Tag Archives: LP12

リン LP12 + Ekos + Lingo + Trampolin

菅野沖彦

レコードリスナーズ アナログバイブル(ステレオサウンド別冊・1996年6月発行)
「注目モデルの徹底試聴 レコードプレーヤー」より

 イギリス製品の多い、アナログプレーヤーだが、これもイングランドではないがスコットランド製であるから、メイド・イン・UKである。そのなかではもっともキャリアーの長いプレーヤーだ。そもそも、このメーカーはアナログプレーヤーの製造販売でスタートした会社で、このLP12は基本的に約20年前の誕生以来のロングセラーモデルである。
 最近のアナログブームとは無縁の、気骨のど根性製品で、回転シャフト周りなどの若干の変更だけでこの長寿を保ってきた。見事なものである。今回の試聴には、電源部やベースのオプションをフル装備したものが用意されたが、ベーシックのLP12との価格の違いが開きすぎるように思う。つまり本体価格は27万円でこれに最低限必要な電源部とベースが4万8千円で42万円弱のカートリッジ・レスのベーシック・モデルに対し、フルオプションのトータル価格は同じくカートリッジレスで91万8千円となるので2倍強である。少々常識を欠いたオプション設定と言わざるを得ない。
 このプレーヤーのよさは実質価値にあり、贅沢な趣味性はない。しかもフルオプションにしても、見た目はほとんど変わらない実質主義に徹しているのである。さらば、音が3倍の出費に見合うほど改善されるであろうか? その期待をもって聴いたのだが、これがリンにとって裏目だった。ベーシックモデルでこそ絶賛ものだが、100万円のプレーヤーとしては当たり前という感想である。
 たいへん優れた再生音で、腰と芯の座った実感溢れる質感と妥当なエネルギーバランスが、どのディスクにも高水準の再生音として聴けたけれど、ベーシックでもこの水準をそれほど下回るとは思えない。はっきり言って、割高感があるのである。この製品の能力と音のよさは評価するが、機械としての高級感やデザインセンス、素材、加工精度、仕上げなどの魅力は100万円のものではない。

リン LP-12 + LV-II

菅野沖彦

別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より

概要 このプレイヤーはスコットランドの製品で、大きな特徴はフローティングマウントシステムを採用していることだ。トーレンスのTD126シリーズと同じような考え方である。これは大体ヨーロッパのプレイヤーシステムの主流だ。このことに関してはほかのところでもう少し詳しく述べたい。このリンソンデックの場合は、フローティングが大変うまくできている。見た目にはあまり有難味のない、この値段に匹敵しない仕上げ、デザインで、おそらく普通の人がちょっと見ただけでは、これは五、六万円のプレイヤーじゃないかと思うだろう。プレイヤーは音がよければいいということではなくて、見た目も非常に重要な要素だと思うので、この点に関してはリンソンデックに対する私の評価は非常に低い。いかにいい音がしても、高級プレイヤーシステムとして家庭に持ってきて、大事に扱おうという気が起きないようなデザインではダメだと思う。ここまですばらしいものを作りながら、このデザインで平然としているリンソンデックのセンスには私としてはちょっと共感しかねる。ところが実際に音を聴いてみるとこれがビックリ。私はリンソンデックのプレイヤーはオーディオ界の七不思議の一つだと思っているけれども、とにかく大変に音のすばらしいものだ。今回は、リンソンデックが最近出したアサックというカートリッジを付けて試聴した。トータルでリン・ディスク・システムと呼ぶ。
音質 このアサックを付けて試聴した感じでの音は、とにかく非常に重心の低い落ち着いたエネルギーバランスで、ピアノを聴いても打楽器を聴いてもガッチリとした、しっかりとした音で実に重厚、剛健というか、音楽の表現力が非常にたくましく躍動する。やや繊細さには欠けるような感じがして、もう少しデリカシーの再現ができればいいと思うが、しかしこの力と豊かさがわれわれの聴感には非常に心地よいバランスだ。これは非常に特異なものだと思う。ベースの太くたくましい、ズシンとくるような響きの豊かさというのはほかのプレイヤーと一線を画して魅力のあるものだと思う。ただベースの音色的な細やかな変化はあまりきかれない。そういう意味では先ほど述べた、繊細さに欠けるということにも通じるかもしれない。それからリズムは下へ下へ、グングン押しつける傾向のリズムで、上へはねる傾向には聴こえない。このへんがこのプレイヤーの特色だろう。しかし、ドラムス、ベースはジャズを聴いても迫力十分だし、オーケストラを聴いた時の厚みのある低音弦楽器部分の怒とうのように迫る響きはなかなかのもの。管の音もバスクラとかバスーンとか、そのへんの領域の音が非常に奥深く、深々と鳴ってくれる。こういうところが、このプレイヤーならではの充実した再生音だろうと思う。奥行き、音場感、これもなかなか豊かで、ステレオフォニックな音場感がこういうように再現されるというのは、プレイヤーの共振モードが大変にうまくコントロールされているのだと思う。私の感じたところによると、500Hzから800Hzあたりが非常に豊かに響いてくる。これが音楽を奥深く感じさせることになっているのではないかと思う。高域の弦楽器群、バイオリンのハイピッチの音などは、決してしなやかとまではいかないけれども、とげとげしくもない。

