テクニクス SU-V10X

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 CD、PCMプロセッサーなどのデジタルプログラムソース、ハイファイVTR、ビデオディスクなどのAVプログラムソースなど、多様化するプログラムソースに対応する現代のプリメインアンプとしてテクニクスから登場した新製品がSU-V10Xである。
 アンプとしての基本構成は、テクニクスが理想のパワーアンプを目指し、クロスオーバー歪とスイッチング歪を解消するシンクロバイアス回路ニュー・クラスA、トランジエント歪に対するコンピュータードライブ、理論的に歪を0とするリニアフィードバック方式などの技術と、大電涜が流れる出力段で発生する電磁フラツクスを抑えるコンセントレイテッド・パワーブロック構造の採用などが、従来からのテクニクスアンプのストーリーだが、今回さらに、駆動電圧と電流間に位相差をもつ実スピーカーに対し、リニアな駆動とドライブ能力を向上するコンスタントゲイン・プリドライバー回路を採用したことが特徴で、オンキョーのアプローチとの対比が興味深い。
 機能面では、AVシステムの中心となるアンプらしく、AV信号を連動切替するAV入力セレクター、単独切替のRECセレクターとグラフィックイコライザーなどを使用する外部機器専用端子、ターンオーバー可変型トーンコントロールなどが備わるが、AUX1/TV、AUX2/Video、TAPE2/VTRと3系統のAV入力端子のうち、AUX2/Video端子は、フロントパネル面にもあり、フロントとリアがスイッチ切替可能である。
 パワーアンプは、150W+150W(6Ω負荷)の定格をもつが、電源部は、従来のトランスと比較し10~20%以上太い線を高密度に巻ける尭全整列巻線法を採用し、レギュレーションを改善している。線材は無酸素銅線、3重の磁気シールド内に特殊レジン封入で振動が少ない特徴がある。なお、電解コンデンサーは全数300Aの瞬間電流テストを行なう特殊電解液使用のオーディオ専用タイプで強力な電源部を構成し、310W+310W(4Ω負荷)、400W+400W(2Ω負荷)のダイナミックパワーを誇っている。
 JBL4344とLC-OFCコードによるヒアリングでは、ナチュラルに伸びた広帯域型のバランスと、聴感上でのSN比が優れ、前後方向のパースペクティブを充分に聴かせる音場感と実体感のある音像定位が印象的である。優れた物理的特性に裏付けられたクォリティの高さ、という従来の同社アンプの特徴に加えて、スピード感のある反応の早さ、フレッシュな鮮度感のある表現力が加わったことが、魅力のポイントである。新製品が登場するたびに、ひたひたと潮が満ちるようにリファインされているテクニクスアンプの進歩は見事だ。

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