Category Archives: 海外ブランド - Page 42

AR AR-9

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 往年のARとは大分違ったイメージの音だ。AR3シリーズに代表された、ハイクォリティながら抑圧された、のびのびした明るさのない音から脱却して、現在のAR製品の音は一段とヌケのよい明晰な音になった。しかし、その反面、音の品位ではやや劣るようにも聴こえる。このAR9は、現在のAR製品の代表機種といってよく、構成は4ウェイ5スピーカーである。非常にユニークな構造で、トールボーイのフロアー型密閉エンクロージュアに、30cmウーファーが2個両サイドに取り付けられ、ミッドバスとして20cmコーン型、スコーカーに3・8cm径、トゥイーターは1・9cm径のドーム型ユニットが使われている。音質は、かなり可能性の高い優れた性能に裏づけされたもので、ローレベルからハイレベルまでのリニアリティがよく、大音量再生にも安定している。バランスのよい、しなやかな質感でクラシックを聴かせる一方、ジャズ、ロックもなかなか力強いが、どこかに応答性の鈍さがつきまとうところが気になってしまう。

総合採点:8

セレッション Ditton 662

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ディットンシリーズの上級機で、3ウェイ3スピーカーをドロンコーン付エンクロージュアに収めた、トールボーイタイプのフロアー型。かなり大型のシステムだが、音表情は柔らかくしっとりした質感をもっている。滑らかな弦楽器の音は大変品がよく、耳ざわりな刺激性の音は出てこない。ピアノも品のよい輝きで、演奏表現もよくわかる再生能力をもっているが、残響感のようなややデリケートな雰囲気再現に不透明な感じがつきまとう。ということは、全体の印象として、音のさえや歯切れのよさに少々欠けるかわりに、荒々しさや刺激性のない、ふっくらとした含み味の楽しめる疲労感のない音といえる。具体的には、オーケストラの響きが一種の風格を感じさせる重厚な鳴り方で、テクスチュアはしっとりとした厚みと落ち着いた艶を聴かせる。反面、ジャズではソフトタッチな音の質感のため、鮮烈なイメージが出てこないのが何とも物足りない。大音量で鳴らせば安定した鳴り方のため、力感と迫力の点では満たされるが。

総合採点:8

KEF Model 105 SeriesII

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 建築制限を受けて建てられたマンションのような形をした独特なシステムで、30cmウーファー、11cmスコーカー、5・2cmトゥイーターの3ウェイ3スピーカーシステム。各ユニットの位相を合わせるためのスタイルだが、あまり美的とはいえない。リスニング・ウィンドー・インジケーターがついていて、聴取位置にユニットの方向を正しく合わせるようになっているなど、いかにもマニアックな考慮がふんだんに払われた製品だ。音は立派なものである。エネルギーバランスは全帯域が落ち着いたバランスにまとまり、オーケストラの響きは堂々たるもの。各楽器や音楽の性格も大変よく再現し、雰囲気の豊かな生き生きとしたプレゼンスが得られる。気になる点は、ヴァイオリンの音がややきつく耳を刺す傾向のあることだ。ごく高い倍音領域の再生に精緻なきめの細かさが不足する。弦の高音が刺激性をもっていながら、細かい音色の味わいがなく、大味なのである。高音域の質感がより自然になれば、個人的にも好きになれるだろう。

総合採点:8

エリプソン 1303X

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 フランス・エリプソン社のユニークな製品群の中では最もオーソドックスなデザインといえるシステムだが、それでも十分ユニークだ。3ウェイ3スピーカーをトールボーイの密閉型に収めていて、ウーファーは17cm、スコーカーは13cmのそれぞれコーン型だ。トゥイーターは1・9cmドーム型。このユニット構成からもわかるように、フロアー型の形状ではあるが、内容としてはむしろ中型ブックシェルフの域を出ないわけで、大型システムの再生能力を期待すべきではない。実際の音も大変可憐な雰囲気で、軽やかに美しい響きがそよ風のように流れ出す……といった風情であった。ヴァイオリン・ソナタは、ちょっと他のスピーカーでは聴けない清楚な演奏になって興味深かった。このしなやかな美しさは魅力的だ。しかし、あまりにもその性格が強いため、もっと重厚な響きや鋭い刺激を要求する音楽では全く物足りない再生音に終ってしまう。また、能率が低いことも、ジャズやロックを聴きたい人には使いやすいとはいえない。

