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ビクター JA-S41

岩崎千明

週刊FM No15(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 ステレオの左右クロストークを改善するのに左右の電源トランスを分けるという従来の手段に対して、電流、電圧変動の大きくなる出力段を別電源とする新しいテクニックを採用して登場したビクターの新しいこのアンプは、その点、大成功を得たといってよい。少なくとも今、市場にある左右2電源方式にくらべて明らかに優れている。フォノ入力を片側外し普通の演奏状態で反村側のスピーカー端子のスピーカーを外して8Ωの抵抗を接いでおいて、フォノ入力のない側のスピーカーからの洩れを確かめればクロストークは誰にでも容易に確認できる。このように実際的に優れたステレオ・アンプとしての基本性能をそなえたS41は、クロストークだけでなく、パワーとか歪みにおいても今までのアンプの常識を完全に乗り越えた性能を持っている最新型にふさわしい強力アンプだ。
 さて、そのサウンドは中音の確かなる充実感に加えて、ややきらびやかで輝かしい広帯域感。それを支える力あふれる低音の迫力。重低域までよく延びた豊かな響きにこのアンプの実力の底力を知ることができる。ステレオ感の拡がりの十分な音場再生は、ノイズの少なささえもかもし出している。高域までクロストークの良い特長がホワイト・ノイズの音像を拡散しているためだろう。
 ロー・レヴェルのこまやかな音の美しさはビクターのアンプの共通的特長だが、この点でもS41は一段と優れ、新型にふさわしい。

ビクター JA-S41

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 現在のプリメインアンプでは、もっとも需要が多い価格帯に置かれたモデルだけに、単なる周波数レスポンスの拡大という方向ではなく、巧みに聴感上のレスポンスをコントロールして、アクティブに音楽を楽しむ方向でまとめてあるのは大変に好ましい。とくに、楽器らしさを感じさせる低音は気持よく聴ける。

ビクター JA-S41

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ビクターのプリメインアンプの中の中級機種であるこの製品は、厚みのある立体的な再生音を可能にしてくれるし、音の質感が品がいい。とちらかというと、ウォームなサウンドで、がっちりとしたソリッドな音像感というより、雰囲気重視型のソノリティを特長とする。高さのあるパネルのプロポーションは安定感があって落ち着いているし、決して消化されたデザインとはいえないが、冷たい感じを与えないので好感がもてる。

ビクター JA-S41

菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 大変オーソドックスな響きを聴かせてくれるアンプだ。以前に他の機会にこのアンプを聴いた時には、もっと豊潤な、魅力を感じさせる音だという印象だったのだが、今回の試聴では、そうした効果的な響きがなく、ある面、物足りなさを感じさせる音であった。スペンドールBCIIでは、この傾向が強く出て、魅力に乏しく、音楽の楽しさが生きてこないようで、JBL4343では、オーソドックスなよさが、端正な再生を可能にしてくれる。このクラスの製品としては実際に組み合わせられるスピーカーなどの価格的制約を考えれば、もう少し、美しいと感じさせる音を持ったアンプの方が圧倒的に多いし、その必然性もあるだろう。このアンプは、今回聴いた限りでは、大変真面目な音に徹していて、総合的には高く評価できるように思われるが、現実には商品性の難しい立場にある。一言にしていえばあきのこない音だ。聴感上のSN比は大変優れ残留ノイズは極少だ。

ビクター JA-S41

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 前のトリオ7100Dと対照的なアンプで、JBL(4343)のような大型の、音の緻密なスピーカーで聴くと、非常にオーソドックスな、誇張のない本格的な音で鳴るが、スペンドールのようなソフトな音の小型のスピーカーと組合せると、全くつまらない音に一変してしまう。そのことから、味の素的な手加減を加えずに正攻法でまとめたアンプであることが読みとれるが、さて、このアンプの価格に見合ったグレイドのスピーカーを想定した場合に、こういう音では、スピーカーやアンプがローコストであることをかえって思い知らせる結果になりはしまいか。あるいは、中域から高域の華やかな、やや表情過多のスピーカーやカートリッジを組合せれば、案外うまくゆくのかもしれない。残留雑音を含めて一切のノイズがよく抑えられていることからも、まじめにとりくんだ製品であることはわかる。ただ、初期に聴いた製品では、もう少し冴えた表情豊かな音がしたと思う。

ビクター JA-S41

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターの新製品は、JA−S51とS31の中間に位置する65W+65Wのパワーをもつプリメインアンプである。
 機能面では、JA−S51に準じた、5段切替モードスイッチ、前面録音端子をもつが、入力切替がフォノ1系統でカートリッジ負荷抵抗切替がなく、テープが2系統になった他、高音フィルターが低音フィルターに替わり、実用性が増している。
 回路構成上では、初段FETで入力コンデンサーを除いたICL型イコライザー、4連ボリュウム採用のプリアンプ部、ドライバー段以後と以前を分離した独立電源をもつパワーアンプを備えている。
 このアンプは、一連のビクタープリメインアンプのなかでは、もっともストレートで明快な音をもっている。とくに、低域の腰が強く、リズミックで活気があるのがメリットである。

