Category Archives: ラックス/ラックスキット - Page 2

ラックス M-4000A

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 オリジナルM4000が、4000Aとなったもので、かなり長い期間市場にある。180Wの出力をもつオーソドックスなアンプだが、デュオベータ回路が採用されてリファインされた。デザイン、作りも高級アンプにふさわしいもので、かなり力作だと思う。パネルは大型メーターを基調に美しくまとめられ、ピーク指示もVU指針と併読できる。後部に大きく突出したヒートシンクの間に埋れたスピーカー端子はなんとも不便。

音質の絶対評価:7

ラックス M-300

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 AB級、A級の動作切替が可能で、パワーはそれぞれ、170W+170W、40W+40W(8Ω)取り出せる。もちろんこれは、トランジスター式の現代アンプである。木枠に収められたパネルは、デザインもフィニッシュも美しく、いかにもラックス製品らしい精緻さを感じさせてくれるものだ。こういう美しい仕上げを見るにつけ、一部の、外国製アンプの汚らしさにはあきれるばかりである。デュオベータ、プラスX回路採用。

音質の絶対評価:7.5

ラックス MB3045

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 管球式のモノーラル・パワーアンプで、60Wの出力をもっている。このぐらいのパワーがあれば現代の広Dレンジのプログラムソースも、まずまずカバーすることができる。真空管自体をはじめとして、往年の常識を越えた高性能管球式アンプといえるもので、別売のキットとともに、オーディオ界に嬉しい存在だ。心情的にはシャーシの薄さのためか、プロポーションが悪く、もう少し重厚さと暖かみがほしいところ。

音質の絶対評価:8

ラックス MQ68C

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 管球式のパワーアンプを維持してくれているラックスは貴重な存在。アウトプット・トランス2個と電源トランスをシンメトリックに配したシャーシ構成は美しい。NFBを0dBと16dBに切替ができるなど、マニアライクなアンプとして好感が持てるもの。全体のセンスが、もう一つハイセンスだといいと想うのだが、どうもトランスの名版などの色が安っぽく興をそぐ。25Wという出力も仕方がないとはいえ少々小さい。

音質の絶対評価:8

ラックス C-5000A

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 ラックスのプレスティジ・コントロールアンプらしく、さすがに、重厚な雰囲気を感じさせる仕上りだ。伝統的なラックスのパネルデザイン、デュオベータ回路採用の高品位なパーツによる高級機らしい風格を備えている。コントロールセンターとしての機能も完備しているし、各コントローラーの操作性、フィーリングも高い。MCカートリッジ入力端子は、昇圧トランス式というのもマニアライクなユニークさだ。

音質の絶対評価:7.5

ラックス C-300

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 オーソドックスながら、新鮮味も持っているコントロールアンプ。内容と外観が、ともにそうしたイメージで統一されている。デュオベータ、プラスX回路採用の現代的なプリアンプであるが、その発想そのものは、きわめてオーソドックスな歪みの低減思想である。ただ、このクラスのプリアンプとなると、もう一つ、個性的魅力が伴わないと、単体プリアンプとしての風格の点で物足りないということになる。

音質の絶対評価:6.5

ラックス CL34

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 管球式のコントロールアンプだが、外観からはそれと判明する雰囲気はない。デザインとしては特に木枠が野暮で、色も含めて、およそ美しさが感じられない。天板の部分を高くするなど、手間をかけて、かえって悪くしたという気もする。デュオベータ回路を管球式に使った新設計のアンプで、パネル操作類もよく整理されながら、コントロール機能を備え、感触も快い。フラットなプロポーションをもっと生かしてほしかった。

