ラックス PD555

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/アームレスタイプなので、組合せるアームによって音質もとうぜん変る。ここではAC40000MCとFR64Sの二者を試みた。結論から言えばこの製品はFR系で音の仕上げを下らしく、ACの組合せはあまりよくない。総体に抑制を利かせすぎた印象で、おとなしいが音がめり込んでしまう。その点でPX1と一脈通じるが、PX1が重低音をややゆる目に聴かせるのに対して、こちらは行儀はよいが物足りない。その点、FRに替えると、中〜高域がずっと張り出してきて、ACよりは聴きどころのポイントがはっきりしてくる。しかし重低音は同じく不足ぎみ。そこに中〜高域が張り出すので、どこか国産のスピーカーの音のバランスのように、オーケストラのトゥッティなどではやや派手に流れる傾向がある。いずれのアームの場合でも、音がふわりと浮き上がる感じが出にくく、ステレオの音場空間の広がりが狭くなる傾向になる。音の自発性、湧き上るような楽しさ、がもっと出てきてもよいのではないだろうか。
 ところで、この製品はレコードを真空で吸いつける点が特徴だが、手加減で吸着の強さを増減すると、同じレコードの音がずいぶん変わる。この辺にコツがありそうだが、手加減は相当難しい。最良点はレコード一枚一枚わずかずつ違う。そして最良点を探し出してみても、音の豊潤さ、たっぷりした響き、がやはり物足りない。
●デザイン・操作性/PD444の外観とよく似ているが、こういう重心の高いデザインは、インシュレーターの効果の点で好ましくない。また、前方からみたとき、駆動モーターがまる見えで、しかも仕上げの雑な印象は不可解。ボタン類の配置と感触はわるくない。また、アーム取付ベースのところに、オーバーハング修整用の目盛りのついているのはとても親切だし便利でもある。

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