Category Archives: 海外ブランド - Page 59

スコッチ Scotch1500, Scotch2000

スコッチのオープンリールテープScotch1500、Scotch2000の広告
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

Scotch2000

SME 3009/S2 Improved, 3009/S3, FD200

SMEのトーンアーム3009/S2 Improved、3009/S3、アクセサリーFD200の広告(輸入元:シュリロトレーディング)
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

3009SIII

オルトフォン M20FL Super, M20E Super

オルトフォンのカートリッジM20FL Super、M20E Superの広告(輸入元:ハーマンインターナショナル)
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

M20FL

デイトンライト SPS Mk3

デイトンライトのコントロールアンプSPS Mk3の広告(輸入元:オーディオファイル)
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

SPS

オーディオ・オブ・オレゴン BT-2

オーディオ・オブ・オレゴンのコントロールアンプBT2の広告(輸入元:RFエンタープライゼス)
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

BT2

ハーマンカードン Citation 17, Citation 16A

ハーマンカードンのコントロールアンプCitation 17、パワーアンプCitation 16Aの広告(輸入元:ハーマンインターナショナル)
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

Citation

ピカリング XUV/4500Q

ピカリングのカートリッジXUV/4500Qの広告
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

XUV4500

レクソン AC1, AP1

レクソンのコントロールアンプAC1、パワーアンプAP1の広告
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

Lecson

エレクトロルーブ PLUS2X, PLUS2AX

エレクトロルーブの接点復活剤PLUS2X、PLUA2AXの広告(輸入元:ゼネラル通商)
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

Electrolube

アルテック Model 19

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶くっきりした、力のあるひびきで示されるピッチカート。
❷たっぷり余裕のある低音弦のスタッカートはなかなかいい。
❸くっきりと、あいまいにならずに特徴あるひびきを示す。
❹第1ヴァイオリンのひびきのたっぷりした提示は独特だ。
❺力をもったクライマックスのひびきは圧倒的だ。力にみちている。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノのひびきのゆたかさを示すが、音像は大きめだ。
❷音色的な対比を示しはするが、もう少し小味でもいい。
❸音楽的な身振りが、やはりどうしても大きくなる。
❹一応特徴は示しはするが、さわやかとはいえない。
❺木管のひびきがたくましくなる傾向がある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶細かい表情をそれなりに示して、拡大しないよさがある。
❷接近感は明らかになるが、雰囲気ゆたかとはいいがたい。
❸声が硬くなる。クラリネットの音色はこのましい。
❹はった声は、さらに硬くなり、金属的になるきらいがある。
❺オーケストラのひろがりを感じさせ、声とのバランスもいい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の声が前にでる傾向があり、すっきりさに欠ける。
❷声量の変化を極端に示す。言葉のたち方は充分でない。
❸残響をひきずりがちなため、ひびきに肉がつきすぎる。
❹各声部の音の動きが多少重く感じられる。敏捷さがほしい。
❺最後の「ラー」でののびは、自然で、このましい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンという高い音とポンという低い音との対比は充分だ。
❷シンセサイザーのひびきはきわだって奥の方からきこえる。
❸浮遊感は充分とはいいがたい。もう少し軽くてもいい。
❹前後のへだたりは充分にとれて、ひろがりを感じさせる。
❺力をもってもりあがるピークは迫力がある。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶透明ではあるが、暖かい、かなり上質のひびきだ。
❷対比は充分について、ギターはかなり積極的に前にでる。
❸びひきとしてのまとまりがよく実在感もある。
❹光りをもって、くっきりと提示され、有効だ。
❺他のひびきの中にうめこまれがちで、効果の点で充分とはいえない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターのひびきはさらにさわやかでもいいだろう。
❷ひびきの厚みを力をもって示している。
❸必ずしもさわやかとはいいがたいが、音色的特徴は示す。
❹ドラムスの音は、少し重めだが、アタックの鋭さは示す。
❺楽器のひびきの方がきわだちがちである。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶力は充分だが、音像的には大きくなりがちだ。
❷クローズアップの迫力をなまなましく示す。
❸消え方も明らかにし、スケールもゆたかだ。
❹充分シャープに反応できているのがいい。
❺他の点では問題ないが、音像対比では多少ひっかかる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶おしこんでくるような力のある音が特徴的だ。
❷ブラスは、腰の強いひびきで、直進してくる。
❸過度に横にひろがることなく、積極的に前にはりだす。
❹一応のへだたりもあり、見通しも充分だ。
❺力強くリズムが刻まれ、めりはりをつける。

座鬼太鼓座
❶一応の距離はとれているが、ホール・トーンのごときものが感じられる。
❷音色的には、もう少し繊細で枯れていてもいいが。
❸くっきりと、あいまいにならず示されている。
❹中味がぎっしりつまった、スケールゆたかなひびきだ。
❺❹ひびきとの対比の上で充分に成果があがっている。