音質の絶対評価:6

ラックス PD555

菅野沖彦

別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より

概要 これはターンテーブルシステムであって、アームはついていない。アームレスの他の機種と同じく、アームはクラフトのAC3000MC、カートリッジはオルトフォンMC20MKIIで試聴した。このターンテーブルシステムは非常に凝っていて、一番の特徴はバキュームによって完全にレコードをターンテーブルのゴムシート面に吸着させてしまうことだ。ゴムシートを介してターンテーブルとレコードが一体化してしまうというほど強力に吸引してしまう。これによってレコードそのものの不安定な、複雑な振動を完全にダンプしようというもの。形も非常にユニークで、かなり横長なもの。アームを二本取り付けて聴けるという利点がある。思い切った設計のターンテーブルシステムということがいえる。ハード的な雰囲気とソフト的な雰囲気を巧みに取り入れ、ハードにも片寄らず、ソフトにも片寄らない仕上げとなっているが、それが逆に何となく中途半端なイメージを作り出しているということにもつながるのではないかと思う。
 バキュームポンプが付属しており、リモートでもってスイッチを押してスタートすると、これがパチッと吸着される。しかも気圧計まで付いている。吸着するという効果は大変大きいと思う。その効果の程度が果たして、音という感覚評価の対象としてどうなってくるかというところは微妙な問題だ。ビクターのTT801システムが比較的軽く吸引しているのに対して、こちらは本当に、完全に吸着しているというところに大きな違いがある。従って、バキュームポンプを使って吸引、吸着システムを採用しているものとしては、こちらは徹底的。ビクターはそのへんをうまくコントロールしているということになる。徹底している方からすれば向こうは中途半端だということになるし、向こうからすれば、徹底させるといろいろな問題が出てくる、ということで判断は非常に難しい。
音質 音は総合的にいって、なかなか品位の高いいい音だ。打楽器を聴いても、ベースのピッチカートを聴いても、大変に締まっていて、かつ響きが殺されていない。これは吸着するターンテーブルの質、あるいはターンテーブルベースの構造によるものだと思う。だからこの部分がうまくいっていないと、音が死んでしまったり、音が吸着しすぎてダンプしすぎてしまう、というような音になるだろうと思うが、ここまで強力に吸着して、しかもそんなに響きが失われないということはターンテーブル並びにターンテーブルベースの振動モードが好ましい状態にあるということだと思う。輝やかしい音色でありながら硬くならず、そしてよくダンプされながら急激に減衰するというようなこともなく、楽器の楽器らしい音のはずみがよく出ている。エネルギーの帯域バランスもよくとれていて、ステレオフォニックな音場の再現感もなかなかナチュラルだ。よく音が前に出てくるし、左右の広がりも非常に豊かだ。個々の音についてはどこといって欠陥は出ていない。注文をつけるとするならば、オーケストラの低音楽器群での豊かさが少し物足りないのと弦楽器の高い方の部分がやや華やぐ傾向にあるということだ。しかし、楽器の音色の鳴らし分けその他は非常にいい線いっており、音質的にはこのプレイヤーはかなりのものだ。

ラックス PD300

ラックスのターンテーブルPD300の広告
(オーディオアクセサリー 21号掲載)

