瀬川冬樹
ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より
前号の試聴後記で、採点の基準及び根拠について書くスペースがなかったのでその点を補足させて頂く。
採点の基準と根拠
100点満点法によっているが、実際には最低点を0点でなく65点付近でおさえてある。私個人としては、せめて50点ぐらいまで最低線を落としたかったのだが、編集長から「そんな点をつけてごらんなさい。50点なんていう製品を買う気になれますか!」と口説かれてみると、なるほど、それじゃまるで欠陥製品という印象になりそうなので、それはやめにした。
もうひとつ、この採点は音質ばかりでなく、価格とのバランス、デザインその他の要素を総合した点数なのだから、そうなると音質もデザインも違うスピーカーシステムに1点という僅差をつけることは、どうも理くつに合わないようにおもわれたので、100点を基準としてそこから3点ずつ減点しててゆく、という方法をとることにした。また、100点というのはいわば完全無欠ということで、そういう製品はないと思うから、現実にはマイナス3点の97点が私の最高点となっている。
そこのところをもう少し具体的に分析すると──
97~94点……市販品として、価格とのバランスを含め最高水準の製品。
91~88点……最高製品に準ずる製品。
85点…………一応水準に達している製品。合格点。
82~79点……価格その他からみてまあまあ。
76~73点……二~三の注文または条件つき。
70点以下……やや難点多し。もう一息。
──というような意味あいになる。
製品によっては必ずしも評価は3点きざみではなく、1点前後の補整をしてあるが、原則的に右のような基準によっているために、同点の製品が多い。しかし仮に点数は同じでも、ある製品は音質が良いがデザインに難があり、別の製品ではデザイン良く価格が安いが音質はもうひと息、というように、決して同じ水準というわけではない。これはくり返すが総合評価点なのだ。
したがって、音質に関していえば、3万円台の91点のスピーカーよりも5万円台の85点の方が音が良い場合が多い。この点に誤解が多く、10万円台の88点よりも3万円台の91点の方が音が良いかのように取り違えないで頂きたい。
国産スピーカーについて
36号で国産の躍進したことを書いたが、今回のテストでは必ずしもそう言い切れないことを再び感じたことは残念だ。というのは、前回のテストに入っていた製品は、各メーカーが時間をかけて十分に練り上げた自信作が多かった。ところが今回は、おそらくこの暮の商談に割り込もうということなのか、テストの期日ぎりぎりにかろうじてまとまったというような(正確にいえばまだまとまっていない)試作品あるいは量産以前の少量生産品がいくつか混じっていた。もう少し時間をかければもっと完成度の高い音質に仕上がるだろうに、と思える製品でも、スピーカーばかりは実際に量産に移って街に流れてみなくては、確かな評価ができにくい。そこで不本意ながらも、明らかな試作品については-3~-6点、または市販ホヤホヤの初期ロットの製品については-3点前後、それぞれ減点した。今回は右の理由からかなりの製品が減点対象になったため、総体に36号よりも国産品に辛いように見えると思う。
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テストに使った機器およびレコードは36号と共通なのでその評価は、前号100ページ、118~119ページ、120ページを、それぞれご参照いただきたい。また関連事項として、現代のスピーカーの特徴やその流れについて書いた、前号74~96ページの文を参照願えれば幸甚である。
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