瀬川冬樹
ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より
これはとても特徴のある音。個性的ともいえるし、こういう音を受けつけない人なら、クセが強いというだろう。この価格、そしてこの価格帯での内外の優秀製品の水準からくらべると、伸び伸びしたところが少なく、音が小造りでスケール感が出にくい。しかし、これ一台を、設置場所や設置法をよく選び、組合せを選び、音の聴きどころのピントが合ってくると、この独特の音の世界にはふしぎな魅力をおぼえはじめる。ずっと以前、同じフランスのキャバス(ブリガンタン)で、フランス近代音楽やシャンソンがふしぎにうまく鳴ったことを思い出して、その系統のレコードを専ら鳴らしてみた。たしかにうまくゆく。バルバラの唱うシャンソン、エラートの録音。ラヴェルの管弦楽……。背面を壁に寄せ、アンプやカートリッジで中〜低音域の量感をできるだけ補うようにして鳴らすと、別にフランス音楽にこだわらずとも、クラシック、ポップス、それぞれに魅力ある香りで楽しめてくる。妙なスピーカーだ。
総合採点:8
●9項目採点表
音域の広さ:8
バランス:8
質感:7
スケール感:7
ステレオエフェクト:8
耐入力・ダイナミックレンジ:6
音の魅力度:8
組合せ:かなり選ぶ
設置・調整:やや特殊要工夫
0 Comments.