Tag Archives: B2301

サンスイ B-2301L

井上卓也

ステレオサウンド 84号(1987年9月発行)
特集・「50万円以上100万円未満の価格帯のパワーアンプ15機種のパーソナルテスト」より

穏やかな安定感のある帯域バランスと、余裕があり、伸びやかな音だ。今回の試聴では、従来に比べて音のキャラクターが変わったようで、音の粗さ、単調さが改善され、聴感上でのSN比の向上がポイントである。この店はカンターテ・ドミノの空間の拡がりや、音の消え方などで聴き取れる。音色は、やや暗い面があり、反応の早さが加われば、かなりなアンプになるだろう。ウォームアップは、初期は硬質で線が細く、数分で本来の音に移行するタイプ。

音質:84
魅力度:89

サンスイ B-2301L

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「最新パワーアンプはスピーカーの魅力をどう抽きだしたか 推奨パワーアンプ39×代表スピーカー16 80通りのサウンドリポート」より

(ダイヤトーン DS10000での試聴)
 かなり脂ののった甘口なクレーメルになる。アルグリッチのピアノも艶っぽくなる。音が重量感をもち、どっしりと響く。モーツァルトのコンツェルタンテを聴くと、この傾向が魅力として活きる。ふっくらとしたアンサンブルの厚い響きが実に暖かく美しい。豊潤な女体美に通じる感覚である。それだけに木管の音色の鳴らし分けがやや鈍くなる。メル・トーメの声はハスキーな味がやや殺されウェットでファツトになる。この辺は、かなりアンプの個性が出た音。

サンスイ B-2301L

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 質感としてはサンスイのアンプらしいウェットさと暖かさが特色。しかし、これはB2201よりも充実していて、透明度もかなりよく、すべてがプラスになって生きている。グラマラスな豊麗な音の世界。ヴァラディの艶のあるソプラノ、フィッシャー=ディスカウの毅然としたバリトン、共に暖かくヒューマニティ豊かに聴ける。弦もしっとりとして美しい。大オーケストラにはいま一つ鋭い分解能があってもよいが、粘りのある、しなやかな音の豊潤な魅力は印象的だ。骨太のジャズも快感。

音質:9.0
価格を考慮した魅力度:8.5

サンスイ B-2301L

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 穏やかな安定感のある帯域バランスと、音の粒子がビッシリとつまった立派な音が特徴のアンプだ。農民カンタータは、全体に大味で、武骨なまとまりを示したが、幻想になると、低域から中域の厚みがあり、力強い音になり、反応も少し速くなったようだ。基本的にウォームアップ時間を要求する傾向があるようで、サイド・バイ・サイドになると、大柄な面は残るが、低域も伸びがよく、ライブハウス的な独特の雰囲気の音として聴かせるようになる。反応の速さや、しなやかな表情が欲しい音だ。

