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「テスト結果から 私の推選するプリメインアンプ」

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 個人的に推選できる機種をあげよ、というテーマなので、その基準または根拠をはっきりさせておきたい。
 前回参加した27号でも書いたことだが(27号144ページ)、一流の音楽家が心をこめて唱い演奏した音楽が聴き手を心の底から感動させるのなら、それを正確に録音し再生できれば、レコードからでも感動を味わえる筈だ。筈、などという必要もなく現に私が永いレコード歴の中で、何度もそういう感動をこの身で体験している。そういう良いレコードと、そこから音楽のエッセンスを確かに拾い上げてくれるカートリッジと、それを可及的に正しく再現してくれるスピーカーとがあれば、その中間に置かれたアンプの良否がはっきりと聴き分けられる。物理特性がいかに優秀だと説明されても、音楽の感動、少なくとも演奏会の息づかいや気配のような人間臭さを、伝えてくれないアンプを、私は正確な増幅器だとは思えない。良いアンプは必ず、音楽を聴く喜びをもたらしてくれる。
 仮にどれほど歪みの少ない、きれいな立派な音がしても、どこか無感動に、よそよそしく、あるいは気配を少しも聴かせてくれないアンプは、私は使う気になれない、……そう、この「自分で使う気になれるアンプ」だけを、推選機種としてあげたい。価格の高い方から、ただし同一メーカーはひとつにまとめて書くと──、
■マランツ ♯1250 キリッとしまったブライトな音の魅力。これで柔らかい音の味わいがあれば申し分ない。
■ラックス 5L15 低域の量感があればさらに良いが現代的な解像力の良いクールな音が魅力。
■ラックス SQ38FD/II 5L15と対照的な、しかしそれだから存在理由のある暖かい音の魅力。
■ラックス L309V 新しさはないが安心して聴けるバランスの良さとソフトな耳ざわりの良さ。
■ローテル RA1412 上質の滑らかな音とバランスの良さ。音とデザインが少しちぐはぐだが。
■ヤマハ CA2000 上品ですっきり型だが、明るく美しい。こまやかでクールな音質。
■トリオ KA9300、KA7300D いくらか硬質の音だが、表彰の豊かさが独特。
■オンキョー A722/nII 音密度と力では最新型にわずかに及ばないが、ウェットで表情のこまやかな艶のある音色は類のない魅力。
■サンスイ AU707、AU607 607の方が表情に張りがあって若々しい。707はウェルバランスともいうべき安定感のある音質。
■デンオン PMA501 6万円を切るランクで、音の彫りの深さが魅力。ただし試聴記でふれたように、ノイズの不安定なところは? として残るが。
         ※
 次点としてはテクニクス80AとソニーTA5650があげられる。80Aは表情の豊かさまたは味わいの深さがもう少しあればよいと思ったが、やや薄味ながら歪み感のない美しい音は特筆すべき魅力。ソニーはバランスの良さと明るい力強さが良い点だが、反面、もうひとつ細やかな繊細感が出せれば素晴らしいアンプになる。また、パイオニアの各製品は、どのランクをとっても、全く美事といってよいほど中庸のバランスに仕上っていて、アンプの音にとくに個性的な音色を求めないユーザーには、むしろ安心して推められる製品だ。試聴記でも書いたことだが、音質ばかりでなくデザインや操作機能を含めて、およそこれくらい、あらゆる角度からみて中道精神で統一された製品をつくるというのは、実はかなりたいへんなことだと思う。
 それら以外にも、ダイヤトーンDA−U850、ソニーTA3650、トリオKA7100D、オンキョーA5等が、私の好みとは違うがそれぞれに良いところを持った製品だと思った。

サンスイ AU-607

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 価格順に下からずっと聴いてきて、ここから一拠にランクが7万円に近づいたためばかりでなく、やっと本格的に聴き込める音のアンプが出てきた、というのが第一印象だ。まず、くっきりと彫りの深い美しい艶の乗った音が、とても新鮮な印象で聴き手を惹きつける。ジャズのベースの低音弦でも、土台のしっかりした、うわついたところのない豊かな音が聴ける。オーケストラのトゥッティで、エネルギー・バランスがいくらか中〜高域に集まりがちな傾向が聴きとれたが音の空間的な広がりと奥行きをしっかりと鳴らす点、これまで出てきた製品の中では明らかにひと味違う再現能力を持っている。音楽の表情がとても生き生きと豊かに聴こえるが、従来のサンスイの製品のような華やいだ派手さは抑えられ、どこかしっとりと潤いを感じさせる。音の土台を支える中低音域に、もうひと息の密度があれば申し分ないが、この価格帯ではとくに目立つ新製品だ。

ソニー TA-3650

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 これは良くできたアンプだ。いろいろなプログラムソースを通して聴いて、違ったタイプのスピーカーを組合せてみて、どの場合にも破綻をみせないし、それが単に平均点的優等生であるところを越えて、もっと音楽を充実して聴かせる密度の濃い音を持っている。この製品が6万円そこそこの価格であることを忘れさせるまでには至らないにしても、あ、いい音がするな、とつい聴き込んでしまう程度の良さがある。ただ、音の力と緻密さを大切にしたことはわかるにしても、弦の高域や声楽で、いくらか芯を太く、多少強引に、音を硬めに鳴らす傾向はあるが、音の基本的な質が良いせいか、それが弱点とは感じられず、むしろパーカッションなどで、腰のくだけないクリアーな鳴り方を印象に残す。しかしトーンコントロールをONにすると、右の特徴が失われて、曇り空のような冴えのない音になってしまう。この部分の磨きあげがもう一歩、という感じだった。

