続・「懲りない」アナログプレーヤー──さらに4台 夢と懐疑の先へ続く道

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「アナログプレーヤー徹底試聴 アナログ再生を楽しむプレーヤー4機種を自在に使いこなす」より

 時代の激流にあらわれつつ、しかし、そこに存在し続ける──、それは並大抵のことではない。目の前に並んだ4台のアナログプレーヤーたち、それは手垢にまみれた「アナログ」世界から淘汰され生き残った古くて新しい存在。デジャ・ヴュの混沌の中からヌッと顔を出したような、お馴染みの面々。いずれも、トラディショナルなスタイルをキープして、したたかに時空を浮遊するトラッド派の代表たち。ここには、オラクルとエアータンジェント(87号参照)が醸し出していたシュールな雰囲気はない。目新しい時代の先端をいくハイテク技術や「芸」など望むべくもない。それどころか、回転精度、といった、物理的性能において、厳格な管理下にあるCDが当り前になってしまった昨今、電源スイッチを入れる直前、ふと不安がよぎる。「ストロボスコープ」という、懐かしくもシンプルな原始的アクセサリーが「回転精度」なる魔物に素朴で自然に寄り添うことを可能にしてくれる。デジタルテクノロジーがみせる、いわば整然とした響きと表裏一体の殺伐とした気配、孤独な大都会のランドスケープのイメージ──、も好きだが、一方でこの単純にして複雑怪奇なるアナログの、ゆらゆら、曖昧にも全てが感性のループで有機的に結ばれた世界を忘れることはできない。

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