タンノイ Arden

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶薄いひびきのピッチカート。演奏者の数が少ないように感じられる。
❷ひびきのくまどりがもう少しくっきりついてもいいだろう。音に力が不足。
❸音色の特徴はよく示すが、ひびきは消極的だ。
❹低音弦のピッチカートが過度にふくらむ。
❺もりあげ方がひよわで、クライマックス本来の迫力がない。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノのひびきに力が不足している。音像もふくらみぎみだ。
❷木管楽器のキメ駒かなひびきには、よく対応できている。
❸「室内オーケストラ」のひびきの軽やかさをよく示す。
❹第1ヴァイオリンによるさわやかなひびきを示す。
❺誇張感なく、さわやかに、しなやかに示す。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶近づいてくるアデーレの声に余分なひびきがつきまとっている。
❷声のまろやかさに対応し、言葉のたちあがりもいい。
❸うたいはじめたヴァラディの声は硬調だ。クラリネットのひびきはいい。
❹はった声は、硬くなる。ニュアンスのとぼしい声になる。
❺特にオーケストラのひびきに対しての対応がいい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶横一列にすっきり並んでいるとはいいがたい。
❷もともとの言葉のたちあがり方に多少の問題があるが、より不鮮明になる。
❸残響をひきずっているために、すっきりしない。
❹ソット・ヴォーチェでの各声部の明瞭さが充分でない。
❺さらに鋭敏にひびきに対して反応してほしい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶きわめて個性的に音色的な差を明らかにする。
❷かなり奥の方からシンセサイザーのひびきがきこえる。
❸軽みに欠けるところがあるので、浮遊感は充分でない。
❹前後のへだたりはとれているが、ひびきは湿りがちだ。
❺ひびきには力が不足しているので、ピークで迫力が充分でない。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひびきは暖色系だ。横へのひろがりは充分にとれている。
❷ギターのせりだしは消極的だ。❶との対比はかならずしも充分ではない。
❸ひびきのくまどりは、もうひとつ鮮明であってもいい。
❹ここで求められるひびきの輝きがくぐもりがちだ。
❺うめこまれはしないが、きわだちもしない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶低い音がきわだって、ひびきに新鮮さがとぼしい。
❷ひびきはむしろ横にひろがり、厚みを提示することにはならない。
❸ひびきが乾ききれていないので、さわやかさが稀薄だ。
❹ドラムスひびきが重くひきずりがちなので、切れは鈍い。
❺言葉は、さらにすっきり、思いきりよくたちあがってもいいだろう。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像はかなり大きい。ひびきはより筋肉質でもいい。
❷オンでとったが故のひびきの性格は示すが、なまなましくはない。
❸消える音の尻尾をかなり拡大して示す。
❹細かい音の動きに対しては十全に反応しきれていない。
❺とりわけ音像的な対比で差がありすぎる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶アタックが甘い。よりシャープに切りこんでほしい。
❷ブラスの力強い切りこみに対しての反応が充分とはいえない。
❸フルートのひびきは、むしろ横にひろがりがちだ。
❹一応のへだたりはとれているものの、見通しはよくない。
❺リズムをきざむ楽器の音像が大きめなために、めりはりがつきにくい。

座鬼太鼓座
❶尺八の位置はかなり近くに感じられる。
❷尺八特有のひびきへの対応は、みごとだ。
❸ききとれないことはないが、輪郭はいくぶんあいまいだ。
❹大太鼓のスケールゆたかなひびきに充分対応できているとはいえない。
❺硬質なひびきの特徴をよく示している。

インフィニティ Quantum 4

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶細く、薄くひびくピッチカート。音に力が不足している。
❷くまどりはとれているが、ひびきに生気が不足ぎみだ。
❸ひびきの特徴を示しはするが、消極的な提示にとどまる。
❹低音弦のピッチカートがふくらみすぎる。
❺表情をたっぷりつけてもりあげていくところに特徴がある。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音が浮きあがったように特徴的にひびく。
❷対比は示すもの、ひびきにくせがある。
❸重くひびかないのはこのましいが、ひびきにしまりがほしい。
❹ほどほどにこのひびきの特徴を感じとらせる。
❺ここでのファゴット、フルート等の木管への対応はいい。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶アデーレを呼ぶロザリンデの声のひびき方が特徴的だ。
❷アイゼンシュタインの声が、幾分高く感じられる。
❸声のくっきりした提示に対して、クラリネットはあいまいだ。
❹はった声は、硬くはならないが、ニュアンスにとぼしくなる。
❺オーケストラと声のとけあいがもう少し自然であってほしい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶どうしたわけか、テノールがひっこみがちだ。
❷声量をおとした分だけ言葉のたち方が不充分になる。
❸ある種の反応の敏捷さがあり、残響をひっぱっていないのもいい。
❹ソット・ヴォーチェでの軽やかさを示す。
❺一応ののびを感じさせて、あまり不自然さはない。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンの特徴はよく示すが、ポンはいくぶんかげりがちだ。
❷しのびこむというより、くっきりたってくる。
❸浮遊感はたりない。飛びかいも方も不充分だ。
❹前後のへだたりはとれるが、全体としてのまとまりに欠ける。
❺ピークでの力不足が感じられるが、音に汚れはない。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶横へのひろがりは充分に示され、質的にもこのましい。
❷中央からきこえるが、音像的にふくらみすぎだ。
❸ひびきの中身が稀薄だ。もっとくっきりしてもいい。
❹きらりと光って、ひびきのアクセントたりえている。
❺うめこまれることなく、有効な働きをする。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶低い方の音がひびきすぎで、バランスがよくない。
❷ひびきは横にひろがりぎみで、厚みを示すことにはならない。
❸ひと味ちがう特徴あるひびきできわだってきこえる。
❹声の特徴はよく示されるが、ドラムスは重くひきずりがちだ。
❺バック・コーラスの声の重なり方はよくわかる。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像はかなり大きい。いくぶんかの強調感がある。
❷オンで録音したが故に感じられるはずの迫力はとぼしい。
❸音が消えていく、その尻尾を十全には示さない。
❹細かい音の動きに対しては、さらに鋭く反応してほしい。
❺左右ふたりのベーシストの音像面での対比が不自然だ。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶大きくはなやかにひろがる。アタックの強さが感じとりにくい。
❷ブラスのひびきが誇張されて、金属的になる。
❸横に大きくひろがりはするが、ひびきに力がない。
❹後方へのひきは必ずしも不充分とはいえないが、見通しはよくない。
❺リズムはいくぶんふやけぎみで、めりはりがつきにくい。