総合採点:7

エリプソン 1303X

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 これはとても特徴のある音。個性的ともいえるし、こういう音を受けつけない人なら、クセが強いというだろう。この価格、そしてこの価格帯での内外の優秀製品の水準からくらべると、伸び伸びしたところが少なく、音が小造りでスケール感が出にくい。しかし、これ一台を、設置場所や設置法をよく選び、組合せを選び、音の聴きどころのピントが合ってくると、この独特の音の世界にはふしぎな魅力をおぼえはじめる。ずっと以前、同じフランスのキャバス(ブリガンタン)で、フランス近代音楽やシャンソンがふしぎにうまく鳴ったことを思い出して、その系統のレコードを専ら鳴らしてみた。たしかにうまくゆく。バルバラの唱うシャンソン、エラートの録音。ラヴェルの管弦楽……。背面を壁に寄せ、アンプやカートリッジで中〜低音域の量感をできるだけ補うようにして鳴らすと、別にフランス音楽にこだわらずとも、クラシック、ポップス、それぞれに魅力ある香りで楽しめてくる。妙なスピーカーだ。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:8
バランス:8
質感:7
スケール感:7
ステレオエフェクト:8
耐入力・ダイナミックレンジ:6
音の魅力度:8
組合せ:かなり選ぶ
設置・調整:やや特殊要工夫

QUAD 44

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

22、33以来のQUADのコントロールアンプの伝統を継承したコンパクトで多機能を備えたユニークな新製品。新採用のプラグインカード方式が特長で、業務用機器的な多角的な使用法ができる。

マッキントッシュ MA6200

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

つねにプリメインアンプを1機種もつというマッキントッシュの伝統に従った製品。C32で最初に導入されたような5分割型トーンイコライザー、独特の電流感応自動電源スイッチ内蔵など多機能で音の魅力も充分。

ビバリッジ System 2SW-1

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

パワーアンプとデバイダー内蔵で、独特なシリンドリカルウェーブを放射するコンデンサースピーカーとサブウーファーシステムを組み合わせたステレオペアの製品。音響出力が大きく、パノラミックに拡がる音が見事だ。

アルテック Model 6041

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

伝統的な同軸2ウェイユニット604−8Hを中心に、重低音用と超高音用ユニットを加え、4ウェイ化した大型モニターシステム。余裕たっぷりに、エネルギー感をもって鳴るのは流石にアルテック。

オーディオスタティック ES240

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

オランダ製のユニークなデザインをもった管球式パワーアンプ内蔵型フルレンジ・コンデンサー型スピーカー。中央のアンプパネルの両側のスピーカーパネルは角度可変可能で放射パターンが大幅にコントロールできる。

セレッション Ditton 662

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

現代的にリファインされた英国の新しい音が魅力的なセレッションのトップランクシステム。独創的なパッシブラジエーターARBの、豊かで深々とした低音をベースにスムーズなレスポンスが特長。

ロジャース LS5/8

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

英国BBCが’80年代の新モニターとして開発した新製品。30cmポリプロピレン低音、オーダックス製ドーム型高音をQUAD405でバイアンプ駆動。昨年のチャートウェル製より一段と洗練された。

タンノイ Super Red Monitor

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

アーデンMKIIとは異なった新開発の高能率型デュアルコンセントリックユニットを採用し、タンノイ初のモニターの名称をつけた新製品。引締まり、反応が早くなった低域は大型エンクロージュア採用もあり業務用らしい風格だ。

JBL L150

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

設置場所の節約を目的として開発されたJBL初のトールボーイ型システム。低音用磁気回路は注目のSFG方式フェライト磁石採用であり、チューニングを低くとったドローンコーンと新開発中域は力強く滑らかな音だ。

エレクトロボイス Interface:CII

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

多彩な製品構成を展開するインターフェースシリーズ中で第2位にランクされるフロアー型3ウェイ。中音ユニットは独自の最適位相反転の理論を中域に導入したVMRIIユニット採用、イコライザー付属。

タンノイ Arden MKII

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

使用ユニットがHPD385Aから新開発のフェライト磁石採用の3828に代わった、あまりにも定評が高いアーデンのMKIIだ。低域は従来より引締まり、中域以上もキャラクターが抑えられスムーズな音に発展した。

BOSE 901 SeriesIV

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

小口径全域用ユニットを9個、コンサートホールの直接音と間接音の比率と同等に前方1個、後方8個に分散配置した独特なボーズ博士の理論に基づいて設計された製品。小型ながらフロアー型に匹敵する迫力と音質が魅力。