サンスイ AU-607, AU-707

岩崎千明

音楽専科 1月号(1976年12月発行)
「YOUNG AUDIO 新製品テスト」より

 サンスイのアンプが、この秋大きく変った。変ったといってもその特長たるブラック・パネルはそのまま踏襲され重量級の風格は変ることがない。しかしよくみると、その仕上げは、艶消しのソフトな感触に変り、今までの鋭どさがぐっとやわらいだ。つまみも角を丸くおとしてまろやかなタッチで、つまみの数も、いままでにくらべてずっと抑えて、全体にシンプルだ。こうした一段とソフトな感じがこの新シリーズ、607、707の大きな特長であることは、その音を聴くと、一層はっきりすることになる。従来、サンスイのアンプは「中音が充実し、やや華麗な中に、鮮明な迫力一ぱい」として受けとられて来た。
 人気絶頂の米国JBL・スピーカーの総代理店たるサンスイの特典が、アンプにいかんなく発揮されている、ともいえそうな鮮度の高い迫力ある音がブラックパネルのサンスイのアンプの共通的な特長であり、さらに中音から中高音にかけてのクリアーな力強さが感じられてきた。
 ところが、今度の新シリーズは今までのこうした特長からははっきりと変化を知らされる。路線が変ったというよりも、今までのすべてを突き破ったといえる。鮮明さは少しも失わずに、しかも、全体に受ける印象は、まろやかな音だ。どぎつさが全然なく、すべてに落ち着きとゆとりを感じさせる、高い水準の完成度が見事なほどだ。
 外観のイメージから受けることのできる、大人っぽい高級感は、音の方にもはっきりと感じることができるのが、今度の新シリーズ、607、707なのである。
 サンスイのアンプは今までもハイクラスのマニアの愛用者が多い。逆にいえば、高価格のアンプがよく売れる。1年前のAU7700といい、2年前のAU9500といい価格的には一般的平均よりもずっと高い高級品であった。こうした高価なアンプであれば、内容的には当然優れているわけで、それを十分使いきり、生かせることのできるファンが、サンスイの愛用者に多いといえる。
 新シリーズはこうした点をもっとはっきりと意識して、製品の企画に反映した、といえるだろう。初心者やレベルの低いファンにとっては今までのサンスイのアンプにくらべ物足りないと思われるほど、おとなしい音、おとなしいデザインにまとめられているのは、実はこいうした、大人のファンのための高級品だからであろう。
 607は65/65Wの、家庭用としては十分にして無駄のないパワーをもち、機能面でも、余り使うことのないものを整理し、しかも、若いファンのための必要なアクセサリーともいうべきテープ録音再生の端子は2台分を用意してあり、その使いやすい切換つまみでまとめたパネルつまみは、新製品にふさわしく、便利で有効だ。
 707は出力を一段と上げて80/80Wと強力でしかも機能面はマニア、音楽ファンの愛用者のあらゆる望みをかなえてくれるに違いないほどいっぱいだ。
 最近のアンプはかなり技術志向が強くて、「DCアンプ」「電源左右独立」といったアンプの内部を理解していないとつかみにくい面が強調されることが多い。サンスイの新シリーズもむ論、この面で同様の新技術を採用しているが、要はそうした技術が、サウンドにいかに生かせるか、である。サンスイの707、607、デビュー早々若い音楽ファンが熱いまなざしをもって迎えられているというのも本当の理由は、こうした実質的な、真の良さのためだろう。

マランツ Model 1150MKII

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来の♯1150を基本に、細部の改良が加えられた新製品である。外観、機能などからは、従来のモデルとさして変化はなくいわばMKIIらしいMKIIといえる。
 音質的には、全体に従来のモデルに比較して、音が一段と鮮明になり、とくに、低域の安定度が増して、むしろ、上級機♯1250に近づいた感じが強い。また、一般にドライブし難い、静電型やダイナミックタイプ平板型スピーカーに表示パワー以上のパワーが送り込めるのも、ひとつの特長である。パルシブな音の再生は見事であり、反応が早い音を聴かせるのは、この♯1150IIの魅力であろう。

オンキョー Integra A-722nII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「世界の一流品」より

 優秀なセパレートアンプの音を聴き馴れた後でいきなりプリメインアンプを聴くと、同じレコードの音が何か欠落したような物足りなさを感じるのはしかたがない。が、そういう方法でプリメインアンプのテストを毎日のように繰り返していると、聴いていて永続きするアンプと、じきに脱落してゆくアンプとに分かれてくる。A722/nIIは、そうして私の家で最も永続きのしているプリメインアンプである。
 この音質はいくらか線が細くウェットだが、何よりも優れているのは音楽のフィーリングを細やかに伝えてくれること。たとえば唱い手の感情をしっとりと情感豊かに、生き生きと蘇えらせるところを、私は高く評価している。ファンクション類も、ラウドネスの利き方を除けば実用的によく整理されていて申し分ない。デザインや仕上げもていねいだが、わずかに陰気で野暮な感じが残念。基本をくずさないことを条件にマークIIIの出現を希望したい製品。

マランツ Model 1250

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 最近の多様化したセパレート型アンプの登場によって、プリメインアンプはその本来の意味を問われることになり、とくに高級プリメインアンプにともすればプリメインアンプとセパレート型の境界線に位置するだけに、かなり苦しい立場に立たされているように感じられる。マランツ#1250は、基本型をコントロールアンプ#3600とパワーアンプ#250Mにとり、一段とリフアインされた内容をもっているために、質的にも量的にも、はるかに価格が高いセパレート型アンプに匹敵するものがある。機能面は、とくにテープ関係が#3600より一段と実戦的なものに発展し、使いやすく、大型フロアースピーカーを充分にドライブするプリメインアンプの本格派である。

