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Lo-D HS-400(組合せ)

岩崎千明

コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)
「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より

 ハイファイ・スピーカーのもっともむずかしい面はクォリティの管理にあるといえるが、日本の電気メーカーとして、常にオリジナル技術で先頭を切ってきたLo−D技術陣は、HS500を通して得たこの至難の問題点を真正面から取り組んで「信頼性」「寿命」さらに「生産性」をも一挙に解決すべく、メタル・サンドウィッチのスチロール系のコーンを開発した。
 大型のHS500がこの開発の土台となったが、HS400はこの新デバイスを量産製品に実現したという点で、世界に誇るまさに画期的製品だ。特有の音響的なピークを電気的共振型で除くという点を危ぶむ声もないわけではないが、実質的に特性上なんらの支障もないということで成果は製品を聴く限り表面化していないのも確かである。たいへん活々として再生ぶりが前作HS500との相違点で、広帯域に亘る極めて低歪再生ぶりはまさにそのものといえよう。組合せるべきアンプによって生命感溢れるサウンドは躍動しすぎになりかねないので無理な再生を狙うとき、ほどほどに押えが必要かとも思われる。日立のアンプV−FETを採用したHA500Fはこうしたときにうってつけ。

スピーカーシステム:Lo-D HS-400 ¥47,800×2
プリメインアンプ:Lo-D HA-500F ¥89,800
プレーヤーシステム:ソニー PS-3750 ¥47,800
カートリッジ:(プレーヤー付属)
計¥275,600

Lo-D HS-400

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 低音から高音にかけて音域上の欠落感はほとんどなく、たとえばHS500で中低域にやや音の薄い部分があったのにくらべると確実に改善されている。国産でたとえばテクニクスやトリオの音の輪郭に毛羽立ったような、またはどこか粉っぽいような感じのつきまとうのにくらべると、HS400の音はきわめてクリアーという感じがする。ところがこのクリアーさは、私にはとても独特で奇異な音に思える。というのは、たとえば弦楽器の合奏の際に、いわばざわめきのような、楽器の周囲に漂うような雰囲気が生じ、それはレコードにもたしかに録音され、たいていのスピーカーではそれが再現されると私は思うが、HS400からはそういう音がまったくといっていいほど聴こえてこない。もうひとつ、すべての音に独特の色がつく感じで、いわば音楽を淡い黄色の半透明ガラスを通して眺めるような、あるいはゼリーで練り固めたような、土産物によくあるプラスチックで鋳固めた置き物のように音楽が聴こえる。奇妙な体験だった。

採点:65点