菅野沖彦
オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 アナログプレーヤー/カートリッジ/トーンアーム/その他篇」より
同社がカートリッジメーカーとして王者の地位を不動のものにしたのは、何といってもSPUシリーズだといえるだろう。ステレオレコードが発売された1950年代の後期に発表されたSPUは、MC型カートリッジの評価を確固たるものにしたのである。SPU−AとSPU−Gシリーズがシェルの形状の違いによって作られ、Gシェルは卵型のふっくらとしたシェイプで魅力的なアピールをしたし、AシェルはRをもった角型で、よりプロフェッショナルなイメージが強かった。さらに楕円針が登場してからGE、AEという末尾にEのついたモデルナンバーが登場したが、この製品はそのAEのレプリカといえるものである。もちろん、SPU−CLASSIC−GEもあるし、丸針仕様のGとAもある。いずれにしても違いは針先チップ形状とシェルの形状であり、基本的にはオリジナルSPUシリーズの忠実なリモデリングである。SPUシリーズの豊潤な音はアナログディスクの情感的魅力の再現に最もふさわしい音といえるだろう。その濃密な陰影、艶のある高域と力強い低域の再現する独特の質感は脂肪ののったバタ臭さとでもいえるであろうか。欧米の音楽の素材としての音の質感として大変魅力的なものである。
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