Category Archives: アナログプレーヤー関係 - Page 10

ラックス 8025

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 無酸素銅線のコイルとトロイダルコアを採用し、独特なプラグイン方式の構造をもったステレオ昇庄トランスである。入力は切替なしに3〜40Ωをカバーするタイプで昇圧比は1対10・5、トランスとしては比較的類型の少ない、入出力が逆相の反転トランスである。
 帯域バランスは低域を抑えた細身のシャープなタイプで、高域は素直に伸びている。音に適度にコントラストをつけ引締まった明快なサウンドであり、分離はトランスとしては優れる。
 MC20は軽快でクッキリとコントラストをつけた音だが、少しスケールが小さく、305はよりナチュラルな帯域感をもち、適度に繊細でありながら音の芯がクッキリとし、楽器固有の音をそれらしく聴かせるが、やや小さくまとまる。

インプレスラボラトリー Model 999

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 3〜50Ωのユニバーサル型昇圧トランスだが切替スイッチはなく、接点を最少限に抑えた性能志向型。
 帯域バランスは、柔らかな低域をベースとしてナチュラルに伸びた、トランスとしては広帯域型だ。中高域に適度に輝くキャラクターがあって音を爽やかにスッキリと聴かせるが、逆に、中域は少し抑え気味に感じられ、全体に音を少し小さくまとめ、音場感もスピーカーの奥に拡がるタイプ。
 MC20は、爽やかで適度に反応が速くシャープな音だ。音色はニュートラルで軽く、滑らかさが特徴。
 305になるとMC20と異なり全体に音の輪郭をクッキリとつけるタイプとなり、305にしては線が太くメリハリ型で弦楽器は硬質さがあり、ボーカルの無声音を少し強調する。

長谷川工房 V-81G

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 非常に高価格な1・5Ωと40Ω切替型のトランスで、受注生産のいわば特注品のスペシャリティ製品だ。
 帯域バランスはナチュラルに伸び、トランスとしてはワイドレンジ型である。音の粒子は非常に細かく独特の抑えた艶があり、クォリティはトップクラスだ。
 音色は軽く、明るく、少し控えめの素直な表情と音場感をスピーカーの奥に拡げ、全体に音を整理して細く美しく聴かせる点はHTM60Eと共通だが、クォリティは比較にならない。
 MC20を軽快でスッキリと聴かせるし、305も爽やかで、いかにも現代型MCらしくワイドレンジで音場感の拡がりをきわだたせて見せる。とくにXSD15を艶やかに軽く聴かせるのは、本来と異なった音だが一種の不思議な魅力だ。

長谷川工房 HTM-60E

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 1・5Ωと40Ω切替型の昇圧トランスである。
 聴感上のバランスは低域を抑えた細身のスッキリと滑らかなタイプだ。音の粒子は細かく、独特の艶やかさがあり、リアルに音楽を聴かせるタイプではなく、美しくキレイに聴かせる典型的な製品だ。音場感はスピーカーの奥に距離をおいて拡がり、音像は比較的に小さくまとまるが、輪郭はソフトでスッと定位する感じで、聴きやすい独特の雰囲気がある。MC20は全体に薄化粧の印象となり、線が細く、MC30的なニュアンスとなる。
 305は、分離のよい滑らかでスムーズな音だが、
昇圧比が小さいようで、少しゲイン不足気味になる。両者の音の姜は少なく全体に美しい素直な音になり、スケールを小さくまとめる。

フィデリックス LN-2

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 006P電池を4個使う左右独立型電源採用のヘッドアンプで、シンプルな回路構成で高性能化するため、入力と出力が逆相の反転アンプを使用している。
 聴感上の帯域バランスは低域を抑え、高域に向ってフラットなレスポンスをもち、音色は寒色系で線が細く、クッキリと輪郭をつけるシャープな音が特徴。
 MC20はソリッドで締まった音となり音像を小さくシャープに定位させ、奥行きもスッキリと見通せるが、独特の中低域の豊かさは抑えられ、音が整理されて出るタイプだ。
 305では、一段と爽やかで分離が良くなる。カートリッジの分解能をダイレクトに聴かせる性能をもつが、少し表情は硬い。なお、電源投入時のポップ雑音は強大で、使用上注意が必要。

