜に鉛の分子が均一に析出され、滑らかな回転を保てる特長がある。シャフトとベアリング間はオイルバス方式である。
 RY3300モーターユニットは、4極6スロット・アウターローター型サーボモーター使用で、ベルトと糸共用のプーリー付。糸はアラミド繊維製である。
 RX3000/RY3300に、オーディオクラフトのトーンアームを組み合わせて使ってみる。糸がけなどセッティングは手順を考えて行なえば比較的容易である。速度調整もストロボ板でチェックしたあとは、回転数の安定度は高い。RX5000/RY5500と比較すると、充実感は一歩譲るが、音色の明るさ、反応の速さではこちらの方が勝るようだ。重量級ターンテーブルの特長である緻密で内容の濃い、情報量の多い音は、並のDD型とは一線を画した独特の魅力で、カセットを聴いていてオープンリールを聴いた場合の印象と比較できる。置場所は剛性の高い台上がよく、ターンテーブルシート、スタビライザーなどは、ケース・バイ・ケースで試用するのが好ましい。

T.T.O. R-12

瀬川冬樹

ステレオサウンド 50号(1979年3月発行)
特集・「栄光のコンポーネントに贈るステート・オブ・ジ・アート賞」より

 東京テレビ音響──といっても秋葉原のテレオンとまちがえられそうなほど、このメーカーを知る人はもはや少ないが、ティアックの前身、といえばわかりが早い。いまやテープレコーダーの専業メーカーとして名高いこのメーカーの最初の作品は、しかしディスク・ターンテーブルであった。型名をR12というリムドライブ型2スピードで、78/33がR12A、45/33がR12B。駆動モーターをインダクションでなくヒステリシスシンクロナスにしたものが、それぞれR12HA、HB。発表は昭和28年末だが、一般への発売は翌年に入ってからだった。当時、不二家の電蓄用リムドライブか、アカイのC3,C5ぐらいしかまともなモーターのなかったところへ、このプロフェッショナルタッチの本格的ターンテーブルの出現はショッキングで、私は吉祥の外れにある工場までこれを買いに行った。二年ほど後にこのターンテーブルはヤマハに買収され、GKデザイン研究所の手でリファインされて、KT1,KT1Hの名に変るが、ともかく、日本のLP初期にこのターンテーブルの果した役割は大きい。かつて日本電気音響KK(現DENON三鷹工場)で、NHK納入用はじめ本格的なプロ用機器の設計技術陣の中心人物であった、谷勝馬、阿部美春、井上丘氏らの作品なのだから、設計が良いのは当り前。

マイクロ DD-8, DQ-5, DQX-500, DQX-1000, DOL-120, DOL-150Z, BL-91, RX-5000+RY-5500

マイクロのアナログプレーヤーDD8、DQ5、DQX500、ターンテーブルDQX1000、DOL120、DOL150Z、BL91、RX5000+RY5500の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

Micro

リン LP12

リンのターンテーブルLP12の広告(輸入元:オーデックス)
(ステレオ 1979年2月号掲載)

LP12

トーレンス TD126MkIIIc/MC

トーレンスのアナログプレーヤーTD126MkIIIc/MCの広告(輸入元:パイオニア・エンタープライズ)
(ステレオ 1979年2月号掲載)

