瀬川冬樹
ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より
ソフトでウェットな、いわば女性型の音質という点では755(nII)以来聴き馴れたオンキョーのトーンである。弦の高弦でも金属的な嫌な音を鳴らさないし、ユニゾンの音の溶け合いも不自然さが内。弦楽器ともうひとつヴォーカル、ことに女の声の、一種なよやかな鳴り方は、いわゆるハードな音のアンプではなかなかこううまく鳴りにくい。以前のモデルではときとして高音のオーバートーンの領域で音の線をいくらか細い感じに鳴らすようなところがあったが、A5では以前の機種にくらべると、バランス的には過不足なくまとまってきている。
ただ難をいえば、総体に音の締りが不足していることと、何となく薄味の感じがあって、もうひと息、ぴしっと引締った緻密な音で鳴ってくれたら、という欲が、聴くうちにふくらんでくる。重低音の量感ももう少し欲しい。5万円そこそこという価格を頭に置くと、それは高望みなのかも思えるが……。
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