PD300

ラックス PD300

井上卓也

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 レコード盤とターンテーブルを空気により吸着一体化し、無共振化するバキュアム・ディスク・スタビライザーを採用したベルト駆動プレーヤーシステムを世界初に商品化し先鞭をつけたラックスの、第2弾製品が、このPD300である。
 プレーヤーシステムとしての基本構成は、トーンアームレス、各種トーンアーム用に用意されたアームベース別売システムだ。
 ターンテーブルは、直径30cmアルミダイキャスト製、重量3・5kg、表面には外周と内周部にシーリングパッド、内側シーリングパッドの外に空気吸入口を備える、軸受部は10mm径ステンレスシャフトと真ちゅう製軸受、超硬鉄ボールの組合せ。
 キャビネット構造は、脚部の高さ調整可能のサブインシュレーターとターンテーブル軸受部分とトーンアームベース取付部分とを非常に強固な一体構造で結んだブロックのメインシャーシに3個の大型のメインインシュレーターを組み合わせたダブルインシュレーター方式で、外部振動を遮断している。このメインインシュレーターは、天然ゴム、シリコングリス、スプリングを組み合わせたラックス独自の2段階制動式で、水平調整ツマミでターンテーブルの水平バランスが調整可能である。なお、別売のアームベースは厚さ8mmのアルミ削り出しで作られ、各種市販トーンアームに対応できるように4種類が用意されている。アーム取付穴はオフセットしているため、ベースを回転してカートリッジのオーバーハング調整が可能な構造を採用している。
 PD300の最大の特長は吸着システムである。これはコロンブスの卵的なユニークな発想のふいごの原理を利用した真空ポンプ使用でキャビネット前面のレバー操作で容易に吸着と解除がワンタッチでできる。動作は確実で、吸着状態を表示する表示ランプがレバーの横にあり、解除で橙色、吸着で青色に切り替わる。また、本機には、アンプに採用されたAC電源極性チェッカーが備わっている点も注目したい。
 トーンアームにSAEC WE407/23、ベースにTF−MTを組み合わせる。吸着は容易であり安定度、操作性ではむしろPD555をしのぐ印象がある。音は、価格帯としては安定感があり重厚な低域は特筆に値する。使いこなしのコツは速度調整の微調でサウンドバランスをとること。

ラックス L-68A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 基本的には、L58Aが聴かせた、ラックスのアンプに共通の特徴といえる、よく磨きあげられ注意深く整えられた美しい音を受け継いでいる。耳ざわりな刺激性の音は注意深く取り除き、クラシック、ポップスを通じて、かなり聴きごたえのある音を聴かせた。とはいうものの、このL68Aではラックスのアンプが多少の変身をはかったのだろうか、従来やや不得手であった、ポップスあるいはフュージョン系のパワーや迫力を要求する曲でも、ラックスのアンプとしては、パワー感/力感がかなりあり、音量を上げてもよくもちこたえる。
●カートリッジへの適応性 オルトフォンVMS302IIでまずベートーヴェン第九(ヨッフム)を聴いてみる。第四楽章のコーラスとオーケストラのトゥッティの盛り上がりの部分でも、破綻を生じることなく、妥当なバランスで仕上げ、無難な線でまとめたという印象が深い。その点むしろ、「サンチェスの子供たち」のようなフュージョン系のパーカッシヴな音が、想像以上に力強く、瑞々しく聴けたことに驚かされた。エムパイア4000DIIIでのシェフィールド「ニュー・ベイビィ」のプレイバックでも、ドラムスやパーカッションの強打(瞬間的とはいえかなりのパワーの伸びの要求される部分であるが)のパワー感も十分。表示パワー(110W)をなるほどと納得させる程度に、音に危なげがなくよく伸びる。エラック794Eのテストでは、傷んだレコードが必ずしも楽しめるとはいえず、歪みを強調する傾向がある。
 MCポジション(ヘッドアンプ)のノイズは、軽くハムの混入した音で、オルトフォンのような低出力低インピーダンスMCに対しては、ボリュウムを上げるとピアニシモで多少耳につく。ただこの点を除けば、音質はむしろ外附のトランスよりも、MC30とマッチングの点で、好ましいように思われる。デンオンDL303では、カートリッジのもつ中~高域のやや張り出しながら音の細くなる傾向を、弱点として強調してしまう。303の場合は、外附のトランスの選び方でうまくコントロールした方がよいという、やや意外な結果であった。MCヘッドアンプの音質に、いくぶん個性的な部分があるようだ。
●スピーカーへの適応性 アルテック620Bカスタムのような、アンプへの注文のうるさいスピーカーも、一応鳴らせるが、いくぶん上ずみの部分で鳴らすような、またローエンドで少しかぶったような音を聴かせる。
●ファンクションおよび操作性 トーンコントロール、フィルター、ローブーストなどはターンオーバー切替えが豊富で、コントロールの範囲が広い。特にローブーストはなかなか利き方がよく、スピーカーやプログラムソースによって有効だと思われた。フォノ(MM)聴取時にボリュウムを上げると、チューナーからごく超高域の音がきわめてかすかだが洩れてくる。
●総合的に ラックスらしい音でまとめられた力作といえる。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:中
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):2
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):1
5. TUNERの音洩れ:かすかにあり(超高域で)
6. ヘッドフォン端子での音質:2+
7. スピーカーの特性を生かすか:2-
8. ファンクションスイッチのフィーリング:2
9. ACプラグの極性による音の差:中

