ヤマハ NS-690

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 総体に冷たい肌ざわりの音だがバランスが実に良い。ことに、国産スピーカーの大半の弱点である中低音域、言いかえれば音楽の最も大切な支えとなる音域の濁りがなく、抑えた鳴り方ながらシンフォニーの内声部もきちんと出てくるしチェロの唸りなどなかなか快く、ピアノのタッチ、ことに左手の強靭な響きもよく再現され、広い音域全体に品位の高い引き締った音質であらゆる音楽をクリアーに美しく聴かせる。能率の比較にしばしば参考としたスキャンダイナA25MkIIが、音質の点でもかなり高額の国産品より優れて聴こえていたのに、NS690と並ぶとさすがに、レインジの広さやスケール感や、緻密さ・芯の強さなどの点では劣って聴こえはじめる。ただ、ロー・エンドとハイ・エンドとにやや抑えの効かない部分があって、それが引き締めすぎとも感じられる生真面目な鳴り方に適度の味つけをしているとも言えるが、反面、低音楽器やややふくらませすぎたり高域のハーモニクスにトゲが立ったように聴こえる部分もあって、無条件で特選に推すにはもう一息の練り上げを望みたい。しかし2号にわたるテストを通じて綜合評価に4点を入れたのは国産ではこれ一機種である。パワーにも強い。

周波数レンジ:☆☆☆☆☆
質感:☆☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆☆
解像力:☆☆☆☆
余韻:☆☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆☆
魅力:☆☆☆☆

総合評価:☆☆☆☆

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