テクニクス SU-8080

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 機能的に整理されたパネルフェイスは、類型的なパネルをもつ例が多いプリメインアンプとしては際立った印象を受けるが、本機は、内容としてもハイレベルインプット以後は、完全にDCアンプ化が可能という、いわば挑戦的な新しさがある。
 回路構成上のポイントとなっているのは、DCアンプ構成のパワーアンプ部である。通例とは異なって、初段の差動増幅用にFETではなく、デュアルトランジスターを採用したパワーアンプ部は、フロントパネルのメインアンプ・インプットスイッチをダイレクトにすると利得が42dBというハイゲインアンプとなり、AUXなどのハイレベル入力は直接パワー部に入り、結合コンデンサーレスのDCアンプとなる。セレクターがヴィア・トーンコントロールの場合には、ハイレベル入力は、トーンコントロール回路を通りパワー部に入るが、このときには、パワーアンプゲインは28dBとなり、トーンコントロール段の利得は14dBと加算してトータルで42dBとなる。また、オーディオミューティングも、パワー部のNF量を14dB変化していっていることも特長である。この構成が、テクニクスでプリメインアンプならではのDC化といっている理由である。
 機能面では、イコライザー段に内蔵されたサブソニックフィルター、カートリッジ負荷抵抗と容量の各2段切替、DCアンプ構成時に、ハイレベル入力に接続された機器からの直流成分の洩れからスピーカーを保護する、カットオフ2Hzの直流カットスイッチなどがある。
 SU8080は、色付けが感じられないストレートな音をもっている。従来のテクニクスアンプよりも粒立ちが明確で、聴感上で、力強さが加わっている。

ソニー TA-F7B

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 全般的にプリメインアンプの焦点は、パワー対価格に絞られているようであるが、ソニーから新発売されたプリメインアンプTA−F7Bは、価格的にもプリメインアンプトップエンドにあるだけに、量的なグレイドアップというよりは、むしろ本質的な質的向上にポイントをおいた、いわばプリメインアンプの形態をとってはいるが、質的にはセパレート型アンプの内容をもった製品と考えることができる。
 外観上は、まずパネルフェイスの色調がソニーのアンプとしては、はじめてのブラック系に仕上げてあることが特長であり、型番末尾のBは、ブラックを意味している。
 回路構成上の特長は、プリアンプ部の各ユニットアンプが初段FETを使うDCアンプ構成であり、パワーアンプ部もDCアンプ構成で、初段がデュアルFETによる差動増幅、出力段は、ユニークなV−FETと高周波トランジスターをカスコード接続にしたパラレルプッシュプル回路を使う純コンプリメンタリーSEPP・OCLである。ユニットアンプ間の結合コンデンサーは、トーンやフィルターをOFFの状態では、フォノ入力からSP出力まで2箇所、AUXからは1箇所と大幅に減少し、低い周波数での位相特性が優れた設計である。電源部は、パワーアンプ電圧増幅段とプリアンプ用、パワーアンプ電力増幅段用が左右チャンネル独立型で、3トランス方式である。また、信号経路を単純化する目的で、フォノ入力切替、スピーカー切替は、リレーを使うリモートコントロールであることに注目したい。
 TA−F7Bは、歪感がまったく感じられない、滑らかで粒立ちが細やかな音をもっている。聴感上の帯域は、かなりワイドレンジだが、ちょっと聴きには、広さを感じさせない良さがある。音色は軽く、明るいタイプで、中低域の豊かさ、ナチュラルで透明感のある中高域が魅力的である。

ビクター JA-S75

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 型番末尾数字が従来の1から5に変わった新シリーズアンプの第一弾製品である。パネルフェイスは、印象が少し変わっているが、もっとも大きい点は、フロントパネル面のテープ入出力端子が省かれたことだ。
 回路構成上の特長は、音楽信号のダイナミックな変化に伴ってアンプ内部に発生する動的干渉を抑え、音像定位の向上を狙って、電源部をかなり重点的に強化している点だろう。プリアンプ部およびパワーアンプ部のプリドライバー以前のA級動作をしている部分には、独立トランスを使い、各ユニットアンプには、左右独立給電方式を採用している。パワーアンプのB級動作部分は、左右チャンネル独立の専用トランスを使うなど、3トランス方式である。なお、イコライザー段は、初段FET3段カスコード接続の入力コンデンサーレス型だ。
 使用部品では、音量を絞ったときに音量対歪率のリニアリティがよい、ハイリニアリティボリュウム、高調波歪みが少ない新開発マイラーコンデンサーの採用が目立つ。
 JA−S75は、滑らかな粒立ちの細やかさと、力強い伸びやかさが両立した音である。全体に表情が豊かで洗練された印象が強く、充分にクォリティは高い。

トリオ KA-7700D

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 本機は、左右独立電源、DCアンプと話題を投げかけたトリオらしい新製品で、さらに、プリアンプ電源を独立した3電源方式に発展している。
 回路構成は、FET差動を含む差動2段の3段直結ICLイコライザー、初段FET差動2段直結フラットアンプと独立した高音と低音のNF型トーンコントロール段、アクティブ型の高域とサブソニックフィルター、初段FET差動を含む差動3段のA級増幅段とパワーダーリントンブロックをつかうDCアンプ構成のパワーアンプ部である。

