瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
大づかみにウェット型そしてどこか女性的なやさしさ。しかしLo−Dの7500や7300のところで書いたような、線の細い感じとは少し違う。決して音がひょろひょろしたり頼りなくなったりしない充実感も密度も、そして低音のしっかりした支えもほどよく持っていて、音域の中での欠落感のようなものがなく、バランスもよく整っている。その上で、音楽している演奏者の表情というか、表現上のニュアンスがとてもよく感じとれ、さらに空間にひろがってゆく音の余韻の響きと溶けあいの繊細な美しさも十分に再現できる。たいそう滑らかで上質の音といえる。弦や女声はもちろん、ベーゼンドルファーの艶や弾みもよく出るアンプはこれ以外には少ない。欲をいえば、こういう柔らかな音を鳴らしながらも、もうひとつピシッと引き締った冷徹な切れ込みも聴かせてくれれば満点なのだが、それはぜいたくというものだろう。しかしこのアンプくらい、鳴ってくる音と見た目の印象のちぐはぐなのも少ない。
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