ラックス L-48A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 まず大掴みにいえば、音のバランスがよく整い、耳ざわりな音を注意深く抑えた、上品な音質。複雑な編成のオーケストラ曲をうまくハモらせ、フォルティシモからピアニシモにかけての、音のバランスがくずれるようなこともなく十分納得させる響きで、クラシックファンをかなり堪能させてくれる。この点、マランツPm4が新しいポップスの方向にピントを合わせているのとはまったく対照的。
 さすがにこの価格帯になると、音の基本的性質がよく磨かれてくることが納得できる。
●カートリッジへの適応性 オルトフォンVMS30/IIとの組合せが特によく、このカートリッジのもっている、いく分ソフトな肌ざわり、滑らかでトロリとした味わいをかなり楽しませてくれる。ベートーヴェン第九(ヨッフム)やアイーダ(カラヤン)のような、きわどいフォルティシモのある曲でも十分楽しめる音がする。表示パワー(70W)は必ずしも大きくはないが、たとえばエムパイア4000DIIIで「ニュー・ベイビィ」や「サンチェスの子供たち」などをかなりのハイパワーで再生しても、音の美は十分。ただし、ポップスでの鳴り方は、いくぶんソフトで、もうひとつ打音がピシッと決まりにくい部分があり、この点、衝撃的な音を求めるむきには、少し物足りないかもしれず、あくまでラックス流の上品な音にまとめる傾向がある。エラック794Eで傷んだレコードをプレイバックした場合に、レコードの傷みや歪がわりあいに露呈されてしまうタイプで、前述の音の印象からは、やや意外。
 MCポジションは、オルトフォンMC30でも、ゲインは実用上ギリギリだが、音質は案外よい。軽いハムが混入する傾向のノイズはあるものの、耳につきにくいタイプなので、このクラスのアンプの中では、オルトフォンが楽しめる方。外附のトランスを併用すれば、いっそう緻密さが増し、ノイズはほとんど耳につかず、オルトフォンの持ち味をよく生かして楽しませる。デンオンDL303の場合には、303自体の中域から低域にかけての音の細い性質がわずかの弱点となり、アンプの方で低域を補整して聴きたくなる。中~高域にかけての繊細な味わいはL48Aの持っている性質とよく合うようで、なかなか楽しめる。
●スピーカーへの適応性 さすがにこのクラスになると、アルテック620Bカスタムのような気難しいスピーカーが、わりあい、良い感じで鳴りはじめ、アンプ基本的な性質がかなりよいということが想像できる。スピーカーの選り好みはかなり少ない方だ。
●ファンクションおよび操作性 ボリュウムを上げたままスイッチ類を操作しても、クリックノイズはよく抑えられている。フォノ聴取時に(特にMMポジションでは)チューナーからの音がかなり明瞭に混入し、ボリュウムを上げると、盛大に聴こえる。再検討を要望したい。
●総合的に FMの混入は問題だが、その点を除けば、音質、操作性ともよくこなれ、パネル面もラックス独特のエレガントな雰囲気をたたえ、なかなか魅力的な製品。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:中
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):2+
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):1+
5. TUNERの音洩れ:あり(かなり明瞭、盛大)
6. ヘッドフォン端子での音質:2-
7. スピーカーの特性を生かすか:2
8. ファンクションスイッチのフィーリング:2
9. ACプラグの極性による音の差:中