ヤマハ CA-2000

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ヤマハのプリメインアンプは、当初からCA1000をトップモデルとして、これに改良を加えたMKII、さらに外形寸法がひとまわり大きくなった現在のMKIIIと発展してきたが、ハイパワー化の影響によるパワーアップの要求と、セパレート型アンプのC2、B2との間をうめる意味もあってか、CA1000IIIのボディのなかに、ひとまわり強力なパワーをもつ新モデルを今回発表することになった。逆にいえば、X1シリーズにはじまったプリメインアンプの置換えはR1シリーズで終了し、それら一連のプリメインアンプとは差別化の意味で、上級モデルが最初から2機種企画されており、これがCA1000IIIのボディがひとまわり大きくなった理由と思われる。つまり、パワーアンプに対するアンプの容量の増加が見込まれた結果である。
 CA2000は、ボディサイズは、既発売のCA1000IIIと同じであり、フロントパネルの機能もほとんど同様であるために、外観からは両者の判別は難しいようだ。しかし、トーンコントロールツマミの部分が、C2と同様にデシベル目盛になっているあたりが、両者の違いをあらわしている。
 機能面では、基本的にCA1000IIIと同じで、インプットセレクターでフォノ入力を選択した場合には、独立したフォノセレクターで、フォノ1とフォノ2が選択でき、フォノ1は、さらに3種類の負荷抵抗切替とMC型カートリッジ用のヘッドアンプの使用がセレクトできる。また、独立したテープアウトセレクターがあり、インプットセレクターとは関係なく、録音プログラムソースが選択可能で、さらに、レコーディングアウトがOFFにもできる特長がある。また、ピーク指示型のレベルメーターは、切替でパワーとレコーディングアウトのレベルをチェックできる。
 回路構成は、イコライザー段がC2と同じで、超低雑音FETによる初段、SEPPコンプリメンタリーの終段で構成され、高級セパレート型アンプとしてもトップクラスのSN比と歪率を誇っている。なお、別に超低雑音IC採用のMC型カートリッジ用のヘッドアンプを内蔵している。トーンコントロール段は、基本的にイコライザー段と同様な構成で、ボリュウムを絞り込んでも信号源インピーダンスにより、歪率はほとんど変化しない特長がある。
 パワーアンプは、出力段が並列接続のパラレルプッシュプルの全段直結OCL型で、B級120W+120W、A級時30W+30Wの定格があり、DCアンプ構成である。
 CA2000は、CA1000IIIと共通性がある音をもっているが、音の粒子が一段と磨かれた印象が強く、パワーアップのメリットで、低域の質感がよく再生され、安定度を増した余裕のある感じが特長である。充分に熟成した大人っぽいこの音は、違いのわかる人に応わしいものだ。

サンスイ AU-707, AU-607, AU-10000

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 現在プリメインアンプの需要の中心は数量的には5万円未満のモデルであるが、オーディオ敵に質的・量的のバランスを考え、プログラムソースであるディスク側のダイナミックレンジの拡大を含めれば、やはり6〜9万円台のモデルが魅力あるプリメインアンプとして、本来の中心機種の座にあるといってよい。
 新しいサンスイのプリメインアンプは、この価格帯に投じられた専門メーカーらしい製品で物理的データの高さと現代アンプらしい音質、それに、新しいブラックフェイスのデザインをもつ、意欲作である。
 AU707、606のパネルフェイスは、サンスイが初期の管球プリメインアンプAU111以来一貫して守ってきた伝統的なブラックパネルであるが、色調はマットブラックで統一され、簡潔でダイナミックな印象としている。このパネルは、サイドにハンドルをつければ標準ラックパネルにセットすることができる。
 AU707の回路構成上の特長は、イコライザー段が初段カレントソースつき差動1段、バッファー、アクティブロードつきA級増幅1段、純コンプリメンタリーSEPP出力段の8石構成で、1kHzの許容入力300mV、RIAA偏差±0・2dB、SN比77dBを得ている。パワーアンプは、初段デュアルFET差動2段、カレントミラーつき電流差動プッシュプル(特許申請中)、3段ダーリントン接続のDCアンプであり、電源部は左右チャンネル独立型、電解コンデンサーは、15000μF×4である。
 機構設計上の特長は、入力端子、イコライザー、トーンコントロール、パワーアンプと、信号経路を合理的に配置しシールドカバーの併用で物理性能の向上をはかっている。また、パワー段の放熱板は、チムニー型で放熱効果が高く、信号経路のコンデンサーは、低雑音タイプのBRN電解コンデンサーとマイラーコンデンサーをセレクトして採用している。
 AU607は、出力が65W+65W(707は85W)である点と、トーンコントロール段のバッファーアンプの省略、電源部の電解コンデンサーの容量が、12000μFに変更されたあたりが、基本的に、AU707と異なった点である。
 AU10000は、コントロールアンプCA2000とパワーアンプBA2000を一体化して、プリメインアンプとした新製品で、デザインは高級機に準じている。
 AU707/607は、サンスイのアンプとしては音質的にCA2000、BA2000の系統である。各ユニットアンプの性質が素直なためか、歪感がなく、滑らかで静かだが、それでいて充分に力もある音だ。とくに、AU607のハーモニーの美しさと、表情の豊かさは見事で、音楽を楽しく聴かせてくれる。