試聴を終えて

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 前号(No.59)と今号の2回にわたって掲載したMC型カートリッジ用の昇圧トランスとヘッドアンプのテストリポートは、MC型カートリッジが数多く華やかに登場し、プリメインアンプでも出力電圧の低いMC型カートリッジをダイレクトに使用可能になったという現状をふまえて企画された。そこで、MC型カートリッジ専用の昇圧手段である昇圧トランスとヘッドアンプが、どのような性能と魅力をもつのか。また、オプショナルなアクセサリーとして構入してまで使うべきだろうかを探ることを目的として、その概況をリポートすることにした。
 したがって、各昇圧トランスとヘッドアンプは、それぞれの試聴条件が比較的に同一になるように、最低限度の常識ともいえる注意をして実際の試聴にあたっている。
 試聴テストに使用した機器は別表の通りだ。カートリッジは、ローインピーダンス型としてオルトフォンMC20II、他にフィデリティリサーチFR7f、ハイインピーダンス型としてデンオDL305、他にEMT/XSD15を使用し、他にミディアムインピーダンス型のオーディオテクニカやヤマハの製品も使用した。また特定のカートリッジの専用モデルとして開発されたトランス/ヘッドアンプについては、専用カートリッジでの試聴はもちろん、インピーダンス的に問題のない(前号270頁参照)他のカートリッジでも試聴している。
 ターンテーブルはマイクロのエアーベアリング方式のSX8000を使用し、トーンアームを3本取付けた。オルトフォンMC20IIにはオーディオクラフトAC3000MC、デンオンDL305にはデンオンDA401を組合わせ、EMT/XSD15、フィデリティリサーチFR7fなど比較用にはフィデリティリサーチFR66Sを組み合わせたが、タイプによってはAC3000MCでもチェックしている。なお、ヤマハHA2は専用ヘッドシェルの使用が前提条件であるため、DL305はこの場合のみAC3000MCに組み合わせした。
 ヘッドアンプはAC/DCをとわず、試聴別に3時間以上通電してヒートアップをおこない、AC電源を使用するヘッドアンプの物理的なAC極性はすべてチェックしている。一方、昇圧トランスやヘッドアンプの出力をコントロールアンプに送るRCAピンコードは、各メーカーの付属品もしくは指定のタイプを使い、特に指定のない場合には、ステレオサウンド試聴室で常用しているピンコード(長さ50cm)を使った。このピンコードは、数多くの機器間の接続用としてひどい偏りのない、つまり、現状でやや高いレベルで平均的な性能の、特殊構造でない製品である。
 また、電流容量の十分に大きいテーブルタップを使用し、全国どこでも入手可能なやや太い平行線コードをスピーカーケーブルに使用するなど、特別な方法は一切とっていない。
 テストした昇圧トランス/ヘッドアンプと比較し、概略のグレードをチェックする目的で、MCポジションをもつブリメインアンプのビクターA-X5D、テクニクスSU-V7、サンスイAU-D907Fの3機種も用意した。この中でAU-D907Fだけは、このクラスのブリメインアンプに一般的なハイゲインイコライザーではなく、専用ヘッドアンプを内蔵してしいる。
 約60機種の昇圧トランス/ヘッドアンプをテストしての全般的な感想としては、進歩が著しいMC型カートリッジと比べ、昇圧トランス/ヘッドアンプともに、製品開発の目的が明確でない製品や、現状ではすでに旧態化した製品が存在することが第一にあげられる。やはり、昇圧トランス/ヘッドアンプは、コンポーネントシステムとしてはオプショナルな別売アクセサリーであるためか、進歩の激しい他の分野と比べ、やや陽のあたらぬ場所的な印象を受けるのかもしれない。
 それにしても、問題の多い製品が散見されるのは事実だ。今回のテストの対象からは除外したが、AC電源コードがアンプ内部で配線されてなく、バイパススイッチも動作しないといった極めてひどいキット製品があった。また、トランスでも、HIGH/LOWの表示が昇圧比の大小なのか、入力レベルの大小なのか、試用しないと不明の製品が散見された。