ラックス L-45A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 57号(1980年12月発行)
特集・「いまいちばんいいアンプを選ぶ 最新34機種のプリメインアンプ・テスト」より

●総合的な音質 耳につきやすいやかましい音、硬質な音を注意深く抑え込み、どちらかといえばソフトな音質にまとめているところは、まさにラックスの音づくり。総体に聴きやすさを重視したソフトタッチ。プログラムソースによっては時として、いくぶん含み声的またはこもりぎみという表現を使いたくなる場合もある。表示パワーが55Wと必ずしも大きくないにしても、聴感上のパワーの伸びが少し足りない。聴感上耳につきやすい歪が、あまり大音量でないところですでに生じてしまう。表示パワーが本機より小さくても、もう少し音量感のあるアンプがある。
●カートリッジへの適応性 VMS30/IIのようなソフトタッチのカートリッジではこもりかげんで、必ずしも合っているとはいいにくい。エムパイア4000DIIIは、カートリッジの持っている性格とアンプ自体の音の性格が合いにくい。エラック794Eで傷んだレコードをトレースしてのテストでは、レコードの傷みやシリつきノイズなどはわりあい目立ちにくく、基本的な音の質がうまくおさえこんであるためか、聴きやすくはあるが音の魅力があるとまではいえない。
 MCポジションでの音質は、オルトフォンの場合にはよく言えばソフトタッチで心地よくまとまり、粗い音をいっさい出さない。とはいうものの、鋭く切れこむべき音もやや甘くなる。ノイズの質は良質であまり耳ざわりではないが、さすがにあまり音量を上げるわけにはゆかない。外附のトランスにした場合には音が瑞々しく、目の前が開けた感じになり、良い音質に仕上る。デンオンDL303の場合はカートリッジの持っている本質的な性格と重なり、重低音の量感がやや不足ぎみ。ただしこのアンプにはローブーストがついているため、70HzをONにするとうまく救われる。この場合には総合的に、音のこまやかさ、キメ細かさを増して、やや物足りなさはあるものの、これはこれで聴かせる。またDL303の場合のノイズは、ボリュウムをかなり上げたところでいささか耳につくが、ハム性のノイズはほとんどない。総じてこのアンプでは、MCカートリッジの方がアンプの音が生かされるように思った。
●スピーカーへの適応性 アルテックのようないくぶん粗く鳴りがちなスピーカーを、一応柔らかく鳴らしてくれた。言いかえれば、ソフトタッチという味わいの中でのスピーカーの選り好みは少ないタイプ。
●ファンクションおよび操作性 「フォノ・ストレート」のポジションでは心もち(ごくわずかな差とはいうものの)音が滑らかになる印象。トーンコントロールはターンオーバー切替えつきで、キメの細かい調整が可能。サブソニックフィルターおよびハイフィルターも2ポジション切替え可能というように、音質調整機能はキメ細かく豊富。フォノ端子はMC/MCダイレクトに分れていて、各種MCカートリッジに対応可能。フォノ聴取時期音洩れも全くない。
●総合的に この価格としてはパワーの伸びにいささかの物足りなさがあるものの、このアンプのもっている基本的な性格に賛同できる場合には価値をもつだろう。

チェックリスト
1. MMポジションでのノイズ:小
2. MCポジションでのノイズ:中
3. MCポジションでのノイズでの音質(DL-303の場合):2
4. MCポジションでのノイズでの音質(MC30の場合):1
5. TUNERの音洩れ:なし
6. ヘッドフォン端子での音質:2
7. スピーカーの特性を生かすか:2
8. ファンクションスイッチのフィーリング:2
9. ACプラグの極性による音の差:中