デンオン PMA-701, PMA-501

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デザインを変えてイメージチェンジをした2機種の新製品は、デザイン以上に大変にユニークな機能を備えていることが特長である。この機能は、カートリッジのクロストーク特性をアンプ側で電気的にコントロールするためのPCC(フォノ・クロストーク・キャンセラー)と名付けられたものである。
 一般にカートリッジのクロストークは、中域の条件が良い状態でも、−20dB〜−30dB程度で、アンプ側のフォノ入力からスピーカー端子までのクロストークにくらべて大幅に劣っていることは、よく知られていることである。カートリッジのクロストークの位相特性を調べると位相差が0°付近と180°付近にあることから、左チャンネルから右チャンネルへのクロストークを例にとると、第一に左チャンネルの信号を適当な値で取り出し、極性を反転して右チャンネルに加えれば打消しにより数dB以上の改善が期待できる。第二に、第一の方法により打消すことができないクロストーク分は、信号分との位相差が±90°の成分であり、このためには移相器が有効であろう。
 以上の予想を基本として実験の結果は、周波数によっては10dB以上の改善が見られたとのことで、実際のPCCは、L→R、R→Lの両方でキャンセラーを動作させる必要があり、各チャンネルを2個のツマミで調整することになる。なお、カートリッジのクロストークは、アームへの取付条件までを含めれば、1個毎に異なるために個別の調整が必要で、その目的のために、調整用レコードがアンプに付属している。
 回路構成上の特長は、フォノ入力回路は切替スイッチやシールド線を使用せずイコライザー段に直結とし、入力インピータンス特性を向上させ、併せてそれらによるSN比の低下を防いでいる。また、電源部はデンオンのプリメインアンプとしては、はじめてのパワーアンプのB級増幅部分での左右独立トランスの採用の電圧増幅段、プリアンプ部専用の電源トランスをもつ、3電源トランス方式が使われている。
 PMA701と501の違いは、出力が70W+70Wと50W+50W、機能的には後者には、ハイフィルターがない。
 PCCによ、カートリッジのクロストーク調整は、付属している17cm盤のテストトーンのバンドを使っておこなう。片チャンネルについて、2個のコントロールを交互に調整して、信号が最小になる位置を探せば、調整は完了する。この調整は、割合いに容易であり、PCCスイッチのON・OFFで、クロストークの改善度が確認できる。効果は、かなり大きくPCCのONで、ワーブルトーンの調整信号音は、大幅に減少することが判るはずだ。音質的な変化は、音が全体にスッキリとして、間接音成分的な、あいまいな感じがなくなり、音像の輪郭が、一段とクッキリとして浮かび上がるようになる。このような効果は、ベースとなるアンプのクォリティが充分に高くないと望めないことだけに、新しい2機種のプリメインアンプは、アンプとして、デンオンらしいクォリティの高さがあることを裏付けているわけだ。この結果から予想すれば、もし単体ユニットでPCCが発売されるとしたら、より高級機との組合せで効果がありそうだ。

オンキョー Integra A-7, Integra A-5

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新しいインテグラは、型番がシンプルな1桁に変わり、デザイン面でもまったく従来のイメージを一新している。
 このシリーズは、開発当初からアンプ動特性を重視し、音楽的な完成度の高さが追求されてきたが、今回一歩進んで、〝ローインピーダンス化4ポイント方式による強力電源回路と給配電ライン〟を中心とした設計により、音楽の感動、興奮といった物理上のハイファイ再生とは次元を異にした芸術領域の音楽成分を充分に再現できる、豊かな芸術性を秘めた新インテグラに発展しているとのことである。
 ローインピーダンス化4ポイント方式とは、①等価直列抵抗を特に小さくした大容量電解コンデンサー ②極太のローインピーダンスケーブル ③大型パワートランス ④徹底したブス(母線)アースラインの採用でアースを含めた給配電ラインと電源部との総合インピーダンスを可能な限り低く設計し、これにより、左右チャンネル間および同一チャンネル内における相互干渉を排除するとともに、強力なエネルギー供給体制をとり、とくに大振幅時の立上がり特性の改善とピークパワーの確保を計ろうとするものである。
 回路構成は、差動1段A級プッシュプルのイコライザー段、差動1段3石構成のオペレーショナルアンプ型のトーンコントロール段、ドライブ段にA級プッシュプル方式を採用したパワーアンプである。
 A7とA5の違いは、パワーが60W+60Wと45W+45W、イコライザー許容入力が230mVと170mVをはじめ、パネル面の機能では、A5でボリュウムコントロールのdB表示、セレクターでのAUX入力、トーンコントロールのターンオーバー切替、ハイカットフィルター、スピーカー切替スイッチのA+Bが、それぞれ省かれている。

ヤマハ CA-1000III

岩崎千明

音楽専科 10月号(1976年9月発行)
「YOUNG AUDIO 新製品テスト」より

 ヤマハのプリメインアンプCA1000が、マークIIIとなって2度目の改良を受けた。もっとも、この改良は、単に改良というだけでなくて、まったく新らしく設計をしなおしたと思われるくらいに変わってしまって、もはや、改良というよりも、新型の新製品といってよかろ
 CA1000IIIは、ヤマハの高級イメージにささえられたオーディオ製品の中核をなすプリメインアンプの中で、最高のランクに地位する機種だ。その品質に関しては、デビュー当時よりもっとも高いクウォリティと、品位のある外観と、さらに、質の高いサウンドとで日本の市場におけるこの価格帯の中でもっとも優れた存在であった。オーディオアンプとしてその完成度は世界の超一流品にも匹敵するといわれてきた。デビュー以来、すでに4年目になろうとした今日、そのすべての特徴は、今も少しも色あせることはない。しかし、オーディオ志向の需要者層が大きく変わった。10万を越えるというこうした高級アンプを買おうというと若がえって、20歳をはるかに切ってしまうほどだ。
 こうした使用者の変革に伴なう使い方、デザイン感覚、さらにはサウンドへの好み、といった大きな条件を踏まえて、ヤマハにとっての「不朽の名作」CA1000を再度改めたわけだ。マークIIへの変革は、内部の改良に伴なう性能向上だけであったが、今度はそうした意味でも新製品ともいえるほどの大向上ぶりである。
 まず、もっとも目立つのは、ふたつのレベルメーターで、これは、最近の高級アンプの新しい動向である。主に、録音マニア達の好みに対応したものと思える。レコーディング・アウト・セレクターというつまみが、新しく付けられて、いわゆるテープモニター・スイッチの大巾な拡大用途に対応している。このスイッチの2つのポジションは、1→2、2→1のテープコピーとなっている。インプットセレクターには、テープ1、テープ2の2つのポジションが独立して付いている。このように単にテープモニター・スイッチを付ける今までのアンプに対してこのアンプのテープ録音への配慮は、不慣れな、初心者にも使いわけが、容易になるように心を配ったものといえる。
 今までにない新しい「フォノ・セレクター」は、カートリッジの種類とか銘柄によって、もっとも理想的使用状態になるようカートリッジの負荷抵抗を選べるようになっている。さらに、特出すべき大きなボイントだが、MC型カートリッジのためのヘッドアンプも内蔵されており、トランスとか、アダプターアンプを加えることなく、そのままフォノ1につないで使用することができ得る。
 もともとこうしたMC型カートリッジ用のヘッドアンプは、ノイズの点でたいへん難かしくて、高価にならざるをえない。だから、プリメインアンプの中に収めるということは、技術的にも価格的にも、とても難かしいことなのである。CA1000の伝統的特徴であるAクラス切換によるパワーアンプのA級動作は、タイプIIIになって、さらにパワーアップされて、用途を拡げた。普通のブックシェルフでも、夜なら充分な音量で楽しむことも、やりやすくなった。
 さて、CA1000IIIは、この改良によって、音がいかに変わったかは、大いに気になるに違いない。ひと言でいうならば、格段に明るく、力強く、特に、ボーカルとソロとが非常にくっきりと、聴ける。

