ラックス 5L15

菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 明るく抜けきった、きわめてワイドレンジの広い優秀な特性を想わせるアンプである。それでいて、弾力性のある質感と、軽くふわっと湧き上るような空間の再現のデリカシーも得られる品位の高さである。しかし、高音域のややきついヒステリックな刺激性と弱々しさが、プログラムソースによっては気になるし、スピーカーをかなり選ぶ傾向があるようにも感じられる。試聴ではスペンドールがベターであって、JBLはバランスをくずす。今までのラックスのサウンドとは画然とした違いのあるもので、品位の高さは同次元に近いが、まるでセンスの違う音という印象だ。フィッシャー=ディスカウの声には38FD/IIとはちがうけれど、品位の高さでは迫るものがあったが、弦合奏になると、高弦の破綻が現われる。ただし、これはレコーディングのアラかもしれず、38FD/IIがこれをまくこなしてしまうと判断すべきなのか? 難しいところだ。

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