フィッシャー ST-550

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 ジョーダン・ワッツのGTやセレッションのディットン25などのところでも言ったことだが、スピーカーの音の鳴らし方に、いわゆる高忠実度をねらったものばかりでなく上質の伝統的な電気蓄音機の音──言いかえれば音色を巧みにコントロールして、家族そろって音楽でくつろぐことのできるような快い音を作ろうという方向があるので、このフィッシャーもそういうカテゴリーのスピーカーではないかと考えないと評価が大幅に変ることになるだろう。この音は鳴りはじめからたいそう気持のいい、アトホームな寛ろいだ雰囲気がかもし出され、ディットン25が自然な響きを大切にした音ならフィッシャーはもう少し人工的な、あるいは自然食品に対する人工食品のおいしさ、あるいは良くできた缶詰のおいしさを思わせる。音楽に必要なディテールは大掴みながらもきちんと鳴らすが、総体に鷹揚な鳴り方には大型アメリカ車の走行の快さと一脈通じるところがある。この種の鳴り方を必ずしも好きでない私の耳にさえ、何とも楽しく気持の良い音に受けとれるというところに、このスピーカーが決していいかげんに作られたものではない実力を感じる。

周波数レンジ:☆☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆

総合評価:☆☆☆

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