岩崎千明
ジャズランド 8月号(1976年7月発行)
今日、米国のオーディオ界で最も成功しているメーカーとして、名前を挙げるのがマランツだ。それは一度でも米国に行ったことのある人なら、否応なしに知らされる事実だ。
ところで、日本のオーディオ界を考えると、オーディオの各パーツのなかで、アンプが他の部分より成功していることは誰もが気がつくだろう。事実日本の多くの製品が世界のオーディオ界に進出しているけれど、なかでもアンプは他の追随を許さないほどの成功を収めているのだ。こうした、国産アンプの優秀さは国内市場においても明らかで、アンプに関する限り、海外ブランドは超高級品以外は、全く国産ブランドの独壇場といってもよいくらいだ。たった一つの例外を除いて……。
それが、実はマランツなのである。
マランツのファンは大きく分けて、二つの世代に分れるといえる。その一つはいわめるオールド・マランツの支持者達であり、今はなきマランツの旧製品を愛する古くからのファンだ。それに対して、黒い窓枠を与えられた個性的なフロント・マスクに代表される新しい製品群を手許に置き、あるいは置きたいと願う若い世代のファンがいる。この両者は重なり合うこともあるし、はっきり区別されることもある。
ただ、これを個々の製品の内側からみると、ニュー・マランツにおいても、マランツの伝統を踏まえたサウンドを持ち、その意味ではまぎれもなくマランツそのものだ。ただこの二つが違っているのは、ニュー・マランツの、現代のアンプとしての多機能性を盛り込むためにデザインされたフロント・パネルの違いだけだ。
マランツの製品の最高ランクのプリメイン・アンプとして登場したMODEL1250の大きな特長として指摘できるのは、1150などのそれとははっきりと一線を画したそのフロント・デザインから、かってのマランツのイメージをより豪華にアレンジしてパネルに盛り込んだという点である。高い完成度に優雅さを漂わせたともいえるそのデザインは大いに魅力だ。
内容的には1150をさらにパワー・アップし、130W+130Wというハイパワーを誇り、テープ回路等に使い易さを拡大した点にある。漸新な回路技術を駆使して得られたその成果は、1250がマランツのみならず、全てのオーディオ・アンプの中の最前線に位置することを示している。
1250は20万弱と決して安いアンプではない。しかし、オールド・マランツ・ファンも納得し、新しい若い世代のオーディオ・マニアにも熱い眼差しを向けさせるだけの、マランツ・ブランドの最高級たるに相応しいプリメイン・アンプなのである。
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