ビクター S-777

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近では珍しい同軸型ユニットを使ったフロアー型システムである。このユニットは、基本的に既発売のバックローディングホーン型エンクロージュアを採用した、フロアー型システムFB7のユニットを同軸化したと考えてよい。
 30cm口径のウーファーは、軽量で腰が強い米国ホーレー社製コーンで等価質量35gと軽く、直径10cmのエッジワイズ巻ボイスコイルは、アルニコV型マグネットをスタックした内磁型の磁気回路と組み合わされ、95dBの出力音圧レベルを得ている。トゥイーターは、開口部にドリップ型イコライザーをもつ、700Hzカットオフのアルミホーンと直径38mm、厚さ40ミクロンの米国製強力アルミ合金のダイアフラムを使い、アルニコV型マグネット使用の磁気回路で14000ガウスの磁束密度を得ている。このトゥイーターは、ホーン部分がウーファーの磁気回路を貫通して組立てられ同軸化している。ウーファーとトゥイーターの相対的な位置は、新測定法フェイズ・モアレ伝送パターンから決定され、位相干渉が少ないフェイズ・リンク・コアキシャル型とし、整った波面が放射状に伝送され、また周波数による音像移動が少なく、安定した音像定位を得ている。
 エンクロージュアは、バスレフ型で、内部の定在波を減らすために、バッフルボードはやや上方に傾斜させあわせて椅子に座ったときに音軸が耳の位置にくるようにユニットの配置がしてある。
 このシステムは、全体に引締まったクリアーな音である。聴感上では、やや中域が薄い傾向があるが、質的に充分磨かれ緻密さがあるのがよい。音の反応が速く活気があり、キビキビした印象は、新鮮で気持がよい。

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