座鬼太鼓座
❶尺八はもう少しへだたったところからきこえてもいいだろう。
❷尺八の音色を感じとらせはするが、鮮明さに欠ける。
❸必要充分に感じとらせるが、ひびきの輪郭の提示は充分とはいいがたい。
❹スケール感ということではものたりなさがのこる。
❺このひびきの硬さがよりくっきり示されることが望まれる。

ルボックス BX350

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 すばらしく音の質感のいいスピーカーだ。いわゆる歪っぽさや粗さが少しも感じられず、しっとりと潤いある美しい、とてもクリアーかつ滑らかな音がする。いわゆるリニアフェイズの考え方をとり入れているが、ブックシェルフ型よりももう少し小型なので、どういう置き方がよいのかといろいろ試みたが、結局、トゥイーターとウーファー(こウーファーは小口径のスピーカーを4本使った独特の構成だが)の中心あたりがほぼ耳の高さにくるように、高さ約50センチほど台に乗せるのが最もよかった。左右になるべくひらき、スピーカーの正面が耳の孔に向くように設置する。壁に近づけると低域の低いところで一ヵ所、少し音が重くなるところがあるので、背面は適度にあけて、むしろアンプの方で低域を補う方がいいように思った。まさにドイツ独特のクリアーサウンドだが、かつてのブラウンやヘコーのようなクセのある音ではなく、バランスはきわめていい。ただ、パワーを上げると中〜高域が硬くなるので、中程度迄の音量で楽しむスピーカーだ。オーケストラの中のチェロのユニゾンなど、時折ハッとするほどの美しさが出るし、ベーゼンドルファーの艶と丸みもかなり良い感じだ。カートリッジやアンプも乾いた音を避けたい。455Eや7300Dのような傾向が合う。意外に38FDIIもそれなりの良さで鳴った。

セレッション Ditton 33

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 セレスティオン(と発音するそうだが)のスピーカーは、近ごろやたらに製品の種類を増やしていて分類にとまどうのだが、大きく分けるとこのDittonシのリーズと、もうひとつ別にULのシリーズとがある。がDittonの中でも、66や44のようないわゆる「ゾロ目」のシリーズが比較的新しい。ULの方が音をより正確に再生するシリーズであるのに対して、Dittonはホームユースとして楽しめる音をねらっているのだそうだ。この33はその中でも最も新しいスピーカーで、今回のテストでいえば、B&WのDM4/IIや、別項ミニスピーカーの分類に入っているJRの149や、スペンドールSA1それにロジャースのLS3/5Aなどと比較する方が、このスピーカーの性格を説明しやすい。まず大掴みにいえば(イギリスのスピーカーにしては)やや硬質の、つまり中〜高域の張った傾向で、スペンドールSA1よりもいっそう張っている。したがって、ピアノの打鍵音などにも独特の光沢を感じさせ、オーケストラ録音でも音のこまかな構造をあきらかにする。とうぜん、JRやロジャースが色濃く持っている音のひろがりや雰囲気描写はやや後退する。パワーにはわりあい強い。台は50〜60センチと高め、背面は壁に近づける方がよい。455Eや7300Dの傾向の組合せの方がよかった。

B&W DM4/II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 鳴りはじめた瞬間から、素性の良さは争われないものだと感じさせる。たまたま試聴の順序から、これの前に国産の5万円台の製品の3機種(しかもこの3機種はいずれも結果が悪かったので記事にはならない)が続いたせいも多少あるが、それにしてもやはりこのバランスの良さはみごとだ。以前別のところでテストしたときもこの良さには感心したが、細かいことをいえば今回のサンプルの方が、以前聴いた製品にくらべて、いわゆるモニター的というか、音をいっそう真面目に鳴らす方向に仕上っているように感じた。たとえば菅野録音の「SIDE BY SIDE 3」のレコードなど、ハイエンドをもう少し強調したいと思わせるほど音に誇張がない。中音域もイギリスのスピーカー一般の平均値からみるとあまり引っ込んだ感じがせず、たとえばシェフィールドのダイレクトカットのレコードでも、このあとに試聴したJRと比較でいえば、オーケストラ録音では各声部の細かな進行をJRよりよく浮き上らせ楽曲の構造をよくわからせる。反面、JRよりもい位相差成分が消えてしまうようなところがあって、音のひろがる感じはJRの方がおもしろく聴かせる。その意味で組合せも455E+KA7300Dの傾向の方が楽しめた。台は約40センチぐらい。背面を壁にやや近づける置き方がよかった。