ラックス PD121A

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 オーディオ的に洗練されたフラットでシンプルなデザイン、ロードフリー型スピンドル採用で重量級ターンテーブルと組み合わせたクォーツロックDD型モーター、アルミダイキャスト製シャーシを採用した一体型プレーヤーベースを備えたアームレス型のシステム。

ラックス MS-10

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 ラックスMS10は縦長の特異なプロポーションを持ったもので、大きさからは中型に近いブックシェルフシステム。20cmウーファーとドーム・トゥイーターの2ウェイで、新素材のウーファーはなかなか、コクのある中低域を聴かせる。決して明るい現代的な音とはいえないが、クラシック音楽のファンには、このシステムの陰影の再現力が好まれるであろう。

ラックス PD555

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/アームレスタイプなので、組合せるアームによって音質もとうぜん変る。ここではAC40000MCとFR64Sの二者を試みた。結論から言えばこの製品はFR系で音の仕上げを下らしく、ACの組合せはあまりよくない。総体に抑制を利かせすぎた印象で、おとなしいが音がめり込んでしまう。その点でPX1と一脈通じるが、PX1が重低音をややゆる目に聴かせるのに対して、こちらは行儀はよいが物足りない。その点、FRに替えると、中〜高域がずっと張り出してきて、ACよりは聴きどころのポイントがはっきりしてくる。しかし重低音は同じく不足ぎみ。そこに中〜高域が張り出すので、どこか国産のスピーカーの音のバランスのように、オーケストラのトゥッティなどではやや派手に流れる傾向がある。いずれのアームの場合でも、音がふわりと浮き上がる感じが出にくく、ステレオの音場空間の広がりが狭くなる傾向になる。音の自発性、湧き上るような楽しさ、がもっと出てきてもよいのではないだろうか。
 ところで、この製品はレコードを真空で吸いつける点が特徴だが、手加減で吸着の強さを増減すると、同じレコードの音がずいぶん変わる。この辺にコツがありそうだが、手加減は相当難しい。最良点はレコード一枚一枚わずかずつ違う。そして最良点を探し出してみても、音の豊潤さ、たっぷりした響き、がやはり物足りない。
●デザイン・操作性/PD444の外観とよく似ているが、こういう重心の高いデザインは、インシュレーターの効果の点で好ましくない。また、前方からみたとき、駆動モーターがまる見えで、しかも仕上げの雑な印象は不可解。ボタン類の配置と感触はわるくない。また、アーム取付ベースのところに、オーバーハング修整用の目盛りのついているのはとても親切だし便利でもある。

ラックス MS-10

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 フィリップスAH484とはまったく逆の性格をもったスピーカーということができるだろう。きめこまかい音の表現ということでは一応のものをきかせはするが、力強い音に対する反応ということではものたりない。しかし、オペラ歌手の張った声ではなく、ポピュラー・シンガーのインティメイトな表情をもった声とうたいぶりに対しては、なかなかいいあじを示す。今はやりの、さまざまなサウンドの入りまじった音楽をきかせるのは、このスピーカーのもっとも不得手とするところだ。遠く離して大音量できくのではなく、微妙なあじわいを重んじた音楽を、静かにきくのにかなったスピーカーというべきか。このスピーカーのきかせる音には独自のあかるさがあるものの、ピアノ、あるいはトランペットの音の響きは、いくぶんおさえめになる。したがって、きいての印象は、総じて、まろやかであり、おだやかだ。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(物足りない)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

