インフィニティ Renaissance 90

井上卓也

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より

 IRS(インフィニティ・リファレンス・スピーカー)系のIRS−Vをスペシャリティとし、IRSベータ、ガンマ、デルタ、イプシロンのハイエンドモデルに続くルネッサンス・シリーズは、当初、カッパ・シリーズの後継シリーズとして発表された。そして、新カッパ・シリーズの登場により、リファレンス・シリーズを含み、4シリーズ構成が現在の同社のラインナップ。
 ルネッサンス90は2モデルある同シリーズの上級機で、床の設置面積を極限にまで抑えながら、充分な量感のある低域と平面振動板ユニットによる独自のハイディフィニションで、そのサウンドイメージを目指した。
 低域ユニットはかつて同社が開発した2組のボイスコイルをもち、一方を通常の低域用に、他方を重低音専用に使うワトキンス方式を再び採用。中低域にはIMGコーンを採用。そして中高域と高城には独自のEMI型と、帯域を4分割しながら振動板材料を2種類とし、音色の調和を図っている点は見逃せない本機の特徴。
 エンクロージュアは二等辺三角形に近い台型断面のトールボーイ型で、伝統的な密閉型採用でエンクロージュア内部に発生するノイズが音質を損なうことのない設計。
 基本的に前後両面に音を放射する中高域ユニットEMIMは、理想的条件とはいきにくい部屋とのマッチングが考慮され、後方への放射をコントロールする新手法が採用されている点が長所だ。本機は使用ユニットの改善で、音のクリアーさが格段に向上し、ディテールを見事に引き出す。広帯域でスムーズなレスポンスを聴かせ、とくに低域の余裕ある鳴り方には驚かされる。音場感情報は豊かで見通しが良く、遠近感を素直に聴かせるプレゼンスの豊かさは、こよなく楽しい。
使いこなしポイント
 脚部は、前2点・後1点支持となっており、後部の高さを調整するとバッフル面の仰角が変り、聴取位置での最適な音軸が得られる。

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