 現在の昇圧トランスとヘッドアンプは、価格的にも1万円未満から20万円を超す製品まで、非常に広範囲の価格に分布しているが、価格対性能・音質の比較は、カートリッジと似て、スピーカーシステムやアンプほど明確な差は感じられない。つまり、高価格だから性能・音質が優れるという結果は少なく、特に、5~10万円あたりの価格帯でこの傾向が強い。
 比較用プリメインアンプとの対比で昇圧トランスとヘッドアンプを考えると、昇圧トランスでは約3万円が、トランスとしての魅力を聴かせはじめる境界線であり、1万円程度の製品は、低インピーダンスのMC型用として、主にSN比を稼ぐための使用にメリットを見出すべきだ。
 また、ヘッドアンプは、技術進歩が激しい分野だけに、少し古い製品はアンプとして旧態化したことが聴感上で聴き取れ、比較的新しい製品でも、特別の目的以外は、アンプ側にMCポジションがあるのなら、わざわざ単体製品を購入してまで使用するメリットは少ないようだ。簡単にいえば、比較用プリメインアンプにみ組合わせて、さすがに専用ヘッドアンプと思わせるのは、プリメインアンプに匹敵した価格の製品で、実用上は、トータルのコンポーネントシステムとしてかなりアンバランスを生じる。
 おおよそに区別した価格帯別に、今回の試聴で好結果が得られた製品のリストを挙げておくが、これはあくまでも、ステレオサウンド試聴室で、別掲の試聴用コンポーネントシステムを使ったときの結果で、一応の参考としてお考えいただきたい。
 最後に、今回のテストを通じて浮びあがった、昇圧トランス/ヘッドアンプの問題点、注意点をまとめておきたい。
 従来は問題にされなかったことだが、昇圧トランス/ヘッドアンプの入出力の位相関係を等閑視してはいけない。今回の試聴では、入力と出力の位相の関係をチェックする初めての試みをおこない、発表することにした。
 カートリッジの位相の表示は、一般的に水平振幅にカッティングされたディスクを使い、中心方向から外周方向に針先が動いた場合に+側に発電する端子を+として表示する例が多い。しかし現状では、各メーカー間で完全な統一はなく、逆の場合もある。ステレオサウンドにある各種MC型カートリッジを、トーンバースト波のカッティングされたレコードを使いチェックした結果では、±表示が逆の、位相が反転している、いわば逆相カートリッジがいくつかあった。今回使用した製品では、EMT/XSD15、TSD15、フィリップスG925XSS、アントレーEC15の3種が逆相で、古い製品の中には、ソニーの〝プロ〟になる以前のXL55、初期のヤマハMC1なども反転型だ。
 一方、昇圧トランスとヘッドアンプでは、入力と出力の位相が反転する逆相タイプとして、次のような製品があった。
 昇圧トランスでは、オーディオニックスTH7559、ラックス8025、スペックスSDT77とSDT1000。
 ヘッドアンプではオーディオニックスADNIII、フィデリックスLN2、フィリップスEG1000、ヤマハHA1。
 入力系の正相と逆相の位相関係は、トータルなコンポーネントシステムの音質を変化させる大きな要素である。一部の製品に見受けられる、音質的な特徴を得るために反転型を採用するといった使い方は、たしかに効果的ではある。しかし、特に昇圧トランスの場合には、技術的アプローチから考えても、本質的には避けるべき手段である。
 また、昇圧トランス/ヘッドアンプともに、その出力をアンプに送る出力コードが必要だが、このコードの種類により、音が大幅に変化することにも気をつけていただきたい。これは、アームコード、機器間接続用のRCAピンコードも同様で、注意したい問題点だ。特定の音に焦点を合わせてチューニングをとる場合には、音を変える要素は大きなメリットとなる。しかし、今回のような比較試聴上では、この変化量がテスト結果を支配する要素となるだけに、たとえ専用コードを使用した場合でも、音質的にアンバランスを生じたときは、他のコードでもチェックしている。特別の場合には、かなりキャラクターの強い昇圧トランスが、一般的なRCAピンコードでナチュラルな音を聴かせた例もあり、特殊な構造や線材を使ったタイプは、いかに高性能であろうが、誤った使用法だけは避けたいものだ。