ラックス MS-10

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 低音域の量感はあまり期待できないためやや線が細いが、中域から高域にかけてちょっと国産らしからぬ繊細な美しい艶が乗って、少し前のイギリスの小型スピーカーの鳴らした魅力と一脈通じる音が楽しめる。そういう音だから、とくにクラシックの弦楽器など、倍音のよく乗った一種妖しいと言いたいような弦特有の音色が聴きとれて、この傾向の音の好きな人なら、ちょっとシビれる、とまでは言いすぎであるかもしれないが、かなり聴き惚れさせる要素がある。たとえばブルックナーのようなわりあいスケールの大きな交響曲等でも、音量をあまり上げすぎないかぎり、眼前にオーケストラの展開する感じがよく出て楽しい。
 反面、パワーには弱くまた音自体もいくぶん弱腰なので、ハードなポップスには向かない。そして組合せも、スピーカーの価格にくらべてアンプやカートリッジをややおごってやらなくては、このスピーカーの良さを生かしにくい。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:6
バランス:8
質感:7
スケール感:6
ステレオエフェクト:7
耐入力・ダイナミックレンジ:5
音の魅力度:8
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:普通

ラックス MS-10

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 全体のバランスはよくとれていて、周波数レンジもよく伸びている印象だ。音そのものも、各楽器の音色を素直に出してくれる方だ。ただ、試聴したシステムはトゥイーターに少々引っかかりのある嫌な響きがつきまとい気になった。別の機会に聴いた経験ではこんなことはなかったので、このモデルだけのことかもしれないが……。不満としては、音楽の力感的性格に対して十分な反応を示さないことだ。どちらかといえば品のよい内省的な響きということなのだろうが、もう少し屈託のない明朗な響きに対応する能力がほしい。少し具体的に書くと、シルヴィア・シャシュのソプラノの声でトゥイーターの響きが刺戟的であったこと、バスドラムの強打やベースのピチカートの反応がやや鈍く、朗々としたファンファーレが透みきらなかったことなどだ。したがって、チャック・マンジョーネの演奏など、打楽器のリズム感のはじけるような鮮烈さが不十分で、このレコードの演奏が十全には生きなかった。

総合採点:7

ラックス L-48A

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックス独自のデュオベータ回路を採用したアンプ群に、新しくL48Aプリメインアンプが加わることになった。
 デュオベータ回路は、パワー部では全帯域にわたって音質的に最適量のNFBをかけ、可聴周波数帯域外の超低域についてはDCサーボ回路によりダンピング特性を向上している。プリアンプ部は、低域と中高域に2つのNFBを組み合わせ、全帯域にわたりバランスのよい再生音が得られる特長がある。また、パワーアンプ出力段は、高域特性が優れたパワートランジスターに充分なアイドリング電流を流し、スイッチング歪を低減し、デュオベータ回路を効果的としている。イコライザーアンプはハイゲインタイプで、MCカートリッジがダイレクトに使えるタイプである。トーンコントロールは、湾曲点切替周波数2段切替のLUX方式NF型。その他、フィルムコンデンサーには機械振動を抑えるため、両端子間に直流バイアスをかけ、電気的に振動を抑えて使っているのが注目される。外観は、薄型プロポーションのリアルローズウッド木箱入り。10素子のLEDピーク指示パワーインジケーターが特長である。
 音色は、明るく滑らかなタイプだ。デュオベータ方式を完全に消化した、いかにもラックスらしい特長がよく出た好ましい音である。音場感プレゼンスも自然で、トータルバランスの優れた製品だ。

ラックス L-58A

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

裸特性を徹底的に改善し、これに最小限度のNFBをかけるデュオベータサーキットを採用した新世代のニューラックスマンシリーズのプリメインアンプ。従来に比べパワフルな音が特長。

ラックス LX33

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

パワーアンプをベースとし、これにプリアンプを組み込むラックス独特な構想を管球式プリメインアンプで製品化したモデル。デザイン自体も、それを意味するように簡潔で新しい魅力が感じられる。