マランツ Model 1250

岩崎千明

ジャズランド 8月号(1976年7月発行)

 今日、米国のオーディオ界で最も成功しているメーカーとして、名前を挙げるのがマランツだ。それは一度でも米国に行ったことのある人なら、否応なしに知らされる事実だ。
 ところで、日本のオーディオ界を考えると、オーディオの各パーツのなかで、アンプが他の部分より成功していることは誰もが気がつくだろう。事実日本の多くの製品が世界のオーディオ界に進出しているけれど、なかでもアンプは他の追随を許さないほどの成功を収めているのだ。こうした、国産アンプの優秀さは国内市場においても明らかで、アンプに関する限り、海外ブランドは超高級品以外は、全く国産ブランドの独壇場といってもよいくらいだ。たった一つの例外を除いて……。
 それが、実はマランツなのである。
 マランツのファンは大きく分けて、二つの世代に分れるといえる。その一つはいわめるオールド・マランツの支持者達であり、今はなきマランツの旧製品を愛する古くからのファンだ。それに対して、黒い窓枠を与えられた個性的なフロント・マスクに代表される新しい製品群を手許に置き、あるいは置きたいと願う若い世代のファンがいる。この両者は重なり合うこともあるし、はっきり区別されることもある。
 ただ、これを個々の製品の内側からみると、ニュー・マランツにおいても、マランツの伝統を踏まえたサウンドを持ち、その意味ではまぎれもなくマランツそのものだ。ただこの二つが違っているのは、ニュー・マランツの、現代のアンプとしての多機能性を盛り込むためにデザインされたフロント・パネルの違いだけだ。
 マランツの製品の最高ランクのプリメイン・アンプとして登場したMODEL1250の大きな特長として指摘できるのは、1150などのそれとははっきりと一線を画したそのフロント・デザインから、かってのマランツのイメージをより豪華にアレンジしてパネルに盛り込んだという点である。高い完成度に優雅さを漂わせたともいえるそのデザインは大いに魅力だ。
 内容的には1150をさらにパワー・アップし、130W+130Wというハイパワーを誇り、テープ回路等に使い易さを拡大した点にある。漸新な回路技術を駆使して得られたその成果は、1250がマランツのみならず、全てのオーディオ・アンプの中の最前線に位置することを示している。
 1250は20万弱と決して安いアンプではない。しかし、オールド・マランツ・ファンも納得し、新しい若い世代のオーディオ・マニアにも熱い眼差しを向けさせるだけの、マランツ・ブランドの最高級たるに相応しいプリメイン・アンプなのである。

ラックス SQ38FD/II

岩崎千明

ジャズランド 8月号(1976年7月発行)

 近く行われる米国大統領選挙に、民主党からはジミー・カーター氏が候補者として指名された。カーター氏はディープ・サウスのジョージア州の出身ということだが、もし米国大統領になりでもすれば、これは大変なことに違いない。ジャーナリズムはカーター氏に対して、大方好意的な評価を下しているようだが、少なくともベトナム戦争やウォーターゲート事件を通過した米国民が本来の民主主義の復活を望んでいることだけはいえそうな気がする。
 これとは無関係ではあるが、偶然にも米国オーディオ界で管球式アンプの復権が著しい。もちろん、管球式アンプが民主主義だというつもりはないが、複雑になる一方のトランジスター・アンプ全盛のなかで、シンプルな管球式が復活し、しかも音もいいとなると、何となくオーディオ界の現状と米国大統領選挙がオーバーラップしてきたというわけだ。
 とはいえ、管球式アンプの復活は、古い形そのままではなくて、現代に通用する新しさを、回路技術的にも、特性的にも、サウンド的にも盛り込んでいるのだ。とにかく、管球式アンプでなければ夜も日もあけぬという、くらいの米国の高級オーディオ、マニア達に最近、その優れた管球式アンプ群によって、俄然注目を浴びているメーカーがある。それがラックスだ。
 ラックスはいうまでもなく、わが国でも数少ない管球式アンプの製造を継続しているメーカーの一つだ。もちろん、ラックスにおいても主力はトランジスター式だが、あたかもこのような情況を見通していたか如く、他社が相次いで管球式アンプの製造を中止していくなかでも、頑なといえるほどにそれを維持し、むしろ新製品を発表したりしているぐらいなのである。これはラックスが当時においても管球式アンプの良さをはっきりと認識し、その可能性さえも予想していたというべきだろう。
 そのラックスの管球式アンプは、最近シカゴで行われたCEショーでも高い評価を得たと伝えられるが、米国でもラックス・アンプの良さを認めるマニアは確実に増えている。
 そうしたラックスの管球式アンプ群のなかでも、わが国のファンに最もなじみ深いのが、世界でも稀な管球式プリメイン・アンプSQ38FDだ。
 発表以来12年、4回のモデル・チェンジを経て、現在の型番となったが、その間、常にわが国の管球式アンプの中心的存在となってきた。
 30W+30Wと出力は控え目だが、一般の家庭で使用する場合、スピーカーの選択さえ誤らなければ、パワー不足になることはないはずで、その気品のある音質は、内容を知れば知るほど価値の高まるものだ。
 技術の進歩の早いハイファイ界において、このようなアンプが生き続けているのは奇跡といわずして、何といおうか。