ボリバー Model 18

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 試聴に入る前にそのスピーカーを最も良く生かす設置条件を探すために、テストをくりかえしながらいろいろ動かしてみる。そのことはすべてのスピーカーに共通しているが、その調整のプロセスから、すでに、おや、これは相当に素性の良い製品だな、と思わせる。たいていの国産スピーカーは低音の鳴り方が粘ったり重くなったりして、そこをおさえるために置き方に苦労するが、ボリヴァーの場合はむしろ低域がとても軽く、そのためにやや低め(約20cm)の台にして背面をほとんど壁につけるくらいにしてみたが、こうするとファンダメンタルがとても充実してきて、しかも低音楽器の動きがよく聴き分けられる。全域に亘ってやや軽い傾向だが、誇張感のないバランスの良さで楽しめる。好みによってハイエンドをわずかに強調してもよく、そうしてもユニット自体の共振が目立つようなことがなかった。総体にべとついたところがなく、さらりと明るく鳴るが、反面、弦や女性ヴォーカルなどで、もうひとつしっとりした潤いがあってもいいかな、と思わせる。ただそれは悪い意味でのドライではなく、質感も緻密だしザラついたり粒の粗くなったりするようなこともない。組合せは、ポップス系には4000DIIIとCA2000の傾向で徹してしまうのもよいが、455E+7300Dの方が音に潤いが出てきて楽しめる。これはダークホースだ。

JBL L200B

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートの音は、くっきり、輪郭たしかに立つ。
❷低音弦のスタッカートの力は感じさせる。
❸くっきりとそれぞれのひびきの特徴を示す。
❹第1ヴァイオリンのフレーズにもう少しキメこまかさがほしい。
❺腰のすわった音でクライマックスを迫力にとんだものにする。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶力を感じさせるひびきで、ピアノは中央にくっきり定位する。
❷音色対比の提示にいささかのあいまいさもない。
❸多少ひびきのキメが粗い。もう少ししっとしてもいいだろう。
❹ひびきのしなやかさがたりない。誇張しない良さはあるが。
❺鮮明ではあるが、キメこまかさに欠ける。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶くっきりと音像を示す。言葉の表情をきわだたせる。
❷アイゼンシュタインの接近感を、思いきりよく、すぱっと示す。
❸クラリネットのひびきの特徴を、きわめて明快に提示する。
❹声は全体的に硬めだが、特にはった声は金属的なひびきになる。
❺さまざまなひびきの個性を、くっきり示す。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の声が強調ぎみに示されて、不自然だ。
❷声の強弱を拡大して示す。とってつけたようなところがある。
❸余分なひびきがつきすぎていて、言葉のたち方は不充分だ。
❹微妙なひびきに対しての反応でものたりないところがある。
❺「ラー」はとってつけたようにのびる。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンの硬質な性格をよく示し、音場的な対比も充分だ。
❷シンセサイザーのひびきのクレッシェンドはみごとだ。
❸一応の浮遊感を示し、提示される空間も狭くるしくない。
❹前後のへだたりは充分にとれて、音の飛びかい方もいい。
❺ピークは力をもっていて、圧倒的な迫力を示す。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶重力を感じさせないひびきの奥の方でのひろがりはきわめていい。
❷ギターの音色のきりかえを充分に示して、ひびきそのものも積極的だ。
❸あいまいにならず、実在感たしかにひびく。
❹さらにキメ細かいひびきであってほしいが、充分に光る。
❺せりだしてくるギターとの対比はなかなかいい。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターの音色をよく示し、フレッシュだ。
❷ひびきの厚みをよく示し、効果は歴然だ。
❸ここできこえるハットシンバルのひびきはなかなか有効だ。
❹ドラムスは、切れ味鋭く、アタックの強さもいい。
❺バック・コーラスの、声としては乾いたひびきがよく伝わる。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像は大きくふくらむ。もう少しひきしまるべきだろう。
❷オンのなまなましさを伝えるが、いくぶん誇張ぎみだ。
❸消える音の尻尾を拡大ぎみに示す傾向がある。
❹細かい音に対して反応はさらにシャープであってほしい。
❺両ベーシストの対比は、ほぼ順当である。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶リズムがシャープに切りこんでくるので効果的だ。
❷ブラスのつっこみは、音色的にも、力の点でも、まずまずだ。
❸フルートによるひびきが横にひろがらないのはいい。
❹奥行きもたっぷりとれて、ひろびろとしている。
❺ひびきにふやけがないので、めりはりはよくついている。

座鬼太鼓座
❶尺八までの求められる距離感は明らかにされる。
❷尺八のひびきとしては、やはり脂がつきすぎている。
❸もとが大太鼓の音だということを感じさせる。
❹消える音を示しはするが、スケールゆたかとはいいがたい。
❺ふちをたたいているとは思える音は、それしらく示しされる。

