ヤマハ A-1000

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 ヤマハからの新製品A1000は、昨年、高級プリメインアンプの市場に投入され見事な成果を収めたA2000と基本的に同一コンセプトをもつ製品である。
 このところ、ブラックパネルが大流行のようで、視覚的に各社間のデザイン的な特徴が希薄になりがちのなかにあって、ツヤを抑えたヤマハ独自のシルバー仕上げのパネルと、ウォルナット鏡面仕上げのウッドキャビネットを配したデザインは、クリアーで、エレガントな雰囲気をもつ新しいヤマハの顔であり、A2000とのパネルフェイスの違いは、好みが分かれるところであろう。
 アンプとしての構成は、MC型カートリッジをダイレクト使用可能な、NF/CR型ハイゲインイコライザー、低域をスピーカーに対応して約1オクターブ伸ばす独自の3段切替リッチネス回路とト-ンコントロールを備えたラインアンプ、B2x、A2000パワーアンプ部に順次採用されてきた、純A級アンプに電力損失を受持つAB級パワーアンプを組み合せたヤマハ独自のデュアル・アンプ・クラスA方式の120W+120W(6Ω負荷)、140W+140W(4Ω負荷)の出力をもつパワーアンプ、の3ブロック構成で、A2000の流れを受け継ぐものである。なお、パワーアンプ部にはヤマハ独自開発のZDR歪回路を採用し、一般的な純A級パワーアンプのわずかの素子の非直線性に起因する歪をも除去し超A級ともいえるリニアリティを実現し、織細で美しい音を得ている。
 電源部は、多分割箔マルチ端子構造ケミコン採用で、総計14万6千μFの超強力電源を構成し、2Ω負荷時のダイナミックパワーは、279W+279Wを得ている。
 機能面では、入力切替スイッチに2系統のTAPE入力を組み込み、アクセサリー端子を独立して設けたのが特徴。AV対応時のサラウンドアンプやグラフィックイコライザーなどの接続時に使い、使用しないときにはショートバーで結んでいる。なお、この端子の後に、ミューティング、モード、バランス、ボリュウムコントロールがあるため、接続されるアクセサリー横器の残留ノイズ等はボリュウムで絞られ、通常の使用時でのSN比は良く保たれる。
 JBL4344とLC-OFCコードによるヒアリングでは、音の粒子が、細かく滑らかに磨き込まれており、素直に伸びた適度なワイドレンジ感と、自然な雰囲気の音場感的な拡がりが印象的で、ナチュラルサウンドの名にふさわしく、洗練された音だ。A2000と比較すれば、全体の音を描く線が、細く、滑らかなのが特徴であり、このしなやかな表現力は、使うにしたがって本来の良さが判ってくるタイプの魅力だ。リッチネスを使うときのポイントは、わずかに、トレブルを増強することだ。

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