菅野沖彦
オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 アンプリファイアー篇」より
ボルダーは昨年から日本にも導入されたアメリカ製のアンプである。コロラド州ボルダーにあるメーカーで、ブランドは地名からとったらしい。製造者ジェフ・ネルソンはスタジオ・エンジニアとしてのキャリアの後、故郷のボルダー・コロラドで、この仕事を始めたと聞いている。いかにも、そうしたスタジオのプロとしての経験が生きているアンプ作りで、外観にもデザイン(回路設計)にも、そして音にもプロサウンドのイメージが濃厚である。メーカーとしては新しいので、背景やブランドを一流品として扱うのは早いと思うが、この製品に接してみて、一級品であることは間違いないところ。あとは、この製品がどう一般に評価されるか、そして、その結果このメーカーの存在がどう定着していくかによって、名実ともに一流品として認められることになる。それには、メーカーとしての技術レベル、フィロソフィ、そして企業としての堅実性などが問われるわけだ。一流品は出来ても、一流ブランドは一朝一夕にして出来上るものではない。しかも、オーディオのような趣味製品は一流企業ならよいものが出来るというものではをいから、一にも二にもユーザーの評価にかかっているといえるだろう。プリアンプとパワーアンプでスタートしたボルダーの成長を期待したい。このパワーアンプ5500AEは、500シリーズの基本モデルとでもいうべきものなのだが、発売順ではこれにボリユウムや各種インジケーターの付いた製品が先に出て、シンプルな500AEは後で発売された。プロ機らしいモジュール構成的思想はボルダーの特徴だが、非常に合理的で高性能なアンプだと思う。音もプロ機らしい安定感を第一の特徴とし、豊かな力感と厚みのある質感は、一聴して高いクォリティを感じさせる。陰影の濃密な立体的な音像の出方はリアリティが豊かで、ウェイトが感じられる。低域がしっかりしていてグラマラスなバランス感だが重すぎない。
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