音質:8.3
価格を考慮した魅力度:8.9

サンスイ B-2301, B-2201

井上卓也

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 サンスイのセパレート型アンプは、他社と比較して、その機種数は少ないとはいえ、つねに、ユニークな構想に基づいた個性的な作品が多いのが特徴であろう。
 古くは、管球アンプ時代の出力管にKT88を採用したBA303があり、これは当時のハイパワーアンプの最先端をゆくモデルとして、そのメカ二カルで整然としたデザインともども国産パワーアンプの歴史に残る製品だった。比較的最近では、マッキントッシュと同様に、出力トランスを使った300W+300Wの超弩級ハイパワーアンプ、BA5000の物凄いエネルギッシュなサウンドも記憶に残るものだ。ちなみに、このBA5000は、強烈な馬力と無類の安定度が両立している特徴がいかされ、沖縄の海洋博会場や各地のライブコンサート、晴海のオーディオフェアのサンスイブースなどでJBLのスピーカーシステムの駆動用として、つい最近まで活躍していたため、そのサウンドは多くの皆さんがお聴きになっているはずだ。
 その後、輸出モデルとして、B1が開発され、主に、米国市場で活躍し、このモデルもコンシュマーから業務用までの広範囲に使用されたが、しばらくの沈黙を破って昨年11月に発売されたパワーアンプが、300W+300WのB2301であり、これに続いて今回、発売されたモデルが、200W+200WのB2201である。
 この新製品が開発された基盤は、サンスイのプリメインアンプが急成長を遂げたワイドレンジDC構成のAU607/707以来のダイアモンド差動回路開発、TIM歪とエンベロープ歪の測定法開発、スーパーフィードフォワード方式の開発などの技術的な蓄積をはじめ、他社に先駆けて銅メッキシャシーや銅メッキネジなどを採用した独自の機構設計上でのアプローチ、部品選択、さらに、測定と試聴をくりかえした結果から得られるノウハウなどにあり、これらが、最高級セパレート型アンプを開発するのに充分貯えられたということであろう。
 まさに、サンスイの自信作ともいえる作品であるが、その評価は大変に高く、B2301は、第1回ステレオサウンド・コンポーネンツ・オブ・ザ・イヤーに選出されたことからも、その実力の程はうかがえると思う。
 2機種のパワーアンプは、基本的に同じ開発意図でまとめられており、初期のPCMプロセッサーを思わせるようなシンプルでクリーンな筐体は外形寸法的にも共通である。
 回路構成上も同様で、新開発のダイアモンド差動出力段は、片チャンネルにパワートランジスクー8個で構成する点、カスコード接続ブッシュプル・プリドライバー段も変らない。もっとも大きな差は、パワーが異なるのを除けば、入力系が、B2301では一般の不平衡型に加えてキャノン端子を使った平衡型入力をもつことで、この場合には入力部のバッファーアンプをジャンプする設計で、入力感度は不平衡1Vにたいして2Vに変る。
 電源部は、トロイダルトランス採用の左右独立・各ステージ独立の6電源方式で、電源コンデンサー容量が、B2301で出力段用60000μF、プリドライバー段4000μF、B2201では、出力段用60000μF、プリドライバー用27200μFと異なっている。
 パネル面の大型液晶ディスプレイは、ピーク表示とピークホールド表示に切替可能な60dBリニアスケールパワーメーターに加えて、オーバースイング、プロテククー、DCリークなどのインジケーターが組み込まれている。
 試聴用コントロールアンプには、B2301が平衡入力を備えている点から、コントロールアンプとして異例の平衡出力端子をもつアキュフェーズC280を組み合わせることにした。なお、キャノン端子の結線はC280、B2301とも①番アース、②番ホットのアメリカ型だが、ものによっては③ホットのヨーロッパ型もあるので注意が必要である。なお、プログラムソースは、アナログ系としてエクスクルーシヴP3にデンオンDL305、デジタル系としてソニーの業務用CDプレーヤーとヤマハのCD1を使用した。
 B2301は、不平衡入力使用のときに充分に厚みがあり、力強くエネルギー感がある低域をベースに、密度が濃い中域と、ハイパワーアンプとしては素直な高域が、無理に帯域感を伸ばしたような印象がないナチュラルで安定したエンベロープのレスポンスを聴かせる。比較的に腰の重いJBL4344の低域を余裕をもってドライブできるのは、さすがに300W+300Wのパワーであり、伝統的な強力電源の実力であろう。
 ややもすれば、国産パワーアンプは表示パワーほどには常用レベルでパワー感がなく、ボリュウムを上げて初めて、さすがにハイパワーアンプといった対応を示すものがあるが、その点このB2301は、まさに正味300W+300Wの出力を感じさせる。音色は適度に明るく、伸びやかで、引締まった表現力をもつが、欲をいえば、音場感的なプレゼンスがいま一歩ほしいところだ。
 試みに平衡入力に変える。一瞬、音場感はスピーカーの外側まで拡がり、見通しのよいパースペクティブな世界が展開される。音の表現力は大幅に向上し、優れたCD盤でのクリアーな定位感、演奏者の動きに伴う気配までが感じられるようになる。これは、まさしく、異次元の世界ともいうべき変化である。レコードを次から次へと取替えて聴きたくなる、あの熱い雰囲気のある音だ。
 B2201は、不平衡入力のみだが、B2301と比較してナチュラルに伸びたワイドレンジな帯域バランスと、音の粒子が細かく、伸びやかに軽やかに音を聴かせるタイプだ。音場感もナチュラルに拡がり、性質の素直さが、このアンプならではの魅力であろう。

サンスイ B-2301

井上卓也

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「コンポーネンツ・オブ・ザ・イヤー賞 第1回」より

 オーディオアンプは、とかく、エレクトロニクスの技術に基づいた製品であるるだけに、回路技術的な新しさや、音質対策が施された部品選択などに注目する傾向が強い。
 一方において、アンプの機械的な構造、つまり、シャシーやケースに代表される機構設計面は、管球アンプの昔から、音質を決定する重要なファクターとして検討はされていたものの、計測データに基づいた、音質との相関性を追求する技術は、いまだに未完成といわなければならぬ実状である。
 この機構設計面でノウハウに基づいた成果を現実の製品に導入した点では、サンスイのアプローチは、時期的にも早く、その成果も非常に大きいと思われる。銅メッキシャシー、銅メッキネジ、真鍮板の構造材などはその例で、これらの手法はその後多くのメーカーが踏襲し、最近の機構設計の定石になっていることを評価すべきである。
 B2301は、BA5000、3000以来、約10年ぶりにサンスイが開発したハイパワーアンプである。1・3kVAの超大型電源トランスに代表される伝統的な強力電源部をベースに、アルミブロックと銅板でサンドイッチ構造とするパワートランジスター取付部、140μ厚プリントパターン採用などに加えて、新開発ダイアモンドパワーステージとカスコード接続プッシュプルブリドライブ段の新採用のほかに、入力系がバランスと一般的なアンバランスと切替使用ができるのも本機の大きな特徴で、回路構成上のユニークさが、これからも類推されるだろう。

マッキントッシュ C33 + サンスイ B-2301

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 どういうわけか、低音が出すぎる。もの凄い量感だ。前にもこの組合せで聴いたことがあるが、そのときはこんなではなかった。しかし、音の質感はしっかりした骨格と芯の周囲に、弾力性のある適度な肉づきと、滑らかな皮膚がほどよくバランスした自然なもので、マーラーの響きの重厚さと絢爛さは素晴らしい。ヴォーカルの質感も暖かく、リアリティのあるもの。ジャズでは前述のようにベースが重すぎ、やや鈍重にすぎたようだ。

ミュージック・リファレンス RM-5 + サンスイ B-2301

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 TVA1との組合せで聴いた血の通ったソリッドな音に、さらにキメの細かい質感の緻密な響きが加わり透明度が増した。代りに、暖かさ、熱っぽさはやや失われ、よりすっきりとした現代的な音といえるものになる。ヴォーカルも雑物がとれ、よりすっきりするが、その反面、やや冷たいともいえる感触をもってくる。ジャズでは圧倒的に力強く、安定感が増し、女性の声の艶、弾みのあるヴィヴィッドなベースが素晴らしいものだった。