●テストに使用したレコード
ロッシーニ:《弦楽のためのソナタ集》アッカルド(v)他フィリップス25PC70-71
ドヴォルザーク:交響曲第九番《新世界より》ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー グラモフォンMG1199
峰純子《ジェシー》 ロブスターLDC1026
カシオペア《アイズ・オブ・マインド》 アルファALR28016
●テストに使用した機器
スピーカーシステム/JBL♯4343BWX
コントロールアンプ/マークレビンソンML7L
パワーアンプ/スレッショルドStasis3
ターンテーブル/マイクロSX8000十RY5500
トーンアーム/オーディオクラフトAC3000MC, デンオンDA401, フィデリティリサーチFR66S
カートリッジ/デンオンDL305, オルトフォンMC20MKII, フィデリティリサーチFR7f, EMT XSD/TSD15 他に各社代表的MC型多数
MCポジション比較用ブリメインアンプ
ビクターA-X5D, テクニクスSU-V7, サンスイAU-D907F

ヤマハ HA-2

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 ヘッドシェル内部に初段アンプを組込み、金属接点スイッチ、信号ケーブルなどに起因する歪を解消しょうという構想のアンプで、本体内部にRIAAイコライザーも備えたヘッドアンプイコライザーである。
 基本的にはフラットに伸びたレスポンスと、反応が速くダイレクトでシャープに粒立つ音で、一般のアンプと較べ、一段と鮮明で制約のない伸びやかさが特徴。
 MC20は芯の明解な低域とクッキリと緻密さのある中域、抜けの良い高域が特徴でコントラストの利いた音になり、305は全体に穏やかで、落着いた音だ。
 両者の音の傾向は相当に変わるが、原因の多くは組合わせたトーンアームの性質に関係がありそうだ。305はHA2用シェル付でアームはAC3000MC使用。

ヤマハ HA-3

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 自社開発低雑音ICを使ったヤマハ初のヘッドアンプ。入力切替は2段で、一般のMC型はLOWを使うが、入力インピーダンス100ΩのHIGHはmVオーダーの高出力用だ。入出力は逆相の反転アンプである。
 聴感上の帯域バランスはワイドレンジ型で、ハイエンドとローエンドを抑えたナチュラルなレスポンスだ。音色は明るく、音の粒立ちはシャープで硬質な美しさをもつが、良く磨かれているために表面的な光沢として浮かび上がらないのがよい。低域は柔らかく穏やかで、反応はさして速くないが、安定感のあるベーシックトーンをつくる。
 MC20は適度に抑制の利いたシャープさがあり、305はmV級出力用のHIGHの方がナチュラルで反応の速い音になる。

ビクター MC-T100

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 独自のIC製造技術を応用したマイクロコイルを針先に近くおいたダイレクトカップル方式MC型MC1、MC2E用に開発された高インピーダンス専用のトランス。カートリッジインピーダンスは20〜40Ω。
 帯域バランスは、低域は少し抑え気味だが中域から高域はナチュラルに伸び、中高域にキラッと輝くキャラクターがある。
 305は帯域バランスがなかなか良く、音源は少し遠いが音場感は拡がり、音像もナチュラルである。スケール感はやや小さい。
 テクニカAT34EIIにすると、帯域バランスはスッキリとまとまり、安定感のある低域、密度のある中域がピタリとマッチ。位相差によるプレゼンスを自然に聴かせる音場感、定位のシャープさも相当に優れる。

ウエスギ U·BROS-5/TypeH

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 基本構造はタイプLと同様だが、高インピーダンスの40Ω専用トランス。バイパス機構はピンプラグを入出力ともに差し替えるシンプルな機構を採用。
 基本的な音の傾向はタイプLと似て、音を端正に聴かせるクォリティの高さと音楽の実体感を両立させたタイプだが、このタイプHの方が反応が速く、フレキシビリティがあり、滑らかでリラックスした雰囲気がある。
 305は、素直に伸びたfレンジ、程よく明るい音色とナチュラルな分解能があり、最先端をゆくトランスデューサーにありがちな素気なさがないのが良い。
 XSD15は、鋭角的なシャープさが少し抑えられ、豊かな低域ベースの余裕タップリの熟成のきいた立派な音を聴かせる。

ウエスギ U·BROS-5/TypeL

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 入出力系に最小限度のRCAピン端子を使い切替スイッチを除いた性能志向型昇圧トランスで、3Ωの低インピーダンス専用モデル。
 帯域バランスは素直に伸びたナチュラルなレスポンスを聴かせ、低域は豊かで分解能が優れ、中域の密度感、高域のクリアーさはテスト機中トップランクで、全体に音を磨き端正に聴かせる特徴がある。
 MC20は、低域の芯がクッキリとし力強さがあり、中域から高域は音が整然と並ぶ印象となる。4種のプログラムソースは、それぞれのディスクの特徴を素直に引出して聴かせる。
 FR7fは、全体の輪郭の線は太くなるが、低域はソリッドで豊かさがあり、適度にストレートで発電系の優れた特徴を音として聴かせる性能をもっている。

