Lo-D HS-400

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 低音から高音にかけて音域上の欠落感はほとんどなく、たとえばHS500で中低域にやや音の薄い部分があったのにくらべると確実に改善されている。国産でたとえばテクニクスやトリオの音の輪郭に毛羽立ったような、またはどこか粉っぽいような感じのつきまとうのにくらべると、HS400の音はきわめてクリアーという感じがする。ところがこのクリアーさは、私にはとても独特で奇異な音に思える。というのは、たとえば弦楽器の合奏の際に、いわばざわめきのような、楽器の周囲に漂うような雰囲気が生じ、それはレコードにもたしかに録音され、たいていのスピーカーではそれが再現されると私は思うが、HS400からはそういう音がまったくといっていいほど聴こえてこない。もうひとつ、すべての音に独特の色がつく感じで、いわば音楽を淡い黄色の半透明ガラスを通して眺めるような、あるいはゼリーで練り固めたような、土産物によくあるプラスチックで鋳固めた置き物のように音楽が聴こえる。奇妙な体験だった。

採点:65点

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