サンスイ B-2301, B-2201

井上卓也

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 サンスイのセパレート型アンプは、他社と比較して、その機種数は少ないとはいえ、つねに、ユニークな構想に基づいた個性的な作品が多いのが特徴であろう。
 古くは、管球アンプ時代の出力管にKT88を採用したBA303があり、これは当時のハイパワーアンプの最先端をゆくモデルとして、そのメカ二カルで整然としたデザインともども国産パワーアンプの歴史に残る製品だった。比較的最近では、マッキントッシュと同様に、出力トランスを使った300W+300Wの超弩級ハイパワーアンプ、BA5000の物凄いエネルギッシュなサウンドも記憶に残るものだ。ちなみに、このBA5000は、強烈な馬力と無類の安定度が両立している特徴がいかされ、沖縄の海洋博会場や各地のライブコンサート、晴海のオーディオフェアのサンスイブースなどでJBLのスピーカーシステムの駆動用として、つい最近まで活躍していたため、そのサウンドは多くの皆さんがお聴きになっているはずだ。
 その後、輸出モデルとして、B1が開発され、主に、米国市場で活躍し、このモデルもコンシュマーから業務用までの広範囲に使用されたが、しばらくの沈黙を破って昨年11月に発売されたパワーアンプが、300W+300WのB2301であり、これに続いて今回、発売されたモデルが、200W+200WのB2201である。
 この新製品が開発された基盤は、サンスイのプリメインアンプが急成長を遂げたワイドレンジDC構成のAU607/707以来のダイアモンド差動回路開発、TIM歪とエンベロープ歪の測定法開発、スーパーフィードフォワード方式の開発などの技術的な蓄積をはじめ、他社に先駆けて銅メッキシャシーや銅メッキネジなどを採用した独自の機構設計上でのアプローチ、部品選択、さらに、測定と試聴をくりかえした結果から得られるノウハウなどにあり、これらが、最高級セパレート型アンプを開発するのに充分貯えられたということであろう。
 まさに、サンスイの自信作ともいえる作品であるが、その評価は大変に高く、B2301は、第1回ステレオサウンド・コンポーネンツ・オブ・ザ・イヤーに選出されたことからも、その実力の程はうかがえると思う。
 2機種のパワーアンプは、基本的に同じ開発意図でまとめられており、初期のPCMプロセッサーを思わせるようなシンプルでクリーンな筐体は外形寸法的にも共通である。
 回路構成上も同様で、新開発のダイアモンド差動出力段は、片チャンネルにパワートランジスクー8個で構成する点、カスコード接続ブッシュプル・プリドライバー段も変らない。もっとも大きな差は、パワーが異なるのを除けば、入力系が、B2301では一般の不平衡型に加えてキャノン端子を使った平衡型入力をもつことで、この場合には入力部のバッファーアンプをジャンプする設計で、入力感度は不平衡1Vにたいして2Vに変る。
 電源部は、トロイダルトランス採用の左右独立・各ステージ独立の6電源方式で、電源コンデンサー容量が、B2301で出力段用60000μF、プリドライバー段4000μF、B2201では、出力段用60000μF、プリドライバー用27200μFと異なっている。
 パネル面の大型液晶ディスプレイは、ピーク表示とピークホールド表示に切替可能な60dBリニアスケールパワーメーターに加えて、オーバースイング、プロテククー、DCリークなどのインジケーターが組み込まれている。
 試聴用コントロールアンプには、B2301が平衡入力を備えている点から、コントロールアンプとして異例の平衡出力端子をもつアキュフェーズC280を組み合わせることにした。なお、キャノン端子の結線はC280、B2301とも①番アース、②番ホットのアメリカ型だが、ものによっては③ホットのヨーロッパ型もあるので注意が必要である。なお、プログラムソースは、アナログ系としてエクスクルーシヴP3にデンオンDL305、デジタル系としてソニーの業務用CDプレーヤーとヤマハのCD1を使用した。
 B2301は、不平衡入力使用のときに充分に厚みがあり、力強くエネルギー感がある低域をベースに、密度が濃い中域と、ハイパワーアンプとしては素直な高域が、無理に帯域感を伸ばしたような印象がないナチュラルで安定したエンベロープのレスポンスを聴かせる。比較的に腰の重いJBL4344の低域を余裕をもってドライブできるのは、さすがに300W+300Wのパワーであり、伝統的な強力電源の実力であろう。
 ややもすれば、国産パワーアンプは表示パワーほどには常用レベルでパワー感がなく、ボリュウムを上げて初めて、さすがにハイパワーアンプといった対応を示すものがあるが、その点このB2301は、まさに正味300W+300Wの出力を感じさせる。音色は適度に明るく、伸びやかで、引締まった表現力をもつが、欲をいえば、音場感的なプレゼンスがいま一歩ほしいところだ。
 試みに平衡入力に変える。一瞬、音場感はスピーカーの外側まで拡がり、見通しのよいパースペクティブな世界が展開される。音の表現力は大幅に向上し、優れたCD盤でのクリアーな定位感、演奏者の動きに伴う気配までが感じられるようになる。これは、まさしく、異次元の世界ともいうべき変化である。レコードを次から次へと取替えて聴きたくなる、あの熱い雰囲気のある音だ。
 B2201は、不平衡入力のみだが、B2301と比較してナチュラルに伸びたワイドレンジな帯域バランスと、音の粒子が細かく、伸びやかに軽やかに音を聴かせるタイプだ。音場感もナチュラルに拡がり、性質の素直さが、このアンプならではの魅力であろう。

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