ラックス LX33

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックス独自の製品である管球式のプリメインアンプである。独自の発想であるパワーアンプにプリアンプを組込むという基本構想に基づいて開発されているため、これを象徴するようなオリジナリティのあるパネルフェイスとなっている。
 設計方針は、音質改善の裏付けとなる各種歪の低減を目標とし、新しい時代の管球アンプのメリットを活かしたものである。出力トランスは新設計のOY15−5KF型で、巻線径が太く、遊休コイルのないシンプルな巻線構造で、ロスが少なく音質が優れたタイプであり、出力管は、定評がある6CA7をウルトラリニア接続PPとして使用。ドライバー回路は、低域時定数が少なく利得の高い、安定な特長があるムラード型だ。
 プリアンプ部は、中高域の耐入力を増すために、出力段の電流を多くとった動作点に設定した12AX7の2段P−K NF型で、3段型と比べ安定度の高いメリットがある。トーンコントロール回路は、ボリュウムの機械的な中点でフラットな周波数特性が得られる伝統的なLUX方式NF型である。
 LX33は価格的にも魅力のある製品であり、従来の豊かで柔らかな音という伝説的な管球アンプの音を脱した、スムースで爽やかな音であり、ナチュラルな音場感の拡がりが管球アンプらしい。

ラックス C-5000A, M-4000A

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 ある種の雰囲気をもったどちらかというと内政的な音で、中高域の冴えがなく中低域以下が豊かだ。風格のある充実した音だが、音楽の内容によっては、もっと明るく、張り出した響きが欲しい。ワイドレンジで力もある音なのだが、少々しぶ味がある感じ。

ラックス C-5000A, M-4000A

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 独自のデュオβ回路と、新しい方向性を示したパネルフェイスに特長があるラックスのニューラックスマンシリーズはプリメインアンプL58Aが最初の製品であるが、今回発売されたコントロールアンプC5000AとパワーアンプM4000Aは、このシリーズの最高に位置づけられるほか、ラックスのトップランクモデルでもある。
 C5000Aは、L58Aと同じデザインのパネルフェイスをもつコントロールアンプである。
 基本的な設計ポリシーは、高NFBアンプの問題点としてクローズアップされたTIM歪を軽減することにある。このため、オーディオアンプの基本に戻り、NFBをかける以前のアンプの裸特性を改善し、これに最適量のNFBを僅かにかけ、動特性および静特性を向上させようという構想に基づいて、デュオβサーキットを採用している。
 回路面の主な特長は、イコライザー段とフラットアンプ段を同じ回路構成とし、
入力段にはFET4石のカスコード入力ブートストラップ回路を使用、トランジスターによる動抵抗回路や定電流回路を組み合わせて裸特性の向上を図る。出力段にはトランジスター4石によるSEPP回路を採用し、出力インピーダンスを極力低く抑えていることにある。
 コンストラクション面では、最近の技術的傾向を反映して、アンプ基板に近接するシールド板、シャーシーなどの金属類を排除。静電的ノイズには抵抗体シートを木箱に貼って対処するなどのほかに、電源部を含めた左右チャンネルの分離、配線の単純化、最短距離化のためすべてのスイッチ類が直接基板に取付けられ、この基板を縦位置に取付けているため、独特のパネルフェイスとなって現れている。使用部品には音質の優れたチッ化タンタル抵抗やコンデンサーを使用し、ノンポーラコンデンサーのオーディオ的なポラリティまでも検討するなど、音質を重視した設計となっている。
 M4000Aは、従来のM4000系の筐体に高域特性が優れ、クロスオーバー歪やスイッチング歪の少ないパワーMOS−FETを使用し、多量のバイアス電流と高速ドライバー回路を組み合わせて〝ノッチレスAクラス〟動作方式とした出力180W十180Wのパワーアンプである。
 回路的には、裸特性の優れた回路に少量のNFBとDCサーボ回路を組み合わせた独自のデュオβサーキット使用で、左右独立電源、音質のよい15、000μF×4の電解コンデンサーとフィルムコンデンサーをパラレルに使用したことなどが特長である。入力端子は金メッキのRCAピンプラグ、出力端子はユニークな使用法のキャノンコネクターを採用している。