リン LP-12 + LV-II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/明るく、引締ってなかなか良い音だ。とくに低音から重低音にかけてのコントロールに特徴がある。たとえばバスドラムやベースの低音。量感が十分でありながらキリッと引締めて、音階の変化や音色の違いがとてもよく聴き分けられる。スネアドラムやシンバルの音は、粒立ちの良さをことさらに感じさせはしないが、音がめり込むようなことはなく、爽やかな切り味が楽しめる。音が決して乾きすぎていない。ヴォーカルなど喉の湿りを感じさせるような血の通ったあたたかさがあるし、上滑りしたりハスキーになるような欠点がない。フォルティシモでも音がよく伸びる。従ってポップス系にはたいそう満足感を与えている。クラシック系でも、たとえばベルカントふうの明るいハッピーな音はとても気持ちよく聴かせる。が、反面、この音は曲によって少し明るすぎるような感じを受ける。たとえばフォーレのVnソナタ。音楽的におかしいところは少しもない。ヴァイオリンとピアノの音色もかくあるべきというバランスで鳴らし分ける。けれど、フォーレの世界にはもうひとつしっとりした味わい、陰の部分の色あいの複雑さ、が欲しく思われる。また、クラシックのオーケストラ曲に対しては、あとほんのわずか、低音をゆるめてよいのではないかと思わせる。だが、そうした高度な論議をしてみたくさせるということは、すでにこの音質が相当に高度であることを示す。そして、右のわずかな私にとっての不満は、アームをACに替えることで解決される(ただしこの組合せでは蓋がしめられなくなるのがまずい)。
●デザイン・操作性/前述のように国産のアームがハミ出るほど小型。仕上げは美しい。電源スイッチのON/OFF以外に操作性の問題点はないが、ボタンを押すたびにターンテーブルがフラフラ揺れる点は、改善の工夫が欲しいところだ。

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