黒田恭一
サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より
ひとことでいえば、瀟洒なスピーカーということになるであろう。スリムなボディから、いかにもフロア型スピーカーならではの、たっぷりしたひびきがきこえてきた。音は、しなやかであり、ふっくらしていて、ソフトであった。
ここでは、ヴェロニク・サンソンのレコードと、ミッシェル・ポルナレフのレコードをきいてみたが、とりわけヴェロニク・サンソンのレコードのきこえ方が、すこぶる見事であった。インストルメンタルによるバックがもう少し鮮明であってもいいのではないかと思ったりしたが、声のなまなましさは、なんともはや驚くべきものがあった。
ハーブ・アルバートのレコードなどでも、音楽の切れあじの鋭さの提示ということでは多少の不満が残ったとしても、ひびきに独特のあかるさがあるで、音楽の性格をききてに感じとらせることができた。
しかし、このフランス出身のスピーカーは、ハードな音楽はあまりきかないで、きくのは女声ヴォーカルが多いというような人には、うってつけかもしれない。このスピーカーの音は、力でききてに迫る音ではなく、そこはかとない雰囲気でききてににじりよるような音である。ただ、にじりよられても、音の湿度は高くなく、ひびきとしてあかるいので、嫌味にはならない。
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