ロジャース LS3/5A

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートのひびきが、少し細すぎる。
❷もうひとつ力がほしいが、ひびきのくまどりがついている。
❸きわだたせはしないが、音色の特徴を鮮明に提示する。
❹低音弦のピッチカートがふくれすぎないよさがある。
❺細部の提示は鮮明だが、クライマックスの迫力という点で不足する。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶音像はひろがらない。まろやかなピアノのひびきに魅力がある。
❷音色的な対比が自然で、無理のないのがいい。
❸ひびきがふくれないよさはあるが、もう少し軽やかでもいい。
❹いくぶんひっこみがちなところが気にならなくもない。
❺木管のひびきの特徴をよく示し、さわやかだ。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶定位がきわだっていい。人物の動きがおもしろいようにわかる。
❷接近感は、かなりなまなましい。表情を過度にしないところがいい。
❸声が少し後ろにひいて、クラリネットが前にいることがわかってこのましい。
❹はった声は硬くならないが、まろやかさはいくぶんそこなわれる。
❺声とオーケストラのバランスがいいので、ききやすい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶すっきりと横一列に並んで、凹凸がほとんど感じられない。
❷声量の差をくっきりと示して、よくわかる。
❸残響をひきずっていないので、言葉がよくたつ。
❹さらひびきに軽やかさがあれば、一層ひきたつだろう。
❺しなやかに、自然にのびて、このましい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的な対比は充分だが、音場的対比ではものたりない。
❷奥へのひきは申し分ない。すっきり中央からきこえてくる。
❸ひびきの浮遊感が必ずしも充分とはいえない。
❹前後へのへだたりはとれているものの、ひびきに軽やかさがほしい。
❺ピークでの一応の力は示すが、もう一歩というところだ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひっそりとした、きめこまかなひびきのひろがり方はいい。
❷ギターはきわだって奥の方から、次第にせりだしてくる。
❸このひびきの特徴を示しはするが、きわだたせることはない。
❹ひびきに輝きがあり、ここで求められる効果を示す。
❺うめこまれないで、充分にききとれる。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ひびきの上下のバランスがいいので、12減ギターの特徴がよく示される。
❷ツイン・ギターの効果がくっきりと示されている。
❸ことさらきわだつわけではないが、ひびきは乾いている。
❹中域のエネルギーが充分なためか、言葉のたち方がいい。
❺バック・コーラスのひろがりがよくわかる。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶ひびきが積極的に前にでて、力のあるのがいい。
❷誇張感はないが、かなりのなまなましさを示す。
❸音の尻尾も、必ずしも充分とはいえないが、まずまずだ。
❹反応はかなりシャープで、力強さも感じさせる。
❺両者の対比が無理なく自然なのがいい。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶くっきりリズムを提示する。音場的なひろがりも感じさせる。
❷ブラスのひびきが金属的にならないのがこのましい。
❸積極的に前にでて、充分な効果を発揮する。
❹後方へのひきもよく、ひびきの見通しもいい。
❺バランスの点で問題が少ないので、めりはりがついている。

座鬼太鼓座
❶尺八がへだたったところでひびいている感じをよく示す。
❷音色的にも尺八のひびきの特徴をのぞましく示す。
❸この音が大太鼓の音であることはよくわかる。
❹スケール感はやはりかなりものたりない。
❺この音に求められる効果をつつがなく示す。

スペンドール BCII

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶あかるいさわやかな音のピッチカートだ。少し細すぎるかもしれない。
❷輪郭はしっかりしているが、ひびきにもうひとつ力がほしい。
❸それぞれのひびきの特徴を鮮明に示してこのましい。
❹第1ヴァイオリンの音にもう少し艶がほしい。低音弦のまとまりはいい。
❺もりあがり方に無理はない。クライマックスで示される力も一応のものだ。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ひびきはさわやかで、音楽的なまとまりもいい。
❷音色的な対比は鮮明だが、ふかぶかしたひびきがほしい。
❸「室内オーケストラ」ならではの軽やかさは示す。
❹きわめてさわやかだ。すっきりとした提示はこのましい。
❺鮮明だ。軽く、キメ細かいひびきがいきる。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶定位は大変にいい。一種なまなましさもある。
❷言葉が、重くならず、しかもすっきりたつ。
❸少し後にひきぎみのロザリンデとクラリネットの対比がとてもいい。
❹はった声がしなやかさを失わないのはいい。表情の誇張がない。
❺うたいてとオーケストラとのバランスがよくとれている。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶ひびきに軽やかさと敏捷さがあるために、不自然さがない。
❷声量をおしたからといって、言葉が不鮮明になったりしない。
❸残響がまったく切りおとされているというわけではないが、言葉は鮮明だ。
❹各声部のからみを不明瞭になることなく示す。
❺声のしなやかさを示しつつ、自然にのびる。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンの硬さとポンの柔らかさの対比を充分につける。
❷後方からのきこえ方は、ひろがりを感じさせてこのましい。
❸浮遊感は充分だ。ひびきにべとつきがないためといえよう。
❹充分に前後のへだたりがとれている。ひろがりの点でも不足ない。
❺ピークでは少しきついが、ぬけはいい。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶はるけきひびきが、静かに、ひろがり、さわやかだ。
❷その中央から、次第に姿を拡大してくるギターのひびきが効果的だ。
❸くっきりとひびきの輪郭を示して、まことに効果的である。
❹ここでのひびきに輝きがある。アクセントをつけている。
❺うもれない。しかし、きわだちすぎない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターのひびきの特徴をすっきりと示す。
❷もう少し力強くてもいいが、一応の効果はあげる。
❸ひびきは、乾いているが、薄くないのがいい。
❹くっきりはずんだひびきで示されるドラムスがいい。
❺バック・コーラスによる言葉のたち方は自然だ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像的にかなりふくらむ。少しふくらみすぎか。
❷オンでとったなまなましさがあり、しかし極端にならないのがいい。
❸音の消え方の提示にこだわりすぎているのかもしれない。
❹少し甘い。ひびきそのものに力不足なところがあるからだろう。
❺音像的な対比ということでは、充分とはいいがたい。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきに、腰のすわった力があれば、さらにはえただろう。
❷一応つっこんではくるが、ひびきは金属的になりがちだ。
❸拡大して示すものの、せりだしてはこない。
❹前後のへだたりを示し、見通しの点でも悪くない。
❺アタックの強さを示しきれず、めりはりがつきにくい。

座鬼太鼓座
❶すっきり示す。程よい距離感も示せている。
❷ひびきのキメ細かさが、ここでは有効な働きをしている。
❸一応きかせはするが、輪郭はあいまいだ。
❹スケールのゆたかさは、ついに示しきれない。
❺きこえはするが、ひびきのアクセントたりえない。