TD126

テクニクス SP-10MK2

菅野沖彦

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 一九六九年六月に世界に先駆けてダイレクトドライブ・ターンテーブルの開発を発表したテクニクスは、翌一九七〇年六月にSP10という型名で製品発売に踏みきった。このSP10の発売以来、同社のプレーヤーシステムをはじめ、各社のターンテーブル、プレーヤーシステムは徐々にローコストの製品に至るまでダイレクトドライブ化されてきたのである。その間、SP10は同社のトップモデルとしてばかりではなく、世界的にもその名を知られるほどの高い信婿性とクォリティをもつターンテーブルとして存在していたのである。このように、SP10は今日のターンテーブル、プレーヤーシステム界をほとんどダイレクトドライブ化の方向に導くための原動力となった製品であり、その功績は非常に大きいといわざるを得ない。ここでは、ダイレクトドライブ方式がよいのか、あるいはリムドライブ、ベルトドライブ方式がよいのかという論議はさておくとして、少なくともそれまでになかった駆動方式を採用し、そしてここまでダイレクトドライブ方式一色に塗り変わった背景には、やはりダイレクトドライブ方式ならではの大きなメリットが認められたからだと思う。
 そのパイオニア的製品であるSP10に、最新のクォーツロック制御方式を採り入れ、各部に改良を加えてリファインしたモデルがこのSP10MK2である。ここで採用されたクォーツロックDD方式もまた、現在ではかなりのローコスト・プレーヤーに採用されるまでになっている。この速度制御方式は、必ずしもSP10MK2が最初とはいえないかもしれないが、いずれにしても今日隆盛を極めるクォーツロックDDプレーヤーの先駆となった製品の一つにはちがいない。ともかく、オリジナルモデル、改良モデルともに発売されるごとにこれほど大きな影響力をそのジャンルの製品に与えた製品はかつてなく、そうした創始者としての血統のよさが、他の優れたこのクラスのダイレクトドライブ・ターンテーブルを押えて〝ステート・オブ・ジ・アート〟に選ばれた大きな理由である。
 もちろん、いくらそうした血統のよさは備わっていても、実際の製品にいろいろな問題点があったり、その名にふさわしい風格を備えていないのならば、〝ステート・オブ・ジ・アート〟に選定されないわけである。その意味からいえば、私個人としては完璧な〝ステート・オブ・ジ・アート〟とはいいがたい部分があることも認めなければいけない。つまり、私はプレーヤーシステムやターンテーブルにはやはりレコードをかけるという心情にふさわしい雰囲気が必要であると思うからで、その意味でこのSP10MK2のデザインは、それを完全に満たしてくれるほど優雅ではなく、また暖かい雰囲気をもっているとはいえないのである。しかし、実際に製品としてみた場合、ここに投入されている素材や仕上げの精密さは、やはり第一級のものであると思う。このシンプルな形は、ある意味ではデザインレスともいえるほどだが、やはり内部機構と素材、仕上げというトータルな製品づくりの姿勢から必然的に生まれたものであろう。これはやはり、加工精度の高さと選ばれた材質のもっている質感の高さが、第一級の雰囲気を醸し出しているのである。
 内容の面でも、現在レコードを再生するという点においては十分に信頼に足るグレードをもっている。クォーツロック・DCブラシレスモーターという、このSP10MK2の心臓部であるモーターの回転精度は、プロフェッショナルのカッティングマシン用モーターが問題視されるほどの性能の高さを誇っているのである。今日のターンテーブルは、常にこうしたサーボコントロールによる回転精度と、ターンテーブルそのものの重量によるイナーシャによる回転のスムーズさという、二つの柱として論じられる。イナーシャを大きくしようとすれば必然的にターンテーブル径が大きくなりすぎ、逆にサーボコントロールしやすくするにはできる限りイナーシャが少ない方がいい。この両者のバランスをどうとるかが大きな問題となるのだが、SP10MK2はバランスよくまとめられ、このように高性能を得ているのである。

テクニクス SP-10MK2+EPA-100+SH-10B3

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 声のきめこまかさなど、思わず耳をさばだててしまうほどだ。音像は幾分大きめだが、それとても過剰ということではない。リズムの切れの鋭さ、あるいはアタックの強さなども見事に示す。

●デンオンDL103Sで聴く
 ひびきは大変にみずみずしい。声とオーケストラのバランスなど、いささかの不自然さもない。はった声が、硬くなったり、薄くなったりすることなく、自然にその力を感じさせる。

●シュアーV15/IVで聴く
 ピッチカートの誇張のないひびきと、ホルンによるふくらみのあるひびきの対比など、実に見事だ。このカートリッジのよさが十全にいかされたという印象だ。すっきりしていて、力感の提示も充分だ。

ビクター TT-101+UA-7045+CL-P1D

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 このカートリッジは、このプレーヤーシステムに、あまりあっていないかもしれない。音像はふくれぎみで、そのために鮮明さという点で、多少ものたりなさを感じなくもないからだ。

●デンオンDL103Sで聴く
 このプレーヤーシステムの明るい性格と、このカートリッジの冷静なキャラクターがうまくマッチしたというべきだろう。あいまいにならず、くっきりしたひびきをきかせる。ひびきのゆたかさへの反応もいい。

●シュアーV15/IVで聴く
 いきいきとしたひびきが魅力だ。音像は幾分大きめだし、ピッチカートのひびきなどもふくれがちだが、ひびきが陽性のためか、さして気にならない。たっぷりしたひびきだが、ひびきの輪郭はあいまいにならない。

マイクロ DQX-1000+MA-505S

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 音像は大きめだ。声のなめらかさをよく示すものの、表情が大きくなりがちだ。弦楽器によるピッチカートのひびきにしても、たっぷりひびいて、幾分ふくらみぎみだ。リズムのきれも甘めである。

