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インフィニティ Renaissance 90

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 小型トールボーイ・フロアー型システムにしてインフィニティが全力をつくして開発したモデルだけに、現時点でもその実力は、いささかの衰えもない。むしろ同社製品中でも内容の濃さは傑出した存在で、価格対満足度の高さは抜群のものがあり、音のクォリティ、音場感情報量の多さでもIRSに一歩もひけをとらない。

インフィニティ Renaissance 90

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 RENAISSANCE90は、現代的にソフィスケイトされた素晴らしいソノリティを聴かす、実に魅力的なモデルである。音の陰影を色濃く再現し、誇張感なく音楽を聴かせる、という意味では同社の最高傑作で、まさに粋のわかる人のためのモデルといえよう。

インフィニティ Renaissance 90, Kappa 7.1i

インフィニティのスピーカーシステムRenaissance90、Kappa7.1iの広告(輸入元:デノンラボ)
(サウンドステージ 26号掲載)

Infinity

インフィニティ Renaissance 90

井上卓也

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より

 IRS(インフィニティ・リファレンス・スピーカー)系のIRS−Vをスペシャリティとし、IRSベータ、ガンマ、デルタ、イプシロンのハイエンドモデルに続くルネッサンス・シリーズは、当初、カッパ・シリーズの後継シリーズとして発表された。そして、新カッパ・シリーズの登場により、リファレンス・シリーズを含み、4シリーズ構成が現在の同社のラインナップ。
 ルネッサンス90は2モデルある同シリーズの上級機で、床の設置面積を極限にまで抑えながら、充分な量感のある低域と平面振動板ユニットによる独自のハイディフィニションで、そのサウンドイメージを目指した。
 低域ユニットはかつて同社が開発した2組のボイスコイルをもち、一方を通常の低域用に、他方を重低音専用に使うワトキンス方式を再び採用。中低域にはIMGコーンを採用。そして中高域と高城には独自のEMI型と、帯域を4分割しながら振動板材料を2種類とし、音色の調和を図っている点は見逃せない本機の特徴。
 エンクロージュアは二等辺三角形に近い台型断面のトールボーイ型で、伝統的な密閉型採用でエンクロージュア内部に発生するノイズが音質を損なうことのない設計。
 基本的に前後両面に音を放射する中高域ユニットEMIMは、理想的条件とはいきにくい部屋とのマッチングが考慮され、後方への放射をコントロールする新手法が採用されている点が長所だ。本機は使用ユニットの改善で、音のクリアーさが格段に向上し、ディテールを見事に引き出す。広帯域でスムーズなレスポンスを聴かせ、とくに低域の余裕ある鳴り方には驚かされる。音場感情報は豊かで見通しが良く、遠近感を素直に聴かせるプレゼンスの豊かさは、こよなく楽しい。
使いこなしポイント
 脚部は、前2点・後1点支持となっており、後部の高さを調整するとバッフル面の仰角が変り、聴取位置での最適な音軸が得られる。

インフィニティ Renaissance 90

菅野沖彦

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より

 インフィニティのスピーカーシステムはEMIT、EMIMというトゥイーター、スコーカーを特徴としていて、あの美しい音のニュアンスは、豊かな低域に支えられた、これらの繊細な中・高域によるものである。プレイナー型と呼ばれる平面振動板による放射波は、そのトランジェントのよいメンブレン振動板のもつ軽妙さとともに魅力的な世界をつくっている。しかし、従来このEMIT、EMIMには高入力に対するダイナミックレンジに問題があった。つまり、大入力へのリニアリティの限界が意外に余裕が少なかったため、このユニットを多数使用したIRS−Vはともかく、それ以外のシステムでの中高域のダイナミックレンジに不満がなきにしもあらずであった。〝シズリング〟現象という癖が私には気になっていたのである。それを超えると明らかにクリッピングを起したものだ。
 これが、〝ルネッサンス〟シリーズから改良をうけ、大きく完成度を高めたのだからうれしい限りである。EMIT、EMIMの振動板並びにそのサスペンションが一新されたのである。この新ユニットは今後、すべての機種に使われることになるというから、インフィニティ・スピーカーシステムは一段と価値が上がる。あの繊細な中〜高域の透明感はやや薄らいだものの、新ユニットは十分なリニアリティをもちながら、インフィニティらしさは失ってはいない。天秤にかければ、これは明らかな改良である。こうして〝カッパー〟シリーズの後継機であるこのルネッサンス・シリーズは魅力を増すことになった。低域も従来の方式とは異なり、いわゆるワトキンス方式と呼ばれるデュアルボイスコイルによる新ユニットを採用し、エンクロージュア構造やデザインも一新されていて注目の新製品だ。姿態も美しく節度のあるトールボーイのファニチュア調に仕上げられていて、広い層に受け入れられるシステムであろう。