ビクター JA-S41

岩崎千明

週刊FM No15(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 ステレオの左右クロストークを改善するのに左右の電源トランスを分けるという従来の手段に対して、電流、電圧変動の大きくなる出力段を別電源とする新しいテクニックを採用して登場したビクターの新しいこのアンプは、その点、大成功を得たといってよい。少なくとも今、市場にある左右2電源方式にくらべて明らかに優れている。フォノ入力を片側外し普通の演奏状態で反村側のスピーカー端子のスピーカーを外して8Ωの抵抗を接いでおいて、フォノ入力のない側のスピーカーからの洩れを確かめればクロストークは誰にでも容易に確認できる。このように実際的に優れたステレオ・アンプとしての基本性能をそなえたS41は、クロストークだけでなく、パワーとか歪みにおいても今までのアンプの常識を完全に乗り越えた性能を持っている最新型にふさわしい強力アンプだ。
 さて、そのサウンドは中音の確かなる充実感に加えて、ややきらびやかで輝かしい広帯域感。それを支える力あふれる低音の迫力。重低域までよく延びた豊かな響きにこのアンプの実力の底力を知ることができる。ステレオ感の拡がりの十分な音場再生は、ノイズの少なささえもかもし出している。高域までクロストークの良い特長がホワイト・ノイズの音像を拡散しているためだろう。
 ロー・レヴェルのこまやかな音の美しさはビクターのアンプの共通的特長だが、この点でもS41は一段と優れ、新型にふさわしい。

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