●デンオンDL103Sで聴く
 このカートリッジのひびきとしては異色なことだが、音像は大きい。クラリネットのひびきのなめらかさなどよく示すが、もうひとつひきしまったひびきがきけたら、全体としてのまとまりはさらによくなっただろう。

●シュアーV15/IVで聴く
 たっぷりしたひびきへの反応はいい。ただ、おしむらくは、少しふくれぎみになることだろう。鋭いひびきも、とりわけ低い方でのものが、まろやかになるので、おっとりした印象だ。

ラックス PD441+フィデリティ・リサーチ FR-64S

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)

特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20で聴く
 声のつやがましたということと、音が積極的に前におしだされているということで、シュアーV15タイプIVより、まさる。低域のひびきに、さらに力が加われば、よりこのましいのだろうが。

●デンオンDL103Sで聴く
 このカートリッジの折目正しさに正直に反応しているというべきか。ひびきの輪郭をくっきりと示して、あいまいさがない。全体的なバランスに乱れはないものの、個々のひびきがつきはなされすぎているように感じる。

●シュアーV15/IVで聴く
 もし「ナチュラルなバランス」などという言葉が可能なら、その言葉は、ここでこそ使われるべきかもしれない。ただ、ひびきを、もう少し積極的に前におしだしてもいいのではないかとは思うが。

マイクロ DQX-1000

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プレーヤー専業メーカーらしく、意欲的かつオリジナリティがあふれたデザインをもったDDX1000を受継いだ新しいアームレス・プレーヤーシステムである。基本的な構造は、大型のインシュレーター内蔵の3本の脚の上に、リジッドなハウジングをもつフォノモーターを組み込んだタイプで、3本の脚部にはアダプターを使って、3本までのトーンアームが取付け可能である。
 駆動モーターは、FGサーボ付のダイレクトドライブ型で、水晶発振器を基準としたクォーツロックPLLサーボ方式が採用してある。ターンテーブルは、直径31cm、重量2・9kgのアルミダイキャスト製で、外周の重量配分が大きく、慣性モーメントを大きくした設計である。ターンテーブルのダンプは、DDX1000では表面でおこなわれていたが、今回は裏面に変更された。電源部はセパレート型で、カバーは磁性体を排除した木製。クォーツ回路はバイパススイッチで完全にキャンセルできる。これは、クォーツ回路の効果をチェックする目的とのこと。ゴムシートは音の解像力で定評があるSE22を使用している。このシートは、自重700g、中心に向かって6度のテーパーをもちディスクと密着させる設計である。

デンオン DP-80

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンのフォノモーターには、現在DP7000をトップモデルとして、DP6000、DP1700があるが、今回新しくDP80がシリーズに加わることになった。
 このニューモデルは、デザイン的には従来の製品よりもエッジを強調し、リジッドでよりメカニックな印象である。
 駆動用のモーターは、かなり大型の3相交流アウターローターサーボ型であり、当然のことながらDD方式である。このモーターはAC型であるため基本的にトルクムラが少なく、さらには3相モーターとなると逆転方向のトルクに対して働く回転磁界の3の倍数次高調波を打消す特長があって、よりSN比、ワウ・フラッター特性がよく効率も高くなるメリットがある。また、従来の同社モーターより一段とステーターの径を大きくし、この直径に適した極数を8極としたためスロットレスDCモーター同様の高い効率を得ている。
 サーボ方式は、デンオンが初期から手がけているターンテーブル内側に磁気コーティングをし、これに記録したパルスを回転検出用磁気ヘッドで検出するタイプで、これと9MHzの水晶発振器を基準とし分周した信号を位相比較するPLLクォーツロック型である。また、正回転、逆回転方向の駆動制御をしているため磁気ヘッド内部は2ヘッド構成で、方向検出用ヘッドがあることも特長だ。
 ターンテーブルは、直径30・8cm、重量3kgのアルミダイキャスト製だが、レコードをのせる上面ターンテーブルとモーターシャフトで固定される下面ターンテーブルをもった2重構造型で、両者はスプリングとダンピング材で連結してある。つまり、この構造により上面ターンテーブルは、プレーヤーベースから振動的にフローティングされており、上面の質量とスプリングのコンプライアンスでローパスフィルターを形成している。従って、外部振動に対しては、フィルター効果とダンピング材のエネルギー吸収でレコード面に伝わる振動は低減し、音響的なフィードバックにも効果があり、フィードバックマージンを大きくすることができる。
 その他の特長には、電子式ブレーキ、レーザーホログラフィ解析によるゴムシート、電源リレー採用による電源ON・OFFスイッチの除去のほか、プレーヤーベースがDP3000/6000と互換性があることがあげられる。