ヴィソニック Expuls 2

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

ダヴィッドシリーズの超小型システムで他の追従を許さぬ性能と音質を聴かせたヴィソニックがフロアー型に挑戦した第1弾製品だ。Expuls2は、3モデル中の中間機種で、十分にコントロールされたリッチな音が特長。

ハーベス Monitor HL

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

BBC研究所で話題のポリプロピレンコーンを開発したハーウッドが設立したハーベス社の第1弾製品。20cmのポリプロピレン低音とオーダックス製高音の2ウェイであるが、反応が早く、鮮鋭な音をもつ点では最高峰。手造り的な仕上げも見事。

JBL 4311B

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

JBLがフェライトマグネット使用に踏切る原因となった高性能SFG方式のウーファーを採用したプロモデルの第1弾製品。中高音ユニットもリファインされ、粒立ちが細かく力強い。

JR JR-150

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

水平指向性が優れた円筒型エンクロージュア採用でユニークなジムロジャースのの第2弾製品。ウーファーは、並列駆動となり、ドーム型高音も強力型に変わった。

KEF Model 303

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

新しいシリーズに置き換えられたKEFのスピーカーシステムのなかでは、もっとも小型な製品である。20cmウーファーとドーム型トゥイーターの2ウェイで、柔らかく伸びやかな低音と透明な高音だ。

マークレビンソン ML-6L

瀬川冬樹

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「第2回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント17機種の紹介」より

 マーク・レビンソンというアメリカ人の若いエンジニア──といっては正しくない。彼はまたミュージシャンでもあり、録音ミクサーとしても一流の腕を持っているのだから──の完璧主義ぶりについては、いろいろの機会にすでに紹介されている。そして、その彼の作ったコントロールアンプLNP2(L)と、それをいっそうシンプルにしたML1Lが、他に類のない透明な美しい音を聴かせることも、いまではよく知られている。
 LNP2は、1973年にはじめて発表された。彼はその発表に先立つ少なくとも2年以上まえにその原型をほとんど完成させていた。が、発売後も彼は持ちまえの完璧主義で、LNP2に随時改良の手を加えていた。マーク・レビンソンのしプが、発売後ほとんど同じモデルナンバーで売り続けられているために、レビンソンはモデルチェンジをしないメーカーだと一般には理解されているが、実際には彼のアンプは、もう全く別のアンプと言ってよいくらい、内部の回路も使用パーツも、とうぜんその音質も、変ってしまっている。最新型のLNP2Lと初期のLNP2を聴きくらべるとそのことがよくわかる。初期の製品を、最新型とくらべると、ずいぶん音が曇っているし硬い。反面、最新型にくらべて音の肌ざわりがどこか暖かいとかえって旧型を好む人もあるが。
 そういうアンプの作り方をするレビンソンの、現時点での最新作が、このML6で、シャーシから電源まで完全に独立したモノーラルのプリアンプだ。したがってステレオ用としては二台を重ねて使う。とうぜんのことながら、すべてのコントロールは、LR別だから、ボリュウムも二つを同時にまわす。といってもこれは実際には意外な難作業だ。というのは、このプリアンプでボリュウムを絞って聴きたいときのボリュウムコントロールの位置は、絞り切った点からほんのちょっと上げただけのあたりに最適位置があって、そういうポジションでステレオの二台の音量を正確に合わせるというのは、ひどく難しい。
 ただし、コントロールのツマミはこれ以外にはもう一ヵ所、入力切替スイッチしかついていないから、ボリュウム以外には操作のわずらわしさはない。とくに入力切替は、フォノとライン(AUX)の中間にOFFポジションがあるから、レコードのかけかえ等にいちいちボリュウムを絞る手間は省ける。とはいっても、レコード一枚ごとの音量を小まめにやりたい私のような人間には、このボリュウムの操作は気が狂いそうに難しい。
 だいたいこのML6というアンプは、音質を劣化させる要素をできるだけ取り除くという目的から、回路の簡素化を徹底させて、その結果、使いやすさをほとんど無視してまで、こんにちの技術水準の限界のところでの音質の追求をしている製品だけに、そういう事情を理解しない人にとっては、およそ使いにくい、全く偏屈きわまりないプリアンプだ。個人的なことを言えば、私はレコードを聴くとき、できればトーンコントロールが欲しいほうだから、本来、こんな何もないアンプなど、使う気になれないというのが本心だ。
 そうでありながら、このML6の鳴らす音を一度耳にした途端から、私はすっかり参ってしまった。なにしろおそろしく透明で、素直で、音の表情を素晴らしくナイーヴに、しなやかに、鳴らし分ける。どこか頼りないくらい柔らかな音のように初めのうちは感じられるが、聴いているうちに、じわっとその音のよさが理解されはじめ、ふわりと広がる音像の芯は本当にしっかりしていることがわかる。こういう音を鳴らすために、いまの時点でこういう使いにくさがあるとしても、こりゃもう仕方ないや、と、いまやもうあきらめの心境である。
 しかしレビンソンが菜食主義であるせいだろうか、彼の音には、こってりした、とか、たっぷりと豊かな、とか言う形容の音がない。そこが、レビンソンを嫌う人の少なくない点だろうか。

