菅野沖彦
ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より
往年のARとは大分違ったイメージの音だ。AR3シリーズに代表された、ハイクォリティながら抑圧された、のびのびした明るさのない音から脱却して、現在のAR製品の音は一段とヌケのよい明晰な音になった。しかし、その反面、音の品位ではやや劣るようにも聴こえる。このAR9は、現在のAR製品の代表機種といってよく、構成は4ウェイ5スピーカーである。非常にユニークな構造で、トールボーイのフロアー型密閉エンクロージュアに、30cmウーファーが2個両サイドに取り付けられ、ミッドバスとして20cmコーン型、スコーカーに3・8cm径、トゥイーターは1・9cm径のドーム型ユニットが使われている。音質は、かなり可能性の高い優れた性能に裏づけされたもので、ローレベルからハイレベルまでのリニアリティがよく、大音量再生にも安定している。バランスのよい、しなやかな質感でクラシックを聴かせる一方、ジャズ、ロックもなかなか力強いが、どこかに応答性の鈍さがつきまとうところが気になってしまう。
総合採点:8
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