リン LP12, ITTOK LV-II, ASAK

リンのターンテーブルLP12、トーンアームITTOK LV-II、カートリッジASAKの広告(輸入元;オーデックス)
(別冊FM fan 30号掲載)

LP12

リン LP12

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 DD全盛の現在ではユニークな存在のベルトドライブ型のアームレスプレーヤーだ。モーターは24極シンクロナス型でスピードは33 1/3回転のみの1スピード型。ターンテーブルとアームボードは、3点支持でフローティングされる。機械精度の優れた佳作だ。

リン LP-12 + LV-II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/明るく、引締ってなかなか良い音だ。とくに低音から重低音にかけてのコントロールに特徴がある。たとえばバスドラムやベースの低音。量感が十分でありながらキリッと引締めて、音階の変化や音色の違いがとてもよく聴き分けられる。スネアドラムやシンバルの音は、粒立ちの良さをことさらに感じさせはしないが、音がめり込むようなことはなく、爽やかな切り味が楽しめる。音が決して乾きすぎていない。ヴォーカルなど喉の湿りを感じさせるような血の通ったあたたかさがあるし、上滑りしたりハスキーになるような欠点がない。フォルティシモでも音がよく伸びる。従ってポップス系にはたいそう満足感を与えている。クラシック系でも、たとえばベルカントふうの明るいハッピーな音はとても気持ちよく聴かせる。が、反面、この音は曲によって少し明るすぎるような感じを受ける。たとえばフォーレのVnソナタ。音楽的におかしいところは少しもない。ヴァイオリンとピアノの音色もかくあるべきというバランスで鳴らし分ける。けれど、フォーレの世界にはもうひとつしっとりした味わい、陰の部分の色あいの複雑さ、が欲しく思われる。また、クラシックのオーケストラ曲に対しては、あとほんのわずか、低音をゆるめてよいのではないかと思わせる。だが、そうした高度な論議をしてみたくさせるということは、すでにこの音質が相当に高度であることを示す。そして、右のわずかな私にとっての不満は、アームをACに替えることで解決される(ただしこの組合せでは蓋がしめられなくなるのがまずい)。
●デザイン・操作性/前述のように国産のアームがハミ出るほど小型。仕上げは美しい。電源スイッチのON/OFF以外に操作性の問題点はないが、ボタンを押すたびにターンテーブルがフラフラ揺れる点は、改善の工夫が欲しいところだ。

リン LP12

リンのターンテーブルLP12の広告(輸入元:オーデックス)
(ステレオ 1979年2月号掲載)

LP12

リン LP12

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

33回転オンリーは難点だがDD時代にアンチテーゼを示す音質の良さ。

コンパクトなプレーヤーシステムのベストバイ

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「読者の質問に沿って目的別のベストバイを選ぶ」より

 特別な方法を採らないかぎり、レコードの直径よりキャビネットを小型化することはできない。となるとあとはアームと操作機能の整理によって、どこまで小型化できるかという問題になる。従来、短いアームは音が良くないという説があったが、それはトラッキングエラーの増大よりも、アームの共振の処理の問題であったのではないか。つまりロングアームにくらべてトラッキングエラーが1〜2度増すという点は、聴感上での明らかな歪の増加にはならないが、もうひとつのアームの共振に目を転じると、共振周波数の現われ方やその分布状態が、ショートアームのほうが聴感上不利であったのだろうと考えるわけだ。しかしこの点は、そういう面に注目して正しく設計が行われれば、アームを短くしたからといって音質が劣化するということは防げるはずだ。あと残るのは操作ボタンやスイッチの処理だが、これらは人間工学的に考えを煮つめれば、スペースファクターの点でさほどの問題は生じない。
 こう考えてゆくと、プレーヤーのサイズはいままでより小さく作ることは十分に可能だが、残念ながら日本のマーケットでは、同じ価格なら小さく作る方が見栄えが悪くて商売上で損をするというような、変な考え方にメーカーがとらわれているものだから、本質的にプレーヤーを小型化しようという問題意識で製品作りにとりくんだ例がきわめて少ない。その少ない中からしいてあげれば次のようになる。
●テクニクスSL01/この製品には、はじめから性能を十分に保ったままコンパクトなサイズに作ろうという明確な意図のみられる点が好ましい。モーターは単売のSP20に相当し、アーム軸受けはEPA100の考え方を簡略化したもの、というように、マニュアルプレーヤーとしては手抜きのない正攻法のまとめ方だ。ただ、色調は個人的には頂けない。プレーヤーでは目下余裕のあるテクニクスのことだから、明るい色調の製品を併売して自由に選べるようにして欲しい。
●ラックスPD121およびリン・ソンデックLP12/ともにアームレス型なので、どういうアームと組み合わせるかによって出来栄えが変わるが、両者とも、一応SMEを標準に考えているようだ。無駄のないシンプルな表情は、日夜手もとに置いてレコードを楽しませ、少しも飽きさせず、しかも性能面でも不満を感じさせない。

リン LP12

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 トーレンスの亜流というような気がしないでもないがプレーヤーシステムがバカみたいに大きくなるのを嫌う私としては、このコンパクトなまとまりは好ましい。