ルボックス BX350

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶からっとしたひびきで示されるピッチカート。あいまいさのないのがいい。
❷くまどりたしかな、力をもったスタッカートだ。音に力がある。
❸拡大して示しはするが、ひびきの特徴をよくとらえている。
❹腰のすわった第1ヴァイオリンのひびきはなかなか魅力的だ。
❺クライマックスは力にみちているが、弦にはもう少ししなやかさがほしい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像はくっきりしている。たしかなひびきがいい。
❷必要充分に音色的対比を示してこのましい。
❸さわやかさが感じられる。ひびきのふくらみすぎないのがいい。
❹これみよがしにならず、きれいに示す。
❺フルートのひびきがさわやかでいい。あいまいにならないよさがある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶舞台のひろがりを感じさせるひびきだ。声は少し硬めだが。
❷接近感を、無理なく、自然に、なまなましく示す。
❸声とオーケストラのバランスは折目正しく、すっきりさわやかだ。
❹うたう声も硬めだが、言葉のたちあがり方はいい。
❺声と楽器のひびきのとけあい方が自然だ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶定位がいい。横一列に並んでいる感じがわかる。
❷余分なひびきをひきずっていないので、言葉は鮮明だ。
❸言葉の輪郭をくっきり示すが、几帳面にすぎるかもしれない。
❹ソット・ヴォーチェになった時に、もう少し声のまろやかさがほしい。
❺音の消え方が幾分段取り的になりがちだ。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的にも、音場的にも、充分にコントラストがついている。
❷奥へのひびきが充分で、シンセサイザー固有のひびきへの対応もいい。
❸浮遊感は必ずしも充分とはいえない。提示される空間は広い。
❹前後のへだたりがとれている。ひびきの明るさがいい。
❺ピークで示される力は充分だ。ひよわにならないよさか。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶奥の方で左右に、かすみがたなびくようにひろがる。
❷❶の中央から力をもったひびきで次第に前におしだしてくる。
❸ひびきの特徴を確実におさえたよさがある。
❹ひびきに充分な輝きがあり、効果的だ。
❺うめこまれてはいないが、ことさらきわだつわけではない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶くっきり思いきりのいいひびきが、ここでいきる。
❷サウンドに厚みが感じられ、ここで求められる効果が感じとれる。
❸ひびきの特徴の示し方にあいまいさがなく、このましい。
❹ドラムスのつっこみは、力があり、みごとだ。
❺言葉は、いささかもあいまいにならず、すっきりたつ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶中身がぎっしりつまった筋肉質なひびきのよさがいきる。
❷オンで録音したが故のなまなましさを示すが、誇張感はない。
❸必ずしも消える音の尻尾を充分に示すとはいえない。
❹細かい音の動きに対しての反応はシャープで、効果的だ。
❺不自然な音像差がなく、ひびきに力が感じられる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶アタックの強さを充分に感じさせてこのましい。
❷ブラスのつっこみは、鋭く、前にでる。
❸前に力をもってはりだして、効果的である。
❹後方へのへだたりがとれ、音の見通しはきわめていい。
❺力感があり、くっきりとめりはりをつける。

座鬼太鼓座
❶自然な距離感を、無理なく示す。しかもすっきりとした提示だ。
❷尺八のひびきとしては、いくぶん異色ながら、まずまずだ。
❸ここでのひびきの輪郭を強調しすぎているかもしれない。
❹ひびきは力をもって特徴的だが、大太鼓らしさは稀薄だ。
❺くっきりと示して、充分に効果をあげる。

KEF Model 105

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶細く、薄いひびきのピッチカート。もう少し音に力があってもいいだろう。
❷低音弦のスタッカートならではの力が感じとりにくい。ひびきが遠い。
❸特徴あるひびきの提示は鮮明だが、力のある音がほしい。
❹第1ヴァイオリンの艶のあるひびきはなかなか魅力的だ。
❺クレッシェンドへの対応のしかたは充分だが、もうひとつ力に不足する。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像はふくらまず、くっきり定位してこのましい。
❷あざやかに対比させてこのましい。ひびきに深みがほしい。
❸「室内オーケストラ」ならではのひびきの軽やかさへの反応がいい。
❹ひびきは、細く、薄くなりがちだが、しなやかさを失わないのがいい。
❺木管楽器のひびきへの対応は大変にいい。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声のなまなましさを、キメこまかに示す。定位もいい。
❷言葉のたちあがり方がいい。人物の動きも鮮明だ。
❸声とオーケストラのひびきのとけあい方は自然だ。
❹はった声が、硬くはならないが、薄くなる。ニュアンスに欠ける。
❺オーケストラと声のバランスに無理がない。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶上下のバランスがよく、すっきりときこえる。定位もいい。
❷声量をおとしても言葉が不鮮明にならないのはいい。
❸残響が充分に切りおとされているので、すっきりと細部が示される。
❹ソット・ヴォーチェでの各声部のからみは明瞭だ。
❺自然にのびて声のしなやかさを明らかにする。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶対比は必ずしも十全とはいいがたいが、まずまずだ。
❷奥の方でのひびきの広がりはきわめていい。
❸軽く、色にすれば青い色がこきみよく浮きあがる。
❹前後のへだたりは充分で、広々としている。
❺ピークでの力不足は明らかで、迫力に欠ける。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひそやかなひびきの奥の方でのひろがりは美しい。
❷❶との音の質的・性格的対比が充分とはいいがたい。
❸このひびきの特徴を充分に示しているとはいいがたい。
❹このましく光って、ここでのアクセントたりえている。
❺うめこまれてはいないが、エフェクティヴとはいいがたい。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターのひびきの特徴は示すが、全体的なサウンドは薄味だ。
❷個々のひびきが分離してきこえ、厚みを感じさせにくい。
❸ひびきの切れはいいが、力強さに不足している。
❹ドラムスの音色的な特徴はいいが、力感という点でたりない。
❺バック・コーラスでの声の重なり方をよく示す。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像としてのまとまりはいいが、迫力がたりない。
❷オンのなまなましさを十全に伝えきれていない。
❸音の尻尾に対しての反応のしかたは、甘い。
❹シャープに対応できているが、力強さに欠ける。
❺音像的な対比の面ではまずまずというべきだろう。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶アタックに充分な強さがないので、切れこみが弱くなる。
❷浅いひびきで、力が不足するために、つっこみがたりない。
❸横にはひろがるが、前に進む力がたりない。
❹奥へのひきはとれているが、トランペットのひびきは刺激的になる。
❺ひびきが総じて腰高なために、めりはりがつきにくい。

