菅野沖彦
オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 アナログプレーヤー/カートリッジ/トーンアーム/その他篇」より
オルトフォン社はデンマークで1918年に創立されたメーカーだから歴史と伝統は古い。レコード産業機器の総合メーカーとしてプレス機からカッティングマシーンとヘッド、そしてそのアンプなど一貫したプラントメーカーとしての全盛時代が懐しい。オーディオ再生の分野では何といってもMC型のカートリッジとトーンアームのメーカーとしての印象が際立っている。このMC5000は、そのオルトフォンの最新最高のカートリッジであるが、その本機がトレース針圧を最適値2・5gと定めているのが興味深い。線材からマグネット、カンチレバー、針先チップ、筐体のすべてを現代のハイテクでつめた最新のMC5000の素晴らしさは数々あるが、それらを2・5gを標準とする針圧でトータルバランスさせたところが、いかにも老舗らしい回答ではないか。発電系を含め、トーンアームやディスク溝の実情、さらに家庭での実用性のトータルから決定されるべき適正針圧は2〜3gというのが正しいことを示した一流メーカーと一流品の見識というべきだろう。アナログ機器を今も作り続けるオルトフォンこそ、やはり最後までカートリッジの専門メーカーであり純粋なオーディオメーカーだった。
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