ソニー HA-50

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 同社のMC型カートリッジXL44との組合せ用として発売されたヘッドアンプ。人力インピーダンスは100Ω、利得は26dBである。MC20は、フラットに伸びた広帯域型のレスポンスとソリッドで引締まったシャープでクッキリとした音である。音色は明るく、程よくパワー感があり、各プログラムソースを明快に整然とこなす力量は見事だ。
 305になるとMC20とは逆に音の粒子が細かく繊細でスムーズな音に変わる。音場感はスピーカーの奥に拡がり、音像も小さく少し距離感がある。基本的クォリティが高く、長時間聴いても疲れない音である。
 試みにXL55PROとFR66Sを使う。重量級の低域ベースの力強い押出しの良い音で、力強いMC型を代表する立派な音だ。

フィリップス EG 1000

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 AC電源100V使用、入力インピーダンス135Ωのヘッドアンプで入出力は逆相の反転アンプである。
 帯域バランスはヘッドアンプとしては必要以上にワイドレンジ化を狙ったタイプではなくナチュラルでスムーズに伸びたレスポンスをもつ。全体に音はソフトで滑らかであり、音の粒子は細かく抑えた光沢がある。
 MC20は暖色系の響きが豊かな低域と少し線を太く聴かせる中域から高域に特徴があり、デッサン的に音を聴かせる。305では、滑らかで適度にシャープさがあう、フワッと包み込まれるような独特のプレゼンスがあり、表情も豊かでそれなりにリラックスして楽しめる音だ。925にするとスケールが大きく、低域は豊かで芯があり、艶やかでプレゼンスに優れる。

フィリップス EG 9000

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 筐体上部の3系統のアーム切替とパスを含み3Ωと40Ωに切替えるダ円形のバーチカル型スイッチに特徴がある昇圧トランス。
 聴感上の帯域バランスは、ナチュラルに伸びたトランスとしてはワイドレンジ志向型で、柔らかな低域と軽快さがあり、反応が速いフレッシュな中高域から高域が特徴である。音の粒子は細かく滑らかでスッキリと粒立ち、細身で爽やかな印象は独特の魅力がある。
 MC20は、オルトフォンSTA6600Lを軽快にしたサウンドとなる。305はこのトランスとマッチングが良く、スムーズに伸びたワイドレンジ感と、適度に反応が速く、フレッシュでスッキリとした美しい音を聴かせる。音場感の拡がり、音像定位もシャープで小気味のよい音だ

トリオ KHA-50

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 セパレート型電源方式を採用した独自のハイスピード設計によるヘッドアンプ。′
 帯域バランスは、アンプとしてはワイドレンジ型ではなく、ナチュラルに伸びたレスポンスだ。音色はニュートラルでキャラクターは少なく、表情は少し抑え気味だが、素直さが特徴。
 MC20は、ややハイエンドを抑えたバランスと穏やかで落着いた表情が特徴。音場は距離をおいて拡がるタイプで音像は少し大きい。
 305は、素直に高域が伸びた適度に軽快でスムーズな音だ。音の分離も水準以上でMC20の鉄芯入りとの差を一応聴かせる。ドボルザークは少し難しいが、他の3曲はそれなりに楽しめる。
 ヤマハMC5にすると少し高域は穏やかだが低域の独特味は明瞭に聴かれる。

フィリップス EG 8000

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 EG9000の実用モデルとして開発された昇圧トランスで、スピーカーの音圧でトランスが振動しない重量級設計の筐体、ノイズレスリッツ線の出力コード付。入力インピーダンスは3Ωと40Ωの2段切替型だ。
 帯域バランスは、量的には豊かだが、少し重さのある低域をベースに、輝きのある中域とナチュラルな高域が、やや低域に偏ったバランスをつくる。
 MC20は中低域の響きが豊かで中高域に独特のキャラクターのあるキレイな音になり、305は、柔らかい雰囲気と中高域の華やかな輝きが音に加わる。
 G925XSにすると、柔らかいが重い低域と明るくシャープな高域がバランスし、フワッと明るい個性的な中域が独特のサウンドキャラクターをつくる。

トーレンス PRA 990

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 トーレンスのMC型カートリッジ付アーム用に開発されたヘッドアンプで、ゲインは、2Ω用と22Ω用の2段切替スイッチ付。
 帯域バランスは誇張感がないナチュラルなタイプで、音色は柔らかく暖かく、音を滑らかに、細かく美しい雰囲気のなかに聴かせるタイプで、ハイフィデリティ志向型の多い国内のヘッドアンプとは異なったキャラクターをもつ。
 MC20は、適度に間接音を含んだ響きの美しい音で、しなやかでキレイな音だ。音の表情はナチュラルで少し真面目なタイプだ。
 XSD15にするとスケールが大きく穏やかで、余裕があり、安定感のある音になる。独特のシャープで鋭角的なパワー感はなくなるが、このおおらかなEMTの音もなかなか良い。