テクニクス SP-10MK2 + EPA-100 + SH-10B3

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より
 見事なプレーヤーシステムというべきだろう。それぞれのカートリッジのチャーミング・ポイントを、無理なく、自然に、ひきだしている。このカートリッジには、こういうところもあったのかといったようなこと(たとえば、シュアーV15タイプIVできけた弦楽器のひびきのなめらかさなど)も、思ったりした。
 余分なひびきがまといついてしまうとか、どこかで誇張されるというのは、とりもなおさず、そのプレーヤーシステムに、無理、背のびがあるからだろうが、そういうところをまったく感じさせないプレーヤーシステムだった。ひとことでいってしまえば、それだけプレーヤーシステムとして安定しているからということになるだろう。
 今回試聴したプレーヤーシステムの中で、きわだってすぐれていた。ただ、もし、これで、低い方の音が、もう一歩ふみこんできて、積極的にその力感を示せば、本当にいうことがないのだが、その点で、多少上品にすぎたかなと思わなくもない。このみがきあげられた、よごれのないひびきは、実に魅力的だったということにいささかのためらいもない。

ビクター TT-101 + UA-7045 + CL-P1D

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 なかなか積極的だ。奥の方でひっそりとひびかせるというより、前の方に押しだして、そこで明るくひびかせようとする傾向がある。力の提示にも不足していない。ひびきそのものはあたたかい。決して寒色系ではない。したがって、あたたかい、あるいはまろやかなひびきを持ち味とするカートリッジと組みあわされたときには、そっちの方向に走りすぎて、音像を肥大させかねない。
 こう書いてくると、いかにもくせの強いプレーヤーシステムのように思われかねないが、そうではない。むしろ、積極的にカートリッジのキャラクターをいかすタイプのプレーヤーシステムというべきで、ただ、場合によっては、スギタルハオヨバザルガゴトシになることもないということだ。
 積極的だということは、力強いひびきへの反応にもすぐれているということで、それは、このプレーヤーシステムのきかせる音がしっかりした土台の上になりたっているからと考えることができるだろう。ひびきが幾分肥大しても、ひびきの輪郭があいまいにならないというのは、いいことだ。

マイクロ DQX-1000 + MA-505S

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 恰幅がいいというべきか、全体的にたっぷりひびく。だからといって、さまざまなひびきが押し出されてくるというわけではない。そのために、まろやかなひびきは、まろやかに、なめらかに示されて、このましい。その点にこのプレーヤーシステムのチャーミング・ポイントがあると考えるべきだろう。
そのひびきのまろやかさが、シャープなひびきと十全に対比されたときに、まろやかさの魅力をつつがなく示しうるということも、どうやらいえるように思う。とりわけ、低域のひびきが、もう少し筋肉質になるというか、ひきしまるというか、くっきりすると、恰幅のよさがさらにはえるのではないか。メロウなひびきと、骨っぽいひびきとの対比が、もう一歩という印象だ。
 全体にまろやかに傾くというのは、それはそれで、ききやすさにつながるということもいえなくもないが、細部の音の動きのすべてをききとろうとするときに、多少のむずかしさがある。おっとり、ふっくらしたひびきが、ときには、きりりとひきしまったら、さぞや立派なひびきになるのだろうが。

ラックス PD441 + フィデリティ・リサーチ FR-64S

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 シュアーV15タイプIVで感じられるひろびろとした音場感は、なかなか特徴的だった。それに、3つのカートリッジで共通して感じられた、ひびきがついに脂っぽくならないところも、このプレーヤーシステムのこのましい点としてあげられるだろう。したがって、ここできけるひびきは、決してごりおしにならず、さわやかだ。
 それにさらに、腰のすわった、とりわけ低域での力感のあるひびきが加われば、全体としてのひびきの説得力は、一層ましたと思われるが、その点では幾分ものたりなさを感じた。
 おそらく、そのことと無関係ではないはずだが、「ナチュラルなバランス)がたもたれているにもかかわらず、ひっそりとした印象をぬぐいさりがたかった。もっともそれは、かならずしも弱点とはいいがたい。積極的すぎて、きいての印象が騒がしくなるより、よほどこのましいということも、いえるにちがいない。まとまりのいいプレーヤーシステムだが、もう一歩ふみこんできてものをいってほしいなというのが、率直な感想だった。

トランスクリプター Skeleton

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

オリジナルアームつきの方ではなくSMEと組合せるタイプが楽しい。

リン LP12

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

33回転オンリーは難点だがDD時代にアンチテーゼを示す音質の良さ。