ビクター JA-S41

岩崎千明

電波科学 7月号(1976年6月発行)

 若いファンにとって求めやすい価格帯のいわゆる、普及形アンプの品質向上がますます加速されている。
 新製品は必らず性能的により高いレベルに要求されるし、実際にそれは遂げられている。同じ価格なら性質は良いし、同じ性能なら価格は安くなった。文字通りお買い得の新形として、常に賛辞を浴びてデビューするというのがこの頃の常識だ。
 だから、今さらここで「ビクターの今度の新形JA−S41は前のくらべて、パワーはぐんと上って65/65W、ひずみ0・05%の高性能、電源トランスは2つ付いてるし電源コンデンサは15、000μFが2つ。性能もSNも抜群、クロストークも格段にすぐれてる」と定石通りにほめ言葉を並べたところで、こんな美辞麗句に馴れっこになってしまった読者の皆さんには、大して気に止めなくなってしまった。馴れというのは恐いものだなんて、長屋のいん居のぐちみたいなことをこぼすひまはここにはないのだが、少なくとも、これだけははっきり知っておいて良い。ビクターの新形アンプJA−S41はまぎれもなく、今までのビクターのアンプ技術の一大集成ともいえる傑作で、音に接しても今までになくステレオ感も自然でくせは本当に感じられず、透明でありながら暖か味さえ伝わってくる。
 歌の生々しさは、音量さえ適切ならばびっくりするほど、眼をつぶって聴くと歌手が眼前で語りかけてくる姿が見えてくるほどだ。マイクに対してのわずかな顔の向きの変り方すら手にとるように判る。バックの演奏者の並び方から楽器の配置、その大きさなど注意して聴けば聴くほどリアルな再生ぶり。それはサウンドのバランスの良さ、音の質的な水準の高さ、さらにステレオ感、セパレーションの良さなくては得られない。
「アンプというのはエレクトロニクス技術だ。だから電気的データが何よりも大切で、これが長ければ実際の動作も音もよいはず」という説はたしかにその通りだ。しかし、電気的性能さえよければそれですべてよいというわけでは決してない。音の良くなる最低条件として電気的性能は必らず要求されるけれど、その辺を十分に認識していないと性能さえよければ音は必然的に良いはずと思い込んでしまうことになるし、それが落し穴とすらなってしまう。しかし、逆に性能なんか無視してもよいというわけでは決してないが、本当の音質の良さの基本になるべき性能の良さというものは、単なる数字で表わせる、というほど簡単なものではない。このところをよく了解しておかなくてはならない。
 たとえば今、話題となっているクロストークについても、セパレーション何dBと数字が良ければそれで本当に良いといえるかどうか。逆にデータの上で、驚異的な数値なんかを発表していなくとも実際には優れているのだってある。ビクターのJA−S41の場合、クロストークに対しての配慮とか処置とかいうだけではないだろうが、電源を左右分離するのでなく、最終出力段とドライバ段以前とを別電源としている。電流変動の大きな出力段を分離することにあって、電源全体的な電圧変動がなくなるため、特に直線性とかひずみとかに強く影著されることがなくなったわけだ。これが同じ価格帯なのにひずみが格段に減り、出力がより大きくなりしかも、ピーク出力でも直線性がよくなった理由だろう。つまり、基本的な性能を重視した新らしい技術的着眼が、アンプの今日的問題点とされているクロストークまでも格段に向上させてしまったということになる。
 それなのにこの新らしい大いなる飛躍は、それをはっきりと知らすことが単なる数値の羅列ではでき難いのである。さぞかしメーカーも歯がゆいことだろう。でもこうした良さは聴く側に耳さえあれば必らず判るものだ。こうして聴いてみることを推めよう。
①左右スピーカを一辺とした正三角形の頂点に座る。
②できれば歌の入った演奏を、ミニチュア化したステージで歌手がある程度の距離で歌っているように再生する。
③アンプのバランス中央のまま右のフォノ端子入力を外す。そのままで左ピーカへと音像、つまり歌手が移動する。次に左フォノ端子を外したときに右スピーカ側に移動する。
④これでよく判らなければ右側フォノを外してアンプ出力端子の左スピーカー側のリード線を外して、8Ωの純抵抗を接続し右側の音を聴き確める。特に高音シンバル、低音ベースなどが洩れていないか。

 JA−S41はこうしたときに数字には表されることのない良さを発揮する。JA−S41の水準にあるアンプは市場の5万台に果して何機種あるだろうか。