スペックス SDT-1000

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 SDX1000MC型カートリッジの性能を最大に発揮させる目的で開発された低インピーダンス専用トランスで、1対100の高い昇圧比と入出力が逆相の反転トランスが特徴である。
 聴怒上ではトランスとしてはワイドレンジ型でスケール感も充分あり、寒色系のソリッドで引締まった低域をベースにクッキリとコントラストをつける密度感のある中域、スッキリと伸びた高域が、シャープなレスポンスを示す。
 MC20は、タイトな低域とクッキリと粒立つ中高域が特徴で、ロッシーニの明るく華やかな色彩感や、峰純子の少し大きいがシャープな音像定位、クリアーに抜けるピアノ、ベースの豊かさはトランス独特の魅力的なキャラクターだ。個性派のユニークなトランス。

スペックス SDT-77

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 スイッチ切替なしに2〜50Ωのカートリッジが使える昇圧トランスで、昇圧比は1対30。入出力が逆相の反転トランスである。
 帯域バランスは低域を抑え気味とし、やや硬質でコントラストをクッキリつける中高域、ハイエンドを抑えた高域が特徴である。
 MC20はクッキリとシャープな音で、明快さはあるがバランスが高いパートに偏り、音場感がナチュラルに拡がらず独特の中低域の豊かさが出難い。
 305は、やや硬質ではあるがバランスもスッキリとし、スケールはまだ小さいがロッシーニの軽快さ、華やかさを聴かせる。ドボルザークは予想よりもスケール感がなく小柄にまとまり、峰純子はリアリティは相当にあり音像もクリアーだが、プレゼンス不足だ。

パイオニア H-Z1

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 超高性能部品を最大限に投入し、独自のMC用スーパーリニアサーキット採用の無帰還ヘッドアンプ。ゲインは2段切替、負荷抵抗切替は4段切替の汎用型。
 帯域バランスはナチュラルだがトランスとは一線を画したレスポンスだ。音色はやや暖色系に思われるが、明るく反応の速いタイプである。このアンプの最大の特徴は繊細さとダイレクトなストレートさを両立させた点で、情報量が多く、トランス独特の力強く分離のよい低域から中域と、爽やかに伸びたディフィニッションの優れた高域が聴かれる。
 カートリッジの対応の幅は広く、それぞれの特徴を素直に出すが専用コードでは全体に美化しすぎるようだ。最適のコードを選べばさらに好結果が期待できる。

ミルティ Pixall MKII

ピクソールのレコードクリーナーPixall MKIIの広告(輸入元:東志)
(スイングジャーナル 1981年9月号掲載)

ピクソール

アントレー EC-20, ET-100

アントレーのカートリッジEC20、昇圧トランスET100の広告
(スイングジャーナル 1981年9月号掲載)

アントレー

デンオン DP-32F, AVC-1

デンオンのアナログプレーヤーDP32F、スタイラスクリーナーAVC1の広告
(スイングジャーナル 1981年9月号掲載)

DP32F

マイクロ アナログディスク関連アクセサリー

マイクロのターンテーブルシートCU180、スタビライザーST10、ST20、インシュレーターMSB1、MSB8、MSB100、イナーシャHS80、ヘッドシェルH808X、H303X、H202X、ベースG8000、B8000、F8000、ストロボスコープMST305、ストロボライトMSL204、トーンアーム出力ケーブルMLC282、MLC7S、MLC12S、シェルリードMCS9、MCX7、MCL5の広告
(スイングジャーナル 1981年9月号掲載)

マイクロ

アキュフェーズ C-7

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 RET入力完全対称型プッシュプルA級DC構成のヘッドアンプ。聴感上でのf特は最新アンプにありがちなワイドレンジ志向ではなく、ナチュラルな帯域バランスが特長。MC20IIでは、整然とした凝縮した緻密な音が聴かれ真面目な表現が目立つ。ロッシーニは、少し表情に硬さがあり、ドボルザークは、整理された音が少し遠くに広がる。峰純子は重い低域と穏やかな丁寧な歌い方となり音質は少しソフトにまとまる。
 DL305にすると、音色は暖色系で柔らかくスムーズでキメ細かさが出てくる。ロッシーニは気軽に楽しめ、ドボルザークは少しスケールが小さくキレイにまとまる。キャラクターは少なく手堅く音を美しく聴かせる点が特長で、長時間聴いても疲れない音質。