SUMO The Power

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

「ザ・パワー」とはよくつけた名前である。設計製作者のジム・ボンジョルノは、かつて、アンプジラを、テァドラを世に出した男で、アンプ作りの天才ともいわれるが、そのネーミングのセンスの奇抜さからも想像できるように、きわめて個性的な発想の持主だ。エンジニアとして型破りのスケールの大きな人間味豊かな男である。音楽好きで、自ら、ピアノを弾き、アコーデオンを奏でる。その腕前はアマチュア域を越えている。そして大変な食い道楽であり、ワインには滅法うるさい。話し出したら文字通り口角泡を飛ばして、止まるところを知らない情熱家だ。
 その彼が、新たに設立したスモ・エレクトリック・カンパニーから発売した一号機が、この「ザ・パワー」である。400W/チャンネルの大出力アンプであるがその内容もユニークだ。フォア・クォドラント差動平衡型ブリッジ回路という、このアンプの構成は、スピーカーをつないで鳴らしてみれば納得せざるを得ない。今までにない強力なパワーアンプなのである。スピーカーというものの実体を正しく把握して、スピーカーを勝手に動作させない……つまり、あくまで、スピーカーに与えられる音声エネルギーに忠実にスピーカーが動くように、いわば強制的にドライヴするアンプといってよいだろう。そのインピーダンスの周波数による変化や、振動板の動きから生じる慣性に影響されることなく安定して動作するアンプが、ボンジョルノの開発のポイントであった。アンプ内の回路構成はバランス型で、入力から出力まですべてブリッジアンプ構成とし、その4隅から同時にフィードバックをかけることにより、スピーカーをプラス側だけからドライヴするのではなく、マイナス側からもドライヴするべく、スピーカー端子にプッシュプル・フィードバックをかけるという考え方である。新開発のパワートランジスターをはじめ、使用パーツは入念にセレクトされ、そのほとんどが、米国軍用規格適合品を使い、シャーシはユニークなモノコック構造で組み上げられている。4組の独立電源部と10組の安定化電源、電圧・電流値・位相・温度の変化を自動検出し、異常時には100ナノセカンドの高速で回路をシャットしてアンプを保護する保護回路などを装備した超弩級のアンプである。かなりの大型のボディだが、重量は比較的軽く36kgである。大胆な外観からすると内部の作りは緻密で美しい。設計者自身、理屈より音だという通り、この「ザ・パワー」の音が、何よりも雄弁に、その名前の正当性を証明してくれるであろう。
音質について
 このアンプの音は、ひかえめにいっても、今までに聴いたことのない力と豊かさに満ちている。しかも、決して荒さや、硬さを感じさせるものではない。音としては、妖艶といってもよい。脂の乗った艶と輝きをもち、深々とした低音の魅力は他に類例のないものだといってよい。試聴に使ったJBL4343は、まるでブックシェルフの小型スピーカーのように手玉にとられ、アンプの思うように自由に鳴らされる、といった感じである。この、かなり個性と主張の強いスピーカーが、名騎手に乗り馴らされた荒馬のように素直に整然と鳴らし込まれてしまうのである。他のチャンスにアルテックのA5を鳴らした時もそうだった。あのA5から信じ難いほどの太く豊かで、深い低音が朗々と鳴ったのである。今回の試聴でも、ベース奏者が、他のアンプで聴くよりずっと指の力が強く、楽器を自在にコントロールしているように聴えた。中域から高域にかけても、常に肉のついた豊かさと血の通いが失せない。ヴァイオリンの高域のデリカシーということになるとやや大把みだが、しなやかで暖かい。

JBL 4333A

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 最もオーソドックスな3ウェイモニタースピーカーだ。音はあくまで精緻で正確無比、それでいて音楽の味わいを聴かせてくれるところが、やはりJBLの持っている良さである。