ヤマハ CA-V1

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 多角的なサウンドへの展開の第1弾となった、X1シリーズに続く、第2弾製品がブラックフェイスのメカニカルなデザインをもつ、新しいV1シリーズである。
 フロントパネルは、やや、薄型となり、両側に取手が付いて、引締ったシャープな表情になっている。2個のレベルメーターは対数圧縮型で50Wまで直読でき、芯ファンクションとして、レコードを聴きながらFMエアチェックができるREC・OUTセレクターがあり、このスイッチにはデッキを使用しないときに信号系から切離すREC・OUT・OFF位置がある。
 回路構成上は、過渡応答を重視したディスクリート2段直結イコライザーは、低歪高SN比設計であり、トーン回路は、ディスクリート構成のアンプを使う、高SN比なヤマハ方式CR・NF混合型トーンコントロールで中央のウネリが少なく、パワーアンプは、カレントミラー回路を使った初段差動1段の全段直結ピュアコンプリメンタリーOCLタイプである。

ビクター JA-S41

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターの新製品は、JA−S51とS31の中間に位置する65W+65Wのパワーをもつプリメインアンプである。
 機能面では、JA−S51に準じた、5段切替モードスイッチ、前面録音端子をもつが、入力切替がフォノ1系統でカートリッジ負荷抵抗切替がなく、テープが2系統になった他、高音フィルターが低音フィルターに替わり、実用性が増している。
 回路構成上では、初段FETで入力コンデンサーを除いたICL型イコライザー、4連ボリュウム採用のプリアンプ部、ドライバー段以後と以前を分離した独立電源をもつパワーアンプを備えている。
 このアンプは、一連のビクタープリメインアンプのなかでは、もっともストレートで明快な音をもっている。とくに、低域の腰が強く、リズミックで活気があるのがメリットである。

Lo-D HA-630

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この新製品も、セパレート型パワーアンプ、HMA−8300に採用されたと同様な、ダイナハーモニーと名付けられた、E級動作のパワーアンプ部をもったプリメインアンプである。
 回路構成では、イコライザー段に、差動1段の初段をもつ3段直結型が採用され、2・3mVの入力感度にたいして1kHzの最大許容入力は、230mVである。トーンコントロール段は、高利得、高安定度のIC、HA−1456を使ったNF型である。パワーアンプは、差動2段をもった、4電源方式の全段直結高能率ピュアコンプリメンタリーOCLで、20Hzから20kHzにわたり、8Ω負荷で60W+60Wの実効出力があり、1kHzでは8Ω負荷で85W+85Wのパワーが得られる。
 ボリュウムコントロールは、32接点のディテントボリュウムと、−15dB、−30dBに切替わるゲインセレクタースイッチの組み合わせであり、12dBのローカットフィルター、6dB型のハイかっとフィルター、それに、高音と低音を補正するラウドネスコントロールを備えている。
 HA−630は、低歪率設計をシンボライズしたような、柔らかで、歪感がない音をもっている。音のキャラクターが少ないだけに、ダイナミックパワー320Wというパワー感は、聴感上ではさして感じられない。このアンプの際立った特長は、クロストークが抜群に少ないことである。

サンスイ AU-3500, AU-1500

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイから普及型のプリメインアンプが2モデル発売された。2機種ともに、共通のフラットフェイスのパネルをもち、ブラック仕上げになっている。
 AU−3500は、35W+35Wのパワーをもつモデルである。フロントパネルの機能は、プッシュボタンによるフォノ、チューナー、AUX3系統の入力切替、テープモニター、それに、モード切替があり、レバースイッチによるミューティング、ラウドネス、高音と低音フィルターをもつほかにマイクミキシング回路を備えていることが、このクラスのアンプに応わしいところである。
 回路構成上のイコライザー段は、最大許容入力が2・5mV感度で230mV(1kHz)あり、RIAA偏差は±0・5dB以内に調整してある。トーンコントロール段は、2段直結アンプによるCR型であるのが珍しい点だ。ボリュウム及びトーンコントロールは、クリックステップ型ボリュウムを採用している。パワーアンプは、初段にデュアルトランジスターを採用した全段直結型ピュアコンプリメンタリーOCL方式で、電子回路とリレーを使ったスピーカー及びパワートランジスターの保護回路が備わっている。なお、プリアンプの電源も、±2電源タイプでスイッチ切替時のクリックノイズを抑えている。
 AU−1500は、パワーが22W+22Wとなり、機能が2つ少ない。

