菅野沖彦
ステレオサウンド 46号(1978年3月発行)
特集・「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」より
K+HのO92は、500Hzと4kHzにクロスオーバーをもつ3ウェイシステムで、それぞれをクロスポイントとして三台のアンプでドライヴするとライアンプ方式である。ウーファーは25センチ口径が2個である。トゥイーターはトー無型。クライン・アンド・フンメル社は西独のメーカーで、モニタースピーカーの製作には実績をもっているプロフェッショナル・エクィプメント専門メーカーである。比較的口径の小さいウーファーを採用して中域との音質バランスを重視し、パワフルな再生のために、ダブルウーファー方式にするというのは賢明な手段といえるだろう。
大変バランスのよいシステムで、音色に品のいい魅力のあるシステムである。この点で、モニターシステムという言葉から受ける、無味乾燥なドライなイメージは全くない。むしろ、個性のある音といってよいだろう。この個性に共感しさえすれば、このシステムのもつ性能の高さをモニターとして縦横に生かし切れるだろうし、もし、この個性に反発を感じる場合はK+Hの門戸は閉ざされたままだ。このことは、いかなるモニターシステムについてもいえるだろう。ハイパワー再生にも安定と余裕があるし、楽器の質感、定位、位相感は明確である。響きが豊かでいて、抑制の利いた素晴らしいシステムだと思う。全帯域にわたって、充実した均質の音質をもっている。
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