菅野沖彦
オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 アンプリファイアー篇」より
サンスイはトランスメーカーからスタートしてオーディオの総合メーカーとして発展。少々発展しすぎた点では同業で当時〝オーディオ御三家〟といわれたパイオニアやトリオ(ケンウッド)と共通した体質変化であった。パイオニアはLDの開発をはじめ、かなりマルチプルに大企業として発展を遂げたし、トリオは今は中級オーディオに的をしぼっている。サンスイは経営的困難を抱えながら高級〜普及機の広レンジのオーディオで頑張ってきたが、ついに外国資本が入って再建中である。しかし、従来からの体質は現体制下でも維持し続け、本来のオーディオの一流メーカーたり続けようという意欲をもっているのが喜ばしい。高級オーディオ機器の代表ということになるとこのパワーアンプが挙げられるが、B2301を原器としてリファインし続けてきた熟成の製品である。バランス伝送、バランス増幅という基本的回路コンセプトを土台に最新の素材とテクノロジーを投入し、入念な練り上げをおこなったアンプである。パワー素子LAPTは、サンスイのオリジナル開発で東芝が製造するハイリニア素子で、従来のトランジスターより格段に高い遮断周波数特性をもつ。すでに同社のプリメインアンプに採用され評価も高い。このパワー素子以外のパーツも抵抗、コンデンサー、線材のすべてにわたって試聴により最終セレクトされたアンプであり、作りっぱなしでよく鳴るただのアンプとは次元を異にするオーディオ製品らしいオーディオ製品だ。各所に剛性と防振の見直しがなされているし、ノイトリック製バランス入力端子やWBT製スピーカー端子が使われるなど並々ならぬこだわりの見られるのがうれしい。音は力強く弾力性に富んだ低音の深々とした響きに支えられたウェルバランスなものだ。しかし、従来のアンプよりさらに鋭敏で、素直な音色の多彩な変化が印象的である。楽音の変化に対するレスポンスが見事である。ゴールドパネルも新鮮だ。
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