セレッション Ditton 662

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ディットンシリーズの上級機で、3ウェイ3スピーカーをドロンコーン付エンクロージュアに収めた、トールボーイタイプのフロアー型。かなり大型のシステムだが、音表情は柔らかくしっとりした質感をもっている。滑らかな弦楽器の音は大変品がよく、耳ざわりな刺激性の音は出てこない。ピアノも品のよい輝きで、演奏表現もよくわかる再生能力をもっているが、残響感のようなややデリケートな雰囲気再現に不透明な感じがつきまとう。ということは、全体の印象として、音のさえや歯切れのよさに少々欠けるかわりに、荒々しさや刺激性のない、ふっくらとした含み味の楽しめる疲労感のない音といえる。具体的には、オーケストラの響きが一種の風格を感じさせる重厚な鳴り方で、テクスチュアはしっとりとした厚みと落ち着いた艶を聴かせる。反面、ジャズではソフトタッチな音の質感のため、鮮烈なイメージが出てこないのが何とも物足りない。大音量で鳴らせば安定した鳴り方のため、力感と迫力の点では満たされるが。

総合採点:8

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