座鬼太鼓座
❶充分な距離感を示しえている。ある種のなまなましさがある。
❷尺八の音色的な特徴に対しての反応は、このましい。
❸一応ききとれはするものの、ひびきの輪郭はぼける。
❹どう考えてもスケールゆたかとはいいがたい。
❺硬質なひびきの特徴をよく示して、有効だ。

アコースティックリサーチ AR-17

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 質感は必ずしも上等とはいえないが、つまり本来しっとりと艶やかに鳴って欲しいドイツ・グラモフォンやEMI録音のオーケストラや弦合奏の音でも、いささか乾いた傾向のそっけない音で鳴らしてしまう性質がある。がそれを別として、クラシックからポップスに至るどのテストソースを鳴らしても、ことにかなりの音量で鳴らしても、国産の一部のスピーカーにありがちの、ことさら中〜高域を張り出さしたためにヒステリックな音に聴こえたり、あるいはこれみよがしの店頭効果を狙ったり、または中域から低域にかけてのどこか箱の中にこもるような、要するに音域のどこかに不自然さを感じさせるような要素がほとんど感じられず、すべてのプログラムソースを、ひととおり気持よく聴けるという点は、やはりさすがだと思わせる。とはいっても、アメリカの東海岸で作られるスピーカーの大半がそうであるように、聴感上は高域をおさえこんで丸めてあり(それが聴きやすさの一因でもあるが)、また小型であるだけに低域の量感も十分とはいえない。台はやや高め(約50センチ)で、背面を壁につけるのがよかった。音の艶を補うにはSTS455Eがいいかと思ったが、逆にピカリングXSV3000などのように中域の密度の濃い音でドライブする方が、ことにシェフィールドのダイレクトカットなどのソースで一種説得力のある音が得られた。

セレッション Ditton 33

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ひびきが薄い。ピッチカートは音が糸の上をわたっているかのようだ。
❷ひびきはふくらみがちで、本来の力に不足する。
❸フラジオレットのひびきがその特徴を強調する。
❹多少これみよがしに第1ヴァイオリンがひびく。表情を誇張ぎみだ。
❺高音弦が幾分メタリックにひびき、迫力に欠ける。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は、かなり大きくふくらむ。
❷音色的特徴を拡大して示す傾向がなくもない。
❸ひびきがふくらみすぎる。もう少しキメ細かさがほしい。
❹ひびきの特徴を示しはするが、これみよがしになりがちだ。
❺ソロをとる楽器がきわだって前にでる。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声は風呂場の中のようにきこえて自然でない。
❷接近感をこれみよがしに示すが、音像は大きい。
❸うたった声も風呂場の中のようだ。クラリネットは音色を誇張する。
❹声のなめらかさがなく、はった声はメタリックになる。
❺ひびきをばらばらに示して、とけあう感じが不足する。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の音がふくらみがちで、鮮明さに欠ける。
❷あたかも声が余分なひびきをひきずってきているかのようだ。
❸言葉のたち方が充分でないところがある。
❹ひびきに軽やかさがたりないので、明瞭とはいいがたい。
❺のびてはいるが、自然なのびとはいいがたい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色対比を、これみよがしに示すにとどまる。
❷奥へのひきはとれるが、クレッシェンドに自然さが欠ける。
❸浮遊感は一応示すが、提示される空間は、むしろ横にひろがりがちだ。
❹前の音と後の音との間で質的に違うところがある。
❺ピークでは硬く、メタリックなひびきになりがちだ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶後方でのひびきは、かすかとはいいがたく、かなり積極的だ。
❷ギターの音像が大きいので、せりだしてくる効果がいきない。
❸ひびきに力がないので、空虚さがついてまわる。
❹きわめて特徴的なひびき方をする。このひびきがきわだつのは事実だが。
❺くっきり、きわめて特徴的にくっきり示される。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶バスが強調されがちで、そのためにさわやかさに欠ける。
❷ここで求められる効果は示すが、いかにもひびきが重い。
❸ひびきが充分に乾いているとはいいがたい。
❹ドラムスのひびきは、ひきずりがちでシャープさがたりない。
❺言葉がもう少しすっきりたってくれた方がいい。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像が極端に大きい。ひびきに力がほしい。
❷いくぶん拡大気味に示すが、なまなましいとはいいがたい。
❸音の尻尾は充分に示すものの、それがスケール感の提示にはならない。
❹反応がさらにシャープなら、より一層の迫力をうみだせるのだろうが。
❺音像的な対比の点で少なからぬ問題がある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきのひろがりは示すが、ドラムスのつっこみに鋭く反応してほしい。
❷太くひろがってきこえてくるので、本来の効果から遠い。
❸大きく横にひろがるものの、はりだすわけではない。
❹もうひとつひきが充分でない。ひびきの目がかなりつんでいる。
❺ひびきがさらにこりっとするといいのだろうが。