トリオ KA-9300

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 プリメインアンプのパワーアップは、普及機クラスから、徐々に中級機に波及してきたが、量と質のバランスを要求される高級機ともなると、単なる量的なパワーアップだけでは、シビアなユーザーの要求に答えることは不可能である。
 KA−9300は、一連のプリメインアンプのハイパワー化に加えて性能、音質ともにグレイドアップした高級モデルに相応しいプリメインアンプである。
 回路構成上は、初段FET差動4段直結型ICLイコライザー段、初段FET差動3段直結アンプを使った、高音と低音が分離したターンオーバー切替付NFBトーンコントロールなどをもつプリアンプ部は、43ステップの4連ディテント型ボリュウム採用で聴感上のSN比がよく、左右チャンネル独立電源をもつパワーアンプ部は、FET差動を初段とする差動3段パラレルプッシュプルのICL、OCL、DCアンプで、120W+120Wのパワーがあり、スピーカー端子には切替スイッチをとおらず直接アンプとスピーカーが接続可能なDIRECT端子がある。
 このアンプは、パワーが充分にあるために、低域に安定感があり、クリアーでストレートな音のメリットがよく出ている。聴感上では、さしてワイドレンジを感じさせないバランスをもつが、誇張感がなく、ストレートで素直な音をもっている。このタイプの音は、えてして音の芯が弱く軽い音になりやすいが、充分にあるパワーが低域をサポートしているためにソリッドで安定感のある好ましさにつながっている。DCアンプ採用というとワイドレンジを思い出すかもしれぬが、聴感上は、誇張感がなくナチュラルである。
 操作性は機能が整理されており、使いやすいが、ロータリータイプのスイッチは、フィーリングが不揃いで硬軟の差があり、高級モデルとして他の部分のバランスがよいだけに、ぜひ改良を望みたい。

パイオニア SA-8900II, SA-8800II

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パイオニアのプリメインアンプとしては中堅機種であるSA−8900/8800が、音質重視の最新回路技術を導入して、IIシリーズに発展改良された。
 新シリーズ共通の特長は、SN比を高め、低歪率化をするために、使用部品を厳選するとともに左右チャンネル間の干渉を防ぎ、音質を向上する目的で電源部には左右チャンネルが独立した、2電源トランスを採用している。
 SA−8900IIは、イコライザー段に初段差動3段直結A級SEPP型アンプを採用し、最大許容入力300mV、RIAA偏差±0・2dB以内という特性と、負荷抵抗、負荷容量ともに、4段に切替わるカートリッジロードスイッチが付属している。トーンコントロールは、パイオニア独自のツインコントロールで、初段差動の2段直結アンプを採用している。
 パワーアンプは、差動2段の全段直結ピュアコンプリメンタリーOCLで、パワートランジスターは並列使用で80W+80Wのパワーがある。
 電源部は、ドライバー以後出力段まで、左右チャンネルが独立した巻線と電流回路をもち、さらにプリアンプ部とパワーアンプ部のプリドライバー段まで、左右独立した安定化電源をもっている。
 SA−8800IIは、イコライザー段の構成は似ているが、許容入力が250mVになり、カートリッジロード切替は、容量だけが4段切替である。トーンコントロールは、ターンオーバー3段切替のレギュラータイプになっている。なお、パワーアンプは、似た構成だが、60W+60Wのパワーである。これ以外については、ほぼSA−8900IIと同じ特長をもっている。

マランツ Model 1250

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 マランツのプリメインアンプは、普及機から徐々にラインナップを固めてきたが、そのトップモデルとして開発されたものが、このモデル1250である。基本的には、コントロールアンプのモデル3600とパワーアンプのモデル250Mを、ひとつのシャーシに組込んだプリメインアンプと考えてよいが、各ブロックのユニットアンプは、かなりモディファイされているように思われる。
 フロントパネルは、いわゆるマランツの伝統的なマランツサイズであるが、デザインは、最近の一連のモデルとは異なり、以前のマランツ同様にフラットフェイスになっているのが目立つ点である。この変更はモデル1250が、セパレート型アンプと比較されるスペシャルクラスのプリメインアンプであることを考えれば、他のモデルとの差別化の意味があろうし、それとは関係ないが、古くからのマランツファンには親しみやすいことは事実である。この変更で、副次的なメリットとして生じているのは、コントロールのツマミが大型化されたことで、実際に使ってみると操作性は、かなり向上していると思われる。
 なお、このモデルも、他のマランツアンプ同様に、オプションのRA−2ラックアダプターを使えば、標準サイズのラックに取付け可能であり、RA−2は、ゴールドメッキ仕上げで、横受ブラケットが付属した業務用的構造の製品である。
 機能は、モデル3600コントロールアンプや、モデル1150プリメインアンプに準じているが、本機独得のファクションとしてレコードセレクタースイッチがある。2個のスイッチがペアとなる、このセレクターは、RECORD・SELECTOR1が、メインのテープデッキの入力を選択し、RECORD・SELECTOR2がサブ、もしくはエクスターナルテープデッキの入力を選択する。2個のセレクターと入力切替スイッチを組み合わせて使用すれば従来のこの種のスイッチより、はるかに、多角的にテープデッキが活用できるメリットをもっている。
 回路構成上の特徴は、初段差動のイコライザー段は、40dBのゲインがあり、許容入力が1kHzで300mVと米国系のアンプとしては、充分なマージンがあり、MC型カートリッジを安心して使用できる。トーンコントロールは、高音と低音がターンオーバー2段切替型で、中音も±6dB変化することができる。パワーアンプ部は、全段直結OCLタイプであり、電源部は、他のモデルにくらべ、かなり強化されている。
 モデル1250は、よい意味で、マランツのアンプが伝統的にもつニュートラルでカラリゼイションのない音を受継いでいる。際立った特長こそないが、他と比較したときに初めてクォリティの高さが判かるという音である。パワーも充分にあり、グレイドの高い点では、セパレート型アンプの域に達したプリメインアンプである。