座鬼太鼓座
❶尺八は比較的近いところにいる。音像も大きい。
❷脂っぽくなっているわけではないが、かなりふくれている。
❸きこえる。音の輪郭はさだかでなく、ぼやけがちだ。
❹ひびきはひろがるものの、力感の提示で不足する。
❺このひびきに硬質なところがあるとさらに効果的なのだろうが。

B&W DM4/II

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶あかるい、すっきりしたピッチカート。ひびきに力がある。
❷くっきりと、力がある音をきかせて効果的だ。
❸各楽器の特徴あるひびきを鮮明に示す。
❹第1ヴァイオリンのひびきにもうひとつキメこまかさがほしい。
❺クライマックスへのもりあげ方にはあまり無理を感じさせない。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音に力は感じられるが、音像は大きめである。
❷音色的な対比、あるいはバランスといった点で好ましい。
❸いくぶん響きが、拡大しがちで、さわやかにかける。
❹きわだつが、わざとしらさがついてまわる。
❺はりだし気味であり、多少誇張感がある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶表情を強調ぎみに示す傾向があるが、鮮明ではある。
❷接近感をよく示しはするが、オン・マイク的である。
❸クラリネットの音色の特徴は強調して示される。
❹はった声は、硬くならないが、声本来の艶がなくなる。
❺個々の響きを分解して示す傾向がある。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶凹凸はないが、響きがぼってりしがちである。
❷声量をおとしたことに呼応して、言葉のたち方が弱くなる。
❸残響の強調がマイナスに働いて、言葉の細部があいまいになりがちだ。
❹各声部のからみが鮮明に示せているとはいえない。
❺のびてはいるものの、いくぶん不自然なところがある。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的なへだたりを特にきわだたせる。
❷クレッシェンドのしかたが、多少わざとらしい。
❸響きは横にひろがるが、奥行きが不充分で、浮遊感もたりない。
❹前後のへだたりはかならずしも充分とはいえない。
❺階段を一段ずつあがるようにふくらむ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶横に力をもってひろがったひびきには一種のたくましさがある。
❷ギターの音像は、さらに小さくすっきり、中央に定位するのが望ましい。
❸ひびきの輪郭があいまいになりがちなので、はえない。
❹かなりはりだす。このひびきの特徴を拡大して示す。
❺きこえることはきこえるが、めだつとはいえない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶響きの重心が低い方にかたよっている。
❷必ずしも厚みを示すことにはならず、ばらばらになりがちだ。
❸べとつかないのはいいが、さわやかとはいえない。
❹響きに力が不足しているので、十全な効果をあげえない。
❺言葉のたち方が弱く、バック・コーラスの効果も不充分だ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶大きな箱の中でひびいているかのようにきこえる。
❷必ずしも強調感があるとはいえないが、もう少しなまなましさがほしい。
❸消えていく音をきわだたせる傾向がある。
❹反応がシャープでないために、あいまいになる。
❺特に音像的なバランスに自然さがたりない。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶響きの切れが鈍いためか、もったりとする。
❷積極的ではあるが、響きに力がたりないので、刺激的になる。
❸かなり前の方にはりだすが、もう少しくっきりしてほしい。
❹奥行きが充分にはとれず、音の見通しがあまりよくない。
❺響きがぼやけ気味のためか、めりはりの点でもうひとつだ。

座鬼太鼓座
❶かなり前の方にはりだしていて、距離感があいまいになる。
❷脂っぽさはないが、尺八の音色を十全に示しているとはいいがたい。
❸きこえることはきこえるが、いくぶんあいまいだ。
❹響きに、かさかさしたところがあり、力強さがたりない。
❺音色的な対比の点で必ずしも充分とはいえない。

ロジャース LS3/5A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 いろいろの紹介記事ですでにご承知のようにイギリスBBC放送局が、出張録音や簡単なチェックのための超小型モニターとして開発した製品だが、今回はそういう背景は別として、JRやスペンドールと同じ条件で比較できるという点に興味があった。しかし同列に並べて聴きくらべてみると、価格が一ランク高いことを別にして、さすがに音の品位が違うとまず思わせる。このスピーカーはすでに自宅で半年以上使っているが、黒田恭一氏もどこかで書いておられたように、比較的近くに置いて正確に音像の中心に頭を持ってくると、あたかも眼前に精巧なミニチュアのステージが展開するかのように、音の定位やひろがりや奥行きが、すばらしく自然に正確に、しかも美しい響きをともなって聴こえるとても優秀な製品だ。今回の試聴では、設置条件をわざと違えて、JR149やSA1と同じ高さ(約50センチ)の台の上に並べて聴いたが、JRのアンビエンス効果も顔負けするほど音のひろがりもみごとだし、一音一音がいっそう磨きをかけられて底光りのする美しさに魅惑させられる。バランス的には中域をおさえてあって、大音量ではドンシャリ的に鳴る傾向があるので広い場所は避けたい。アンプ以前のクォリティをはっきり鳴らし分けるのは当然だから、十分に品位の高いカートリッジとアンプが必要。